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No.24797の一覧
[0] 錬鉄の騎士の新たな主(Fate/stay night×なのはThe MOViE 1st)[メイシー](2011/09/30 00:25)
[13] プロローグ[メイシー](2013/01/09 01:23)
[14] 第一話 今、私に出来ること[メイシー](2013/01/09 04:06)
[15] 第二話 今、私にしか出来ないこと[メイシー](2011/06/17 18:19)
[16] 第三話 手に入れたモノ[メイシー](2011/10/01 01:50)
[17] 第四話 出逢いは戦い[メイシー](2011/10/01 01:50)
[18] 第五話 魔法と魔術[メイシー](2011/06/17 18:06)
[19] 第六話 トレーニング、開始 [メイシー](2011/10/01 01:54)
[20] 第七話 譲れない願い、届けたい想い[メイシー](2011/07/03 03:00)
[21] 第八話 知りたいのは、瞳の奥のその秘密[メイシー](2011/10/01 01:55)
[22] 第九話 信じている想い[メイシー](2011/08/02 02:18)
[23] 第十話 そんな日常[メイシー](2011/08/11 00:23)
[24] 第十一話 信用と信頼[メイシー](2011/12/29 18:32)
[25] 第十二話 停滞、そして進展[メイシー](2011/12/29 18:43)
[26] 第十三話 信じた想いを心に抱いて、伝える答えは一つだけ[メイシー](2011/12/31 04:58)
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[24797] 第二話 今、私にしか出来ないこと
Name: メイシー◆9fb748c3 ID:38f40151 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/06/17 18:19


 張られている結界の影響か、異常なまでの静けさに包まれている住宅街。

 その中の最も高いビルの屋上で、青いひし形の宝石が三つ、宙に浮いている。

 そこに二人、赤い外套を着る青年と、杖をもち白いバリアジャケットを纏う少女が立っていた。










         今、私にしか出来ないこと










 目の前で浮遊する三つの宝石を見つめる。

 先ほどマスターの遠距離からによる高魔力砲によって封印されたもの。

 暴れていた黒い影の元凶なのだろうそれは、不気味なほど静かに宙に浮かんでいる。

 
「さて、こうして無事にあの影を止める事が出来たわけだが」


 言いつつ振り返り、後ろにいるマスターへと声をかけた。


「まずは、よくやった。魔法を使うのが初めてだというのに大したものだ」


 素直な感想を一つ。

 もちろん至らない点は多い。    

 たとえば遠距離による砲撃を外しなどしていれば、最悪の結果が待っていた。

 その最悪に対し、何の準備していなかったのは大きなマイナスだ。

 なれない戦場においては、常に最悪を想定して動くくらいでちょうどいい。

 だが、それはこの場で言うような事ではない。

 彼女はいきなり魔法と関わりを持たされて、戦いの中に放り込まれたのだ。

 酷評など、言っても仕方が無いだろう。


「あ、ありがとうございます。でも、ほとんどこのレイジングハートのおかげですから」


 手に持つ杖へと視線を向けて答える少女はどこか控え目だ。

 自分の手で解決した、と自惚れていない以上、いよいよもう私に言う事は無かった。

 
「そう謙遜することはない。これは間違いなく君にしか出来なかった事だ。もっと胸を張ればいい」


「そう、かな。そう言ってもらえるとうれしいです」


 はにかみ少し照れながら少女が言う。

 人を褒める、という事にあまり慣れていなかったのだが、無理をしてでも言って良かった。

 やはり、子供は笑っている顔が一番だ。


「っとまだ名前を聞いていなかったな。私の名は……エミヤだ。君達は?」


 少しばかり考えて、真名を口にする。

 本来なら英霊が自身の名を言う事など無い。

 歴史に名を刻む彼らは、その人生をほとんどが後世に伝えられてしまっている。

 その行いも、当然苦手とするもの、致命的弱点になるようなものでさえも。  

 だからこそ名を言う事など無い。

 名を知られるという事はつまり、生前の行い全てを知られるに等しいのだから。

 だが、まあ自分の場合は問題ないだろう。

 後世に語り継がれるような行いなどしていないし、この世界ではそもそも私が存在していたのかどうかも怪しいのだ。

 唯一魔力抵抗が低い事による心配はあったが、それよりも偽名を名乗るほうが憚られた。

 彼女には、多大な恩があるのだから。

 
「私はなのはです、高町なのは」


「僕はユーノ・スクライアです。ユーノが名前でスクライアが部族名です」

   
 足元からも声が上がる。

 先ほどまで私の隣にいたフェレットだった。

 しかもこのフェレット、使い魔か何かだと思っていたのだがどうやら違うらしい。

 先ほどさりげなく解析してみたところ、魔法によって姿かたちを変えているのが分かった。

 本来の姿はおそらく人なのだろう。

 部族名などがある時点で確定である。 


「あの、出来ればジュエルシード……いや、そこにある宝石を早くデバイスに保管したいんですけど……」  


 私がいきなり黙ってしまったからか、ユーノが控え目に言ってくる。
 
 
「いや、その前にこれの事について詳しく知っておきたい」


 そう言いつつ宙に浮く宝石へと手を伸ばす。

 人差し指の長さ程も無いそれを一つ掴み、解析を始める。

 その間、なのは達は初々しい会話に花を咲かせていた。


「えっと……高町さん」


「なのは、でいいよ。ユーノくん」


「それじゃあ……なのは。さっきはありがとう。突然だったのに、僕のお願いを聞いてくれて」

 
「ううん。助けてって、言われたんだから。助けられる力があったら、私は迷わず助けるよ」


「そっか……。うん、それでも、ありがとう」


「ふふっ、どういたしまして」

 
 解析を終えて一息つく。 

 なのはとユーノの会話が一区切りついたのを見計らってから、声をかけた。


「ユーノ、この宝石は一体なんだ?」


「それは……ロストロギアと定義される物の一つ。ジュエルシードという『願いを叶える石』です」


「願いを叶える……? でも、それならどうしてあんな事になったの?」


「あの影はジュエルシードの異相体。ジュエルシードは、生命体や特定の無機物を自身の駆動体へと変質し暴走させてしまう性質があるんだ」


「それじゃあさっきの影は、ジュエルシードが暴走しちゃってたって事なの?」


「うん。その認識でいいと思う」


「なるほど、な」


 解析を終えているそれを再び宙へと浮かび上がらせる。

 
「これはほとんど魔力によって構成されたエネルギー結晶体だな。そこにほんのおまけ程度に願いを叶える為であろう術式……というかプログラムのようなものがある。
 これの影響で、このエネルギー結晶体はややこしい代物へと仕立て上げられているのだろうな」


「そんなことを、触っただけで解るんですか?」
   

 私の意見を聞いてユーノが驚きの声を上げる。

 どうやら魔法にはそういう技術はあまり無いようだ。


「まあ、な。私に許された、数少ない魔術だよ」


「魔術……? 魔法じゃなくてですか?」


「ああ、魔術だ。いや、この話は後でいいだろう。今は……」


 ユーノは魔術について知りたがっているようだったが、無理やり話の方向をずらす。    

 今は、それより試してみたい事がある。


「何ですか?」

 
「じつは……ジュエルシードを使って、保険をかけておきたい」


「保険? いや、それよりジュエルシードを使うんですか!? それはダメです! いくら封印したとはいえ暴走する危険があります!」


「ああ、そういう訳ではない。私も、ジュエルシードを願望機として使う気はさらさら無い」


 そう、それ以外の使い方。

 これほど魔力を内包しているエネルギー結晶体だ。

 有効に使う術はいくらでもある。


「でも、それなら何に使うんですか?」


「とりあえずその前に……マスター、私との間にあるパスを認識できるか?」


「え、わ、私のことですか? えっと、パス?」


 いきなり話を振ってしまったからか、なのはが戸惑いながら答える。

 
「そうだな……。自分が何かと繋がっている感覚、でもいい。なにか感じないか?」


「繋がってる感じ……あ、あります。なんだか少し引っ張られるみたいな……」


「それだ。その感覚が私と君との間に作られているパスだ」    

 
 引っ張られる、というのはおそらく霊的存在としての格の差からくる物だろう。  

 英霊であるこの身に、人間のなのはが引っ張られてしまうのはどうしようもない。こればかりは我慢してもらおう。

 
「それは私がなのはの使い魔である証だ。いまからこれをジュエルシードを使って少しでも補強しておきたい」


「使い魔の証……。あっ、パスって魔力リンクの事だったんですか」


「魔力リンク? 君たち魔導師、だったか、はそう言うのか?」

 
 ユーノが言った呟きに疑問を投げかける。

 どうやらこちらの魔導師とやらにも使い魔はいるらしい。
  

「はい。通常使い魔、魔導師によって生成される魔法生命体は主と魔力リンクが繋がっていて、それを通して魔力供給を受けているんです」


「ああ。パスもそれと似たような物だ」


 というよりも言い方が違う、というだけに近いだろう。

 憶測でしかないのだが。


「でもそれを補強するというのは?」


「私がこの場所に呼び出された時のこと、覚えているか?」


「えっと、私が言った助けてって言葉に呼ばれたんですよね」


「うん。たぶん僕があらかじめ封印していたジュエルシードが、なのはの願いを叶えたんだと思う」


「そうだろうな。私の見立てではもっと多くの要因が働いているのだと思うが……今は置いておこう。
 ユーノが言ったように、私はジュエルシードによってこの場所に来れた。だが、随分と乱暴な方法だったようでな。
 なのはと私の間に繋がるパスが、今にも消えてしまいそうなほど弱いのだ」
 
 
「えっ!? それってかなり不味いんじゃ……」


「そっ、そうなんですか?」


「ああ。正直に言うと、私はパスが切れてしまうと元いた場所に強制的に引き戻されてしまうのでな。かなり不味い状況だ」


「それでジュエルシードで補強する、というわけですか……」


「そういうことだ。ジュエルシードに願いを懸けるのではなく、純粋な魔力としてパスに溶け込ませる。そうすれば暴走する事も無いだろう」


「確かにそうですが……。でも、ジュエルシードの願いを叶えるためにあるプログラムはどうするんですか?」


 そう、そこが問題だ。

 これをそのままにしてパスに溶け込ませるのは少々危うい。

 何が起こるか、いまいち予想できない。

 なら、せいぜい有効に利用させてもらおう。


「そのプログラムはある程度の魔力と共に凝縮して、パスを利用して、願いがなのはから私にのみいくよう固定する」


「でも、それだとエミヤさんが危ないんじゃ……」


「いや、それは君の願いしだいだ」

  
 なのはの言葉にかぶせる形で否定の言葉を言う。


「どういうことですか?」


「そうだな。たとえば、君が私に全力で走ってほしい、と願うとプログラムと共に凝縮した魔力が私へと流れ込み、身体能力の水増しを行う。
 さらに、私を今すぐ近くに呼び出したい、と願えばパスを頼りに、大量の魔力任せの強制的な召還を行うこともできるようになる」


「なるほど……。でも、そんな大量の魔力が流れ込んでも大丈夫なんですか?」


「いや、さすがに限度はある。そのための魔力量も調整するつもりだ」


 この案は聖杯戦争の時の令呪を参考にしたものだ。

 あれと比べると大雑把で性能は悪いが、その分魔力はこちらのほうが上だ。

 力任せの物になるが、それなりに使える物になるだろう。
 

「暴走は絶対に起こさないと誓おう。それでどうだ、ユーノ?」


「そこまで考えているのなら、かまいませんよ。もともと僕の物というわけでもないですし、封印できたのはエミヤさんとなのはのおかげですから」


「なのはも、これをしてしまえば私は正式に君の使い魔になってしまうが、かまわないか?」


「そうしないとエミヤさんは消えてしまうんですよね? だったら構いませんよ。それにエミヤさんは私を助けるために来てくれましたから。
 いまさら嫌だなんて言いませんよ」


「ああ、ありがとう」


 そうだな。この身は、君の助けを呼ぶ声に引かれて来たのだった。

 なら、君を助ける事だけが私の存在理由だ。

 まだ君に危険が降りかかる可能性が大きい以上、私が消えてしまうわけには、いかないだろう。

 
「では、具体的な調整をしよう」


「えっと、ジュエルシードの魔力をパスの補強と、プログラム対策用に使う分とに分けるんですよね」


 ユーノがすかさず的確な案を出してくる。

 だが、そこにもう一つ、付け加えるものがある。


「それと、ある程度の量の魔力を、今ここで私に取り込ませて欲しい」 


「あ、そっか。なのはからの魔力供給を行うより、ジュエルシードから取り込んだほうが効率的ですよね」


「なのはも今日初めて魔法を使ったからな。これ以上の魔力消費は控えたほうがいいだろう」


「それなら、どれくらいの対比で魔力を振り分けるんですか?」

 
「そうだな……パスの補強に5、私に対するなのはの命令権に4、私が取り込む分の魔力に1、と言ったところか」


「ジュエルシードは三つとも使うつもりですか?」


「ああ、できれば多いほうがいい。とは言ってもさすがに四つ以上は、多すぎて逆に危険かも知れんからな。これ以上はしない方がいいだろう」


 ジュエルシード四つで補強したパスなど、下手をすれば目視が出来るほどの、魔力が多すぎる状態になりかねない。

 何事も過不足無く、程々に。

 世の中、欲張りすぎるとろくな事が無いのだから。


「では、なのは」


「ふぇっ、あ、はい!」


 先ほどから置いてけぼりのなのはを呼んで、ついに実行する準備を始める。

 再びジュエルシードを一つ手に取り。


「ではなのは、左手を手のひらを下にして出してくれ」


「はい」


 こちらに小さな手が差し出される。

 その手を傷つけないよう、慎重に取る。

 そこにジュエルシードを近づけていく。

 なのはとユーノは固唾を呑んでそれを見守っている。
 
 それを視界に納めながら、イメージする。

 あの戦争で、己の左手に宿した聖痕を。

 決して忘れる事の無い彼女と、未熟だった自分との間に確かにあった、絆の形を――

 そして、なのはの小さな手にジュエルシードを押し込む!!


「うっ……!!」


 小さく、なのはが呻く。

 その声音は、痛みを耐えるような響きを持っていた。

 だが、弱音も何も言わなかった。

 だからこそ、そのまま何も聞こえなかったように残りの二つも同じように押し込んだ。




 
「大丈夫か? なのは」


 少しだけ乱れている呼吸を整えているなのはに、声をかけた。 
 
 こういう時、声をかけることしか出来ない無力さが、嫌になる。


「はい。ちょっと痛かっただけで、大丈夫です」


 なのはは笑いながらそう言ってきた。

 強い子だ。

 私は出来る限り優しく、慣れない手つきで、なのはの頭を撫でた。


「なのは、本当に大丈夫?」


「うん。大丈夫だよユーノくん。左手だって、ほら……え?」


 そう言ってユーノに見せたなのはの左手には、剣と鞘をモチーフとした模様、令呪が刻まれていた。

 



 高町なのはが、英霊エミヤの新たな主になった瞬間だった。











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