―――えー、本日は管理局でも特に人気の高いアインハルト・ストラトス二等空尉に密着取材します。
―――よろしくお願いします。
「……よろしくお願いします」
―――テンション低いですね。
「ヴィヴィオさんに無理矢理スケジュール捻じ込まれましたから、はぁ……」
―――あぁ、道理で。
「……?」
―――何で企画が通ったのかとか社内で持ちきりだったんですよ。聖王様が関わっていたなら納得です。
「最近ヴィヴィオさんの嫌な納得感に慣れてしまっている自分が辛いです……」
―――聖王様だから、の一言で納得できるのもすごいですよね、あの人。
―――やはり聖王だけあってカリスマもあるんですかね。
「そんなカリスマだったらむしろ放り投げて欲しいくらいです」
―――苦労してますね。
「出来ることなら辞めたいくらいです」
―――聖王様が止まらなくなるので止めてください。
「分かってます」
―――この書類の山は一体……?
「始末書です」
―――…………冗談ですよね。
「冗談なら幸せだったんですけどね」
―――ということはもちろん聖王様の?
「ええ……!」
―――ちょっとストラトス二尉! 落ち着いて落ち着いて!!
―――し、しかし聖王伝説はやはり本当なんですね。
「その伝説は知りませんけど、まぁ、だいたい、予想は付きますので、多分あってると思います」
―――そうですね、せっかくですから聖王伝説の真偽について聞いてみましょう。
「どうぞ」
―――では、聖王様がランクDの犯人相手にSSSランクの広域殲滅魔法を撃ち込んだ。
「それでしたら撃ちました。おかげで周囲にまで派手に被害が出ました」
―――伝説の中でも眉唾ものの奴だったんですけどね、これ。
―――人質を取って立て篭もった犯人を人質ごと吹き飛ばした。
「せめてもの救いは非殺傷設定になっていたことでした」
―――容赦ないですね。
―――もうこの時点で次を聞くのが怖いんですが。そ、そうですね、ファザコンについては?
「……嫌な事件でした」
―――えっ、ちょ、ちょっと待ってください、何があったんですか!?
「すいません、あのことは、私の口からはちょっと……」
―――凄い気になるんですけど!?
「ヴィヴィオさんの逸話に関して他に確認したいことはありますか?」
―――いえいえ、もうそれはどうでもいいですから、そっちを聞かせてくださいよ!?
「それで、どこまで話をしたんでしたっけ?」
―――スルーですか!?
―――はぁ、その件はまた後日聞くとして、本日のご予定はどうなっているのですか?
「今日の午前は事務処理で午後からは訓練です」
―――これですか?
「ええ、これです」
―――聖王様は仕事しないんですか、明らかにこれらはあの人の仕事ですよね?
「任せると進まないんです。それに、これでも最近は少ないほうですし」
―――これで、ですか?
「これでです」
―――……頑張ってください。
「……そうですね」
「こんにちはー」
―――こ、これは聖王様……こんにちは……
「な、なんでいきなり引かれるの……」
―――いえ、ほら、噂……いえ、様々な武勇伝で…………
「ヴィヴィオさんでしたら、別によほどのことを言わない限りは大体大丈夫ですよ」
「うぅ、アインハルトが苛める……」
「私は毎日始末書とクレームで苛められてます」
「うっ……」
―――仲、いいんですね。
「うん、一緒に遊び行ったりすることもあるしね」
「その度にフォローに回されてますが。というか休日にまで始末書増やさないでください」
―――あっ、それと今回の取材にOKを出してありがとうございます高町一尉。
「うん、こういった番組に出てみたいなぁ、とか思ってたけどやっぱり恥ずかしいし、アインハルトの端にでも映ってればいいかなって」
「それで勝手に人のスケジュールをいじらないでください」
―――というか恥ずかしいとかいう感情があったのが驚きです。
「もー、私だって恥ずかしいって思うときとかあるよ!」
―――例えば?
「パパの前で脱ぐ時とか?」
「今のはカットで」
―――問題発言スルーですか。
「慣れてますから」
―――嫌な慣れですね。
―――それと編集の際にはカットしておきますので。
「お願いします。これでも聖王教会のトップを兼ねてますから下手な発言を公共の電波に乗せるわけにはいかないので」
―――あぁ、そう言えばそうでしたね。
―――聖王様言われる由縁もそこから来ているのに忘れそうになります。
「今ではすっかり信心も離れてしまっていますし、はぁ……」
―――あれ? ストラトス二尉も聖王教会にも身を置いているんですか?
「はい、一応騎士位も授かってます」
―――ベルカの騎士!
「えぇ、私自身はどうでもいいんですが、主に政治的理由で」
「っていうかアインハルトって向こうだと上から数えた方が早い位地位上だもんね」
―――トップはあなたですけどね。
―――しかしベルカの騎士ということはそれなりにお強いんですか?
「強いっていうか、クロスレンジだったら私でも勝てるかあやしいくらい?」
―――いやですね高町一尉、あなたに勝てる存在がいるんですか?
「う~ん、実戦なら距離とっての飽和射撃の押し潰して勝てるけど、格闘限定ならアインハルト、私より強いよ」
―――……マジ、ですか?
「うん」
「そもそも実戦でそんな状況があるわけない時点でヴィヴィオさんの方が上です」
―――いえいえいえ、聖王様ってオールマイティだけど特に近接戦闘に優れているって話じゃないですか!?
―――それより上って十分強いですから!!
「そう言われる割にはあまり近接戦闘しませんが」
「だって纏めて吹っ飛ばした方が実戦だったら早いもん」
―――そして大量に無駄な被害を出して始末書の山ですね。
「……ええ」
「あぅ……」
―――むしろ高町一尉が大人しくしてストラトス二尉が前線に出れば丸く収まるんじゃないですか?
「えー、それじゃあ管理局入った意味ないのに」
―――困った人ですね。どうすれば大人しくなるんですか。
「う~ん、パパと愛欲の日々なら?」
「あの人にそれだけの甲斐性はありません。あっ、今のヴィヴィオさんの発言はカットで」
―――はいはい分かりました。
―――さて高町一尉にして格闘戦なら勝てないと言わせたストラトス二尉ですが……
―――ちょ、見えません、二人とも早くて私も! カメラも! 追いつけません!!
―――聖王の右腕は伊達じゃなかった!!
「あー、もう! 広範囲魔法行くよッ!!」
「ッ!! 今日は見学者がいるのを忘れないでくださいっ!!」
―――って虹色の光がーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
―――えー、少々事故がありましたが、取材の方を続けます。
「ええと、カメラの人運ばれましたけど、大丈夫ですか?」
―――代理が入っただけですから、番組は大丈夫ですよ、ええ!
「……そう、ですね」
―――しかし聖王伝説というのを見た気がします。
―――さすが聖王様、私たちまで平気で巻き込むとは一味違いますね。
「好意的に言えば、何事も全力でやっているだけなんですけど、はぁ……」
―――SSSランクの全力は誰も耐えられませんからね。
―――虹色の世界の先が見えましたよ。
「それは大丈夫ではないですから今すぐ病院へ行った方が……」
―――いえいえ、ここで私が帰ったら番組終了しちゃうじゃないですか!
―――このままストラトス二尉の私室を見るまでは!
「あっ、アベさん。この人ヴィヴィオさんの一撃で頭を打ったようなので病院へ運んでください」
―――えっ、ちょっと、そこの局員さん引き摺らないでくださいよ!
―――番組終了しちゃうじゃないですか!
―――あっ、ちょ、アーーーーーーーーーーーーーーーー……
放送終了
***
アインハルトとヴィヴィオを出した結果がこれだよ!
ナオト不在。