「うん、我ながらなかなか良い出来に仕上がりましたね・・・ん?皆さんどうしました?」
「い、いや・・・」
「べ、別になんでもないわ」
「え、ええ。大丈夫です」
夕飯の時間、母さん達が帰ってきて皆でカレーを食べる事になったんだけど、やっぱり母さん達は杏の変わり様に驚いていた。
・・・仕方ないよね。率先して皆の分のカレーをよそって持ってくるとか、いつの間に作ったのかラッシーまで用意したりとかしてるんだもん。
しかもこのカレー物凄く美味しいし・・・ちょっとキッチンを見てみたけど、洗い物も同時進行していたみたいで綺麗に片付いてた。
前々から思ってたけど、杏ってきちんとしてたら結構スペック高いよね・・・スタミナが無いから運動系統はちょっと無理があるみたいだけど。
「・・・ねえ杏、後でこのカレーのレシピ貰えないかしら?」
「いいですよー」
「しかし、こんなに美味しいカレーは初めてだね・・・」
「ええ、本当に・・・」
母さん達も食べ始めてまた驚いてる。うん、気持ちはよくわかる。本当に美味しいよね。
でも・・・やっぱり杏がダラダラしてないのを見ると違和感があるかなぁ。
「ねえアリシア、この後に催眠解かない?」
「えー、特に問題ないし、もうちょっとこのままでもいいと思うよ?」
確かに問題は無いけれど・・・なんだか落ち着かないんだよね。次元世界旅行が終わってからここ最近は杏とのんびりしてる時間が多かったから・・・
でも今の杏だとのんびりしそうにないし・・・
食後、やっぱり杏はのんびりなんてせずに食器洗いを始めた。
「やっぱり違和感というか、何というか・・・」
「フェイトも正直に言いなさい。構ってもらえなくて寂しいんでしょう?」
「そ、そんな事無いよ!?・・・多分」
うん、多分。・・・いや、やっぱり寂しいのかもしれない。違和感を感じてるのは確かだけど。
思えば四六時中ずっと一緒だったからなぁ・・・パティシエの修行で海外に行ってた時は離れてる時間もあったけど、それでも転移魔法で帰ったら一緒にのんびりしてたし。
ああ・・・多分じゃないね。うん。寂しいんだ。今更だけど、私もかなり杏に依存してたんだね。
「ふぅ、久々にまともに家事をすると意外と疲れますね」
「杏、お疲れ様」
「ありがとうございます。さて、ちょっと休憩しますか・・・」
あ、やる気に満ち溢れてても休憩はするんだね。ちょっと安心。
「休憩ついでに能力を使って色々やりましょうか。一応邪神?ですからそれらしい事とか」
休憩が一番安心出来ない状態だった!?
「だ、ダメだよ杏。今の地球は管理世界になるかどうかとか、魔法関連とかで大変なんだから」
「む、フェイトさんがそういうなら止めておきましょうか」
「やる気が出てもフェイトの言う事は聞くんだね・・・まあ端から見たら夫婦とかにしか見えない関係だし当たり前かな」
「ん?アリシアちゃん何か言いました?」
「何にも言って無いよー」
私も聞こえなかったけど、何て言ってたんだろ?多分今の杏の事だろうから後で聞いてみようかな。
で、もう寝る時間に。
「フェイトさん、久々に一緒に寝ましょうか」
「え?あ、うん!」
急な申し出で驚いたけど、うん、たまにはいいよね。旅をしてる時は宿泊場所の都合でよく一緒のベッドで寝てたけど、最近はそれぞれ自分の部屋で寝てたし。
杏と一緒に寝ると気持ちよく眠れるんだよね。言ったら怒るかもしれないけど・・・杏の身長が抱き枕に丁度良くて。
始めは杏が苦しいかもって思ってたけど、そうでもないみたいだからよく抱き枕にしてたんだよね。
「な、何ですって!?」
「あんた、まさか・・・くっ、でもフェイトが望むなら・・・!!」
「やる気ってそっちの方向にも!?なんて事・・・」
「うぅ、これは催眠を解くべきか解かないべきか・・・」
え?みんななんでそんなに衝撃を受けた顔をしてるの?
「どうしたんでしょうか?」
「えっと、わかんない・・・」
うーん、とりあえず、放っておいて大丈夫じゃないかな?とりあえず杏の部屋に行こっか。
「さて、寝るとは言ったものの何だかよくわからないものが滾って眠れません」
「うーん、催眠が効いてるんだと思うから、解いてもらう?」
「え?催眠成功してたんですか?」
あ、そういえば杏にはちゃんと言ってなかったっけ?
「ほら、いくら気が向いたからって、普段の杏なら食器洗いまではしないでしょ?」
「・・・おぉう、そう言われてみればそうですね。というか、どういう催眠をかけたんでしょうか?」
そういえばそれもちゃんと言ってなかったね・・・という訳で説明する事に。説明といっても色々な事にやる気が漲ってくるってだけだから、簡単に説明が終わるんだけど。
それで説明をすると、杏が何だか考え込みだした。あと何だかちょっとだけ挙動不審。どうしたのかな?
「フェイトさん、催眠は私のやる気が漲ってくる事しかかけてないんですよね?」
「うん、その筈だよ」
「じゃあ今の私がやりたいと思っている事は、普段の私が少なからずやりたいと思っている事なんでしょうか?」
「うーん、そういう事なのかな?どれくらいやりたい事なのかはわからないけど」
でも、様々な事に対してやる気が出てくるって言ってたし、杏が興味を持つ様な事があればそっちにも効果があるかもね。
そう伝えると、杏は何故か顔を真っ赤にして頭を抱えうーうー言い出して、しまいには身悶えし始めてしまった。え?どうしたの?
「何でもないです!ええ、何でもないですとも!」
「いや、明らかに何かありそうな反応でそんな事言われても・・・」
「何でもないです!フェイトさんに抱きつきたいだとか頭を撫でて貰いたいだとか優しくぎゅっとして欲しいだとか・・・って私は何を言ってるんですかぁぁぁぁぁ!?」
そして杏はあーうー言いながら部屋の地面をゴロゴロ転がりだしてしまった。
・・・うん。うん。物凄く可愛い。本当に。
「違いますからね!?変な意味じゃないですからね!?フェイトさんがお姉ちゃんみたいだと前々から思っていただけで、そういう色恋だとかでは無く甘えたいだけでそのあの」
ゴメンね、もう私が我慢できない。
「杏可愛い!」
「ひゃっ!?」
もう今日は一晩中愛でるよ!愛で続けるよ!