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No.24797の一覧
[0] 錬鉄の騎士の新たな主(Fate/stay night×なのはThe MOViE 1st)[メイシー](2011/09/30 00:25)
[13] プロローグ[メイシー](2013/01/09 01:23)
[14] 第一話 今、私に出来ること[メイシー](2013/01/09 04:06)
[15] 第二話 今、私にしか出来ないこと[メイシー](2011/06/17 18:19)
[16] 第三話 手に入れたモノ[メイシー](2011/10/01 01:50)
[17] 第四話 出逢いは戦い[メイシー](2011/10/01 01:50)
[18] 第五話 魔法と魔術[メイシー](2011/06/17 18:06)
[19] 第六話 トレーニング、開始 [メイシー](2011/10/01 01:54)
[20] 第七話 譲れない願い、届けたい想い[メイシー](2011/07/03 03:00)
[21] 第八話 知りたいのは、瞳の奥のその秘密[メイシー](2011/10/01 01:55)
[22] 第九話 信じている想い[メイシー](2011/08/02 02:18)
[23] 第十話 そんな日常[メイシー](2011/08/11 00:23)
[24] 第十一話 信用と信頼[メイシー](2011/12/29 18:32)
[25] 第十二話 停滞、そして進展[メイシー](2011/12/29 18:43)
[26] 第十三話 信じた想いを心に抱いて、伝える答えは一つだけ[メイシー](2011/12/31 04:58)
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[24797] プロローグ
Name: メイシー◆9fb748c3 ID:38f40151 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/01/09 01:23


 見渡す限り一面の荒野

 大地には無数の剣が突き刺さり

 空気中を火の粉が舞う

 地平線には炎が踊り

 遠い空には巨大な歯車が回る

 おびただしいまでの武器はそれだけで廃棄場じみている

 そんな瓦礫の国に男が独り

 紅い外套を翻し

 ただひたすらに歩み続けていた





            

 

               プロローグ










 それは長い旅だった。

 かけられた時間も、かかげられた理想も、かなえようとした人生も、何かと厄介だったからだろう。

 どれほどの道を歩もうと、行程はわずかとも縮まらない。

 休まず、諦めず、迷わず、まなじりを強く絞り。

 
 長い道を、歩いていた。


 どれだけ歩いただろう。この剣しかない孤独な世界を。

 どれだけ憎んだだろう。歪な自分の人生を。たたき落とされた無限地獄のようなこの場所で。

 何度も何度も、くだらない後始末をさせられて。

 そのくせ歩み続けるその先に、掲げた理想は叶わない。

 どれだけ歩みを続けても孤独な破滅しか待っていない。

 後悔だけがどうしようもなく募っていった。

 過去の自分をこの手で殺し、消えてしまいたいと想うほど。

 そうやって、この果てのない旅を終わりにしてしまいたかった。

 ふと、どうして終われないのだろう。

 そんなことを唐突に思いついて、気まぐれに考えてみた事があった。

 なに、時間だけはいくらでもある。じっくりと自分を見つめなおしてみよう、と。

 だが考えるまでも無く、答えはすぐに見つかってしまった。

 理由は、本当に単純だ。

 何処に行けば、何をすれば腰を休められるのか。

 そんな、一番初めに決めておくべき旅の終わりを、見つけることが出来なかったからだ。

 だからこそ、もうなにもかも終わりにしようと思ったのだ。
 




 だというのに、ようやく機会を手に入れたのに……それを為すことができなかった。

 いや、やろうと思えば出来ただろう。

 未熟者一人、始末することなど造作もない。

 だが……出来なかった。

 いつかの誓いを思い出すことができたから。

 あの時、何を美しいと思い、何を目指そうと思ったのか。

 あの染み入るような、どこまでも美しかった月夜に何を抱いたのか。

 それを思ったのは、一体誰だったのか。
 
 悔しいことに、未熟でどこまでも愚かだった過去の自分との戦いで。

 ――この記憶さえあれば、また、前を向いて歩んで行ける。

 見せられ続ける絶望も消えることのない後悔も。

 何もかも振り払って、前だけを向いて歩んで行こう。





 そう想っていたのに記憶はどんどん、どんどん摩耗する。

 永劫不滅のものなどない。

 いかに隆盛を誇った名機であれ、使えば使うだけ衰えていく。

 それは機械も肉体も、精神も記憶も、同じ事だ。

 あらゆるものは磨耗していく。

 何かを見るたびに色あせていく。

 ようやく取り戻せたいつかの誓いも。

 かつての主に精一杯の笑顔で告げた、大切な約束も。


「忘れたくない」


 心から、強く、そう思えた。

 少しの間でいい。生前の自分が選べなかった正しい道をほんの僅かでも歩む事が出来たのなら。

 それだけで、ちゃんと思い出せるから。





 だが、どれだけ望んでもそんな奇跡は起こらない。

 それに失望するだけの期待は最初から持ち合わせていなかったが絶望だけはどうしようもなく積み重なっていった。

 結局やっていることは、いつものように歩みを止めずただ進み続ける事のみだった。
 
 体は錆びていく。想いは擦り切れていく。

 そうしていつか、再び自らの愚かさを呪うようになってしまうのだ。
 
 大切なハジマリが、鉄で覆われた心の奥底へと沈んでいく。

 それが何より怖かった。取り戻した物がなんだったのか、そもそも何を取り戻したのかさえ、忘れてしまう事が。

 法廷の名の下に一生を終えるときにすら感じる事のなかったそれは、紛れもない恐怖だった。










 そんなことを考えているときだった。

 どこからか、声が、聞こえてきた。

周波の合わない雑音交じりのラジオのような。

 自分以外に、聞き取れるものなど誰もいないだろうとさえ思えるほどの微かな叫び。 

 聞き取れた自分が信じられなかったほど。
 
 だが、聞こえてくる言葉が何を意味するのか分かった時、あっさりと納得できた。

 なるほど、どうりで自分なら聴こえたはずだ。

 ――それは、紛れもなく、助けを求める声だった。

 いつも自分が便りにしていた言葉。

 いつだって、絶対に聞き逃すものかと誓っていた言葉。

 ――助けて――というか細い声。

 自分の願いが叶うのかと、空っぽになっていた心から僅かな希望が湧き上がる。

 いままで止まっていたのかと思うほどに心臓が騒ぎ出す。

 凍っていたのかと思うほどに体中の血が滾り出す。

 鉄で覆っていたはずの心が弾み出す。 

 今ここにあるのは止まりかけの機械ではなく、ゼンマイを目一杯巻かれて動かずにはいられないカラクリが一つ。

 歩みを止めて、道からはずれ、声のほうへと一心不乱に走り出す。

 自分の理想を叶えるために。

 自分の願いを叶えるために。










 わたしの名前は高町なのは。

 お父さんとお母さんが喫茶店をやっていて兄弟はお兄ちゃんが一人とお姉ちゃんが一人。
 
 今は小学校3年生で特に中が良い友達はすずかちゃんとアリサちゃん。

 なんの変哲もない普通の女の子です。

 のはずなんだけど……今、とてつもなくピンチです。

 なんで私はこんな事になっているのか。

 確かに、いつもとまったく同じ日常だったのかと聞かれればそうではなかった。

 朝「視た」夢は不思議な物だったし。いつもの友達との下校中にその夢を思い出し、草むらから傷ついたフェレットを見つけるなんて事もした。
 その子をなじみの動物病院に連れて行ったのは、自然な事だったとしても。

 よく考えれば今日はおかしな事が多い一日だったのだ。
 
 でもだからって、これはない。

 まるで出来の悪い漫画に出てくる悪霊のような。ゆらゆらとぐにゃぐにゃと。形が定まらない黒い影。

 それが、情けなく尻餅をついている私の目の前にいた。

 現実ではありえない、自分はまた不思議な夢を見ているんだと思いたいのに、影に突撃されめり込み無残な姿になった馴染みの動物病院が訴えて来る。

 これは、私の知っている場所で。私に理解できないモノがあったとしても、どうしようもなく現実なのだと。

 影には触手、とでも言えばいいのか。手足のように生えるそれらが蠢く。わさわさと。昆虫のように。その様子はなんとも言えず、その。

 すごく、気持ち悪かった。

 そんな光景から目をそらしたくて、意識を座り込んでいる自分に向けると、両腕の中に暖かい感触。小さな鼓動。

 そう、確か自分はこの場所に来た直後、吹き飛ばされ空を飛んでいたフェレットを助けたのだ。間違いなく、数時間前に病院に連れて行ったあの子を。

 視線を落とすと腕の中にはしっかりとキャッチに成功したフェレットがぐったりとして「来て……くれたの?」いて……って。 


「ふぁっっ!!?」


 し、しゃべったぁ!?

 空耳でもない。周りから聴こえてきたものでもない。間違いなく、私の腕の中にいるフェレットからの声だった。

 ちょっと待って欲しい。フェレットって喋れるんだっけ?


「え、ええと、何なの? なにが起きてるの!?」


 目の前には破壊された動物病院。

 そこにいまだにめり込んで、なにやらもぞもぞわきわきしている黒い影。

 そして腕の中には喋るフェレット。

 もう、なにがなにやら。頭がいっぱいです。
 
 座り込んだまま、なんとか目の前の現実を理解しようと喋るフェレットくんに問いかけた。
 

「あの、お願いがあるんです」


 焦った心が落ち着くような、真剣な声で言われた。

 やっぱり目の前のフェレットくんが喋っている事実に戸惑いが加速しそうになるものの。

 真剣な言葉には真剣な言葉で返そうと、混乱しているなりにもしっかりと身構え――


「僕に少しだけ、力を貸して!」


「え…………ふぇっ!?」


 ていたと言うのに、あまりに予想外な内容に変な声を出してしまった。

 でもしょうがない、突然そんな事言われてもどうしようもないと自分を慰める。

 私にはこんな状況をどうにかする力なんて持って無い。
 だって、私は普通の小学生で、アリサちゃんみたいに頭が良い訳でもなく、すずかちゃんの足元にも及ばない運動音痴で。
 でも、それでも、今フェレットくんが頼ってくれてるのはこの私で、ここには私しかいないんだから、私が何とかしなきゃならなくて―― 

 考えても考えても頭の中が纏まらない。
 
 そんな中でふと目の前を見ると、さっきまでめり込んでいたはずの黒い影が、何時の間にかコンクリートの壁から抜け出してこちらを睨みつけていた。


「…………ぁ」


 それを見て、体の奥からいままで感じた事のないような『怖い』という気持ちが一気に湧き上がってきた。

 今すぐ逃げなきゃいけないのに、体はまるで錆付いたように私の意志に従ってくれない。
 
 足が震えて、息が止まる。


「い……いや…………」


 怖い、怖い……怖い…………!!


「お、落ち着いて!!」


 どこからか、誰かに何か言われたような気がしたけど怖さでちゃんと聞こえない。

 耳は音を頭にまで伝えてくれない。ただ右から左へと流していく。


「だ、だれか……だれか――――」


 焦燥感だけが加速していく。

 ほんの数分の間に遭遇したそれらはあまりにも理解不能で。
 
 自分が置かれた状況はあんまりにも理不尽で。

 そんな中で、無力な私に出来たのは


 「――――助けて!!!」


 ただ大きな声で、助けを求める事だけだった。 





 ――しかしその叫びこそが、少女の運命を変える事となる。

   



 瞬間、腕の中から光が溢れ出す。

 それは目を開けることさえ叶わないほどに、世界を白く染め上げた。


「え……? これって、僕が封印したジュエルシード?」

 
 聞こえてくる困惑した呟き。
 
 その意味を考える事も出来ず、私はただ目を瞑っていた。





 がちゃん、という金属がぶつかり合う無骨な音。

 目を開けると、そこにはどこまでも紅い男の人が立っていた。
 
 見上げるほどの大きく、鍛え上げられた体。月明かりに照らされる燃え尽きた灰のような白髪。

 後ろにいる私には、前を向く彼の表情は見えない。間違いなく、今日出会った一番の非常識。

 でも、そこに恐ろしさはなく。

 私はその背中に、どこまでも頼もしさだけを感じていた。










 聞こえた声を頼りに細い細い道を駆け抜けた。

 息を切らすことなどない、疲れなど感じない体になってしまって。それでも、この身は変わらず同じゼンマイで動いている。

 気付いたときには、知らない街中に立っていた。

 呼ばれる側というのはいつも唐突だ。慣れたもので、はやる心はそのままにさっそく状況把握を開始する。

 まず、自分がいるこの町。

 この町自体は特に問題ない。自分の故郷ならどこにでもあるような、普通の住宅街だ。

 しかしこれは、結界……だろうか、が張られ辺り一帯を異界に変えていた。
 
 軽く解析してみると、今まで見たこともない効果とそれなりの規模を持つものだった。

 詳しく知りたいところだが、あまり時間をかけるわけにはいかない。

 今は保留を選択する。

 次に目の前でこちらを睨んでくる黒い影。

 どう見ても何かしらの魔術的な存在にしか見えない異形。
 
 なんにしても普通の生物ではないだろう。警戒するには十分な姿形だ。

 最後に、後ろで尻もちをついてこちらを見上げる少女を、軽く振り返ることで確認する。

 ――それだけで、自分のこの世界での存在理由が、彼女だと分かった。

 驚くいたことにこの少女、普通の人間としては信じられないほどの魔力量を蓄積していた。

 しかも制御などカケラもせずに垂れ流している状態だ。魔に対してまったくの素人であることに間違いはないだろう。

 そして腕の中にいるイタチ……いやフェレットだろうか、もこちらを見上げていた。

 このフェレットにも魔力を感じることからおそらく使い魔か何かなのだろう。

 しかし本題はそんな所にはない。それよりも大切なコト。

 私と、後ろにいる少女との間に、ほんのか細いパスが通っていた。

 今にも千切れてしまいそうな、あまりにも弱弱しいレイライン。

 それが、私と少女を繋げていた。 


「あ、危ない!」


 そこまで思考が及んだところで、少年のような声が聞こえた。

 おそらくあのフェレットの姿をした使い魔が発した言葉だろう。

 再び前を見ると、黒い影がこちらに突進してくるところだった。

 焦ることもない。視界に入ったときから、一瞬だろうと警戒を解いたりはしていない。

 当然のように、迎撃する準備はできていた。


 ―――――投影・開始―――――


 使い慣れた双剣〈干将・莫耶〉を手の中で作り出す。

 それを用いてすぐさま来るべき衝撃に耐えられるように防御の姿勢をとる。

 同時に、予想の範疇である大きな衝撃と音が夜の街に響いた。

 突進力もそれなり、コンクリート程度ならたやすく粉砕できるであろう攻撃はしかし、こちらの防御を貫く程ではなかった。

 結果、影は大きく後ろへのけぞることになる。盾を貫けなかった矛は弾かれるが定めだ。

 その隙を突いて渾身の蹴りを影へと叩き込む。

 蹴られた側はまるでピンポン玉のように奥の塀へと突撃しめり込んだ。

 それを視認し僅かばかりの安全を確保したところで、ようやく後ろで尻もちをつく少女と正面から向き合った。

 自らの望みが叶ったことで湧きおこる歓喜の感情で、声が震えぬよう気をつけながら。

 万感の思いをその一言に込め、自らの望みを叶えてくれた少女に問うた。


「問おう、君が私のマスターか」


 口から出たのは、胸の奥に大切に仕舞い込んでいた記憶の一つ。

 あの時出会った運命との、始まりの言葉だった。 











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