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No.24054の一覧
[0] 【完結】Sweet songs and Desperate fights《史上最強の弟子ケンイチ×とらハ3》[やみなべ](2011/01/23 00:20)
[1] BATTLE 1「合縁奇縁」[やみなべ](2012/01/02 01:38)
[2] BATTLE 2「剣士の葛藤」[やみなべ](2010/11/15 00:10)
[3] BATTLE 3「剣士と拳士」[やみなべ](2010/11/21 00:21)
[4] BATTLE 4「月下の拳士」[やみなべ](2010/11/23 13:11)
[5] BATTLE 5「裏社会科見学~HGS編~」[やみなべ](2010/11/28 02:49)
[6] BATTLE 6「幕間劇 祟り狐と達人鼠」[やみなべ](2010/12/04 10:36)
[7] BATTLE 7「露見する拳」[やみなべ](2010/12/11 01:00)
[8] BATTLE 8「二人の絶招」[やみなべ](2011/01/14 00:11)
[9] BATTLE 9「忍び寄る拳」[やみなべ](2011/01/14 00:12)
[10] BATTLE 10「決着」[やみなべ](2011/01/22 01:57)
[11] BATTLE FINAL「その名は梁山泊」[やみなべ](2011/01/31 12:36)
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[24054] BATTLE 4「月下の拳士」
Name: やみなべ◆d3754cce ID:1963cf14 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/11/23 13:11

時間は少々遡り、兼一達が花見に参加するその前日。
その時谷本邸の主である夏は、自宅の玄関先で奇怪な生物が向かい合っていた。

「おいおい、折角来た客にこんなところで話をさせる気か?
 居間に通して、丁重に迎えるのが道理ってもんだろ」
「黙れ。それは相手が人間の時の話だ。
敷居を跨がせてもらえただけでもありがたく思えよ、宇宙人」

肩を竦めて呆れる新島に、夏はブリザードの様な冷たい視線と口調で応じる。
それも土間にいる相手を、自分は廊下から見下ろしている形だ。
これ程までに明確な拒絶の意思表示もまたない。
にもかかわらず、新島はどこ吹く風といった様子でそれを流す。

「ヒャヒャヒャヒャ! 合鍵を預けてる親しい友人を迎える態度じゃねぇな」
「誰と誰が親しいんだよ!? 合鍵だっててめぇが勝手に作ったんだろうが!!」
「ま、それは横に置いておくとして」
「勝手に横に置くな!!」

いちいち癇に障る事を口にする新島と、それに尽く激昂する夏。
どう見ても、新島の方が一枚も二枚も上手である。
如何に腕っ節で勝るとはいえ、この悪魔が相手では分が悪かろう。

「と言いつつ、こうして茶も出してるじゃねぇか。
 律義なんだか、嫌味なんだか………それとも、お前の家ではこれは茶漬けの代わりなのか?」

そうして、玄関で茶をすする新島。はっきり言って、その光景は「異様」だ、そして同時に「矛盾」している。
何しろ、玄関から先に通す気がないのは明白なのにもかかわらず、茶だけはしっかり出しているのだ。
これでは確かに、京都のお茶づけに相当する意味でもあるのではないかと勘繰りたくなるだろう。
だが実際には……

(ちぃ! あのバカ妹のせいで、すっかり茶を淹れるのが癖になっちまった!)

ひとえにほのかの薫陶の賜物である。
まあ、玄関先で押しとどめている相手にも茶を出してしまう辺りが「らしい」と言えば「らしく」もあるが……。

「ま、今は別にいいか。
 ほれ、頼まれてた情報だ。大勢調査員を雇ってるくせに、相変わらず使い方が下手だよな。
 昔も言ったがな、調査員なんてのはこき使ってなんぼだぞ」
「けっ、他人の調査員をいつの間にか私物化してる野郎が言うんじゃねぇよ!」

そう憎まれ口を叩きながらも、夏は投げ渡された報告書に目を通す。
その内容は夏の期待通り……いや、それ以上だ。
改めて夏は、この地球外生命体の人を操る能力と情報収集能力に驚嘆する。
まあそんな事は、「闇」の拠点の情報を自力で入手した時から分かり切っていた事だが……。

(調査員だけでこれだけの情報を集められる筈がねぇ。
 って事はこいつ、またどっかやべぇ所に忍び込みやがったな)

別段、夏は新島の身の安全を心配しているわけではない。
というよりも、そんなものは杞憂だと知りつくしている。
こと身を守る術において、この男は特A級の達人級といっても過言ではないと、彼を知る者たちは確信しているのだ。
実際、逃げ足の速さと生存能力の高さはゴキブリも裸足で逃げ出すだろう。

「にしても、なかなかおもしれぇ連中じゃねぇか」
「ふん。また新白にでも引き込むつもりか?」
「ウヒャヒャヒャ、それも良いな! うちは無手の連中ばっかしで、武器使いはフレイヤくらいしか戦力にならねぇ。ここは、兼一とほのか使って引きずりこむか……」
(マジだな、この野郎)

あごに指を当て、何やらコンピューターのような音を頭部から出しながら思案する新島を見て、夏は脂汗を流す。
彼には分ったのだ。冗談のつもりで言った今の一言を、新島が実に大真面目に考慮している事が。

そして、この男が本気で動きだせばそれは十分実現しうる。
これまであらゆる手練手管、口八丁手八丁で駒を増やしてきたのだ。
どんな手段を講じているのかは分からないが、こいつは狙った獲物を逃がす男ではない。

(この宇宙人に目を付けられたのが運のつきか…………同情するぜ)

ある意味原因は自分だと言うのに、そんな事は遥か彼方に捨て去り、勝手な事を考える夏。
この男も、これでなかなかに図太い神経と図々しい性格をしている。

「で」
「あん?」
「俺様に借りまで作ってそいつらを調べさせたわけだが、どうするつもりだ?」
「てめぇには関係ねぇだろうが」
「…………そうかよ」

夏の態度は実に失礼だし、本来なら礼の一つもあってしかるべきであろう。
だが、自身の質問に取りつく島もない夏に対し、新島もそれ以上追及しようとはしなかった。
長い付き合いだ、こういう時の彼に何を聞いても答えが得られない事を知っているのだ。
優れた観察眼と洞察力、即ち「新島アイ」を持つこの男でも、心を隠すことに長けた夏の本心を見抜く事は難しい。

まあそれ以上に、彼が動く分にはそう悪い事にはならないだろうと言う確信があるのだ。
好戦的で傲慢で高飛車な男だが、それ以前に一本筋の通った武人である。
そしてもっと根本的な問題として、この男がほのかの不利益になる様な事をする筈がないのだから。

そんな前日の出来事を思い返しながら、新島は高町家から少々離れた高台から指で作った輪を覗き込む。
そう、「新島アイ」の探索モードである。

「さぁて、高町恭也。おめぇが俺様の役に立つ男かどうか、しっかり見極めさせて貰おうじゃねぇか」



BATTLE 4 「月下の拳士」



「……ハーミット、だと?」
「……………」

恭也の問いに対し、ハーミットと名乗った男はそれ以上何も語らない。
相変わらず腕は組まれ、脚は無造作に肩幅に開かれたままだ。
にもかかわらず、恭也の額からは一滴の汗が流れる。

(御神と不破を全滅させた連中…………とは無関係だろう。
 連中とでは手口が違いすぎるし、いまさらになって俺達の前に現れる理由もない。
 だが、だからこそわからない。こいつ、何が……)
「あなた、こんな時間にうちの子に何かご用でしょうか? 良ければ、中で話でも……」
「下らん」

状況が良くわからないなりに相手の目的を知ろうとかけられた桃子の言葉は、酷く冷たい声音で拒絶された。
彼女とて、相手が普通の用件で現れたわけでないことくらいはわかっている。
仮にも高町士郎の妻であった桃子だ、相手がある意味で、通常の暴漢などよりももっと性質の悪い人種であると直感的に感じ取っていた。
しかしそれでも、ここまで取りつく島がないとは思っていなかったようで、気圧されたように半歩下がる。

「武人同士が対峙したのなら、する事は一つ。死合うだけだ、違うか不破恭也」
「ま、待ってください! こんな街中で……!?」

暴論としか思えないハーミットの言葉に、即座に美由希が反論しようとする。
だがそれは、彼女にとってあまりにも意外な人物によって制された。

「やめろ、美由希」
「……恭ちゃん!?」
「着衣は動きやすい道着や練習着とは限らない。板張りの道場で実戦が行われる事などない。
 だからこそ俺達は、それに備える為に毎日森の中で打ち合っていたんだぞ」
「そ、それは、そうだけど……こんな辻斬りみたいなの……」
「それも含めて武の世界だ。下手な事を口にすれば、自分の格を下げるぞ」
「フン! 武器などというオモチャを使う割には、少しは戦いの機微をわきまえているようだな」
「なに?」

それまで警戒こそしているが冷静さを保っていた恭也の表情に、鋭い険が生じた。
眉根は寄せられ、全身からは怒りの気配が滲みでる。
当然だ、自身が長い時間を賭けて研鑽してきた術を、たった今侮辱されたのだから。

恭也は別段、無手の武術を軽んじているわけではない。
だが同時に、武器を持つ者の方が有利であると言う事も疑ってはいない。

しかしそんな事とは無関係に、自身の技に誇りを持っていた。
一武術家として、先人たちから伝えられ、父から教わり、妹と共に今日まで練磨し続けた小太刀の技に。
その誇りを軽んじられて、どうして平然としていられよう。

「さっき、訂正はあるかと言ったな」
「フッ。なんだ、何か気に障る事でもあったか?
 俺は厳然たる事実しか口にしてはいないぞ」

恭也が何に怒っているのか、ハーミットは理解していた。
にもかかわらず、尚も彼は恭也の誇りを軽んじ続ける。

「武器など所詮はオモチャだ。己が肉体に自信がないからこそ、薄汚い鉄屑に頼らなきゃならねぇ。
 真の武術、覇者の業にそんな惰弱な物は不要!」
「…………言ったな。ならばその傲慢の代償、その身を以って払ってもらうぞ」

美由希を始めとした、恭也をよく知る家族達は恭也からわずかに距離を取り、息をのむ。
彼の怒りの気配を感じ取り、それに気圧されたからだ。
レンや晶などは、いっそハーミットに同情の念さえ覚えたかもしれない。
しかし、当の恭也は怒る自分とは別のところで、冷静に敵を分析していた。

(確かに傲慢だ。だが、それを言うだけの実力がこいつにはある。なんとかして小太刀を……)

武器を持たない武器使いなど、その戦力を半減させていると言っても過言ではない。
確かに恭也は徒手空拳での戦闘にも自信はあるが、本職のそれに及ぶ筈もなし。
どれだけ多く見積もっても、恭也は10の鍛錬の内3程度しか徒手には費やしていないのだ。
だが、相手が10の鍛錬の全てをそれに費やしているのなら、当然相手の方が徒手では有利。
弘法筆を選ばずとは言うが、そもそも筆がないのであれば腕の振るいようがない。

自身の手に最も馴染んだ武器がない事、宴会後の気の緩んだタイミング、背後にいる守らなければならない人達。
その他諸々の要素を加味して、恭也は自身の不利を正確に把握している。
傷つけられた誇りの報いを受けさせたい欲求はあるが、それで大切な事を見失うほど恭也は愚かではない。
故に、恭也は後ろ手で美由希に簡単なサインを送る。

(俺がこいつをひきつける。その間に、皆を家の中へ)
(その上で、恭ちゃんに小太刀を渡す……これしかないよね)

美由希もまた、恭也の意図をしっかりと把握している。
一度は突然の事態に僅かに動転したが、一度恭也に注意されたことでいつもの調子が戻ってきた。
普段はどこか鈍くさい美由希だが、一度腹を決めてしまえばその度胸と決断力、周囲の状況を把握する能力は並みではない。
突発的な事態であっても、冷静に対処するための訓練は師でもある兄によって徹底されているのだから。

とはいえ、これだけの使い手が相手。そう簡単に思うようにさせてはくれまい。
故に美由希は、細心の注意を払ってハーミットの動向を探り、皆を家に退避させる隙を探り続ける。

「フン、やれるものならやってみろ。
武とは力のみが支配する、結果が全てのシンプルな世界。
気にいらねぇんだろ、俺の事が。なら、力づくで否定してみやがれ!!」
「気にいらないわけじゃない。ただ、その傲慢が度し難いだけだ!」

その瞬間、二人は互いに構えを取る。
互いに半身、だが手の形が違う。
恭也は軽く握りこんでいるのに対し、ハーミットは貫手に近い形だ。

それは、恭也にとっては見慣れない型である。
元から今の段階で無理に倒しに行かなければならない状況も相まって、恭也はあえて見に回った。

睨みあうこと十数秒。
一瞬、フードの陰から僅かに見えるハーミットの口元に笑みが浮かぶ。
そしてその瞬間、ハーミットが動いた。

「烏龍盤打!!」

一足にもかかわらず、数メートルはあった両者の距離は一気に詰められた。
そのまま、身体ごと回転させて放たれた強烈な掌打が、鞭の如き腕のしなりと共に恭也の頭上より振り下ろされる。
それを恭也は半歩下がってかわし、掌打はアスファルトの地面に『ゴンッ』という重い音と共に叩きつけられた。
しかし、そのあまりの威力に第三者達は驚愕の声を上げる。

「って!」
「アスファルトを!」
「「陥没させた!?」」

そう、ハーミットの一撃は、アスファルトで舗装された道路をクレーター状に小さくへこませていた。
晶とレンの高町家無手コンビは、そのあまりの出鱈目さに瞠目する。
フィアッセや桃子、なのはにしたところで、その常軌を逸した威力に声を失い思考が停止していた。

無理もない。常識的に考えて、人間の腕でそんな芸当ができるとはだれも思わないだろう。
如何に高町兄妹の事を知っているとはいえ、素手でここまでできる人間を彼女らは知らないのだから。
晶は館長である「巻島重蔵」を知っているが、彼の本気をまだ目にした事がない以上比較対象を持っていない。

そんな中でただ一人、美由希だけは冷静にこの一撃を分析すべく思考をフル回転させていた。
いや、正確には、なんとか冷静さを保とうと努力した結果として、この敵の技を分析していると言うべきか。
まあどちらにせよ、彼女に目にもそれは信じがたい現実だっただろう。

(ど、どういう腕の構造をしてるの? あんな事したら、普通は先に腕の骨が砕けちゃうよ……)

美由希とて、武を極めた先の世界の一端くらいは知っている。
だが、早くに師範である養父を亡くし、未熟な兄に指導されてきたことで彼女の知る範囲は決して広くない。
剣の真髄はおぼろげながらわかるかもしれないが、拳の真髄について彼女は門外漢に近かった。
故に知らない、中国拳法の「硬功夫」を練りに練った者の肉体的強度を。

レンも中国拳法を使うが、彼女の場合ある身体的事情からそう言った負担の大きい鍛錬はできない。
そもそも、凰家の拳は「風」とも称される柔の拳。剛の拳である「劈掛拳」とは対極だ。
その中でもこの「烏龍盤打」は、遠心力で気血を腕に送り硬質化して手刀や掌打で叩き潰す荒技。
ある意味、レンにとっては最も縁遠い技の一つだろう。

そのため、ハーミットの掌打の秘密を正確に看破できる者はこの場にはいない。
しかし恭也は、わからないものはわからないと割り切る能力に長けていた。

(確かに、まともに食らえばただでは済まない。
だが、大振りな分回避自体はそう難しくない。理屈はともかく、当たらなければ同じだ。
むしろ、厄介なのは……)
「むん!!」

その掛け声とともに、更なる掌打が連続して恭也を襲う。
掌打が通り過ぎるたびに、並々ならぬ風圧が恭也の顔を撫でて行く。
いや、それだけなら多少怯みはしても厄介とまでは思わないだろう。

問題なのは、一撃目を回避しても、即座にもう一方の手から放たれる二撃目がより長く伸びてくる事。
そして、さながらでんでん太鼓の様に、振り抜いた腕は体に巻きつき、タメの姿勢がそのまま防御を兼ねている。
その結果、恭也に紙一重の回避を許さず、回避しても迂闊には踏み込ませない。
それだけの技を軽々とやってのける相手の練度に、恭也は内心舌を巻いていた。

(素手の武術を侮っていたつもりはなかった…………だが、まさかこれほどとは……)

恭也とて、巻島重蔵という怪物じみた空手家を知っている。
目の前の敵が強い事も重々承知していた筈だった。
しかしそれでもなお、生身の体でこれほどの破壊力を出せる事に驚きを隠せない。
とはいえ、彼とてこのままいい様に攻められているつもりなかった。

「ハッ! まさかこの程度の事で怖気づいたか!!」
「なめるな!」

そう叫び、恭也はハーミットが放つ掌打の中にあえて踏み込む。
まともに受ければ、決定打とまではいかなくても、かなりのダメージを覚悟しなければならない一撃。
その中に踏み込むなど、一見すれば自殺行為だ。

「恭也!」
「お兄ちゃん!」
「大丈夫だよフィアッセ、なのは。アレは……」
「ちっ、考えやがったな!」
「ここまで踏み込んでしまえば、その掌打の威力も半減する!」

そう、敵陣深く踏み込んだ事で、恭也はハーミットの肘を肩で受ける形となった。
この技は、本来掌底部分にこそ最大の威力がある。
逆に言えば、腕の根元に近ければ近いほどに威力は減衰するのだ。
それを看破した恭也は、あえて踏み込むことで死中に活を見出した。

「だが、これだけ近づいた今、碌に攻撃できないのはお前も同じだろ!」
「それは…どうかな?」
「何! ……がっ!?」

鳳家拳法の一手、『寸掌』。
他の門派では『寸剄』とも称される、密着状態の時に使う技だ。
強いて違いを挙げるなら、通常の寸剄が拳打なのに対しこちらは掌打であると言う事だろう。
ハーミットの一撃を肩で防いだ恭也は、そのまま全身運動からの掌打を放ち、ハーミットに痛烈な一撃を加えていたのだ。その結果、ハーミットは後方に大きく弾き飛ばされる。
だが、それも……

『やった!』
「いや、外された……」

皆は歓喜に湧きかけるが、恭也は口惜しそうに歯噛みしてそれを否定する。
恭也が掌打を放つ寸前、ハーミットは自ら後方に飛ぶことでその一撃を殺していたのだ。
事実、弾き飛ばされた筈のハーミットは、宙返りをすると軽やかに着地を決めた。

「くっ……まさか、中国拳法の一手も知ってやがるとは……」
「何事も手を出しておくものだと、今改めて思っているところだ。
 昔、レンに型を実演して見せたのが、こんな形で役に立つとは思わなかったぞ!」
「そうかよ。なら、ついでにこいつも覚えていけ! その身体でな!!」

懲りずにさらに烏龍盤打を放つハーミット。
しかしその技は、すでに恭也には見切られている。

「バカの一つ覚えか! ここで馬脚を現したな!!」
「ああ、お前がな!!」

再度ハーミットの懐へと踏み込む恭也。
思っていた通り、肩で受け止めた敵の腕の威力は耐えられないものではない。
だがその瞬間、彼の首筋に重い衝撃が走った。

「ぐあ!? こ、これは……」

そこで恭也は自分に何が起こったのかを理解する。
ハーミットの一撃は確かに防いだ。しかし防いだはずの一撃はさらにしなり、彼の手刀が恭也の首を叩いていた。

「反射を逆手に取ることで、見えていても食らってしまう攻撃ってものがある。
 真の武術家とは、そう言った技を長年蓄積した者を言うんだよ!!」

思いもかけぬダメージにより一瞬生じた隙を、ハーミットは逃さない。
そのまま一気にたたみかけるように、反射を逆手にとった技で恭也を攻め立てる。
肘を防いだと思えばそこから伸びて裏拳が、頭上からの掌打を防ごうとしたら途中で切り替わって肘が襲う。
並々ならぬ反射神経を持つ恭也をしても、いや、そんな恭也だからこそその攻撃のことごとくにかかってしまう。
やはり、純粋な無手の戦いではハーミットに一日の長があった。
技の種類、その錬度、そして深さ。その全てにおいて、ハーミットは恭也を上回る。

だが、恭也とて御神流の師範代。
そもそもこれは試合ではなく、限りなくケンカに近い戦い。
故に、定められたルールなど元よりないのだ。

「がはっ! なるほど、さすがに徒手空拳では分が悪いか……」
「わかったのなら、大人しく死ね!!」
「そう簡単にやれるほど、安くはない!!」

そう叫ぶと、恭也の手が何かを投じるようにハーミット目がけて振るわれた。
ハーミットは即座にその場から真横に跳ねる。
すると、先ほどまでハーミットがいた個所を何かが通り過ぎた。

「ち、そう言えば暗器も使う流派だったな。しかも、ご丁寧に黒塗りか……」

そう、今恭也が投じたのは五本の飛針。
それも闇夜に紛れるように、漆黒に塗られた性質の悪い一品。
その鋭利な切っ先は、軽くハーミットの頬とフードを切り裂き、背後の電柱に突き刺さっている。
もし直撃していたら、間違いなくその肉体を深々と抉っていただろう。
だが、恭也が衣服の下に忍ばせている暗器は、何も飛針だけではない。

「っ!!」
「目ざとい!」

次に放たれたのは鋼糸。
ハーミットは外聞もなく地に身を投げ出し、恭也の放ったそれを回避した。
もし、後一瞬反応するのが遅ければ、今頃ハーミットの腕は鋼糸に絡め取られていただろう。
己が身一つで戦うべく鍛え抜かれたハーミットのパワーは並みではないが、武器という重量物を扱う恭也のパワーも同様に侮れない。
もし絡めとられれば、場合によっては主導権を恭也が握っていた可能性もある。
何しろ鋼糸が深く食い込めば、服と共に皮や肉を裂いていたかもしれないのだから。
まあ、恭也は知らない事だが、ハーミットの服は特殊繊維を使われているので、そう簡単にどうこうなるものでもないのだが。

そのまま、二人は再度激戦へと突入していく。
だが、先ほどまでとは立ち位置が異なる。
距離を取って飛針や鋼糸を振るう恭也と、それらを掻い潜って距離を詰めんとするハーミット。
投擲系の武器に戦い方を切り替えたことで、間合いの利は恭也へと傾いた。

「なめるな!」

気合とともに外套で飛針と鋼糸を払うハーミット。
飛針はその性質上携帯できる数に限りがあるせいか、放たれる数は決して多くない。
故に、ハーミットの警戒対象は主に鋼糸となり、四肢や胴体を絡め取られないように注意している。
もし絡め取られれば、体を崩すことくらい恭也なら容易くやってのけるだろう。
そんな事になれば、如何にハーミットといえども致命的な隙を晒すことになる。
それを承知しているからこそ、ハーミットは極力鋼糸に触れない様に紙一重の所で回避していた。

(急いだ方がいいか。騒ぎを聞きつけて人が集まるまで、もう時間もねぇ。
 早めにケリをつけねぇと面倒だな)

二人の戦いが始まって、まだ五分と経っていない。
だが、地域住民たちが異変を察し、警察に連絡するには十分だ。
ハーミットなら警察から逃げる事は容易いが、それはそれで面倒。
やはり、警察が来る前にこの場を離れるのが望ましい。

だが同時に、それはそろそろ恭也の手に小太刀が握られてもおかしくない時間がたった事を意味する。
にもかかわらず、一向にその様子もない。
当然だ。美由希達も隙を見て家の中に入ろうとはしているが、動こうとする度にハーミットに牽制されて動けずにいたのだから。

「美由希ちゃん、こうなったらもう俺達も一緒に戦った方が」
「せや、おサルの言う通りやで。確かにあのフードはお師匠と戦えるくらい強いけど、ウチら三人も一緒なら」
「ダメ!」
「「え?」」
「美由希?」
「お姉ちゃん?」
「ダメだよ。良くわかんないけど、手を出しちゃ…ダメ」
「どうしたの美由希! 顔、真っ青だよ!?」
「分かんない、分かんないんだけど…………手を出したら、ただじゃ済まない。そんな気がするんだ」

美由希は肩を震わせながら、そうつぶやく。
その直感は正しい。迂闊に打って出れば、確かにただでは済まないだろう。
美由希達が、というよりも、恭也がだ。

この状況下にあって、美由希達ははっきり言って足手まとい。
自分と拮抗した力を持つハーミットを相手にしている最中に、予定にない動きを美由希達がすれば、如何に恭也といえでも動きに一瞬の迷いが生じるだろう。何しろ彼は、今まさにハーミットの実力を肌で感じ、三人では束になっても勝てないと分かっているのだから。
そしてその一瞬の迷いを見逃すハーミットでもない。
その事を、美由希は上手く言葉にこそできないながらも、本能的に察していた。

「悔しいし、情けないけど、今は見てるしかないよ」

口惜しそうに、今にも泣き出しそうな顔で、美由希はそうつぶやく。
それが最善だとしても、何もできない自分が歯がゆくて。

そして、そうしている間にもハーミットはある決断をくだす。
それは、実に彼らしいと言える発想だった。

(時間がねぇなら、ここは一つ………………捨て身でいくか!!!)

意を決し、ハーミットは多少のダメージを覚悟で飛針と鋼糸を掻き分けて行く。
捨て身になった事が返って功を奏したのか、容易とは言えないまでも、目立ったダメージを追うことなくハーミットは恭也の下にたどり着く。
そこで、彼は渾身の力を込めた右掌打を脇腹の急所へと放つ。

「しっ!」
「せや!」

当然、そんな物を喰らっては堪らぬとばかりに恭也はその一撃を払う。
だが、それは囮。
掌打を払った瞬間にできたわずかな隙、そこへ目掛けて強烈な横薙ぎの左の手刀が恭也に伸びる。

回避は間に合わず、手刀は恭也の体を打ち抜く。
しかし、辛うじて間に合った逆の腕を盾とし、恭也はその一撃に耐える。

「ぐはっ…!?」
「てめぇ、この一撃を堪えやがったな!」
「当たり前だ。はじめから…………そのつもりだったんだからな!!」
「何?」

恭也の言に、ハーミットのフードに隠れた眉がしかめられる。
それではまるで、この一撃を受ける事を想定していたかのようではないか。
そして、その予想は正解だった。

「終わりだ!!」

その言葉と共に放たれたのは、飛針を指の間に挟み込んだ上での拳打。
同時に、先ほど放った手刀を恭也が盾にした腕に抱え込まれ、身動きも封じられている。
元より、恭也は敵を懐へと誘い込み、この一撃を加えるつもりだったのだ。
鋼糸と飛針による遠距離戦闘も、全てはそのための布石。

「野郎!!」
(急所は外す。さすがに、飛針が刺されば勝負は決する筈だ)

恭也の狙いは右の太股。もしここに刺されば、どれほどの使い手でも機動力の低下は避けられない。
そして、武術において足腰の重要性は論ずるまでもない。
その点から見ても、これで恭也の勝利は手堅いだろう。

そう、相手が普通の武術家であれば。
彼は修羅の道を歩んできた武術家。手堅さを望んでいては、彼を打倒しきる事は出来ない。
それを裏付けるかのように、手詰まりにも近い状況でありながらハーミットは敢えて一歩踏み込む。

「お前!?」
「言ったろうが! そんなオモチャじゃ俺は殺れねぇ!!」

目測がズレた事で恭也の拳打はハーミットの腹部へと突き刺さる。
同時に、ハーミットは掴まれていた腕を振り払って自由を取り戻し、一瞬のうちに恭也の背後に回る。

「甘めぇぜ! 接近戦に持ち込みたかったのは、こっちも同じだ!」
(なんだ、この歩法は!? 岩に挟まれた様に、身動きが取れない!!)
「死ね…………貼山靠!!!」

八極の一手『貼山靠(てんざんこう)』。
別名「鉄山靠」とも呼ばれる、肩で体当たりし内部の勁と外部の打撃を同時に与える大技。
それを「梱歩(こんぽ)」と呼ばれる歩法で外への足さばきを封じて叩き込んだのだ。

恭也の体は、強烈な発剄により弾き飛ばされる。
それを見て、ついに美由希達が悲鳴を上げた。

「「恭也!?」」
「「(お)師匠!!」」
「恭ちゃん!?」
「お兄ちゃん!?」

地面をもんどりうって転がる恭也。
それは最早、交通事故にでもあったかのような飛ばされっぷりだ。
しかし、ここで残心を怠るハーミットではない。
彼はさらに追い打ちをかけるように、そのまま烏龍盤打や震脚による踏みつけを放つ。
次々とアスファルトはへこんで行き、道路は見るも無残な様相を呈していく。

だが、辛うじてそれらの猛攻を避け切った恭也は、なんとか立ち上がり体勢を立て直す。
しかし、彼の体も相当に鍛えられているが、身体を突きぬけた衝撃は並みではない。
故に、先の一撃によって被ったダメージは甚大だ。
ハーミットも腹を刺されたが、分厚く強靭な筋肉の壁が重大なダメージを防いでくれた。
恭也が致命傷や深手を避けようとして加減した事が、ここにきて裏目に出た形だろう。

「はっ……がはっ!?」
「NO――――――! もうやめて! これ以上やったら恭也が……恭也は膝が悪いんだよ!?」
「あなたもよ! お腹から血が出てるじゃない! こんな事をして、一体何になるっていうの!!」

フィアッセと桃子の言は正論だ。
だが、彼女達は知らない。修羅の道を歩む者の存在を。

「膝が悪い? 血が出てる? そんな物がいい訳になるか!!
 俺は師父に敗北は死を意味すると叩き込まれてきた!
 トドメを刺すまで油断なんざしねぇ!」

一般人達にはわからない、武の世界に生きる者の理屈。
しかし、その非日常の理屈がこの場を支配しているのだ。
それを知らしめるかの様に、ハーミットは恭也達に宣言する。

「分かるか? ヌルいんだよ、お前達の武術への姿勢は!
 勝利か、死か!! それが武術の世界だろうが!!」
『…………………………………』

その修羅の如き咆哮に、フィアッセや桃子どころか、美由希達も息をのむ。
確かにそうなのかもしれない。しかし、それをここまで明確な形で実践する者がいようとは……。
それが、美由希達には信じられなかった。

どれだけ卓越した才を持ち、並々ならぬ努力をしてきたとしても、彼女らには決定的に足らないものがある。
それは「実戦」と「敵」の存在だ。
彼女達は本当の意味で命を賭けて戦った事がない。
命を奪いに来る敵も、命を捨てて挑んでくる敵も知らないのだ。
現代においてはそれが普通とはいえ、知る者と知らない者との差がここにあった。

「俺達が………ヌルいだと?」
「ああ、ヌルいな。お前は剣士だ。にもかかわらず、剣を持たない。
 これが怠慢でなくていったいなんだ! その怠慢が今、お前を殺そうとしているんだぜ!!」
「くっ…………」

その言葉には、さしもの恭也も反論できない。
武器は確かに優れた力を持っている。だがそれに対し、いくつかの弱点が存在するのだ。
その最たるものの一つが、携帯の不便性。
武器はどうしてもかさばる。かさばらない武器もあるが、そう言ったものは他の武器に比べて威力に乏しい。

小太刀はまだ比較的に携帯しやすい武器だが、日常生活の中で持ち歩くのは困難だろう。
ましてや、恭也達は学生。私服の中に忍ばせるのならともかく、制服の中に忍ばせるのは無理があった。
何しろ、学校では体育があり、当然着替えをする機会もある。
場合によっては、服装チェックや持ち物検査をされる事もあるだろう。
そんな時に小太刀などを持っていては、即座に大問題になる。

その意味では普段から持ち歩かない恭也達はちゃんと良識があるだろう。
だがその代わりに、剣士としての気構えに綻びがある。
そしてその綻びが今、恭也を窮地に立たせていた。
もし、小太刀が一振りでも彼の手元にあれば、結果は逆になっていたかもしれないと言うのに。

「そして覚えておけ、俺とお前らの最大の差。
不破恭也が地に伏した最大の理由、それは『戦ってきた敵の多様性』だ!!」

ハーミットは、これまで数多の敵と戦い、様々な武術家と出会ってきた。
同じ技を操る、自分より全てにおいてやや上の力を持つ敵。
圧倒的に優れた戦力を持つ敵。武器を持った敵。
そして、いつも自分より強い者とばかり戦い続け、その悉くを打ち負かした男とも。
その経験が、ここ一番でのハーミットの業に力を与えていた。

「お前らのヌルい覚悟じゃ、千年かけても武を極めることなどできない。
 それを、この場で思い知らせてやるよ! 本物の中国拳法、覇者の拳でな!!」
「そう…簡単にやらせるか!!」

痛む体に鞭を打ち、恭也は再度構えを取る。
その構えは先のダメージが抜けきっていないのか、先ほどまでよりどこか迫力に欠けていた。
恭也はようやく理解する。先ほどから感じていたやりにくさを。
敵が今まで戦った事のないタイプだからだと、恭也は思っていた。
だがそれは、正しくもあり間違いでもあったのだ。

(確かに戦った事のないタイプだ。こいつは………死を覚悟してこの戦いに臨んでいる!
 そして、俺を殺すつもりで戦っているんだ。致命傷を避ける、何て言うのは、確かにヌルかったか……)

殺す事と殺される事。双方の意味で覚悟した者特有の技の切れ、ギリギリの場面での半歩深い踏み込み。
それが恭也の感じていたやりにくさの正体であり、武器の有無を含めて彼にここまでの苦戦をさせた理由の一端。
これがすべてではないが、突然の襲撃にそう言った覚悟が不十分だったことがこの現状を生んでいた。

しかしそれは、決して恭也が責められるべき事ではない。
如何に殺す為の技を研鑽し、その覚悟を持って鍛錬していたとはいえ、これまでその経験がなかったのだ。
そんな中でこの突発事態に対処し、僅かなきっかけでその覚悟を持つ事が出来るとすれば、それこそ尋常ではない。そして、高町恭也と言う男は尋常な剣士ではなかった。

(なら、俺がする事も一つしかない)
「フン、良い眼だ。ようやくその気になったか。あのバカほどじゃねぇが、火付きの悪い野郎だ!」

ハーミットは恭也の眼の奥に覚悟の光を見て、笑みを浮かべて踊り掛かる。
先ほどまで同様の、反射を逆手に取った変幻自在の攻撃。時に捨て身にも近い防御。
これらを駆使し、徐々に恭也にダメージを蓄積していく。

その最中、恭也の突きを避けた瞬間に放った手刀を目くらましに、身をひるがえす。
また背後を取られると警戒した恭也は、それを阻むべくハーミットに合わせて身体を反転させる。
だが、それは巧妙に仕組まれたフェイントだった。

強靭な体を頼みに、一度反転しようとしたのとは逆方向に無理矢理再度反転するハーミット。
その結果、膝に不安を抱える恭也はわずかに出遅れ、背を取られた。そして……

「倒発鳥雷撃後脳!!!」

『倒発鳥雷撃後脳』、本来なら敵の攻撃を裁きながら特殊な歩法で背後に回り、後頭部に手刀を放った直後、同じ箇所に二撃目の突きを放つ非常に危険な技だ。
それが今まさに、無防備となった恭也の首を襲う。

本来なら、この連撃が決まれば終わりだったろう。
しかし、恭也はここでハーミットの予想を覆す。

「がっ…おおぉぉ!!」
(なんつぅ野郎だ……二撃目を避けやがった!?)

そう。恭也は、そのとどめの一撃を見事避けて見せた。
耐えきった者はいる、全てかわした者もいる。
しかし、一撃目を受けながらも二撃目をかわした男を、ハーミットは知らない。

「驚いたぞ。この技の二撃目を避けたのは、お前が初めてだ!」
「それはお互い様だ。あんな無茶な動きが出来るとは、相当に鍛えこんでいるようだな」

そう、正直あんな無茶な動きをすれば、膝を壊さないまでも、靭帯にかなりのダメージを与える。
それを無視してあんな真似をしたと言う事は、それを可能にできるだけの強靭な肉体を作っていることの証左だ。
その事を、ほんのわずかだが恭也はうらやましく思った。

「ならばここから先は、俺も加減はしない。死んでも恨むなよ!」
「ハン! そうこなくっちゃな。あのバカみたいに甘い奴は、一人で十分だ!!」

対する恭也も、ついに精神的な枷を外してハーミットに応じる。
覚悟を決めた為か、甚大なダメージを受けたにもかかわらずその動きの切れはドンドン増していく。

やがて、二人は申し合わせたかのようにクロスレンジで戦い始める。
恭也は劈掛拳を封じる為に、ハーミットは鋼糸と飛針を封じる為だ。

そして、恭也の放ったアッパーとフックの中間の拳をハーミットが防いだところで異変が生じる。
確かに防いだ筈のそれは、そこからさらに伸びハーミットのあごに伸びていく。
それを、辛うじてハーミットは肩で受けて防いだ。
その後も、時折何度か恭也の放つ攻撃はハーミットの予想を上回る動きを見せていた。

(なんだ、こりゃあ! 防いだはずの拳が、蹴りが、妙なところから伸びてきやがる!?)
(これに反応するか。それどころか反撃まで入れてくるとは……やはりこの男、只者じゃない!?)

恭也が先ほどから織り交ぜているのは、御神流にあって『貫』と呼ばれる技法だ。
相手の防御や見切りをこちらが見切り、そして攻撃を通すこの技をかけられた側は、まるで防御をすり抜けられたような錯覚に陥るという。
まさに、ハーミットがまさにその錯覚に陥っているのだが、それを寸での所で捌き反撃に転じるのだから、この男も並みではない。

そうして、二人の激しい攻防は続いていく。
だがそこは、無手専門の者と無手は補助に過ぎない者の差。
御神流独自の技巧を駆使して追いすがる恭也だが、徐々に差が出てくる。
数々の死闘を経た経験から来る勝負強さで、ハーミットが勝りだしたのだ。

(不味いな、これ以上はジリ貧だ。なんとかして、形勢を覆さないと……)
(ち、そろそろ時間がヤバいか。
警察から逃げるのは何てことねぇが、面倒なことになる前に終わらせるしかねぇ!)

理由は違えど、お互いに戦闘思考が最終段階に入りつつある。
自然、ピリピリとした空気もさらに高まっていく。
そして、先に動いたのは恭也の方だった。

「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

恭也が前傾姿勢になった瞬間、彼の視界は色を失いモノクロに変化する。
同時に、恭也の眼にはハーミットを始め周囲の全ての動きがスローに移っていた。
それどころか、恭也の主観では自身の動きさえもひどく遅く感じ、空気の粘度を感じてさえいる。

御神流、奥義の歩法「神速」。
瞬間的に自らの知覚力を爆発的に高めることにより、あたかも周囲が止まっているかのように振る舞うことを可能とし、肉体の限界ラインに限りなく迫った身体能力を発揮する驚異の荒技だ。
プロの野球選手などが、ボールが止まって見える事があると語るが、乱暴に言ってしまえばそれと同じ括りだ。
ただ、驚くべきことに御神の剣士は、意図的にこれを引き起こす。

それまでとは比較にならない速度で、恭也は敵に向かってモノクロの世界を疾走する。
本来なら、小太刀を手に薙ぎや抜刀系の技につなげる所だが、今回はその小太刀がない。
故に、渾身の力を注いでの必殺の蹴りを放つ。
恭也の人生でも父や御神の関係者を除けば、空手家であり明心館の館長を務める「巻島重蔵」くらいしかこれに対応できた人間はいない。

そしてこの日、新たな一人が恭也の脳髄にその名を刻む。
ハーミットまで後三歩と迫った瞬間、恭也とハーミットの眼が合った。

(バカな!?)

一瞬偶然かと思った恭也。だが、それを即座に否定する。
これまでの敵の力を見れば、その力が自分と同等である事は明白。
なら、自身にできる動きに反応できないとは限らない。

しかし、すでに後三歩のところまで来てしまっている。
今更止まる事も、方向転換も間に合わない。
神速の最中にそんな無理な動きをすれば、今度こそ膝を壊してしまいかねないからだ。
故に、恭也は意を決して最後の一撃を放つ。

「はぁっ!!」
「おおっ!!」

これだけの速度から放たれる蹴りは、直撃すれば如何にハーミットといえどもただでは済まない。
元より脚の力は腕の三倍と言われ、武術家は総じて足腰が強靭だ。
その力をダイレクトに叩きこめる技こそが、蹴り。
神速の速度から放たれるそれの威力は、人体にとって致命的なレベルを軽く超えるだろう。
そう、直撃していたのなら。

「っあ、が……!!」
「恭ちゃん!」
「「恭也!」」
「お兄ちゃん!」
「「(お)師匠!」」

苦悶の声は、ハーミットではなく恭也のもの。
ギリギリのところで辛うじてハーミットは恭也の一撃をかわし、もんどりうって地を転がったのだ。
それは、確かに彼が神速に反応して見せた事の証左。
そして、ゆっくりと立ち上がったハーミットは服の汚れを払いながら、ゆっくりと語る。

「おしかったな。だが、場所が悪かった。こうも狭い場所では、その技を十分に活かしきれなかったか」

そう、神速が回避されたのは、確かにハーミットがその動きに反応できたからだ。
だが、それだけではない。住宅街の一角という、決して広いとは言えない場所。
そこで取れる動きの幅は、どうしても制限される。
故に、ハーミットはその制限された動きから推測し、恭也の一撃を避ける事が出来たのだ。

もし、もっと広い場所で戦っていたのなら。
もし、恭也がもう少しでも神速を扱い切れていたら。
『もし』を挙げだせばきりがないが、それは同時に無意味でもある。

恭也の膝は神速の連続使用には耐えられない。つかえて数回。
しかも、使用後にはかなりの反動が生じ、膝に激痛が走る。
今はなんとか立つ事が出来ているが、機動力の低下は否めない。

「そして、これで終わりだ」

ハーミットの拳が固く握られる。
それまでは固まっていた美由希や晶、レンが大急ぎで動きだすが既に遅い。
ハーミットの掌打が恭也を叩き潰すと思われたが、その拳は空を切った。
だがそれは、恭也の足掻きの結果でもなければ、ハーミットのミスや慈悲でもない。
その原因は……

「フィアッセさん?」
「恭…也、逃げて……」

なのはの声など聞こえない様に、フィアッセはそこまで言って地に倒れ伏す。
しかし、なのはは一瞬だけだが見た。フィアッセの背に広がった漆黒の翼を。
それこそが、恭也に今の一撃が届かなかった原因。

HGS、別名『高機能性遺伝子障害』
元は、先天性の遺伝子病である「変異性遺伝子障害」と呼ばれるものであり、死病ではないが根元的な治療は現代の医学では不可能な難病というだけのもの。
しかし、その中でも特殊な患者にこの名称が付き、その患者達にはある共通した特徴がある。
第一に、患者の意思で実体化を操作できる『フィン』と呼ばれる『翼』を持つ事。
第二に、この患者達は能力の種類や大きさに差はあれどもみな「超能力者」であると言う事だ。

フィアッセもまたこの患者であり、「AS-30 ルシファー」という名称の漆黒の翼をもつ。
だが、彼女の力は実のところそう強くない。正直、実用的とは到底言えまい。
しかし、いまフィアッセはそのなけなしの力を使って、僅かに恭也の体を引き寄せたのだ。

とはいえ、これでは所詮一時しのぎにしかならない。
ハーミットはいまだ健在で、唯一対抗できる恭也も万全からは程遠い。
しかし、何を思ったのかハーミットは突然恭也達に背を向けた。

「………………フン、興が削がれた。
 今日のところは見逃してやる、次会う時まで腕を磨いておけ!
 刀がないから負けた、なんて下らん言い訳をしない様にな」

それだけ言い残し、ハーミットはその場から姿を消した。
突然始まり、突然終わった戦いに一同はしばらく茫然としていたが、やがて事態を再認識した桃子が動き出す。

「な、なんだかよくわからないけど…とにかく恭也とフィアッセを病院に連れてくわよ!!
 美由希と晶ちゃんは恭也とフィアッセを中に! レンちゃんは救急箱、なのはは救急車呼んで!」
「「「「は、はい!!」」」」
「俺は、大丈夫だ。それより、フィアッセを……」
「良いから、恭ちゃんも大人しくしてて!」
「そうよ、怪我人は大人しくしてなさい!!」

美由希だけならともかく、桃子にまで詰め寄られては恭也としても強くは出られない。
仕方なく、美由希に肩を貸してもらいながら家に入っていく。
晶は晶で、恭也への説教を終えた桃子と一緒にフィアッセを中に連れて行った。

その後、二人は海鳴大学病院に運び込まれ、フィアッセの主治医である銀髪のHGS患者「フィリス・矢沢」の治療を受ける。
幸運なことに恭也とフィアッセ、双方ともに症状は軽くその日は病院で厄介になったが、翌日には退院する事が出来た。

同時に、先に知らされていた桃子を除く高町家の面々は、フィアッセの秘密を知る事となる。
また、これが縁となりフィリスは高町家全体の主治医の座に納まり、恭也の膝の治療に当たるのだった。
ついでに言うと、退院後警察からの事情聴取を受けることになったのは、全くの余談である。



  *  *  *  *  *



恭也とフィアッセが病院の厄介になっている頃。
高町家からだいぶ距離の離れた路地裏で、一人の男が壁に体を預けていた。

「………………フッフッフッ…フゥ~。ま、これだけやっておけば十分か」

フードを取り払い、先の戦いの熱を吐き出すように深く息を突くハーミットこと谷本夏。
フードで隠されていたその表情には先ほどまでの険しさはなく、代わりに疲労が色濃く滲んでいた。
そこへ、どこからともなく現れた人影から声がかけられる。

「ケケケケケ! なぁにが十分なんだ、ハーミット?」
「ちっ、どこから湧きやがった宇宙人!?」

それまでの僅かに緩んでいた表情はすぐさま険しさを取り戻し、人影に対し敵意をむき出しにする夏。
その先にいたのは、人間離れして長い耳とオカッパ頭、そして邪悪なオーラをまき散らす悪魔の姿があった。

「いやぁ、俺様としても情報を集めた手前、おめぇが何をするのか気になってな。
 大事な友人と余所様にもしもの事があったら、寝覚めが悪ぃだろ?」
「心にもねぇこと言ってんじゃねぇよ。てめぇの事だ、俺がこうする事も読んでたんだろ。
 その上で俺を利用して奴の力を測った、違うか?」

殊勝な事を口にする新島だが、夏はそんな事一切信用していない。
この男の性格上、天地がひっくりかえっても本気でそんな事を言うなど、『物理的』にあり得ないのだ。
ならば、考えられる可能性は一つ。
体良く夏を利用し、恭也の実力を見る事がその目的だったと考えるのは必然だろう。

「さぁて、どうだろうな?」
「けっ、つくづく煮ても焼いても食えねェ野郎だ!!」
「ヒャハハハハ、そんな褒めるなって!!」

夏の嫌味もどこ吹く風、『宇宙人の皮を被った悪魔』と称されるこの男にとって、この程度は賛辞でしかない。
新島相手に舌戦を繰り広げる不毛さを理解しているのか、夏は忌々しそうにはしていてもそれ以上は口を噤む。
代わりに、上機嫌の新島が会話を進めて行く。

「にしても、思っていた以上にやるみたいだな、高町恭也は。
お前ほどの男が、武器を持たない武器使いにこれほど手古摺るなんてよ」
「てめぇの眼は節穴か? あのままやってれば野郎は死んでた。
 奴が生きているのは、俺の気紛れに他ならねぇんだぞ」

そう語りながら、新島は手持ちの情報端末に何かを入力していく。
先ほどの戦闘から得られた情報を、これまでに収集した情報に上書きしているのだろう。
とはいえ夏は、自身を比較対象にし、その上で恭也を高く評価する新島に侮蔑するような言葉を吐く。
だがそこで新島は、滑り込むように夏の懐に踏み込んだ。

「ほぉ~…………じゃ、これは何なんだ?」

宇宙人パワーで一切の気配を感じさせずに夏の懐に入った新島は、その脇腹を軽く小突く。
すると、夏の顔色が一変した。

「っつ!? て、てめぇ!!!」
「おっと! あぶねぇ、あぶねぇ、いきなり何すんだよ、ハーミット」

新島を振り払うように放たれる手刀を、新島は奇怪な動き『新島式無影八艘飛び』で回避する。
しかし、夏の動きには先ほどまでの切れがない。
そしてその口からは、苦悶を宿した声が漏れる。

「この…地球外生命体がぁ!」
「……ヒャハハハ、やっぱりやせ我慢してやがったな!!」
「つくづくうぜぇ野郎だ、あまり調子に乗ってるとここでぶっ殺すぞ!!」

路地裏に充満していく、恭也と戦っていた時とは比較にならない殺気。
だが、それをそよ風のように受け流す新島。
それどころか、その懐から包帯などの応急処置の道具一式を引っ張り出して夏に投げ渡す。
つまり、これでその痛みの原因を治療しろと言っているのだ。

「相当危なかったみてぇだな。もしまともに食らってれば、アバラの二・三本折れてたんじゃねぇか?」
(フン、その程度で済めばまだマシだ。半端な奴なら、下手すりゃ一撃で死ぬぞ、アレは。
 あの速度もそうだが、野郎の最期の一撃は恐らく「浸透剄」かそれに類する技の筈……)
「だんまりかよ。おめぇがそうやって黙りこむって事は、本当にヤバかったって事か。
 膝を壊し、師を持たない古流剣術家って話だからどれほどのもんかと思ったんだが………眠れる獅子の類だったみてぇだな」

厳密には、恭也が使ったのは「徹」と呼ばれる技法だ。
御神流の打・斬撃の打ち方であるこれは、素手・木刀・真剣を問わずに衝撃を徹す。
確かに夏が推察したように、その性質は中国拳法の「浸透剄」に類するものだろう。
また優れた「徹」の使い手は、時に蹴撃からでもこれを放つ。

夏は服をたくし上げ、赤く腫れ上がった脇腹を露出させる。
折れてはいないが、アバラにヒビくらいは入っているかもしれない。
だが、問題なのはその奥深く。内臓に深く重いダメージが刻みつけられた事を、夏は理解していた。
もし直撃を受けていれば、凄まじい速度と渾身の力を込めた蹴りによってアバラを折られ、浸透剄に似た技で内臓に甚大なダメージを与えられていただろう。
夏はその身を以て、恭也の放った技がどんなものであるかを理解していたのだ。

(負けたとまでは思わねぇ、それぐらいならまだ動ける。
…………が、もし武器が奴の手にあったとしたら、どうなっていたか……)

例え直撃を受けたとして、最後に立っていたのは自分であろうという自負はある。
だが、その後に控える美由希達の相手をできたかは疑問だ。
なにより、もし恭也の手に武器があったのなら、はたして勝つ事が出来たかどうか……。

「ムカつくが、確かにてめぇの言う通り腕は悪くねぇ。
 だが、脳みそが緩過ぎんだよ、あいつらは」
「ああ、武器使いのくせに武器を携帯してないなんて、正気を疑うっつうのは同感だぜ。
 フレイヤの奴だって、携帯性を考慮してあの長さの杖にしたわけだしな。
 ま、師もなく荒事とも無縁だったんだ、危機感が薄かったんだろうよ」
「けっ、そんな事情を敵が考慮してくれるのか? んなわけねぇだろ!」

人間、平穏の中で危機感や警戒心を維持するのは非常に難しい。
穏やかな生活が続けば、必然気は緩み、隙も多くなる。これはどうしようもない、人間の性だ。
しかし、その性に抗ってこその武術家でもある。
夏の言は恐ろしく厳しいが、武術家としては当然のものだ。
だが、だからこそ新島は、侮蔑するように吐き捨てた夏の言葉から、彼の真意を拾い上げる事が出来た。

「ケケー! 優しいねー、アイツらにその事を気付かせてやるために一芝居打つなんて…っぐっ!」
「黙ってろ、宇宙人!!」

真意を気付かれた事を察した夏は、新島がそれを言う前に彼のあごを殴ってやめさせた。
その顔は僅かに紅潮し、彼が照れている事は明らか。

「ふざけんじゃねぇぞ! なんでこの俺があんな奴らの為にそんな事をしなきゃならねぇ!!」
「そりゃおめぇ、ほのかの為だろ?」
「ぐ………」
「昔のロキみてぇなこともあるだろうし、アイツを人質に取る可能性は高ぇ。
 が、お前や兼一もいつでもどこでもアイツを守れるわけじゃねぇ」

そう、現実問題としてほのかが危険にさらされる可能性は皆無ではない。
まっとうな武人の誇りを持つ者ならそんな事はしないだろうが、全員が全員そうとは限らないのだ。
達人の中にも性格のねじ曲がった者はいるし、武人の誇りを蔑ろにする者もいる。
ならば、そういった者たちにも対処できるよう、何らかの策が必要だ。
そして、夏が案じた策がこれ。

「なら話は簡単だ、アイツの近くにいる奴らに勝手に守らせりゃいい。
 幸い、ほのかの近くにはなかなかに腕の立つ剣術家がいる。
 だが、そいつらには一つ問題があった。高町の連中は腕はいいのに危機感が薄い。
 これじゃあおめぇの狙いが外されちまう。となれば、する事は一つ。
 連中の腕を試すついでに、危機感をあおって武器を携帯するように仕向ければいいって寸法だ」
「……………………」

新島の推理に、夏は沈黙を以て応えた。
それは何よりも如実に、その推理が正解であることを物語っている。
実際、この日を境に恭也や美由希はなんとかして小太刀を携帯できないか、真剣に検討し出した。
つまり夏の今回の行動は、完全に彼の思惑通りの結果を生んだことになる。

「ヒャッヒャッヒャッ! にしても、おめぇもなかなかに悪じゃねぇか!」
「フン、この世の摂理は『嘘』と『力』。世の中にいるのは、いつだって利用する奴と利用される奴だ。
 騙されて利用される奴が悪いんだよ!」
「ま、そういう事にしといてやるか」
「けっ……!」

軽い応急処置を終えたのか、夏は新島に道具を投げ返し、身をひるがえしてその場を後にする。
その後ろ姿をしばらく見送った新島は、ぽつりと誰もいない路地裏で洩らす。

「ケケ、ホントに素直じゃねぇなぁ。
 その結果、大事なモンを傷つけられなくなるんなら、アイツらにとっても悪い話じゃねぇだろうに」

そう、単なる結果論かもしれないが、その結果として彼らの大事な友人を守る事が出来る可能性は上がる。
また、本人達も武人としての気構えを思い出す事が出来るのだから、悪いことなど何もない。
夏のもう一つの本心がどこにあるかは分からないが、彼が言うほど冷酷な策ではないのだ。
そうして、新島もまた路地裏を離れ帰路に付く。

「ま、ここで引き上げちまう時点で、俺も丸くなったとしか言えねぇな」

新島なら、もっと冷酷かつ冷徹な策で恭也達を利用できるだろう。
あるいは、この機に乗じて何らかの方法で恭也達を手駒に布石を打つこともできた筈だ。
だが、あえて新島はそれをせず、今は静観を決め込んでいる。
確かに彼の言う通り、それは『丸くなった』と言えるだろう。
まあ、もちろん今後も静観し続ける筈もないのだが……。

(しかし、まさかアレほどまでに腕が立つっつーのは、嬉しい誤算だったな。
 人材としては申し分なし。性格的にも、一本筋が通ってるあの性格なら操る手はある。
 問題は膝の故障と師匠が不在なことだが…………ま、何とでもしてやるさ。
 踊って貰うぜ、俺様の掌の上でなぁ! ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!)

新島の灰色の脳細胞は、すでにこの先の予定を立て始めている。
どうやって彼らと接触を持つのか、どう言いくるめて新白連合に引き込むのか。
新島の中で、邪悪な計画が着々と立案されていくのだった。

そしてこの時、美由希と病院で治療を受けていた恭也がただならぬ悪寒を感じたとか。
その悪寒と新島の瘴気の因果関係は、誰にもわからない。






あとがき

さて、純武術のみの戦闘パートが終わりました。
できの方は……………皆さんに評価していただくしかありませんね。
とりあえずなっつんの出番はこれで一区切りで、次からはまた兼一の出番になります。
そして、いよいよ本格的に武術家としての兼一との接触になるのですよ!!
関わるきっかけとしては、やっぱり無難(?)にアレかなぁ……。


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