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No.27519の一覧
[0] 転生妄想症候群 リリカルなのは(転生オリ主TS原作知識アリ)【空白期終了】[きぐなす](2013/11/24 21:34)
[1] 第一話 目が覚めて[きぐなす](2011/10/30 12:39)
[2] 第二話 ファーストコンタクト[きぐなす](2011/10/30 12:46)
[3] 外伝 レターオブ・アトランティス・ファイナルウォリアー[きぐなす](2011/11/27 11:19)
[4] 外伝2 真・ゼロ話[きぐなす](2012/01/06 18:20)
[5] 第三話 好感度イベント 三連投[きぐなす](2011/05/25 18:56)
[6] 第四話 裏返る世界[きぐなす](2011/05/06 00:33)
[7] 第五話 希とカナコの世界[きぐなす](2011/05/25 18:57)
[8] 第六話 入学式前の職員会議[きぐなす](2011/05/25 21:56)
[9] 第七話 ともだち[きぐなす](2011/05/09 01:17)
[10] 第八話 なのはちゃんのにっき風[きぐなす](2011/05/08 10:13)
[11] 第九話 シンクロイベント2[きぐなす](2011/05/25 19:05)
[12] 無印前までの人物表[きぐなす](2011/05/09 21:24)
[13] 無印予告編 アトランティス最終戦士とシンクロ魔法少女たち[きぐなす](2011/05/13 17:58)
[14] 第十話 いんたーみっしょん[きぐなす](2011/05/12 20:38)
[15] 第十一話 シンクロ魔法少女ならぬ○○少女?[きぐなす](2011/05/15 10:56)
[16] 第十二話 ないしょのかなこさん[きぐなす](2011/05/16 21:30)
[17] 第十三話 魔力測定と魔法訓練[きぐなす](2011/05/20 07:54)
[18] 第十四話 初戦[きぐなす](2011/05/28 11:40)
[19] 第十五話 やっぱりないしょのかなこさん[きぐなす](2011/05/28 13:40)
[20] 第十六話 ドッジボールとカミノチカラ[きぐなす](2011/06/01 21:14)
[21] 第十七話 アリサと温泉とカミ[きぐなす](2011/06/03 18:49)
[22] 第十八話 テスタロッサ視点[きぐなす](2011/06/05 14:04)
[23] 第十九話 フェイト再び[きぐなす](2011/06/12 01:35)
[24] 第十九・五話 プレシア交渉             23/7/4 投稿[きぐなす](2011/07/04 10:26)
[25] 第二十話 デバイス命名と管理局のみなさん[きぐなす](2011/06/12 15:20)
[26] 第二十一話 アサノヨイチ[きぐなす](2011/06/15 10:50)
[27] 外伝3 おにいちゃんのお葬式[きぐなす](2011/06/25 12:59)
[28] 第二十二話 猛毒の真実 [きぐなす](2011/07/03 23:20)
[29] 第二十三話 悪霊[きぐなす](2011/07/04 13:50)
[30] 第二十四話 おにいちゃんとわたし ……おかーさん[きぐなす](2011/07/10 06:51)
[31] 第二十五話 浅野陽一のすべて[きぐなす](2011/07/17 19:15)
[32] 第二十六話 復活と再会 [きぐなす](2011/07/24 15:55)
[33] 第二十七話 再び管理局と女の友情[きぐなす](2011/08/11 19:20)
[34] 第二十八話 三位一体[きぐなす](2011/08/11 19:10)
[35] 第二十九話 すれ違いの親子[きぐなす](2011/08/11 20:38)
[36] 第三十話 眠り姫のキス[きぐなす](2011/08/20 21:51)
[37] 第三十一話 次の戦いに向けて[きぐなす](2011/08/29 17:50)
[38] 外伝4 西園冬彦のカルテ [きぐなす](2012/03/30 00:12)
[39] 無印終了までの歩みと人物表及びスキル設定[きぐなす](2012/03/29 23:49)
[41] 空白期予告編 [きぐなす](2012/04/03 00:34)
[42] 第三十二話 アースラの出来事 前編 [きぐなす](2012/04/07 19:33)
[43] 第三十三話 アースラの出来事 後編 [きぐなす](2012/04/17 22:13)
[44] 第三十四話 梅雨の少女とさざなみ寮[きぐなす](2012/05/05 18:58)
[45] 第三十五話 わかめスープと竜の一族[きぐなす](2012/05/12 00:36)
[46] 第三十六話 見えない悪意と魔法少女始まるよっ![きぐなす](2012/05/20 15:50)
[47] 第三十七話 アトランティスの叫び 前編[きぐなす](2012/05/29 17:34)
[48] 第三十八話 アトランティスの叫び 後編[きぐなす](2012/06/07 00:32)
[49] 第三十九話 幽霊少女リターンズ[きぐなす](2012/07/11 00:38)
[50] 第四十話 暗躍と交渉、お泊まり会 [きぐなす](2012/09/02 23:51)
[51] 第四十一話 トラウマクエスト そして最終伝説へ… 前編[きぐなす](2012/12/01 14:37)
[52] 第四十二話 トラウマクエスト そして最終伝説へ… 後編[きぐなす](2013/03/09 22:08)
[53] 第四十三話 暴走と愛憎の果てに行き着いた先 前編[きぐなす](2013/04/07 22:40)
[54] 第四十四話 暴走と愛憎の果てに行き着いた先 後編[きぐなす](2013/05/25 14:36)
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[27519] 第二十四話 おにいちゃんとわたし ……おかーさん
Name: きぐなす◆bf1bf6de ID:142fb558 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/07/10 06:51
第二十四話 おにいちゃんとわたし ……おかーさん




私は今車の中にいます。斎おねーちゃんと一緒です。海鳴市からおにいちゃんの家までは二時間かかるそうです。隣の県にあるみたいだけど、電車もバスも使ったことないからわかりません。

車に揺られながら、私はおにいちゃんに初めて会ったときの事を思い出していました。




おとーさんとおかーさんは最近喧嘩が多いです。本当は仲良しなのに……

おかーさんは体の弱いおとーさんを心配してます。おとーさんは家にお金がないことを心配してます。ふたりとも心配しているだけなのにどうして喧嘩するのかな? 悲しいです。私はわんわん泣いてました。







「夫婦喧嘩してんじゃね~ 教育に悪いだろうがこのヤロー」

泣いている私に聞こえたのは大きな声でした。その声が聞こえた途端、ふたりは静かになります。ふたりとも顔を見合わせて笑います。



すごいなぁ。



それからしばらくは静かな日が続きました。私はその声の主が見てみたくなり会いに行きました。どんな人なんだろう?

そして、私はある部屋の窓の前に立ってます。ここは隣の家とすぐ近くで、窓が見えて手が届きそうです。部屋の中はカーテンでよく見えません。中は明るく声の主はいるみたいです。私は自分の家の窓に乗ると、隣の家の窓をノックします。

「…ん? 誰だろう。はいはい」

声が聞こえます。大人の男の人の声です。カーテンが開き、がらっと窓が開きます。私はニコニコしながら待ちます。

「……おっ ……こんにちわ」

「あ!? あたま」

「あたま? 」

メガネをかけた男の人が出てきました、驚いた顔をしています。髪の毛は薄くてしわくちゃで少しお髭が出てます。起きたばかりのおとーさんみたいです。

「しっかしろ俺!! 相手は無垢な子供だ。正直な言葉出ただけ……
正直? しょーじき? 


……うあああああああああああん 」

男の人は声を上げた後、しばらくうんうんと下を向いて唸っていましたが、ニッコリ笑って聞いてきました。

「大丈夫。私は平気。ゴホン!! いったいどこのお姫さまが来られましたかな? 」

これが私とおにいちゃんが最初に交わした言葉でした。




それから、私は毎日窓からおにいちゃんの部屋に遊びにいくようになりました。おにいちゃんは『せけんてい』というものが気になるから、ご両親に許してもらってから来てねと言ってました。おとーさんは最初はダメだといっていましたが、それでも、私が通うので、おにいちゃんと一度話をしたみたいです。何を話したんだろう? その後は許してくれるようになりました。いつも閉まっていたお兄ちゃんの部屋のカーテンは昼の間は開くようになり、私の家からよく見えるようになりました。

おにいちゃんはたまに出かけるけど、いつも一日中家にいる不思議な人でした。かいしゃいんじゃなくて家でおしごとしているみたいです。なんの仕事をしているか聞いても教えてくれませんでした。

よく「働きたくね~ 」「かんたんなおしごとおしごと」「涙ふけよ」とか面白い言葉を使っていました。わたしも使ってみよう。

……怒られた。



私とおにいちゃんはいつもお話をしていました。おにいちゃんはたくさんのことを知っていて、いろんな物語をしてくれました。私は一度聞いた話は全部覚えてしまうので、二回目を聞くのは退屈でイヤでした。おにいちゃんもたまに同じ話をしようとするので、

「おにいちゃん、そのお話は前に聞いたよ~ 」

「あれっ? そうだった? 希ちゃんはよく覚えているなぁ よろしいではコレでいきましょう」

というやりとりを何度もしました。おにいちゃんは感心してくれて、違う話を探してくれました。ほかの大人はこうはいきません。こっちの言うことをきいてくれないし、ごまかそうとします。おにいちゃんは違いました。

おにいちゃんは話するのがとても上手くて、女の人の声や子供の声、動物の声を真似をするのがとてもよく似ていました。だから、おにいちゃん過ごす時間はとても楽しかったです。

そして、内緒のお話をしてくれました。それはおにいちゃんが生まれる前のお話、そんな昔のお話は私でも覚えてないよ。やっぱりおにいちゃんはすごいよ。そう言うとおにいちゃんは

「ちょっと違うんだけどね」

と言っていました。

私は生まれる前のこと以外ははっきり覚えてます。私は見たこと聞いたことは忘れません。おなかにいたとき、生まれたときのこと、一年前の晩ご飯や昨日見た夜空を思い出して星の数を数えることも、絵に描くことだってできます。その代わりすごくイヤなことも覚えてます。忘れることができません。それを聞いたおにいちゃんは

「希ちゃんは天才なんだね」

とほめてくれました。周りの人は怖がっていたけど、おにいちゃんはやっぱり他の人と違いました。

おにいちゃんは最初の前世はアトランティスのさいしゅー戦士だそうです。なのは様とは前世からの知り合いだそうです。違う前世でアニメでなのは様を見たときはすごく驚いたそうです。

いくつの前世を覚えているんだろう?

おにいちゃんは「はんするーでる」や「やぎゅうのけんし」「あかだるま」も昔の俺だったと言っていました。うぃきべぎあで見たときそう思ったそうです。意味はわからなかったけど 



おにいちゃんはなのは様のアニメは手元にないので、代わりになのは様の絵本を作っているそうです。おにいちゃんは絵も上手で、この本は子供の頃から絵を何度も直しながら作ったそうです。おにいちゃんにとってなのは様は特別みたいです。少し悔しいです。どんな子なんだろう?

その本は斎おねーちゃんに読んであげてたみたい。未完成だったけど希ちゃんのために何とか頑張って書いたと言っていました。

うれしいな。この本とさいしゅーせんしは私のお気に入りになりました。この話は何度聞いても飽きません。

新しいお話もおもしろいです。「えいちかけるえいち」「きんしょもくろく」とかはよくわからなかったけど、おにいちゃんは好きみたいです。まだ続いているみたいだけど、前世で途中で死んじゃったから見れないことをとても残念がってました。

おにいちゃんは私の髪の毛がすごくうらやましいと言っていました。そろそろ切りたいって言ったら、

「それをきるなんてとんでもない!!! それはカミノチカラだ!!」

とすごい顔で言っていました。少しだけ怖かったです。私はずっと髪を切らないことにしました。それから、おにいちゃんが髪の毛に利くおかゆを作ってくれてから髪の毛が少し太くなったような気がします。おにいちゃんには効果がなかったそうです。

しばらくすると、おにいちゃんもお話がなくなったそうです。他にもたくさんある物話は大きくなったらお話してくれるそうです。大人向けみたいです。おかーさんやおとーさんには少しだけおはなししたそうです。どんな話なんだろう? 

無くなったので、生まれから今までのことを詳しく話してくれました。これも意味はわからないことが多かったけど、最近になってわかるようになりました。おにいちゃんのおかーさんとは仲がわるいみたい。さびしそうです。いつも笑っているおにいちゃんが悲しい顔になるのはこのときだけでした。





そして、お別れの日、それは突然でした。私はある朝起きると違う部屋で目を覚ましました。全く違う場所にいたのです。おとーさんもいません。

おとーさんはいなくなったそうです。病気だったそうです。病気の治療にたくさんお金を借りていて家を売ったそうです。それでも足りなくて借金取りに狙われる前におかーさんと離婚したそうです。離婚? おかーさんはすごくいやだったけど、おとーさんのお願いをきいたそうです。聞いたときは意味がわからなかったけど、いまなら少しはわかります。でも好きなのにどうして離れないといけないの? そのときからわたしの名前は雨宮希です。

おとーさんがいなくなって、おにいちゃんと離ればなれになって私はわんわん泣きますが、どうしようもありません。そこから先はおかーさんと一緒ですが、











あたまいたいよ。


……思い出したくありません。

お酒を飲むおかーさん、怖い顔のおかーさん、薬を飲むおかーさん、おとーさんの名前を呼びながら泣くおかーさん、大好きなおかーさん。私の七歳の誕生日にニコニコしながらごちそうをひっくり返して私を叩くおかーさん。そして私を抱きしめて泣き出すおかーさん、おかーさんのおかーさんにずっとあやまるおかーさん、私をたたくおかーさん、植木鉢をなげるおかーさん、

ごめんなさい。おかーさん私が悪いの。だから痛いことしないで!! だっておかーさんも泣いてるもん! だから何が悪いかわからないけど、私が悪いの! 



ごめんなさい。


でもしばらくすると泣くことはなくなり、ずっとニコニコ笑っているようになりました。

ニコニコしながら私に白い花を口に入れるおかーさん、ニコニコしながら首をしめるおかーさん、苦しいのに私のあたまをお風呂のみずに押さえつけるニコニコしたおかーさん。でも大好きなおかーさん。おかーさん熱い。おかーさん痛い。痛い。

あたまいたい。

そして私を守ってくれるカナコ、私の代わりに痛い思いをしてくれるカナコ、いきなり飛び起きておかーさんの包丁をよけるカナコ、起きてるときはおかーさんを警戒するカナコ、私はいろんなおかーさん忘れることができないけど、カナコが寝てるときは思い出さないようにしてくれました。

カナコと会ったのはおにいちゃんと別れて、しばらくしてからです。カナコは夢の中に出てきて、私が嫌なことされると慰めてくれました。家でも学校でも、学校は寝てるときが一番しあわせでした。

カナコは大昔にお月様に住んでいた『いせいじん』で、『きちぃす』の私を守ってくれるそうです。前世では私とは親子だったみたい。そうなんだ! 

現実でもカナコは私が危ないときは守ってくれるようになりました。

カナコはおかーさんから離れるようにいいますが、私はおかーさんが大好きです。離れたくありません。

それにおにいちゃんは言っていました。

「俺はカーチャンと仲良くできなかったけど、希ちゃんと希ちゃんのおかーさんは仲良しだもんな。だから、おかーさんがどんなに希ちゃんに嫌なことをしても、仲直りするんだぞ。きっとそれは希ちゃんのためだから、おにいちゃんとの約束だ」

約束は守らないといけません。おかーさんがこんなことにするのはきっと私が悪いからです。カナコはそんなことないといいますが、いくらカナコでもこれだけは譲れません。

「あなたがそういうなら、好きにしなさい。私は私のやるべきことをするだけよ。きっとあのおんなには悪霊でも憑いているのよ」




少ししてカナコのことばを考えるようになりました。

わたしをいじめるおかーさん、そのあと泣いてあやまるおかーさんどっちがほんものなんだろう? おかーさんが私にこんな痛いことするわけない。カナコの言った通りおかーさんはきっと悪霊に取り憑かれているんだとおもいます。

カナコあたまいいな。


悪霊はよくおかーさんのフリをするので、とても困ります。

悪霊はどんどん強くなって出ている時間が長くなってきました。私はずっとカナコに守ってもらっていました。



そして最後の日


おかーさん、思い出すだけで胸が苦しくなります。どうして私を置いていなくなったの? やっぱり私が悪かったのかなぁ?

おかーさんは泣いてました。

「もう会うことはないわ」

それ以来、おかーさんには会っていません。私は最後までおかーさんにどうしてこんなことしたのか教えてもらえませんでした。

どうして? どうして?

私は悲しくて、なによりおかーさんに会いたくて、人形の棚にあったおかーさんの人形に思いを込めて、このとき初めて夢の世界でちからを使いました。

おかーさんに会わせて!

でもできたのは悪霊でした。カナコが頑張って倒してくれましたが、人形の棚は全部壊れてしまいました。この日から黒いおばけがたまに出てくるようになりました。

私はまだ自分の家にいます。ものすごく疲れて動けません。おかーさんはいなくなりました。ああ言ってたけど、帰ってくるかもしれません。








………

何日過ぎたのかなぁ だんだん身体を動かせなくなりました。 

おトイレにも行ってません。気持ち悪いけど動けません。

部屋は寒い。おなかすいたなぁ のどかわいたなぁ 

 

床に転がっていた乾燥わかめで少しだけおなかが膨れました。おにいちゃんの言うとおりです。カナコが何か言ってますが眠たくなって聞こえません。



ね、眠たい。









私は気が付くと病院にいました。ここどこ? 家は? おかーさんは? あの家に帰らないとおかーさんが帰って来るかもしれません。
おとなはみんなして私の邪魔をします。走ろうにも動けません。しばらく休んでから家に帰ろう。



親戚というおじさんやおじいさんが話しかけてきたけど、怖くて話せません。ゆりこって誰?


病院に入ってからご飯がおいしくなくなりました。食べても吐いてしまいます。おかーさんの振りをした悪霊はよくおなかを壊すお薬を入れてました。あの白い花も、気をつけないとものすごく痛いです。それを思い出してしまいます。おなかすいているのに食べられないのはすごくつらかったです。

でもわかめは平気です。だっておにいちゃんがこれがあれば生きていけると言ってます。ただし乾燥しているものには気をつけないといけません。そういえばよく言っていました。

「いつか希ちゃんにも見せるときがくるかもしれないな。俺の十年近く渡る修練の末にたどり着いたふたつの技を…… 」



あ!? 飲むゼリーも平気です。おにいちゃんのことを思い出すと元気が出ます。ふぁいとおー


それから肩と首触られるのが怖くなりました。首を絞められているような感じです。特に大人のニコニコ笑ったおんなのひとは怖くて、触られると、頭がいたくなります。一度怖い看護婦さんが触ったときは目がまっくらになって尖ったものをふりまわすニコニコ笑った黒いお化けが襲ってきました。私は必死に抵抗して噛みつくとそのお化けは悲鳴を上げて逃げていきました。

(そうだ! 希ちゃん噛み付け!! )

おにいちゃんの声が聞こえます。ふぁいとおー

その日から、怖い看護婦さんは来なくなり男の人が来るようになりました、その中で西園先生はとても優しい先生です。でも、部屋に呼ばれて、質問が多くてイヤになります。部屋にあったたくさん本をたまに読みました。勉強になりました。私のびょーきはとらうまとかぴーてぃーえすでぃー言うそうです。やっぱりおかーさんが原因なのかな? でもおかーさんは悪くありません。そんなこと言う人嫌いです。
アイスはそんなに好きじゃないけど……

入院していて検査とか質問ばかりで、退屈でイヤな生活でしたが、私はあることを決めていました。

家も場所はもうわかりません。だからいつか大人になっておにいちゃんに会いに行こう。これは私のたったひとつの希望です。いつか会う日のためなら、検査も質問も我慢できました。






……絶望の日。

ある日のことでした。私はもの凄く疲れていました、テレビがうるさかったけど、消す気力もありません。ニュースが流れてます。私はもう大人のニュースやおにいちゃんのお話の意味がわかるようになっていました。トラックが小学生の一団に突っ込んだそうです。かわいそうです不幸な話はどこにでもあります。しかし、幸いなことに小学生は無事だったそうですが、その後の知らせを聞いて私は驚きました。






お兄ちゃんが死にました。


どうして!? おとーさんもおかーさんもおにいちゃんまで、私を置いて行ってしまうんだろう? 






もう疲れちゃった。なにもかもが面倒くさいです。こんな世界いてもぜんぜん楽しくない。苦しいだけだもん。

ずっとねむっていられればいいのに……

ずっと

そして、私は意識を失いました。


気がつくと、夢のなかにいます。カナコが声をかけてきます。いつもの服がボロボロです。

「希、起きるつもりはないの? このままじゃあなた衰弱して死んでしまうわ。今は肉体は点滴で生かされているけど。心は死んでしまう」

カナコが必死だったので、私も何とか頭を働かせて答えます。

「カナコ忘れることできるかな? おにいちゃんが死んだこと、カナコならできないの? 」

「無理よ。量が多すぎるし、どこにあるのか把握していないわ。何よりあなたの強い想いがあるから、わずかなキーワードでたどり着いて、封印しても思い出してしまう。どんなことでも、限界はあるの。完全になんて難しいわ」

やっぱり駄目なんだ。

「じゃあ、どうすればいいの? わたしくるしいの。くるしくてくるしてあたまいたいよ。ときどき何かの拍子におにいちゃんを思い出すんだもん! おかーさんの事だって! 」

私はかなしくてかなしくて泣きます。思い出したくないのに!!

「ああ、もう泣かないで、せっかく片づけたのに黒い影がまた出てきちゃうじゃない。わかったわ。あなたはここで休みなさい。でも代わりに外で動いてくれる騎士様をつくりましょう」

「騎士さま? 」

「そう、あなたの好きな絵本で言う守護騎士システムみたいなものよ。あなたの代わりにご飯食べたり、学校に行ってくれるの。私は体動かすときはサーチェスであなたに接続してるから長くても一日しか出れないし、出た後はしばらく休まないといけないの。他に仕事もあるし手が足りないわ。その騎士を作ればそいつはずっと外にいることができるから安心だわ。その間あなた自分の寝室で休みなさい私が特別製のベット用意してあげるから」

「寝てていいの? 」

「そうよ。寝てていいわ。その間はつらいことも忘れられる」

「でも、怖い夢みるかも」

「そうね、だから私が楽しい話を聞かせてあげるわ」

「わかった。じゃあ作る」

「じゃあここを見て」

そう言うとカナコは人形の棚を指す。

「ここがどうかしたの? 」

「ここはあなたに関わった人が人形として現れる場所よ。でもこの間の黒い女のせいで私が掃除したから、一体しか残ってないけど、こいつだけは黒い影に染まらなかったの。だから残した。今回は失敗しないように手助けする。前の人形は黒い影になってしまったけど、それはあの女のイメージがそのまま反映されたからなの。そういうことなんだと思う」

あのちからは使うのが怖いけど、おにいちゃんだったら大丈夫そうです。だっておにいちゃんはいつも私にやさしかったし、退屈しないようにお話してくれたし、嫌なことをしたことなんてなかった。なによりすごく強いんだもの。おにいちゃんが騎士さまか。なんかとてもいい感じです。

「これがいい」

私は少しだけ元気が出たので、カナコに人形を手渡します。

「でもね、注意して、今回は私がサポートするけど、それでも不完全な騎士しかできないわ」

「不完全? 」

「ちょっとしたことで、壊れるってことよ」

「どうすれば丈夫になるの? 」

「自分が自分であることを信じて疑わない事ね。
そのために無条件で一緒にいて大事にしてくれて好きと言ってくれる人がいればいいわね。
お母さんみたいなものかしら?
ただ、これは自分の力だけではどうしようもないわね。」

聞いただけで胸が痛くなる。どうして? どうして? おかーさん あたまいたいよ


「続けるわね。
今回はあなたのちからで魂を再生するわ。医学的には多重人格を作るってところかしら。
でも、魂の情報が不十分だから、記憶のない赤ん坊みたいなものしかできないはず、そこであなたの記憶を使わせてもらうわ。でもそれに気づかれたら主観が揺らぎやすいし不安定になって、ただでさえもろい魂が砕けてしまう。

あなたの記憶の精度は高いけど、あの男の主観ではないから、絶対に矛盾が出てくる。
なぜなら、人間は嘘をつくし見栄を張るものだからよ。
あの男の言葉が全部が嘘とは言わないけど、
大げさに言っているだけかもしれないし、隠していることもあるでしょう。
私にはあの男の本当の姿は見えないわ。日記とかあれば良かったけど、ぜいたくは言えない。代わりに記憶を操作して、希から見た男の客観的な記憶を主観的な記憶にすり替えて認識させるわ。
それなら、手間もかからない。ただし、矛盾を解消するために、希本人の記憶を消すことなるわ。仕上げに記憶を操作するための鍵として名前を奪う。名前は存在における心臓みたいなものだから、ここを押さえることで記憶を完全に掌握する。人格としての名前はアマミヤノゾミ。初期設定は与えておけば勝手に判断するでしょう。
だから、あなたは会ったらダメよ、思い出したら壊れてしまうから、スペア用意しとくわね」

「カナコの話は難しいよ~ それから、会ったらダメなの? 」

「そうね。希には難しかったわね。簡単に言うわね、あなたのちからで魂を作るの。
魂には体がいるからこの人形を使えば、騎士が完成するわ。あなたの好きな本の言葉を借りれば、出来損ないの守護騎士システムよ。
でも、魂の材料がどうしても足りなくて、赤ちゃんみたいだから。あなたの記憶で補うの。
そうすると変な行動をするのよ。
例えばね、絶対にできないことをできると思って行動したり、どう考えても嘘なのにそれを本当のことだと思うのよ。だってあなたは話を聞いただけであの男のように実際に見たり、あの男ができることをできるわけではないでしょう? 」

「私ができないことはこの騎士にはできないってこと? 」

「そうよ。ただ真似をしているだけだから、いつか自分が生まれた理由に気づくかもしれない。
そして、気づいたら悲しくて死んでしまうくらい、もろくて弱いから、
強く育ててくれるおかーさんが必要ってことよ。それから、気づかれないようにするために記憶を操作するの。名前が鍵になってる。
でも、希に会ったら気づいてしまうかもしれないからダメなの。わかったわね? 始めるわよ。本棚はここ」




カナコは一冊の本を取り出すとぱらぱらめくります。すると、本から細い光の線が人形に向かって流れていきます。

「希、この男がどんな人間だったかイメージして」

おにいちゃんとの二年を鮮明に思い出します。すると私の手から光が伸びて人形に注がれます。

しばらくの間、光は人形に注がれます。ふいに光が止まるとカナコは本閉じて本棚にしまいます。人形はなんだかうっすらと光っています。

カナコは再び人形に近づくと、私のほうを向いて言いました。

「これから、記憶を調整するわ。少し時間をちょうだい。不必要な記憶を名前ごと封印するわ」

カナコは人形に手をかざします、両手の指からそれぞれ10本細く輝く糸のようなものが出てます。おにいちゃんがパソコンを叩くときみたいな軽快な手さばきでカナコは手を動かします。ぼーっとしたおにいちゃんとお話してます。


「希、最後に呪文を唱えなさい」

カナコは私に魔法の言葉を教えてくれます。








「我と共に生きるは霊験たる勇者。いでよ! 」

本が棚に縦積みに重なっていきます。偽のお兄ちゃん用の本棚です。

こうして、新しいおにいちゃんは生まれました。


新しいおにいちゃんは私が眠っている間働いてくれます。ときどき、イヤな感じがするときがあるけれど、私はゆっくり休みます。カナコは話をしてくれますが、ここだけの話あまり上手ではありません。
でも、せっかく本を書いてくれるので黙っています。

しばらく眠る日々が続きます。

あるとき、ものすごくイヤな感じがして、久しぶりに外に出ました。
外に出ると、あのニコニコ笑った黒いお化けが私を食べようとしています。
声を上げて引っかいたら私から離しましたが、すごく怖かったです。転んですごく痛かった

イヤな感じはなくなったので、寝ることにします。

次の日の夜、なんだか暖かい感じがします。こんな感覚は今までありませんでした。
私はちょっとだけ外に出てみることにしました。女の子が手を握ってます。
なのはちゃんでした。カナコの本で知ってはいましたが、実際に見るのは初めてです。



私のために泣いてくれるなのはちゃんをこのときに本当に好きになりました。

なのはちゃんは初めての友達です。おにいちゃんには他にもアリサちゃんやすずかちゃんがいますが、私にとっての友達はなのはちゃんだけです。だから、おにいちゃんがもう一度翠屋に行くとき、怖かったけど、なのはちゃんのために少しだけ頑張ることができました。それ以来、桃子さんは平気になりました。

その日の夜は夢をみました。どこかで見たことがあります。
おにいちゃんの絵本「まほーしょうじょりりかるなのは」の始まりに似ています。



魔法はおにいちゃんの言ったとおりホントにあるみたいです。

初めて魔法を見たときはすごくワクワクしました。

偽物おにいちゃんはお化けの真似をして大人の男の人を怖がらせてました。偽者でもすごいです。お話ししたいなぁ。やっぱりほんものとは違うのかな?

それから、魔法の勉強をしたり、フェイトちゃんと会ったり、
あーすらに乗ったりしました。楽しいです。ある日、おにいちゃんの名前とよく似た本を見つけました。タイトルと内容は聞いたことがありますが、大人向けだからという理由で詳しくは知りませんでした。

斎おねーちゃんが先生になって学校にきました。でも覚えてないみたい。私はすぐにわかったよ。

カナコは怖い顔してました何でだろう?

カナコが怖い顔をしていたのは、おにいちゃんの記憶が戻って消えてしまうことを心配したからみたいです。
「あの本とか、妹がくるなんて想定外よ。あり得ない」とカナコは言っていました。
カナコはおにいちゃん全部教える事にしたみたいです。「ジュエルシード事件どころじゃなくなったわね。こうなったら、今の存在の強さに賭けるしかない」と言っていました。

カナコが泣いています。おにいちゃんが消えてしまって悲しいみたいです。泣いている顔を見るのは初めてです。

私はおにいちゃんが死んだときの気持ちを思い出しました。悲しく悲しくてたまりません。

私はとうとうあの一番怖いお化けを呼んでしまいました。

あのおばけはおかーさんの真似をするのです。





でもおにいちゃんが守ってくれました。

ごめんねカナコ。



おにいちゃんはぱそこんの前に座っていつも何か叩いてました。一度におにいちゃんに教えてもらって、私もいんたーねっとは使えます。他のは触ったらダメと言っていました。

「他に何があるの? 」

と聞いたら

「お仕事と日記もつけてるかな」

言っていました。これです。これがあればきっとおにいちゃんは元の形に戻れるはずです。

そうして、私が考えている間に家につきました。




作者コメント

希視点による今までの振り返りです。

鈍行が続いてます。でもゴールは見えてきました。


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