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No.24797の一覧
[0] 錬鉄の騎士の新たな主(Fate/stay night×なのはThe MOViE 1st)[メイシー](2011/09/30 00:25)
[13] プロローグ[メイシー](2013/01/09 01:23)
[14] 第一話 今、私に出来ること[メイシー](2013/01/09 04:06)
[15] 第二話 今、私にしか出来ないこと[メイシー](2011/06/17 18:19)
[16] 第三話 手に入れたモノ[メイシー](2011/10/01 01:50)
[17] 第四話 出逢いは戦い[メイシー](2011/10/01 01:50)
[18] 第五話 魔法と魔術[メイシー](2011/06/17 18:06)
[19] 第六話 トレーニング、開始 [メイシー](2011/10/01 01:54)
[20] 第七話 譲れない願い、届けたい想い[メイシー](2011/07/03 03:00)
[21] 第八話 知りたいのは、瞳の奥のその秘密[メイシー](2011/10/01 01:55)
[22] 第九話 信じている想い[メイシー](2011/08/02 02:18)
[23] 第十話 そんな日常[メイシー](2011/08/11 00:23)
[24] 第十一話 信用と信頼[メイシー](2011/12/29 18:32)
[25] 第十二話 停滞、そして進展[メイシー](2011/12/29 18:43)
[26] 第十三話 信じた想いを心に抱いて、伝える答えは一つだけ[メイシー](2011/12/31 04:58)
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[24797] 第五話 魔法と魔術
Name: メイシー◆9fb748c3 ID:38f40151 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/06/17 18:06







     魔法と魔術










「なのは! 大丈夫!?」


 声のした方へ体を向けると、こちらへと走ってくるユーノ(フェレット)がいた。
 
 この短時間で家から此処まで走ってきたのだろうか。

 それほどまでになのはの事が心配だったのか、それとも自分のせいで巻き込んでしまった、と思っている少女が傷つくことに耐えられなかったのか。

 おそらく両方だろう。
 
 まだ僅かにしか言葉を交わしていないが、責任感が強く優しい子だという事は判っていた。

 
「ユーノくん。私は大丈夫。エミヤさんも助けに来てくれたし。……えっと心配掛けて、ごめんね」

 
 謝罪の言葉を口にするなのはを腕の中から降ろし、彼女の着る服に着く煤と砂を掃う。

 そうしながら視診するなのはの体は、ほとんど傷ついておらず無傷と言っても良いくらいだった。

 先ほどまで戦っていた金髪の少女が手加減をしていたのかもしれない。

 実際、手加減をしても余裕で勝利できるだけの実力をあの少女は持っていた。

 
「怪我はなし、と。私にはおもいきり吹き飛ばされたように見えたのだが……外傷はかすり傷程度、まぁ問題無いだろう」


 しかし手加減をされていた、だけが理由ではないだろう。

 手で触り解析したなのはの着る服は、魔力で構成されているものであった。

 これが防護服の役割を果たしているのかもしれない。

 よくよく見てみると、袖口などがハードシェル装甲でネジ止めまでしてあった。 
        
 見るからに防御力が高そうなこの服のお陰、というところだろうか。 
 
 
「ユーノも、わざわざ此処まで走って来てご苦労だったな。が、すまない。ジュエルシードを確保する事が出来なかった」


 此処にはもうジュエルシードは無い。
 
 そしてなのはを私が腕に抱きかかえていた。

 それだけ材料があれば、この場で何があったかを推測するのはそう難しくない。 

 
「誰かに奪われた、という事ですか……」


 昨日の影のような、ジュエルシードによって作られた異相体もいないのだ。 

 当然この結果が導き出される。

 
「それなりに訓練された相手でな、魔法を覚えたてのなのはでは荷が重かったし、私がなのはの元に行くのが遅くなったのも一因だ。本当に、すまなかったな」

 
 そう、もっと早く私が辿り着いていれば、こんな事にはならなかっただろう。

 少なくとも、なのはを傷つけることは無かったはずだ。


「いえ……それはもう仕方の無い事ですから。それよりも僕たち以外の魔導師が出てきた事の方が問題です。これからどうするか考えないと」 


「確かにな……。そのあたりも含めて家に帰って話そう。私は昨日と同じように、先になのはの部屋に行っておくからな」 


 魔力を薄め霊体化する。

 そうして、人に見えず干渉すらできない状態になる。

 傍から見れば、いきなり消えてしまったように見えるのだろう。

 後ろから聞こえてくるなのはとユーノの困惑した声を後に、なのはの家へと向かった。










「あれ、え、えぇぇぇぇぇ!? エ、エミヤさんが、消えちゃった」 


 それは、本当にいきなりだった。

 私達に背を向け先に家に行っていると言ったエミヤさんは、まるで景色に溶け込むようかのように消えてしまった。

 さっきは手に持っていた剣がいきなり消えてたし、もしかしたらエミヤさんの使っているのはそういう魔法なのかもしれない。  

  
「今のは……転移魔法? それとも、幻術魔法? どっちにしても何の兆候も無かったし、魔法を発動した痕跡もないし……」


「ユーノくん。今のも魔法なの?」


「えっと、どうだろう。エミヤさんは魔法を使えないって言ってたし、もしかしたら魔法とはまた違う技術なのかもしれない」


 そう言えば昨日そんな事を言ってた記憶がある。

 でも魔法じゃ無ければ何なのだろうか。

 あんな不思議なこと、魔法としか言いようがないと思うんだけど。

 
「うーん、考えてもしょうがないかな。家に帰ってエミヤさんに直接聞こっか」 
 
 
 家に帰ってからいろいろ教えてくれると言っていたし、その時詳しく教えてもらおう。

 張っていた結界を消してバリアジャケットも解除する。

 
「それじゃ、ユーノくん。一緒に帰ろっか」

 
「うん。そうしよう」


 ユーノくんを腕に抱えて帰り道を歩き始める。

 心の中では、どうしてもさっき会ったあの女の子の事が気になっていた。





「おかえり。なのは、ユーノ」


 昨日と同じように、部屋に入るとエミヤさんが腕を組んで立っていた。

 
「はい。ただいま、です」


 そう返事を返して、ユーノくんを降ろしカバンを机の上に置く。

 さて、聞きたい事や知りたい事がたくさんある。

 これからいろいろお話してもらわないと。

 と、その前に。


「あの、エミヤさんって気配を消したり出来ます?」


 いきなり何を言っているんだと自分でも思ったがしょうがない。

 出来なかったらこの部屋で話す訳にはいかなくなるんだから。


「それは出来るが……どうかしたのかね?」


 不思議そうに聞いてくるエミヤさん。

 そうですよね。いきなりこんな事聞くのは変ですよね。

 というかやっぱり出来るんですか……。


「えっと、実は……」


 今朝、お父さんに言われた事をエミヤさんに話す。

 それを聞いたエミヤさんは、少しだけ驚いたような表情をした。


「君の父親は気配を読む事が出来るのか。立ち振る舞いからかなりできると思ってはいたが……もっと注意するべきだったか」


「あれ? エミヤさんってお父さんを見た事あるんですか?」


「ああ、君の家族は一通り確認済みだ。君の母親以外、何かしらの武術を修めている事はすぐにわかったよ」  


 確かにお兄ちゃんとお姉ちゃんは、お父さんと剣の稽古をよくしている。

 でもそういうのは、見ただけで分かるものなのだろうか。

 気になって聞いてみると


「無論分るさ。立ち振る舞いや気配がまるで違うからな」

 
 という事らしい。

 うーん。私の家族って、私が知らないだけで結構すごいのかもしれない。


「だが、私の気配が分かるとなると厄介だな。この家に居る時は常に気配を消しておこう」


「えっと、お願いします」


 なんだか少し、心苦しかった。    


「では、魔法の事や私の事の説明。そして、今日遭遇したもう一人のジュエルシード集めをしている少女についての話を始めよう」


 来た。昨日から知りたい事がたくさんある。

 学校に行っている間、お預けされていたので気になって仕方がない。  

 
「じゃあ、なにから始めますか? 聞きたい事、いっぱいあるんですけど」


 魔法の事。

 エミヤさんの事。

 これからどうするのか、という事。


「じゃあまずは僕から。魔法の事について説明しますね」

 
 そう言って最初に話し始めたのはユーノくんからだった。

 私としても、自分が使えるようになった魔法についての事だ。一番知りたい事でもあったからちょうどよかった。 


「魔法というのは自然摂理や物理作用をプログラム化し、それを任意に書き換え、書き加えたり消去したりすることで作用に変える技法と言われています」


 ……初っ端から難しかった。

 私、魔法とかほとんどなんとなくで使ってたから、そんなに難しいものだと思ってなかったんですけど……。 

 
「魔導師にはリンカ―コアと呼ばれる器官があって、これで空気中にある魔力素を取り込んで魔力とし、それを用いて魔法を使います」


「では魔法はリンカーコアの有る人間にのみ使う事が出来る技術、という事か?」


 エミヤさんからユーノくんへの質問。

 エミヤさんも魔法のことはぜんぜん知らないみたい。


「はい。そうなります。魔法は『変化』『移動』『幻惑』のいずれかの作用を起こすもので、個人によって得意不得意が違ってきます」


「私が使った魔法ってどれになるの?」

 
 私が魔法を使ったときは、ほとんどレイジングハートにまかせっきりだったから。

 自分が具体的に何をしたのか、正直ぜんぜん分からない。

 
「なのはが使った魔法はダイレクトに魔力を放出するシンプルな砲撃魔法。それと対象を弾き飛ばす性質を持った防御バリアをつくる防御魔法。
 空間の一部を切り取って、特殊な性質を付与する結界魔法。三つとも『変化』にあたる魔法だよ。あとは『移動』に当たる飛行魔法、かな」


 分類はかなり細かく分けられるようで、一度に覚えるのはちょっとつらい。       
     
 それにしても、けっこういろいろと種類があるんだなぁ。

 
「では攻撃魔法や防御魔法は、魔導師が魔力素を取り込んで作り出した魔力を、放出したり固めたりする物と解釈してもいいのか?」 


「そうですね。物によっては付加効果などを含むものもありますが、基本的にその解釈でいいと思います」


「そうか……」


 エミヤさんはそう言うと、少し考え込むように腕を組んだ。


「ユーノくんは何が得意なの?」

 
 その間に私が質問。 

 得意不得意があると聴いたときに知りたかった事をたずねる。

 
「僕は結界魔法が得意かな。だから結界魔導師、とか呼ばれる事もあるんだ。他にも捕縛魔法とか変身魔法とか一通りは使えるよ」

 
「魔導師にも種類とかあるの? それなら私は?」


「なのははたぶん砲撃型。砲撃が得意な砲撃魔導師になると思う」


 砲撃……砲撃かぁ。

 うん。ちょっとカッコイイかも。


「僕からはこれくらいです。次はエミヤさんに説明してほしい事があるんですが……」


 魔法の説明はひとまず終了。

 次はエミヤさんの事についてだ。  

 
「そうだな。ではまず私がどういう存在か。そこから話を始めよう」


 







 ユーノに変わって、今度は私が説明役となる。


「私は英霊と呼ばれるものに分類される。この英霊というものから説明しよう」


「英霊……ですか。ユーノくんは知ってるの?」


「ううん。僕も初めて聞いたよ」


 ユーノならもしかしたら知っているのではないか、と思ったがそうでもないらしい。

 やはり魔導師と魔術師は全くの別物なのだろう。


「知らないのも無理はない。英霊とは、おそらく私がいた世界の魔術師にのみ知られている事だろうからな」

 
 もっとも、これは推測で何の根拠もないのだが。

 しかし、魔法について一通りの知識があるユーノが知らないのなら、おそらく間違いないだろう。


「英霊というのは死後に信仰を集めた英雄がなる存在だ。彼らは時間軸から切り離され『座』と呼ばれる場所に迎えられる」


「死後……ということは」


「エミヤさんって……幽霊だったの!?」


 ユーノの信じられないという声の後に響く、なのはの驚愕の声。

 驚いて当然ではある。

 すでに死んでいる者が目の前に居ると言っているのだから。

 
「幽霊、とは少しばかり違うが、まぁ分かり易く言ってしまえばそうだ。私は魂だけの存在ですでに死んでいる」


「魂だけって……なら今の肉体はどうやって存在しているんですか?」


 ユーノは考古学者だけあって良い質問をする。

 幽霊に対する恐怖よりも、知的好奇心の方が勝ったのだろうか。 

 つくづく子供らしくない子供である。


「今の私の肉体は高密度の魔力によって構成されている。だからこそ魔力供給は私にとってはまさに死活問題となる」


「なるほど。エミヤさんにとってのマスターって、とてつもなく重要な存在なんですね」


「じゃあ、エミヤさんがさっきいきなり消えたのも体が魔力で出来ているからなんですか?」 


 ようやく持ち直したのか、今度はなのはから質問される。

 あれだけ盛大に驚いていたのに鋭い指摘をしてくるのだから、この子もなかなか侮れない。

 
「そうだ。あれは魔力の密度を薄める事で、見たり触ったりできない霊体となっている」


「それで私の部屋に見つからずに入る事が出来たんですか」


「そういう事だ。だが霊体となっている時は私も物理的に干渉する事が出来ないのでな。こうして直接話したり戦ったりするときは実体化するという訳だ」


 これもまた推測でしかないのだが、おそらく霊体化してしまえば魔法を無効化することも出来るだろう。

 霊体に干渉するためには魔法ではなく魔術的、魔力ではなく神秘が必要であるはずだ。


「私の事についてはこのくらいだな。何か聴きたい事はあるか?」


「それじゃあエミヤさんが使っている、何もない所から剣を出すのはどうやっているんですか?」

 
 ユーノの質問にふと思い出す。 

 そう言えば魔術について何も説明していなかったな。

 必要無いとは思うが簡単に説明しておこうか。


「あれは魔術と呼ばれる物。その中でも私だけが使える技術を使っている」


「魔術……ですか。魔法とはどう違うんですか?」


「そうだな……。まず魔術を使う者、魔術師には魔術回路という疑似神経が存在している」


「魔導師のリンカーコアとどう違うんですか?」

 
 先ほど聴いたリンカーコアの役割を思い出しながら、少しばかり考えを巡らせる。


「リンカーコアは空気中から魔力素を取り込み魔力へと変換する、魔術回路もこれと似たような事はできるが、もっと異なる方法で魔力を確保する」


「異なる……。具体的にはどういった方法なんですか?」


「魔術師の魔術回路はな、術者の生命力を魔力へと変換する事が出来るのだよ。魔術師達は主にそうして魔力を得ている」


「生命力って……。 それは少しばかり危険すぎるのでは?」


「確かに、使いすぎると体に悪影響を及ぼしてしまう。だから魔術師は普段から少しずつ魔力を生成し、体内に蓄積させる」


「どうして大気中の魔力素を取り込む方にしないんですか?」

 
「そちらのほうが手間がかかるからだ。わざわざ外から吸収するより、自分の中にあるものを使ったほうが早いし、確実だからな」


 自身の安全を度外視してでも魔術の研究を進めたい。

 そんな考えがあるのも理由の一つかもしれないが。    


「でも、なんでそんなにやり方が違うんですか? 同じ魔力を生み出すためなのに」


「同じ魔力、では無いのだが……。おそらくは、大気中にある魔力量の違いから来るものだろう」


「えっ、世界が違ったら空気中にある魔力量も違うんですか?」


「私の世界ではそうだが……。その辺りはどうなのだ、ユーノ」


「確かに、大気中にある魔力量は世界によって違いが出ます。一般的には通常濃度の±15%が適正値で、それ以上でもそれ以下でも回復が阻害されるといわれています」


 やはり違いは出るようだ。

 世界が違うのだから、それも当然といえば当然か。


「私が生前いた世界は、今いるこの世界と比べるとそれこそ枯渇している、と言っていいほど大気中の魔力が少ない。
 だからこそ大気中にある魔力に左右されない方法で、魔力を生み出すことができる仕組みが出来たのだろう」


「なるほど。そういうことですか」

 
 納得したように、うんうんと頷くユーノ。

 どうでもいいがフェレットがそんな仕草をすると違和感がとてつもないな。

 もっとも、なのははその様子に目を輝かせているが。


「では、話を戻そう。魔術回路にはもう一つ重要な機能があり、それが魔術基盤へと接続する事だ。こうする事で魔術は使う事が出来る」


「魔術基盤というのは?」


「魔術師が世界に刻み込んだ魔術理論の事だ。このルールとシステムに則って魔術は起動する。主には学問や宗教の形で刻まれる事が多いな」


 ちなみに、もっとも広い魔術基盤を持つのは教会による”神の教え”だ。

 
「それって、この世界にもあるんですか?」


 なのはの声には期待と少しばかりの不安が含まれていた。

 なのはにとっては魔法や魔術は違う世界のもので、この世界に無い物、なのだろう。


「いや、今日それを調べてみたが、この世界には魔術基盤は無かったよ。となれば当然、魔術師もいない」 


 そう、魔術基盤とは魔術師がいて初めて存在するのだ。

 魔術師がいない以上、魔術基盤などあるはずがない。 

     
「? ではエミヤさんはどうやって魔術を使っているんですか?」

 
 ユーノの、これはまた的確な質問が来る。

 確かに魔術師がおらず魔術基盤がない以上、私が魔術を使っているというのは矛盾している。

 まったく、本当に聡い子だ。


「私が使う魔術は少しばかり特殊でな。魔術基盤が無くとも使う事が出来るのだよ」


 そう。衛宮士郎の魔術は自身の外側である『世界』へと接続するのではなく、内側にある『自分の世界』へと接続するものなのだから。

 そこに、魔術基盤は必要ない。


「だが、魔法ほど万能なものではない。空も飛べんしな」


 まったく、魔術で飛ぼうとすれば相当技量の高い魔術師でなければ無理だというのに。  
   
 魔導師は魔法覚えたてのなのはでも飛べるのだから、羨ましいものだ。


「では魔術の説明はここまでだ」


 魔術師の目的については語らない。

 知ってどうなる物でもないし、理解するのも難しいだろう。


「あと話す事といえば……これからどうするか、という事だが」 


 魔法の無い世界での活動、故に敵対するのはジュエルシードの異相体くらいの物だと思っていたのだが。

 どうやらそう簡単にはいってくれないらしい。

 敵対する者が出てきた以上、今までよりも危険が増すという事だ。

 それならばもういっそここで引いてしまうか、それとも敵対しながらでも集める事を優先するか。

 どちらかを選ばなければならない。


「ユーノ、君はどう思う?」


 ジュエルシードの発掘者。

 なのはが魔法に出会うきっかけを作った者に、問いかける。


「……僕は、なのはには手を引いて欲しいと思っています。相手が訓練を積んだ魔導師なら危険です。後は、僕一人でやって行かないと」


 まぁ、そんな事だろうと思った。

 ユーノは、自分のせいで誰かが傷つく事が嫌なのだろう。


「そうか。……なのは、君はどうしたい?」


「私はユーノくんのお手伝いをしたいです。それにあの子の事も気になるし……。このまま終わっちゃうのは、嫌です」


 答えた声には、何の迷いも込められていなかった

 なのはも優しく責任感の強い子だ。

 解決しないまま、見て見ぬふりをして終わる事は出来ないのだろう。


「なのははこう言っているが、どうするかね? ユーノ」


「なのは……でも、本当にいいの? また今日みたいに戦う事になるんだよ?」

      
「それはユーノくんも同じでしょ?それに私はあの子の事が気になるし……。大丈夫! いざとなったらエミヤさんが助けてくれるから。そうですよね?」


 ……そこで私に頼るか。

 案外、この子も強かなのかもしれない。

 もっとも、それは私にとっても望むところではあるが。 


「ああ。もちろん。君が望むのならば、いつでも助けに入ろう」


 だが、勝手に助けに入る事はしてはいけないだろう。

 なのははあの金髪の少女が気になると言った。

 ならば、なのはは一人であの少女と向き合うべきだ。

 そこに、私が入り込む場所は無い。


「はい! 頼りにしていますね、エミヤさん」


「ああ。引き受けた」


 これで当面の方針は決まった。

 話が一段落ついたところで霊体化し、警戒のため屋根の上へと行く。

 最後に見たなのはの表情には、何らかの決意と意志が見て取れた。







 


 海鳴市にある公園の一つ。

 大きな噴水があり、夜にはそれが幻想的な美しさを演出する。

 その噴水へと続く階段に、一人で座っている少女がいた。
 
 輝くような金色の長髪に真紅の瞳。

 数時間前なのはと戦い、ジュエルシードを持ち去っていった少女だった。

 その少女――フェイト・テスタロッサは目の前に浮かぶモニターに話しかけていた。
 

「アルフ、お疲れ様」


 モニターに映るのは10代後半から20代前半ほどの女性。

 アルフと呼ばれたその女性が、フェイトの声を聞いて無邪気な笑顔を浮かべた。


「フェイト! いま第四区画の広域サーチが終わったところだよ。それで、発動前のジュエルシードも一つ見つけたよ」


「ありがとう。遅くまでごめんね。私のほうは夕方に封印した一つだけ」

 
 アルフの喜びと安堵のこもった声に対し、フェイトの声にはいたわりと申し訳なさが入り混じっていた。


「そう……。それにしてもフェイトとぶつかったこの二人。まさか、管理局じゃないよね?」


 敵意。アルフの声にはそれがにじみ出ていた。

 フェイトもそれが分かったのだろう。少しあわて気味にアルフの言葉を否定した。

   
「それは違うと思うよ。魔法もちゃんと使えてなかったし」


「確かにあの子供のほうはそうみたいだけど……あの赤い格好したやつはどうなんだい。少なくともまるっきり素人っていう風には見えないけど」


 そう。彼女の一番の懸念はその男にあった。

 フェイトの魔力弾を一瞬で切り払うその姿は、どう見ても戦闘に慣れたそれだった。 


「そうだね……。でもあの後追いかけてこなかったし、あの女の子を守ることを優先したみたいだったから、もしかすると使い魔みたいなものかもしれないよ」

 
「主人があんななのに使い魔があれっていうのは、あんまり納得いかないんだけどねぇ」


 フェイトの言葉にアルフは懐疑的だ。

 フェイトも自分が言った言葉をあまり本気にしていないのか、すぐに自分の意見を取り下げる。

 
「まぁ、それは確かに。でも考えても仕方ないし、一応これからは警戒して常に二人で一緒にいよう。向こうが正確に何人いるか分からないし」

 
「そうだねぇ。効率は落ちるかもしれないけど、向こうに捕まったりしたら目も当てられないし」


「それじゃあ、アルフも一段落したら私のところに来て。そこから二人で動くようにしよう」


 あいよー。という声を最後にモニターが閉じる。

 少女の前には噴水と照明が作り出す幻想的な光景だけが広がっていた。 











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