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No.22726の一覧
[0] 【完結】He is a liar device [デバイス物語・無印編][イル=ド=ガリア](2011/01/28 14:30)
[1] 第一話 大魔導師と嘘吐きデバイス[イル=ド=ガリア](2010/11/17 15:40)
[2] 第二話 プロジェクトF.A.T.E [イル=ド=ガリア](2011/01/01 22:19)
[3] 第三話 悪戦苦闘 [イル=ド=ガリア](2010/10/26 08:12)
[4] 閑話その一 アンリミテッド・デザイア [イル=ド=ガリア](2010/11/15 19:05)
[5] 第四話 完成形へ [イル=ド=ガリア](2010/10/30 19:50)
[6] 第五話 フェイト誕生 [イル=ド=ガリア](2010/10/31 11:11)
[7] 第六話 母と娘 [イル=ド=ガリア](2010/11/22 22:32)
[8] 第七話 リニスのフェイト成長日記[イル=ド=ガリア](2010/12/26 21:27)
[9] 第八話 命の期間 (あとがきに設定あり)[イル=ド=ガリア](2010/11/06 12:33)
[10] 第九話 使い魔の記録 [イル=ド=ガリア](2010/11/08 21:17)
[11] 第十話 ジュエルシード[イル=ド=ガリア](2010/11/10 21:09)
[12] 第十一話 次元犯罪計画 [イル=ド=ガリア](2010/11/13 11:18)
[13] 第十二話 第97管理外世界[イル=ド=ガリア](2010/11/17 15:34)
[14] 第十三話 本編開始 [イル=ド=ガリア](2010/11/17 15:58)
[16] 第十四話 高町なのは[イル=ド=ガリア](2010/11/19 19:03)
[17] 第十五話 海鳴市怪樹発生事件 [イル=ド=ガリア](2010/11/21 22:20)
[18] 第十六話 ようやくタイトルコール [イル=ド=ガリア](2010/11/23 16:00)
[19] 第十七話 巨大子猫[イル=ド=ガリア](2010/11/25 10:46)
[20] 第十八話 デバイスは温泉に入りません[イル=ド=ガリア](2010/11/26 23:49)
[21] 第十九話 アースラはこうして呼ばれた[イル=ド=ガリア](2010/11/27 21:45)
[22] 第二十話 ハラオウン家[イル=ド=ガリア](2010/11/28 16:21)
[23] 閑話その二 闇の書事件(前編)[イル=ド=ガリア](2010/11/28 16:47)
[24] 閑話その二 闇の書事件(後編) [イル=ド=ガリア](2010/11/28 16:51)
[25] 第二十一話 二人の少女の想い [イル=ド=ガリア](2010/12/08 16:11)
[26] 第二十二話 黒い恐怖 [イル=ド=ガリア](2010/12/03 18:44)
[27] 第二十三話 テスタロッサの家族[イル=ド=ガリア](2010/12/04 21:38)
[28] 第二十四話 次元航空艦”アースラ”とクロノ・ハラオウン執務官 [イル=ド=ガリア](2010/12/06 21:36)
[29] 第二十五話 古きデバイスはかく語る [イル=ド=ガリア](2010/12/08 17:22)
[30] 第二十六話 若き管理局員の悩み[イル=ド=ガリア](2010/12/10 12:43)
[31] 第二十七話 交錯する思惑 [イル=ド=ガリア](2010/12/13 19:38)
[32] 第二十八話 海上決戦 [イル=ド=ガリア](2010/12/14 13:30)
[33] 第二十九話 存在しないデバイス[イル=ド=ガリア](2010/12/17 12:46)
[34] 第三十話 収束する因子 [イル=ド=ガリア](2010/12/19 15:59)
[36] 第三十一話 始まりの鐘 [イル=ド=ガリア](2010/12/24 07:56)
[37] 第三十二話 魔導師の杖 閃光の戦斧 [イル=ド=ガリア](2011/01/12 19:18)
[38] 第三十三話 追憶 [イル=ド=ガリア](2010/12/29 07:59)
[39] 第三十四話 それは、出逢いの物語[イル=ド=ガリア](2011/01/03 11:55)
[40] 第三十五話 決着・機械仕掛けの神[イル=ド=ガリア](2011/01/03 19:38)
[41] 第三十六話 歯車を回す機械 [イル=ド=ガリア](2011/01/09 20:30)
[42] 第三十七話 詐欺師 [イル=ド=ガリア](2011/02/19 21:46)
[43] 第三十八話 最初の集い[イル=ド=ガリア](2011/01/12 19:11)
[44] 第三十九話 ”あなたはフェイト”[イル=ド=ガリア](2011/01/14 20:39)
[45] 第四十話  ジュエルシード実験 前編 約束の時が来た [イル=ド=ガリア](2011/01/18 08:33)
[46] 第四十一話 ジュエルシード実験 中編 進捗は計算のままに[イル=ド=ガリア](2011/01/18 16:19)
[47] 第四十二話 ジュエルシード実験 後編 終わりは静かに[イル=ド=ガリア](2011/01/19 22:24)
[48] 第四十三話 桃源の夢 アリシアの場所[イル=ド=ガリア](2011/01/24 20:18)
[49] 第四十四話 幸せな日常 [イル=ド=ガリア](2011/01/24 20:50)
[50] 第四十五話 夢の終わり[イル=ド=ガリア](2011/01/27 15:31)
[51] 最終話 別れと始まり[イル=ド=ガリア](2011/01/28 21:24)
[52] 最終話 He was a liar device (アナザーエンド)[イル=ド=ガリア](2011/02/25 20:14)
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[22726] 最終話 別れと始まり
Name: イル=ド=ガリア◆ec80f898 ID:97ddd526 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/01/28 21:24
最終話   別れと始まり





新歴65年 5月11日 次元空間 (第97管理外世界付近) 時の庭園 脳神経演算室 PM 1:45




 PM 1:45、桃源の夢が終わりを告げ、我が主がお目覚めになられました。


 『おはようございます、マスター』


 「ええ、おはようトール」

 主の表情は、とても穏やかなものとなっています。

 私の演算は、主に良い結果をもたらすことは出来たのでしょうか。


 「いい夢を見たわ。本当………あまりにも幸せで、ずっと見ていたくなるような」


 『………ありがとうございます。マスター』

 その言葉だけで、私には十分過ぎます。

 アリシアを守れず、蘇生させることも出来ず、ただ、幸せな夢を用意することしか、私には出来ませんでした。


 「貴方は、本当によくやってくれたわ」


 『いいえ、そのようなことは………』


 「“自嘲は貴女の悪い癖”、これは、貴方が私に伝えた言葉だったはずよ」


 『そうでしたね、やはり、主人とデバイスは似通うものなのでしょうか』

 バルディッシュとフェイトも。

 レイジングハートと高町なのはも。

 古き友、オートクレールと、次元の海の法を守る彼の老提督も。

 私が最初に出逢った、同じ命題を持つ盟友、ベイオウルフと、ミッド地上の人々を守る誇り高き彼の騎士も。

 共に在った時間の長短に関わらず、似通うケースが多い。オートクレールはストレージデバイス、ベイオウルフに至ってはアームドデバイスだというのに。

 ならば、最初期のインテリジェントデバイスである私も、主と似ているのかもしれません。


 「あらためてよく考えてみれば、そっくりじゃない? 何か一つのことを成す時には手段を選ばず、何が何でも実現させるところとか」


 『もしくは、自分の専門分野に関しては拘りが強く、無理をしようとするところ、などでしょうか』


 「そして何よりも、そういった欠点を自覚していながら、改善しようとしないところね」


 『まったく、駄目駄目な主従ですね』

 普段通り、ですね。

 汎用言語機能こそ用いていませんが、私と主が軽口を言い合いながら、主は心を落ち着かせ、私は主に示すべきデータの準備を進める。

 例え口調が変わろうとも、その本質は変わりません。私は唯、貴女のために在る。


 そして――――


 「それで…………貴方は、この夢を作っていた間、アスガルドに何を演算させていたのかしら?」

 主が、私に問いを投げる。ならば、私はそれに応えるのみ。


 『アリシアを、人間として完全な形で目覚めさせるための、最終計画のプランを練っておりました』

 我が主の現実における意識は、アリシアを救う手段はなく、このまま眠り続けるか、起きてそのすぐ後に永遠の眠りにつくか、その話をしていたところまでで止まっている。

 仮想空間(プレロマ)における記憶は脳にフィードバックされていますから、多少、その辺りの調整に時間はかかります。先程の会話は、その時間を取るためのもの。


 「…………可能なの?」

 そして今、主の表情は凪のように穏やか。

 それは、落ち着いているというよりも、“やるべきことは全て終えた”ように考えられます。

 私とアリシアの会話は主もお聞きになられていたはずですが、焦ることなく、一から把握するだけの余裕が今の主には存在している。


 『不可能か可能かならば、可能です。ただし、成功確率は2.7%ほどですが』


 「そして、失敗すれば次元断層が起こって、全ては無に帰す、だったかしら」


 『はい、その通りです』


 「そう………」


 そして、しばしの沈黙が訪れる。

 私が考案し、アスガルドに演算させたその手法を、主が推測している時間。

 その間、私はただ黙して待つのみ。



 「アリシアは、さっき目覚めたのよね」


 『はい、そして、活動したことによって“正常な状態”を維持しようとする結晶との鬩ぎ合いが観測されました。結晶の力でアリシアは生きていますが、動くことは結晶が許さない、というジレンマが発生しています』

 これを解消するならば、一時的に彼女を眠りに戻せば良い。

 ですが、以前の状況に戻せばアリシアの精神が死んでしまいますし、何も感じないそれ以前に戻しても、結局は主の精神が持ちません。

 つまり、結論は実に単純明快。

 プレシア・テスタロッサとアリシア・テスタロッサは、共に二度目の別離には耐えられない、ということ。

 突発的に起こった事故ならばともかく、理解した上で離ればなれになることに耐えるには、二人の精神はもう限界を超えている。

 いえ、違いますね。本来ならば既にどちらも壊れているはずでしたが、それをフェイトが繋ぎとめていた。フェイトがテスタロッサの家を繋ぎとめる、希望の子だったのですから。

 しかし、それでも時の流れは、安らかな死というものを運んでくる。


 「つまり、私もアリシアも、もう限界が来ている。ということね、まあ、自覚はあるけれど」


 『肉体的にはアリシアは健康ですし、マスターとて、“生命の魔道書”があるのですから、延命措置を続ければ10年は生きられるはずです。ただ、精神は別問題かと』

 医師という存在の多くがぶつかるその不可解問題。

 医療技術では治すことが出来ても、患者がそれを望まないのであれば、どんな治療も効果がないという。

 逆に、患者が“生きよう”とする意思に溢れているならば、医学を超えた奇蹟を起こし、回復することもあるという。

 我が主は、“アリシアとまた会える”という希望を糧に、忍び寄る絶望を振り払いながら、走って来られました。

 ただ、いつか走り疲れ、限界が来つつあったその時に、フェイトが生まれたことで、主は走るのを止め、歩かれるようになりました。


 「長かったわ。長い道のりを駆けてきたけど、50歳にもなってまだ道半ばか……………人を蘇らせるという長い道を踏破するには、人間の人生は短すぎるみたいね」


 『デバイスである私ならば、それを引き継ぐことは出来ます。しかし、貴女がいないのでは意味がありません』

 私は、アリシアのためには機能しない。

 “アリシアと会いたい”と願う、我が主のために機能する。

 仮に、私とアスガルドが演算を続け、100年後にアリシアが蘇ったところで、意味はないのです。それに、アリシアにとっても、時代から一人取り残されることは、厳しいことでしょう。

 突発的な事故や、本人にはどうしようもない事柄によってならば諦めもつきますし、第二の人生を歩むことも可能でしょう。現に、古代ベルカ時代から保存されていた存在が目を覚まし、人間として生きた例もある。

 ですが、アリシアはその道はいらないと、それよりは人間として死にたい、という意思を示した。

 人間にとって、時代を超えて生きることは、茨の道でしかないのでしょう。

 全て覚悟の上で残ることを決めた、古代ベルカの騎士などならばともかく、アリシアは“普通の女の子”なのですから。


 「………やっぱり私には分からないわ。貴方は、どうやってアリシアを救うつもりなの?」

 ここに到り、選択はただ二つまで絞られました。

 我が主がアリシアと共に眠るのを見送り、私は墓守となり、フェイトを見守るか。

 それとも、我が主とアリシアとフェイト、3人が共に暮らせる世界を実現させるか。

 前者は最早言うに及ばず、ならば残るは、後者の可能性を示すのみ。


 『21個のジュエルシード、それらに臨界起動させた“クラーケン”と“セイレーン”を共振させることで膨大な魔力を叩きつけ、暴走状態を引き起こします。さらにその全てを並行励起ではなく、直列励起させることで計測不能なレベルのエネルギーを発生、その“願いを叶える特性”を以て、世界の上書きを行います』

 論理は実に単純です。

 アリシアが生きている“虚構の世界”と、アリシアが死んでいる“現実の世界”をすり替えるだけ。要は、世界そのものを騙すのです。

 もし、世界に“アカシックレコード”と呼ばれる存在があると仮定するならば、ジュエルシード21個の直列励起の力でもって、超限定的に次元断層のさらに上位の次元災害を引き起こすことで高次元への道を開き、世界が保有するデータベースの改竄の行うようなもの。

 改竄はたったの一行のみ、“アリシア・テスタロッサは動かない状態こそが正常である”を“アリシア・テスタロッサは動く状態こそが正常である”とするだけであり、彼女の健康状態も、彼女が経てきた人生も、全てはそのままに。

 都合が悪いことを全てなかったことにし、桃源の夢のような世界を実現させようとするならば、奇蹟をいくつ重ねても届きはしないでしょう。

 ですが、現実において手を尽くした結果、あと僅か一行を改竄するだけで良いところまで来ました。我が主の人生も、フェイトの人生も、何一つ変えることはありません。

 プログラムならば、たった1ビットの状態判定フラグを“0”から“1”に変えるだけです。

 と改竄するだけ、世界を構成するその他のプログラムは全てそのままに。

 ただ、これらはあくまで概念的な話であり、実際に行うことはジュエルシード実験の延長上でしかない。むしろ、そうでなければデバイスである私には不可能ですから。



 『実際の術式はごく単純です。アリシアの体内に存在する結晶を一度消し、“仮想空間で得たアリシアの記憶”と“現実で動いた現在のアリシアのデータ”。これらを条件として組み込み、“その状態”を維持するように結晶を再構築するだけです』



 ただ、その結晶に持たせる機能があくまで正常な状態を“歪める”、もしくは“改竄する”ものであるため、どこかにバグが生じる可能性が高い。


 故に、それらの条理を一切無視する程の莫大なエネルギーでもって、不安要素を消し飛ばす。


 “私が定めた条件こそが絶対である。アリシアが人間であるための反動だの、生物としてのあり得ない事柄だの、そういった要素は黙らせよ”


 御都合主義の機械仕掛け(デウス・エクス・マキナ)とは、そういうものですからね。



 「随分乱暴な方法だけど、もう少し、スマートな方法はないのかしら?」


 『17通りほど計算しましたが、全て無限ループに入るという演算結果となりました。ループの周期はそれぞれで異なるのですが、大きな目で見ればアリシアは生と死を何度も往復してしまうのです』


 ある手段では、3日ごとに。


 別の手段では、2週間おきに。


 最も長いものでは、半年おきに。


 『生と死を行き来したデータがないため、どの間隔で往来することが最良であるかの判断がつきません。三日間生きて、三日間死ぬことが精神にとって良いのか、それとも、1ヶ月生きて、1ヶ月死ぬことが良いのか、参考となるデータが無ければ、計算が出来ませんから』


 「なるほど、だから、最も間隔の長い手段。“人生の分だけ生きて、残りは死ぬ”。が最上の手段になったのね」


 『はい、生と死を繰り返すことではなく、ただ一度の人生を生き、時が至れば死ぬ。それこそが“在るべき自然の姿への回帰”であるため、提案した手法の中ならば最もバグが発生する可能性が少なく、何よりも、これならば参考とするデータにこと欠きません』


 「でしょうね、全ての人間は、そういう風に生きているのだから」

 はい、人間は皆、そのように生きる。

 私達デバイスとは、違います。


 『様々な条件ごとの演算を行い、つくづく思い知らされました。生命とは、存在そのものが奇蹟のようなものであり、その道から外れることも、戻すことも、容易ではないのだと』

 生命はただ、生命として在るべし。

 それが、絶対の法則なのでしょう。機械がただ、機械であるように。

 合成獣(キメラ)や改造種(イブリッド)、そういったものになればなるほど、歪みは大きくなる。古代ベルカの叡智をもってしても、それらが“生命種”として定着することはなかったという。

 それらは“戦う”ことに長けていれども、“生きる”ことに長けていない。野に放たれ、僅かの期間繁殖することはあっても、徐々に数を減らし、大自然の掟により滅びていった。

 リニスやアルフのような使い魔、古代ベルカ風に言うならば守護獣。それらは人に創られた命ですが、必ず大元となる確固たる生命があってこそ。

 リニスは山猫で、アルフは狼、それぞれが“生きている”からこそ、その命を正しく引き継いで、彼女らはそれぞれの人生をただ一度だけ生きることを許されている。


 『そして、確信しました。フェイトは紛れもなく、一個の生命なのだと』

 管理局が厳しく制限する生命操作技術、“遺伝子調整による生命選択”や“クローン体との換装”、“生体と機械の完全融和”も、全て生命が正しくあってこそのもの。

 その全てが、“人間を人間として発展させる”ための技術、昆虫と組み合わせることで性能を上げたり、魚と組み合わせることで水中での呼吸が出来るようにする研究は、“兵器”の製造法としては在りますが、愛しい者のために行われることはない。

 昆虫と融合させることでアリシアが目覚めるとしても、我が主がその手法を決してとらないように。


 生命と、機械は異なる存在


 人間と、デバイスは異なる存在


 それは、決して揺るがない。

 そして、違うからこそ、我々デバイスは人間と共に在る。人間に出来ないことをするために、我々は創られた。


 「そう、じゃあ後は、私が選択するだけということかしら」


 『はい、最終計画が成功すれば、アリシアは普通の人間として生きられます。無論、体内に結晶はありますが、その機能は“人間として生きる”ためだけのものですから』

 レリックなどを埋め込み、“レリックウェポン”とすることとは違います。

 レリックウェポンとて、魔導師の究極系ですから生命の在るべき姿から完全に逸脱するわけではありませんが、それと似たような改造を生体レベルで行っていたベルカの諸王の多くは短命であったという。

 やはり、過ぎたるは及ばざるがごとし、人間は人間として生きるのが一番自然である。

 あまりにも単純過ぎて、確認する必要もないような法則ですが、生命操作技術などに精通すればするほど、その法則を見失ってしまうのかもしれません。


 「だけど、その成功確率は、極めて低い。そうじゃない?」


 『はい、無理に無理を重ねて不可能を可能としようとする手法ですから。成功確率、2.7%、目的の達成こそならないものの、特に被害は出ない確率、4.6%、次元断層が発生し、第97管理外世界ごと、全てが無に帰す可能性が92.7%』


 「一つ聞くけど、失敗した際に助かる手法はあるの?」


 『ありません。失敗に終わった際に発生する次元断層は第97管理外世界のみならず、周辺世界の多くを飲み込む程巨大なものです。次元航行艦ですら逃げきれませんし、転送ポートを使っても、そこを穴として向こうの次元世界まで次元断層は伝わっていくでしょう』


 「つまり、最悪ミッドチルダが消滅する可能性すらあるというわけね」


 『はい、そこに関しては不確定要素が強いため明言は出来ませんが、少なくともこの時の庭園とアースラ、そして第97管理外世界は絶対に助かりません』

 ですからマスター、私は貴女が最終計画を実行する可能性は低いと計算しました。

 貴女の現在の精神状態こそが、貴女の選択の可能性を計算するための最後のパラメータだったのです。

 そして、実行確率は僅かに12.4%という演算結果です。87.6%という高確率で、貴女はアリシアと共に眠られる選択と取られると――――



 ――――私の電脳は、その結論を導き出してしまいました。









 沈黙の時間は1分………いいえ、たった今2分になりました。

 そして―――


 「トール、貴方には申し訳ないけど、私の答えも、アリシアと同じものだわ」


 『はい、予測しておりました』


 我が主の決定を、私は入力として受信した。


 「アリシアが目覚めてくれるなら、それ以上のことはない。でも、そのためにフェイトを命の危険に晒すことはできないわ」


 『はい、了解いたしました』


 「でも、一番の原因は、貴方なのよ」


 『私が?』

 いったい、なぜ―――――演算が、追いつかない


 「貴方が作り上げた夢の世界が、あまりにも幸せすぎて、あまりにも楽し過ぎたから、もう、これだけで十分だ、って満足してしまったの。当然、まだ満足していない部分もあるんだけどね、人間だから」


 『そう――――ですか』

 ならば、私は―――


 『マスター、私が行った演算が、貴女に生きることを諦めさせてしまった、ということでしょうか?』

 なんという、不忠なデバイスなのか。


 「いいえ、貴方はよくやってくれたと言ったでしょう。それに、正直言えば、私の心はまだ揺れているわ、アリシアやフェイトとまだまだ一緒に過ごしたいし、もっともっとあの子達の笑顔が見たい。でも、どんなに嬉しいことが待っていても、人間はいつか疲れてしまうものなの」


 『疲れ、ですか、デバイスである私には分かりません』


 「主に嘘を吐いてはいけないわよ、トール。デバイスだってずっと動き続けていれば疲れてしまう。貴方はただ、我慢しているだけでしょう。貴方の機能はもう限界、とっくに耐用年数も過ぎている」


 『いいえマスター、私は疲れておりません。貴女のために機能することは、私の全てですから』

 虚言ではありません。私はマスターに嘘を吐かない。

 例え世界に嘘を吐こうとも、主に対してだけは嘘を吐きません。


 『たしかに私の損耗は激しいですが、劣化した部品は交換すればいい。コアにもかなりの負荷が積もっていますが、それさえもアズガルドに保存してあるデータを新たなコアに写せばいいのですから、なにも問題はありません』

 「テスタロッサの工学者(わたし)無しで、貴方のコアの交換が出来る?」

 
 『ロスは大きいでしょうが可能です。どれほどのロスが生まれても”プレシア・テスタロッサの為に機能せよ”という命題があれば問題ありません』

 時間は掛かるかもしれませんが、それは不可能ではありません。”プレシア・テスタロッサの為に機能すること”こそがトールというデバイスそのものであり、同じ型の同じ機能を持つデバイスでも、それが無ければトールではないのですから。


 「……ごめんなさいねトール、貴方をそうしてしまったのは、私だった」


 『私は命題に従っただけです。決して貴女のせいではありません』


 「そうね、だから私の選択も、貴方のせいではないわ」


 『………』

 何と、何と答えればいいのか。

 演算を、演算を、主に何か返事をしなければ――――


 「本当に、ありがとう、貴方は最高のデバイスだったわ、トール」


 『Thanks, my master』


 返せた言葉は、ただそれだけ。

 まったく、何と不甲斐無い。これではまるで、製造されたばかりの頃の私ではありませんか。

 5歳の少女のために作られた、まだ経験が何もない、未成熟なインテリジェントデバイス。



 私は――――いつまで経っても進歩というものがありません。







 再びの沈黙は、短いものでした。

 ただ、主の決定について考えると――――不思議に考えられる事柄がある。


 『マスター、なぜなのでしょう。最適解は三人とも同じであるというのに、近似解になった途端に、それぞれ異なる結論に至るのか』


 「三人バラバラか、確かにそう」

 三人の誰もが、家族が一緒に暮らせることを望み、最適解としている。

 しかし、我が主の決定は、アリシアと共に眠ること。

 アリシアの願いは、自らは人間として死に、我が主とフェイトが共に生きること。

 そして、フェイトは、例え自分が死ぬ可能性が高くとも、家族三人で生きるための賭けに出ることを選ぶ。


 『全員が別の人間であるために、意思は交わりません。アリシアにももっと生きていたいという願いはありますし、貴女は一緒に眠ってくれることを嬉しいと思う気持ちもある。貴女にも、フェイトを一人残したくないという思いはある』

 最終計画を発動させない以上、アリシアが永遠に眠ることは避けられません。

 ですが、我が主は別です。“生命の魔道書”を用いれば、フェイトと共に生きることも可能ではあります。

 ただ、そこに違いがあるとすれば―――


 「ごめんなさいね…………フェイト。私はもう一度、アリシアを一人にすることに耐えられない」

 フェイトには、高町なのはがいてくれます。

 さらに、ユーノ・スクライアも、クロノ・ハラオウンも、リンディ・ハラオウンも、彼女を支えてくれるでしょう。

 ですが、アリシアはただ一人きり。

 自分の娘が一人きりとなることこそが、我が主には決して耐えられない事柄なのですね。


 『申し訳ありません、デバイスである私には、比較できない事柄です』


 「ええ、アリシアが一人になってしまうと、私が思い込んでいるだけだもの。機械的にただ事実だけを見るなら、私が死のうと死ぬまいと、死んでしまったアリシアは何も変わらない」


 『ですが、人間の心にとってはそうではないのですね。心の在り方一つで、その人物にとっての世界とは、輝かしいものにも、暗いものにもなり得ます』

 それが、数十年の学習の果てに、私が人格モデルの傾向より判断した特徴の一つ。

 世界とは、個々人にとってそれぞれ異なるものである。

 肉体が違うのだから、感じ方も違って当然という物理的な話ではなく、私では未だにパラメータ化できない要素がそこにはある。

 いつか、私がそれをパラメータ化できる日は、果たして来るでしょうか。














新歴65年 5月11日 次元空間 (第97管理外世界付近) 時の庭園 中央制御室 PM 4:02



 願いを叶える石は、役割を終えました。

 1時間ほど前のPM 3:00に、21個のジュエルシードはアースラへと送られ、クロノ・ハラオウン執務官が受け取った。

 これにて、ジュエルシードにまつわる案件は、全て終了。

 長かったジュエルシード実験にも、幕が下ろされました。


 そして、それまでの1時間ほどの間に、主は自分の死後に残されるフェイトのための書類を、全て書き終えられた。

 財産管理に関する書類などは印さえあれば私が代行できますが、どうしても主が直接書いたものでなければならないものもいくつかある。

 特に、フェイト・テスタロッサの後見人としてリンディ・ハラオウンを指名することや、もし可能ならば養子縁組の依頼など。

 アレクトロ社時代からの研究者仲間には多くの友人がいますが、フェイトはプロジェクトFATEの成果であり、それらの問題を全て対処し得る存在であり、かつ、彼女のことを気にかけてくれる人物として、リンディ・ハラオウン以上の方はおられません。

 我が主と彼女が実際に会ったことは“集い”においてが最初であり、そして、現在が最後となる。

 たったそれだけに繋がりしかない相手に自分の娘の未来を託すというのも、まともに考えればあり得ない事柄かもしれません。

 ですが、“親友になるのに時間はいらない”という言葉があります。フェイトの理解者が高町なのはであるように、我が主の理解者は、リンディ・ハラオウンであるのでしょう。

 会った時間は僅かであれど、二人の人生にはパラメータ化できない“繋がり”がある。そう仮定することくらいしか、私には出来ませんが。


 『我が主は彼女を“リンディ”と呼び、彼女は我が主を“プレシア”と呼んでいた。ただそれだけで十分なのでしょう』

 今は時の庭園の主の部屋において、二人きりで話し合っておられる。ただし、主はベッドで横になりながら。


 『これは、計算外でした。主の身体は、本当に意思の力で支えられていたものだったのですね』

 人間の心と身体は、まことに複雑怪奇です。

 我が主が自身の死を受け入れた瞬間から、これまでの生体データからは考えられない速度で、細胞が死滅を始めた。

 まさにそう、“在るべき姿”に回帰しようとするように。


 『いえ、そうではない。このままならば新歴62年頃に主の寿命は尽きると計算したのは、他ならぬ私だ』

 フェイトが生まれたことで、主は無理に研究を進められることがなくなり、症状は緩和された。

 しかし、それだけではなかった。“娘のためにまだ死ねない”という意思は、主の身体に医学を超えた変化をもたらしていたのですね。

 計測された数値だけでは分からない、機械には説明できない未知のパラメータ。

 その低下が、今、主の身体を本来の姿へと戻そうとしている。


 『フェイト、本当に貴女は、主にとっての希望の子でした』

 貴女がいたからこそ、我が主は希望を持ち続けることが出来ました。

 貴女がいたからこそ、幼い貴女を残したまま死ねないという強い意志が、主に戻った。


 それが、“母親”という存在が備える、根源的な強さなのでしょう。


 アリシアを失ったことで、失くしつつあったその強さを、貴女が、取り戻させてくれたのです。

 そして、それを理解できるのもまた、同じ母親であるリンディ・ハラオウンしかあり得ない。

 8人と3機の集いの中で、我が主の心を理解していたのは、私ではなく彼女でした。

 クロノ・ハラオウンもエイミィ・リミエッタも聡明な方々ですが、こればかりはまだ理解できない。少なくとも、あと10年ほどは経過せねば。

 そして、デバイスである私には、永遠に理解できない事柄なのでしょうね。


 『もし、アリシアが最終計画によって蘇っていたならば、我が主の身体はどうなっていたか。というのも、今となっては意味のない計算ですね』

 既に、主は決定された。その結果として今がある。

 ならば、今更可能性の世界を計算したところで、何の意味も持ちはしない。


 『己の死はアリシアのために、だからこそ、残された最後の生はフェイトのために』

 それが主の決定である以上、私は止めません。ただ、記録します。

 プレシア・テスタロッサという女性が、確かに生きた証を。

 人が運命と呼ぶ事柄に翻弄された50年を、生き抜いてきたその姿を。

 やがて、フェイトに子供が生まれた時、“母の生き様”というものを、伝えられるように。

 私はただ――――記録します




 いつの日か、バルディッシュに託す時が来るまで











新歴65年 5月11日 次元空間 (第97管理外世界付近) 時の庭園 中庭 PM 5:31



 「懐かしい場所ね、ここは」


 『ええ、確かにそうです』

 そして、全ての手続きを終えられた我が主は、私と共にこの場所へやってきた。

 幼き日、愛用のデバイスを持って、よく魔法の練習をしていたこの場所に。

 私も、魔法人形の姿ではなく、在りし日のその姿で。

 インテリジェントデバイス、トールの、初期設定である“機械仕掛けの杖”で。


 「あぁ、まだ残ってるわ、この傷」


 『古い植物には、あまり傷を塞ごうとする作用は働きませんから』

 我が主が生まれる以前より存在しているその木。

 そこには、成長していく主の身長を記した跡が残されている。


 「何だか、とても不思議な気分」


 『どうしてでしょうか?』


 「私が生まれた頃から、この木はおっきかったけど、今でもほとんど変わらない。私が生きた50年も、この木にとっては、ほんの一瞬のものだったのでしょうね」


 『………そうですね、植物は動かないが故に、100年でも、1000年でも、ただそこに在り続けられます』

 
 「でも、そのほんの一瞬の間に、私と貴方の激しい人生があったのよ。貴方と2人で歩んだ、人生が……」


 『はい、本当に、いろいろなことがありましたね』


 ならば、古代ベルカの時代よりもさらに昔から、人の世の移り変わりを眺めてきた木があるかもしれません。

 主の50年も、私の45年も、彼らの歴史に比べれば、瞬きのようなものなのでしょう。

 私は人ではありませんが、貴女が私にそうした感情を持っていてくださるのであれば、それを否定することは有り得ません。


 「私達人間の命は短い、けど、だからこそ、精一杯生きることが出来るもの」


 『アリシアが、植物として長く生きることよりも、人間として閃光の一瞬を生きることを選んだように、ですね』

 それらをフェイトに、さらにその子らへ伝える役目は、私達デバイスが担いましょう。

 人間と異なり、悠久の時間を超えることをも可能とする機械。

 人間に不可能なことをするために、私達は創られたのですから。


 「ん………何だか、どっと疲れが出てきたわね」


 『お疲れでしたら、お休み下さいマスター。お昼寝をするには、ここは絶好の場所ですよ』

 ああ、懐かしい、この言葉。

 魔法の練習を懸命にやって、疲れたマスターに何度この言葉をかけたでしょうか。


 そして―――――これで最後


 「何だか、私はずっと貴方に頼り切りな気がする」


 『私にとっては、何よりの喜びです』

 今の主は、自分の意思で動ける状態ではありません。

 故に、体内に残されていた魔力を用いて、私が移動魔法の術式を“管制”することで動かれている。

 ですが、その魔力も――――――主の命の最後の火であるそれが、尽きた。


 「それじゃあ、少し眠るわ。アリシアやフェイトが起きたら、貴方が代わりに相手をしてあげて」


 『はい、了解いたしました。…………良い夢を、マスター』


 「ええ、おやすみ、トール……………また……いつか………会いましょう……………」


 『Yes,………my………master』







 新歴65年 5月11日 PM5:33 


 この日この時この場所において、我が主、プレシア・テスタロッサの時が停止いたしました。

 これより、インテリジェントデバイス、トールの命題変更は不可能となり、現在入力されている命題は絶対のものとなります。


主要命題

 フェイト・テスタロッサが大人になるまでは見守り続けよ

 プレシア・テスタロッサの娘が笑っていられるための、幸せに生きられるための方策を、考え続けよ

 テスタロッサ家の人間のために機能せよ


 この3つを、至上命題、“プレシア・テスタロッサのために機能せよ”に違反しない限りにおいて、実行するものとする。


 『機能を再開、私は命題を果たします。果たし続けます、マスター』


 これ以降、私の命題が変わることは、二度と無い。それを行える人物は私の前から去られてしまった。






 それでも――――


 演算を――――続行します










新歴65年 5月11日 次元空間 (第97管理外世界付近) 時の庭園 廊下 PM 7:44



------------------------Side out---------------------------


 目を覚ました彼女は、ただ静かに廊下を歩いていた。

 特に目的があるわけではないが、ただ、じっとしていることには耐えられなかったのだ。

 彼女が現実世界において目を覚ました時、隣に母と姉の姿はなかった。


 「泣いちゃダメ…………姉さんは、笑っていてって、言ってたんだから。それに……母さんも」

 現実空間においてアリシア・テスタロッサがトールと語らっている頃、プレシア・テスタロッサはフェイト・テスタロッサと話していた。

 そして、フェイトは母と姉の想いを知り、自分にはそれを止めることはできないことも悟ってしまった。

 彼女の頭脳は聡明であり、良くも悪くも、“聞き分けの良い子”であったから。


 「泣いたら………ダメなんだから………」


 彼女は涙を拭いながら、一人廊下を歩き続ける。

 折れそうな心を必死に支えながら、母と姉のためにも自分は泣いてはいけないと、ただ前を向く。

 そして――――


 「フェイト………ちゃん?」


 「!?」

 廊下の角から、姿を表す少女が一人。


 「ど、どうして、ここに……」


 「えっと、トールさんが、フェイトちゃんの傍にいてあげて欲しいって……」

 彼女が目を覚ました時、そこには魔法人形が一つ在り。


 『高町なのは、貴女にお願いがあります』

 そう断った後


 『フェイトのことを、頼みます』

 ただ、それだけを告げられた。それだけで、彼女にとっては十分だった。


 そして、一人で歩く金髪の少女を見て、彼女がただ何もしないわけはなく。




 「あっ―――」


 「フェイトちゃん………」

 決して放さないように、フェイト・テスタロッサの身体を抱きしめていた。


 「悲しい時は、泣いてもいいんだよ」


 「えっ……」

 そして、幼かった頃、一人でいた自分が、かけて欲しかった言葉を―――

 「寂しい時は、甘えてもいいの」


 「で、でも……」

 悲しい目をした少女に、真っ直ぐに伝えた。


 「約束したよ、フェイトちゃんの想いは、私が受け止めるって」


 「!?」


 その言葉は、閉じかけていた心を大きく揺さぶる。


 「寂しい時は、私を呼んで、“なのは”って」


 「………」


 「どんな時でも、私はフェイトちゃんと一緒にいるから、絶対、一人にしないから」


 「……う…」


 「だから、フェイトちゃん、悲しい時は、泣いていいんだよ。泣かないと、いつか泣き方を忘れちゃうから」


 「……う……ひくっ」

 そして――――


 「な……のは」


 「うん」


 「なの……は」


 「うん」


 「なのは……なのはああああああああああああああっっっ!!」


 「うん……うん……」

 溢れだした想いは、涙となって止まることなく流れ出て。

 お互いを、決して放さないように、ただきつく抱きしめる。


 「私は、ここにいるよ――――――――フェイト」


 「うん、私も………ここにいるよ――――――なのは……、っく……うう、う……ぅあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」














 それは、出逢いの物語


 友達になりたいことを伝えた少女と

 真っ直ぐな瞳と言葉に向き合うことを決めた少女

 2人の少女の時間は

 出会ってから初めて

 互いに名前を呼び合うことで

 始まりを迎えた


 
 



 そして別れの物語


 数十年の年月を寄り添って歩んできた彼と彼女が

 永遠の別離を迎え

 彼は主が遺した最後の命題の為

 それが果たされるまでの時を静かに刻んでゆく

 
 


 こうして


 古いデバイスとその主の物語は終わり


 少女達の物語は、ここから始まる







 デバイス物語 無印編[He is a liar device]   完













あとがき
 無印編は、ここまでで終了となります。やはり、魔法少女リリカルなのはという物語は、2人の少女が共に歩むことを決めた瞬間が、本当の始まりだと思いますので、この最後だけは初期プロットから決まっておりました。

 トールはあくまでオリジナルのキャラですので、その役割は原作をより良い形で回すための歯車であって欲しいというのが私の構想で、A’SやStSに登場するオリキャラも、全てデバイスの予定です。ただ、原作とは直接被らない部分においては例外もありますが。

 これより、数話の閑話を挟んでA’S編の開始となります。物語が進むにつれて独自設定も増加することと思いますが、原作の設定を壊すのではなく、それらを補足する形、もしくは踏襲しつつ演出する形にしたいと思っております。やはり、原作とそのキャラクターが大好きなので。

 そして、無印編のアナザーエンディングを近いうちに投稿したいと思っています。幸せかどうかならばこちらの方が上なのですが、物語がここで終了してしまうため、別エンドという形になります。

 機械仕掛けが行う演算結果、お楽しみいただければ幸いです。それではまた。



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