ナオト・タカサキは転生者である。
トラックに轢かれ、訪れたのはリリカルなのはの世界。
「ナオト、遊ぼ! だいすきっ」
最初は戸惑ったが、幼馴染のアリシアやジェイルに囲まれて楽しく過ごしている。
アリシアには特大の死亡フラグが付いていたが、5歳にしてSSSランクの俺が颯爽と助け、
「な、ナオト、日曜日暇かしら……だいすきっ」
「ナオト君、今度の休みお茶会があるけどどうかな? だいすきっ」
アリサやすずかからは以前誘拐騒動を助けてからよく誘われ、
「駄目!ナオ君はなのはとデートするの! だいすきっ」
なのはさまからは積極的に好意をぶつけられる。
俺はちょっとだけ困った笑顔を見せながら、そんな毎日が楽しかった。
だが、そんな平和な海鳴にも異変が起こる。
ジュエルシード。
しかし、原作知識を持つ俺に死角はなかった。
俺が作ったどらg……ジュエルレーダーを使い、ジュエルシードを集め、
「ナオト、会いたかった、だいすきっ」
フェイトをニコポで陥落させ、
「ナオト……だいすきっ」
アルフをナデポで陥落させた。
プレシアさんもアリシアが生きている報を聞いて改心し、大団円で解決である。
闇の書事件が始まったわけだがSSSランクの俺が負けるわけがなく、ヴォルケンリッターを軽く撃退し、
しかし蒐集行為は止められず、闇の書は完成したが、俺の声がはやての意識を呼び覚まし……!
「これで終わりだッ、エターナルフォースブリザード!!」
いちげきひっさつ!!
あいてはしぬ……!!
「すごい、防衛システムを一撃やなんて……だいすきっ」
ふはははははははははは、最強オリ主ナオトの伝説はまだまだ始まったば「ディバイーンバスターーーーー!!」り……
「ナオ君大丈夫!?」
心配してくれるなのはさまだが、今の俺は叫びたい。
「最強オリ主の夢ぐらいみせてくれてもいいじゃねーですか、こんちくしょう!?」
そうだ、ついさっきまで俺は闇の書の中に取り込まれてた。
その世界では最強オリ主としてうはうはだったのに! うはうはだったのに!!
そこでも結局オチは砲撃ですか、俺のラスボスはやっぱりあんただよ、高町なのはさま!?
「魔力ランクSSSでニコポもナデポも完備。
最強魔法エターナルフォースブリザードだって習得、頭脳も完璧。
ハーレムだって思いのまま。まさに最強オリ主のテンプレだったのに、テンプレだったのに!
俺みたいなパンピーならそれくらい夢見てもいいよね、いいだろ!?」
「え、えーと……」
「なのは、ナオトの言うことは9割飛ばしでいいから」
と、フェイト。
「何か最近どんどんと辛辣になってませんか!?」
「ほら、お姉ちゃんがナオトの言うことはそれくらいでいいって言ってたし……」
「アリシアーーーーーーーーーーー!!」
俺の癒し系になんてことを。
フェイトはさ、まだ和む方なんだよ。少なくても他のチート連中よりは。
たまに会話があらぬ方へ飛ぶけど。
「ナオ君、しつれつって?」
「今だけそんなアホの子キャラやっても手遅れだからな!」
確かに国語の成績は悪いが、それでも俺なんかより頭がいいのがなのはさま。
そのレベルは理数系トップを独走するアリシアに唯一喰いついているほど。
ちなみに総合点ではアリサ≧アリシア>すずか>>>なのは>俺>>フェイトとなっている。
なのはとフェイトは文系で点を落とすためであり、フェイトに関してはその落差が酷い。
だからこそ俺はブービーを取れているのであり、あれ俺ってそろそろ合計三十路じゃ……
「小学生にも勝てないのか俺は……」
「あー、そろそろええか……」
ちょっとだけ困った風にはやて。
「ちょうどよかった俺をもう一回闇の書の中に……!」
「現実逃避もほどほどにな」
現実逃避、現実逃避言われた……!
あそこだけが俺が幸せに生きていける世界なのに。
……やっぱりそれは現実逃避か。
「世界は、こんなはずじゃないのにな……」
「それに関しては同意するが、何で君はこんな場所にいるんだ?」
いつの間にかいたのかクロノ。
えーと確か原作だと猫捕まえてデュランダルでスーパークロノタイムだっけ?
……ごめんもうほとんど覚えてないんだ。
「今さっきまで闇の書に取り込まれて所なんですー、どこぞの悪魔が俺ごと吹っ飛ばしてくれたんですー」
考えてみれば人質ごと撃ったようなもんだよね、あれ。
しかも容赦なく。
悪魔め……!
「ナオ君、何か変なこと考えてない……?」
ジト目ななのはさまに俺は思わず目を逸らす。
「考えてた、やっぱり考えてたよね!」
「そんなことないですよ」
「ある!」
「ない」
「あるもん!」
「ないもん」
「あるったら!」
「いや、だから君たちは……」
頭を抱える執務官様。
そこから何とか話が進み、はやて以下ヴォルケンリッター達と作戦会議が決まったのだが……
「……え、なにこのポジション?」
ナオト・タカサキ、配置されたポジション、応援。
ようするに役に立たないから端にいろ、っていうことらしい。
いや、俺があのチートどもに並べられるわけないからいいけどさ。
「暇だ……」
視線の先ではAs恒例のスーパーふるぼっこタイムのお時間。
あー、でもちょっとだけ闇の書欲しかったかもなぁ。
だって最強オリ主の夢だったら見てたかったし。
それくらいいいよね?
あっ、スターライトブレイカががががががががががががががggggggg……………………!!
……トラウマ再発しました。
「ナオトまた首突っ込んだだって?」
事件後、俺とアリシアは寒い雪道を歩く。
はやてとリインフォースが別れを告げたその帰り道。
アリシアに少し付き合って欲しいと言われ、俺は付いてきた。
「少しだけ」
「フェイトから全部聞いてるんだけど」
「あいつ……!」
アリシアに全部話すなよ。
「何だかんだでナオトって放っておけないのかな、やっぱり」
「うん?」
「ナオトは馬鹿だってこと」
そう言いながらアリシアは笑った。そして呟き。
「なのはが羨ましいな……」
「何怖いこと言ってやがる」
アリシアがなのはさまみたいな魔力を持ったら俺死ぬぞ。
いや、絶対死ぬ。
あのジェイルを撲殺した事件は忘れてないぞ。
「というかさ、どこ向かってるんだ?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
ちょこん、と首を傾げるアリシア。
その仕草がちょっとだけ可愛い、じゃなくて。
「言ってない言ってない」
「あはは、ごめんね。お母さんに会いに行こうって思って」
アリシアの口から母親、プレシアさんが出てきたことに内心驚く。
現在も続いているテスタロッサ家の乱。
元々の原因がプレシアさんにあると考えれば因果応報とも言うべきなのだが、アリシアの口から会うなんて言葉が出てくるとは思わなかった。
一時期は本当に酷かったからな……
俺は遠い目をしてしまう。
「はやてを見たらやっぱり家族って大事だなぁ、って」
寂しそうに。
アリシアは遠くを見ながら。
「……」
俺はどう答えるべきか分からなかった。
プレシアさんの体を日々侵していく不治の病。
知らないはずのアリシアが、本当は知っているようで。
「ナオト?」
「何でもない」
だから俺は何も言わなかった。
問題の先送り。
本当はよくない気もするが、せっかく仲直りしそうなんだ、今言うのも無粋な気がする。
「それならフェイトを誘わなくてよかったのか?」
「…………え?」
ありえないようなものを見るような目。
おかしい、確かに変なことを言ったはずじゃないのに。
「やっぱりナオトって馬鹿だ」
「どうせ天才どもの考えなんて分かりませんよ」
「はいはい不貞腐れない」
ホント、オリ主って何だろうな?
(笑)?
「ナオトも管理局の人に頼んで両親に会いに行ったら?」
「ああ、それだけど実は大変なことになってた」
「大変って何があったの?」
いやね、クロノから聞いたとき目が点になったよ。
「えーとまず俺たちが時間移動してるって話は知ってるよな?」
「まぁ、そりゃ」
その所為で管理局はえらい騒ぎになったとかクロノに愚痴られた。
事故とはいえ、初の時間移動が確認されたのである。
アリシアも知った時は呆然としてたからな。
「で、まぁ俺の両親もあっさり見つかったんだけど」
「それで?」
「家族が増えてた。具体的には妹」
「よかったじゃん」
「年上だけどな」
「…………は?」
戸籍上俺は新暦34年生まれで新暦65年現在で戸籍上で31歳、実年齢だと10歳というカオスなことになっている。
要は空白の21年間が存在してしまっているのだ。
ここからが問題で、その空白の21年間に両親が第二子を作っていたこと。
その結果、戸籍上では妹になるのだが、実年齢は向こうの方が上になってしまっている。
アリシアみたいにまだ同い年の妹がいる方がマシだった……
「それは、大変だね……」
「つーかお前らってどうやって仲良くなったんだ?」
「うん?街で偶然会ってフェイトみたいな妹が欲しいな、私もお姉ちゃんみたいな姉が欲しいって話になってじゃあ生まれは違えど私達は~みたいな感じ」
「なにそれ?」
「翠屋の誓い。あとで本当に姉妹だったのが分かったけどね」
なんだその桃園の誓いみたいなのは。
こいつ三国志知っているのか? 知っているような気がする。
聖祥が誇る超☆小学生メンバーの一人だからな。
本当、転生分のアドバンテージぐらい平気で抜くからな、このチートども。
「話は戻すけど、妹さんは置いておいて両親は?」
「それ自体難しいんだよ、お前らと違って」
何度も言うが向こうには21年の空白が生まれてしまっている。
どんな風に会えばいいんだろうな。
アリシアみたいに馬鹿な喧嘩引き起こした方が楽なんだろうな、とか思ってしまう。
「21年って長すぎて想像付かないや……」
俺は後ろを何となく振り返る。
アリシアと歩いて来た雪道。
すでに遠くの足跡が今も降る雪で消えてしまっている。
よく道を指して人生のように例えるが、俺たちはその足跡がこの雪道のように途中で消えてしまっている。
「そう考えるとジェイルとかもどう会えばいいんだろうなぁ……」
「うん。ジェイル君、元気かなぁ……」
こっそりジェイルについて調べたけどやっぱり指名手配になっていた。
まぁ、元気にマッドサイエンティストやっているってことだろう。
それにしてもジェイルに絡んで近い内に何かあった気がするんだけど、何だったかな。
もう原作知識とか覚えてないなぁ……ホント。
チート連中に戦える数少ない切り札なのに。
「でも事件も終わったし、俺はコタツでのんびりしてるかな」
「結局里帰りしないんだ?」
「いいよ、かったるいし」
そういうものの、こんなのが通じるのは就労年齢が低い管理局だから通じる。
何しろ10歳にはある程度自身で責任持てるとか日本じゃ考えられん。
だからこそ会わないって選択肢ができた。
まぁ、リンディさんとか微妙そうな顔だったけど。
「冬休みはぬくぬく過ごすぜひゃっはー!」
「ナオトってそういうのがフラグだって気付かないよね……」
そうアリシアは呆れた風に呟いた。
後日、ニアSランクの魔導師に襲われたが、それはまた別の話。
フラグだ何て言うからフラグになるんだよ!
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As編完ッ!!
マテリアル編は流されました。