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No.22726の一覧
[0] 【完結】He is a liar device [デバイス物語・無印編][イル=ド=ガリア](2011/01/28 14:30)
[1] 第一話 大魔導師と嘘吐きデバイス[イル=ド=ガリア](2010/11/17 15:40)
[2] 第二話 プロジェクトF.A.T.E [イル=ド=ガリア](2011/01/01 22:19)
[3] 第三話 悪戦苦闘 [イル=ド=ガリア](2010/10/26 08:12)
[4] 閑話その一 アンリミテッド・デザイア [イル=ド=ガリア](2010/11/15 19:05)
[5] 第四話 完成形へ [イル=ド=ガリア](2010/10/30 19:50)
[6] 第五話 フェイト誕生 [イル=ド=ガリア](2010/10/31 11:11)
[7] 第六話 母と娘 [イル=ド=ガリア](2010/11/22 22:32)
[8] 第七話 リニスのフェイト成長日記[イル=ド=ガリア](2010/12/26 21:27)
[9] 第八話 命の期間 (あとがきに設定あり)[イル=ド=ガリア](2010/11/06 12:33)
[10] 第九話 使い魔の記録 [イル=ド=ガリア](2010/11/08 21:17)
[11] 第十話 ジュエルシード[イル=ド=ガリア](2010/11/10 21:09)
[12] 第十一話 次元犯罪計画 [イル=ド=ガリア](2010/11/13 11:18)
[13] 第十二話 第97管理外世界[イル=ド=ガリア](2010/11/17 15:34)
[14] 第十三話 本編開始 [イル=ド=ガリア](2010/11/17 15:58)
[16] 第十四話 高町なのは[イル=ド=ガリア](2010/11/19 19:03)
[17] 第十五話 海鳴市怪樹発生事件 [イル=ド=ガリア](2010/11/21 22:20)
[18] 第十六話 ようやくタイトルコール [イル=ド=ガリア](2010/11/23 16:00)
[19] 第十七話 巨大子猫[イル=ド=ガリア](2010/11/25 10:46)
[20] 第十八話 デバイスは温泉に入りません[イル=ド=ガリア](2010/11/26 23:49)
[21] 第十九話 アースラはこうして呼ばれた[イル=ド=ガリア](2010/11/27 21:45)
[22] 第二十話 ハラオウン家[イル=ド=ガリア](2010/11/28 16:21)
[23] 閑話その二 闇の書事件(前編)[イル=ド=ガリア](2010/11/28 16:47)
[24] 閑話その二 闇の書事件(後編) [イル=ド=ガリア](2010/11/28 16:51)
[25] 第二十一話 二人の少女の想い [イル=ド=ガリア](2010/12/08 16:11)
[26] 第二十二話 黒い恐怖 [イル=ド=ガリア](2010/12/03 18:44)
[27] 第二十三話 テスタロッサの家族[イル=ド=ガリア](2010/12/04 21:38)
[28] 第二十四話 次元航空艦”アースラ”とクロノ・ハラオウン執務官 [イル=ド=ガリア](2010/12/06 21:36)
[29] 第二十五話 古きデバイスはかく語る [イル=ド=ガリア](2010/12/08 17:22)
[30] 第二十六話 若き管理局員の悩み[イル=ド=ガリア](2010/12/10 12:43)
[31] 第二十七話 交錯する思惑 [イル=ド=ガリア](2010/12/13 19:38)
[32] 第二十八話 海上決戦 [イル=ド=ガリア](2010/12/14 13:30)
[33] 第二十九話 存在しないデバイス[イル=ド=ガリア](2010/12/17 12:46)
[34] 第三十話 収束する因子 [イル=ド=ガリア](2010/12/19 15:59)
[36] 第三十一話 始まりの鐘 [イル=ド=ガリア](2010/12/24 07:56)
[37] 第三十二話 魔導師の杖 閃光の戦斧 [イル=ド=ガリア](2011/01/12 19:18)
[38] 第三十三話 追憶 [イル=ド=ガリア](2010/12/29 07:59)
[39] 第三十四話 それは、出逢いの物語[イル=ド=ガリア](2011/01/03 11:55)
[40] 第三十五話 決着・機械仕掛けの神[イル=ド=ガリア](2011/01/03 19:38)
[41] 第三十六話 歯車を回す機械 [イル=ド=ガリア](2011/01/09 20:30)
[42] 第三十七話 詐欺師 [イル=ド=ガリア](2011/02/19 21:46)
[43] 第三十八話 最初の集い[イル=ド=ガリア](2011/01/12 19:11)
[44] 第三十九話 ”あなたはフェイト”[イル=ド=ガリア](2011/01/14 20:39)
[45] 第四十話  ジュエルシード実験 前編 約束の時が来た [イル=ド=ガリア](2011/01/18 08:33)
[46] 第四十一話 ジュエルシード実験 中編 進捗は計算のままに[イル=ド=ガリア](2011/01/18 16:19)
[47] 第四十二話 ジュエルシード実験 後編 終わりは静かに[イル=ド=ガリア](2011/01/19 22:24)
[48] 第四十三話 桃源の夢 アリシアの場所[イル=ド=ガリア](2011/01/24 20:18)
[49] 第四十四話 幸せな日常 [イル=ド=ガリア](2011/01/24 20:50)
[50] 第四十五話 夢の終わり[イル=ド=ガリア](2011/01/27 15:31)
[51] 最終話 別れと始まり[イル=ド=ガリア](2011/01/28 21:24)
[52] 最終話 He was a liar device (アナザーエンド)[イル=ド=ガリア](2011/02/25 20:14)
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[22726] 閑話その一 アンリミテッド・デザイア
Name: イル=ド=ガリア◆ec80f898 ID:97ddd526 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/11/15 19:05
閑話その一   アンリミテッド・デザイア



新歴55年 ミッドチルダ首都クラナガン 地上本部





 『失礼します、レジアス・ゲイズ二等陸佐』

 定型通りの挨拶した後、私は彼の執務室へと入る。アポイントメントはとってあるので特に問題はないはず。


 「お前か」

 しかし、返事からは覇気を感じ取ることは不可能、何らかの精神的な事情があるものと推察。


 『悩みごとですか』


 「もうすこし言葉は詳しく述べてくれ、まあ、デバイスに言っても仕方ないか」


 『申し訳ありません。私の汎用的人格言語機能は我が主人とその家族のためにインストールされたものであり、現在は他の事柄にリソースを割いているため、この程度の言語機能が限界となります』

 ここは地上本部であり、ある意味では敵地。下手な言動、行動は許されず、あらゆる状況を想定して対応手段を主記憶に蓄積しておく必要あり。同時に、ゲイズ二佐が悩んでいる事柄についての検索開始。


 「………俺はデバイスのお前から見ても消沈しているように見えたか?」


 『肯定です、恐らく一般的な価値観を共有する人間であれば誰でもが気付くことは可能でしょう―――――検索完了、貴方の苦悩の原因は先日に起こった事件が原因と推察されます』

 死者二十五名、内民間人十一名、魔導犯罪者が放った殺傷設定の砲撃によりクラナガンの一区画が破壊され、捕縛のために動いていた地上部隊の陸士と射線上にいた民間人が犠牲に。

 遅れて出動した本局航空魔導師隊によって犯人は捕縛されたものの、民間人に10名を超える死者が出たことは管理局にとって大きな痛手と考えられる。


 「余計なことはいい、用件を述べろ」


 『了解です。我が主、プレシア・テスタロッサより、非魔導師へのリンカーコア移植技術に関する最新経過を伝えろと承っております』


 「それだけならば技術部の者達に直接伝えればよいだけだろう。わざわざ俺の下に来たということは他の用件があるのではないか?」


 ゲイズ二佐の推察能力は高い。管理局内においてもこの人物を上回る政治的能力を持つ人間は極わずかであると予想。


 『時空管理局地上部隊では、魔導師の数が絶対的に足りておりません。高ランク魔導師の大半は本局へと流れるため、今回のような高ランクの魔導犯罪者が暴れた場合、鎮圧のために犠牲が出るのはやむを得ないでしょう』


 「……………それはその通りだ」

 レジアス・ゲイズという人物はその現状を変えるべく活動している改革派の急先鋒。だからこそ、こちらの提案に応じる可能性が最も高いと推察。



 『それを解決するために、非魔導師へのリンカーコアの移植技術を確立することを試み、地上本部は多くの研究者にそれを依頼しており、我が主もその一人です。本局に対しては可能な限り機密としながら進められているため知る人間は限られますが』


 「……………」


 ゲイズ二佐は沈黙を維持。これは前振りに過ぎず、これから話すことこそが本題であると理解していると認識。


 『しかし、魔導師を確保するアプローチはそれだけではない。人造魔導師の育成、さらにはクローン培養も倫理面を考慮しなければ戦力の拡充方法として効果的でしょう』


 「馬鹿な! 時空管理局は法の守り手だぞ! 違法研究に手を出して何とするのだ!」


 突然の激昂、ゲイズ二佐の人格傾向情報に修正を加える。


 『ですが、違法研究によってでしか救われないであろう命も存在しているのです』

 私はスクリーンを展開し、カプセルに保存されているアリシアの姿を映し出す。



 「……………これは?」

 少し落ち着いたのか、ゲイズ二佐から質疑が出る。


 『我が主プレシア・テスタロッサの長女、アリシア・テスタロッサです。脳死状態にある彼女の蘇生こそが我が主の研究の最終目標といえましょう』


 そして、詳しい経緯をゲイズ二佐に語っていく。この人物は実直ではあるが、相手の言葉に耳を傾けない人物ではなく、事情を話せば一定の理解は得られるものと予想。










 「そうか、それで非魔導師へのリンカーコアの移植を研究していたのか………」

 ゲイズ二佐の顔には納得がいったと書かれている。プレシア・テスタロッサは本来魔道力学が専門であり、次元航行エネルギー駆動炉などの開発の行っていた人物、生命工学は普通に考えれば畑違い。

 流石のゲイズニ佐といえど、管理局に協力する一研究者の人生内容までは知り尽くしてはいないのだから、その疑問は当然といえる。


 『肯定です。そして、あくまで医療目的の手段としてクローン培養技術を応用しようとしています。ですが、現状の法律を考えれば違法研究となりましょう』


 「それは間違いない、管理局法はいかなる理由であれ、人間のクローン培養を禁止している」


 『承知しています、そこを曲げて貴方に協力をお願いしたい。無論、相応の見返りは用意します』


 別の資料を開封する。


 「これは?」


 『対空戦魔導師用の追尾魔法弾発射型固定砲台、“ブリュンヒルト”。その動力となる駆動炉、“クラーケン”。その設計図です』


 「対空戦魔導師用の固定砲台だと!」


 驚愕の声を上げるゲイズ二佐、この反応は予想通り。


 『我が主の魔力はSランク相当ですが、次元跳躍魔法という稀有な技術を保有しているため条件付きSSランクと認定されております。この“ブリュンヒルト”は座標さえ入力すれば次元跳躍魔法に近い射程を誇り、高速機動可能な空戦魔導師をも撃ち落とすことが可能です。我が主がデバイスを用いた魔法でそれを行うように』


 “ブリュンヒルト”は我が主の空間跳躍攻撃を大型の駆動炉のエネルギーと特殊な設計の魔力制御機構によって再現したもの。我が主は本来こういうものの開発を専門としている。無論、その駆動炉の“クラーケン”も同様。


 『未だ机上の空論ではありますが、地上本部が開発に乗り出すならば10年もあれば試作機の製作が可能と予想されます。特に問題なくアップデートが行われれば、20年後、新歴75年あたりには完成を見るでしょう』


 「………」



 長き沈黙



 『いかがでしょうかゲイズ二佐、我々は表だって支援を必要としているわけではありません。我々が発注する材料や機材の手配を潤滑に進め、それらの材料の用途の認定に便宜を図っていただければ十分です』


 「……………残念だが、今の俺にはその権限はない。我々は新たな機構を導入するよりも現在の機構の無駄をなくすことで手一杯だ」


 返答は予想の範囲内。仮に彼が人造魔導師やもしくは戦闘機人などの新戦力を必要としたとしても、その段階に達するにはあと10年ほどはかかると予想。まず土台となる部分を整えなければ新戦力の導入は夢物語、現在の彼はその改革の中心にいるのだから、他に余力を裂く余裕はない。


 『では、既に生命工学関連で管理局から支援を受けている研究者を紹介していただけませんか、そちらに直接交渉してみることにいたします』

 この状況における紹介とは、すなわち研究施設への管理局からの要請と同義。


 「それは構わん、手配しよう」


 『ありがとうございます。それから、その設計図は差し上げます。我々の手元には原本がありますし、管理局以外に売り込めるものでもありませんので』

 “ブリュンヒルト”を次元世界の国家などに売り出せば必ず国際問題や外交問題に発展する。それは我が主にとって好ましいものではなく、政治的に中立を保っている時空管理局のみがその例外となり得る。

 聖王教会ですら政治とは無関係ではいられない。ある意味で国家の正規軍以上の武力を保有するが故に政治的な中立を求められる管理局はこの次元世界で最も信頼度が高い組織でもある。



 「――――もし、地上本部がこれの開発を進めたとすれば、協力を依頼することは出来るか?」


 『アリシアの蘇生を進める片手間でよければ構いません。我が主の本来の専門分野はそちらなので、息抜きにはなるかと』


 「―――――そうか」


 ゲイズ二佐より資料を受け取り、私は地上本部を後にする。


















新歴55年 ミッドチルダ某所




『クラナガン生体工学研究所――――』


渡された資料に書かれていた住所を照合し、下調べも行ったが特に異常はなし、正規の開発のみを行っている健全な組織と判断された。もしそうでなければゲイズ二佐から紹介されないことも補強材料となった。


 『失礼します。私はプレシア・テスタロッサの名でアポイントを取った者で、彼女の代理人のトールと申します。ロータス・エルセス氏に繋いでもらいたいのですが』

 受付に用件を告げ、しばし待つ。










 交渉自体は特に問題なく終了。

 こちらが要求したものは生命研究に必要とされる代表的な機材と材料、その対価に定価の2倍の額を支払うことで話はついた。この研究機関は機材などもかなりのペースで新しいものに入れ替えられるようで、定期的に取り換えた品を他の研究機関に譲渡しているらしく、その優先順位を金銭で入れ替えただけの話。


 しかし――――



 「いや、中々に興味深い話だ。彼女とは一度語らってみたいと思っていたのでね」


 対応していた研究員の態度が、突如として変化した。


 『貴方は――――』


 「おっと、そんな他人行儀な口調はよしてくれたまえ。いつも通りの君で構わないよ」


 汎用的人格言語機能をON、このタイプの人間には話を合わせた方が有益な情報が引き出せると判断。


 「……………そうかい、じゃあこっちもこれでいかせてもらうが、手前は一体何だ?」

 この気配、どう考えても堅気のものじゃない。こんな普通の研究機関にいる人種では断じてあり得ない。


 「くっくっく、ふむ、私が何か、か。その問いに対する答えはやはり一つに集約されるだろう」



 次の瞬間、男の顔が変わる。魔力の反応が変身魔法の類いではなく、それとは全く違うものだ。

 そして現われた顔は――――


濃紫の髪――金色の瞳――隠しきれていない滲み出る狂気――俺にも見覚えはある。というか、この顔は俺達と切っても切れない関係にある。



「無限の欲望(アンリミテッド・デザイア)、私が何かと問われれば、そう返すのが最も自然なのだろうね」


堪え切れないように嗤いながら、ジェイル・スカリエッティという男は、俺の前に現われた。










 「なるほど、それで、その珍妙な仮面が手品の種か?」


 「そうとも、これは偽りの仮面(ライアーズ・マスク)というもののプロトタイプでね、これで変装したものは通常の魔法ではまず見破れない、欲しいのなら一つくらい進呈してあげてもよいが?」


 「遠慮しとく、ただほど高いものはない、特にアンタの場合利息が高そうだ」


 「ふむ、残念だね」

 存外真面目そうに言いながらコーヒーを飲むスカリエッティ。


 「それで、天下の広域次元犯罪者様が一体なんで俺なんかと会うためにこんなところにいるんだ。まさか無駄話がしたかったなんて言うんだったら喜んで付き合うが」


 「無駄話か、悪くないね。しばらく興じてみることとしよう」




 その後、しばらく話しあった内容は冗談抜きで無駄話でしかなかったので割愛する。








 何度も議題を変え、ゴキブリは如何にして“例の黒い物体”と呼ばれる程の知名度を確立したのかという命題について語った後、スカリエッティはようやく本題に入った。ちなみに、無駄話をしながら場所は移しており、地下通路を通ってかなり本格的なラボに来ている。


 「きっかけは些細なことだよ。私が基礎理論を構築したプロジェクトFATEを引き継ぎ、中々に面白いことをやっている者たちがいると小耳に挟んでね。何か手助けは出来ないものかと考え付いたまでだ」


 「その手助けとやらを口にする表情が、さっきの実験用の蟲について語る時の顔と同じなのは仕様か?」


 だが、実に分かりやすくはある。要は俺達に研究材料を与えて、どんな結果を出すのか観察したいといったところだろう。どんな結果に転がろうが良し、突き詰めて言えば道楽だ。



 「さあて、どうだろうね」


 「まあいいけど、俺のご主人様の答えは聞くまでもないからな。アリシアの蘇生に繋がることなら何でも飛びつくぜ、今のあいつは」


 「ふむ、中々に面白く狂っているようだね」


 「アンタに言われるのだけは心外だろうが、狂っているという面では同意できるな。プレシア専用のデバイスとしては誇っていいのかどうか微妙だが」


 プレシアを正気に留めることは俺の主な役割の一つだが、完全に果たせていないというか、そもそもプレシア自身が完全に正気に戻ることを望んでいない。あまりに狂い過ぎてはかつてのように思わぬ副作用を喰らう可能性が高いことを自覚したから、その対処法として俺に狂気を抑える機能を追加したに過ぎないのだ。


 「だからこそだ、そんな彼女に贈り物を用意した。どう使うかは彼女次第だが、面白いことになると思うよ」


 スカリエッティがいつの間にか手にしていたのは、赤い宝石のような物体。



 「それは?」


 「“レリック”というロストロギア、あいにくと説明書というものは私の頭の中にしかないので用意していないが、彼女ならそう時間をかけずにどのようなものか探れるだろう」


 スカリエッティはそう言ったが、この後プレシアがレリックの特性を把握するまでに3か月近い月日を要した。それを大した時間もかけずに成したであろうこの男の頭脳は一体どうなっているのか。


 「これをくれることによってアンタにどんなメリットがある、と聞くのは意味がなさそうだな」


 「よく分かっている。ならば、答える必要もなさそうだね」


 スカリエッティが名乗った“無限の欲望(アンリミテッド・デザイア)”、それがこの男を表す記号ならば、理由を考えることに意味はない。ただやってみたくなったからやっただけだろう。

 要は、この男にとって世界とはただ愉しむためにある。そして、面白そうな玩具を見つけたから観察しようとしてみただけ。


 そして、そのスタンスはプレシアと噛み合う。プレシアにとってはアリシアが蘇生できるのならそれでだけでいい。その研究成果が時空管理局に渡ろうともどっかの国家に渡ろうとも、このマッドサイエンティストに渡ろうとも、プレシアにはどうでもいい話だ。



 「一つ質問だ、アンタはこれで何を成す?」


 「芸術品を作るつもりだよ。生命操作技術の果てにこそ、私が求めるものはありそうでね。私は――――――人間を愉しみたい、それを形にしてみたい、どんな形になるのか分からないからこそ、やってみる価値がある」



 なるほど――――こいつは狂人だ。


 普通の人間に理解できない、共感出来ない精神性を持つ存在を狂人と定義するならば、この男にこそ狂人という言葉は相応しい。




 「だいたい分かった。じゃあな、また会おう」


 「ああ、私達はいずれまた巡り合うことだろう。それがいつになるかは分からないが―――――楽しみにしておこう」



 俺とこの男の邂逅はひとたび終わる。この出会いから再会までには10年以上もの時間を要することとなるが、そのことは別に驚くに値せず、むしろ予想できたことだ。


 だがしかし、“プロジェクトFATE”と“レリック”、ジェイル・スカリエッティという狂科学者がもたらした古代の遺産が俺達にどのような影響を与えるのか。






 その答えが出る日は、まだ遠い。







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