―――本日は、かの聖王様の父親として悪名高いナオト・タカサキ氏の取材に来ています。
「この間は大丈夫だったのか……」
―――心配してくれてありがとうございます。ちょっと色々ありましたが無事現場に復帰できました。
「そっか……」
―――鬼畜と名高いですが、意外と優しいんですね。
「ちょ、ちょっと待った、鬼畜って何!?」
―――有名な話じゃないですか。高町親子とか特に。
「冤罪、冤罪だからな!」
―――あっ、この近くに親子丼のおいしい店があるんです、経費で落ちますし、お昼に如何ですか?
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
―――……軽いジョークだったんですけどね。
―――もしかしてこれは意外と真実だったりするんですかね。
「そんなわけありません」
―――こんにちは、えーと。
「あぁ、私はせいこ……いえ店員Aと呼んでください」
―――お若いですね。
「そうですね、そろそろ完全に下り坂な誰かとは違いますので」
―――どこかで見たことある気がするんですが……
「気のせいです」
「ふぅ、何とか復帰完了……」
―――お帰りなさい。
「まったく事実無根なのに、まったくもってどこからそんな話が上がったのやら……」
―――色々話題に挙がるからだと思います。
―――聖王様の関係で。
「ヴィヴィオって何であんな自重しない子に育ったんだろうなぁ……」
「そもそも育ててないじゃないですか」
―――確か聖王の遺伝子が組み込まれた人造魔導師になるんでしたっけ、聖王様は。
「まぁ、公然の秘密だからなぁ……」
―――ある垂れ込みですが、聖王様と式を挙げたとか。
「どこだよ、その垂れ込み!?つーか数の子だな、数の子なんだな!!」
「あれはただの子供のごっこ遊びなので大したはなしではないです、ええ」
―――あの、店員さん、それならなんでデバイスを構えているんでしょうか。
―――しかもどこかで見たことあるデザインなのですが……
「ただのやり場のない怒りです」
―――そ、そうですか。
「それにしても本当、ヴィヴィオには困りましたね」
「少しは大人しくなってほしいなぁ」
―――それはきっとタカサキさんの今後に掛かっています。
―――ぜひ頑張ってください。管理局のために。
「責任重ッ!!」
―――以前お会いした時もそれほど酷い性格ではなかったので大丈夫ですよ、きっと。
「あの子も外面はいいですし」
「代わりに倫理観が致命的だけどな」
―――局員としてそれはどうなんでしょうかね。
「人材不足の弊害でしょう」
―――人の足りなさには相変わらず管理局の悩みですからね。
「不景気で失業者続出の日本に言ってやりたいなぁ」
―――97管理外世界ですか。
―――確かタカサキさんを始めとする有名人の多くがあそこの出身者でしたね。
「……俺って有名人のカテゴリなの?」
―――主に聖王様効果で。
―――噂によると管理局でも色々とマークされているそうですし。
「マジですか?」
―――マジです。
―――と、本題を忘れるところでした。
「本題?」
―――ええ。
―――ずばり関係者が口を閉ざした事件を当事者から語ってもらおうと。
「ブルブルブルブルブルブルブル」
―――タカサキさん?
「世界はこんなはずじゃなかったのに……ははは……」
―――壊れましたね。
「まぁ、あれをある……彼の口から語るのは少々酷でしょう」
―――店員さんも知っているんですか?
「……嫌な事件でした」
―――貴方もですか!?
―――その、語って貰えないでしょうか?
「……嫌な事件でした、としか言いようがありません」
―――そ、そこまで言うんですか……
「あぁ、刻が見える……ははは……」
―――タカサキさんは大丈夫なんでしょうか。
「……ちょっとお待ちください」
―――えっと、店員さん。タカサキさんを奥に連れて……
―――ってなんか今凄い音がしました! ドゴンッって!!
「えーと、お待たせ」
―――な、なにがあったんですか……
―――こ、こちらまで轟音が聞こえてきましたよ?
「ちょっと砲撃を少々……」
―――え、えぇと?
―――砲撃を少々、ですか……?
「あるじ……いえ、店長はすでに撃たれ慣れているのでタフなのです」
―――嫌な慣れですね。
「その半分はこいつだからな……」
―――魔導師なんですか、店員さん?
「一応砲撃を得意しています」
―――……性格は似てないですけどなんか被ってませんか。
「あ」
―――あ、ってなんですか、タカサキさん。
「ルシフェリオン、セットアップ」
―――デバイス出してど、どうするんですか?
「パイロシューター」
―――魔力弾撃たないでください!
―――ダメージが地味に痛いじゃないですか!!
「まぁ、こいつなのはさまと一緒に見られるの嫌がるし」
―――はぁ、そうですか、ってなのは……さま?
「あーうん、トラウマで反射的に。昔は違ったんだけどなぁ」
―――遠い目!?
―――本当、あのエースオブエースと何があったんですか!?
―――こちらが掴んでいる情報ですと幼馴染だとかいう話ですが。
「子供の頃にちょっとな」
―――背中が煤けてますよ……
「さっき砲撃喰らったからなぁ……」
―――そういう物理的な話じゃなくてですね。
―――まぁ、でも嫌いじゃないんですよね?
「……ノーコメントで」
―――男らしく言っちゃいましょうよ!
―――なんならここだけのオフレコでいいですよ!!
「下手なこと言うと隣からルシフェリオンブレイカーが飛んできそうだし」
「主が私のことを理解してくれていて嬉しいです」
「呼び方言い直せよ!?」
―――……実はそういう趣味なんですか?
―――ご主人様~、とか言われるのが実は好きなんですか?
「ねぇよ!?」
「主が望むのなら……その、ご主人様、と」
―――……やっぱり鬼畜ですね。
「なんで俺がそう呼ばれないといけないんだぁぁぁぁぁ!!」
―――走って行っちゃいましたね。
「主はヘタレなので」
―――そうですか。
―――タカサキさんが行ってしまったので、店員さん。最後に一言どうぞ。
「当店ではデバイスの修理から販売まで手広く行っています。ぜひお気軽にお越しください」
―――見事な棒読みですね。
―――それでは、みなさんまた会いましょう!!
―――しかし、結局あの事件を聞けずじまいでしたね……
***
取材編第二回。
時系列的にはアインハルト編後になります。
傍から見れば鬼畜ですよね、彼って話。
次回以降の更新はしばらくアテにしないでください。
休止、とまではいかないですが、かなり遅くなります。