ふかふかのソファーに座り、テレビで魔法関連の特番を見ながら、砂糖とミルクたっぷりのコーヒーをゆっくりと飲む・・・ああ、これです。これですよ、私の平穏は。
ちょっと前から事件に巻き込まれたり旅に出たりと忙しかったですし、久々のこの安らげる空間には癒されますね。
しかし・・・変態さんが地球に魔法技術を与えたって言ってましたけど、どんな与え方をしたんでしょうか。ミッド式でもベルカ式でもない魔法が開発されているんですが・・・
というかこれ明らかに科学だけで作って無いですよね。五亡星の魔法陣は陰陽五行説でしょうし、四角形は四大元素でしょうか。七星は・・・七曜?
ともかく地球のオカルトと合体して多用にも程がある状態なんですが・・・
「凄い・・・魔力効率はミッド式やベルカ式の方が断然良いけど、変換資質も無くここまで容易に魔力を変換するなんて・・・」
「しかもこれ、確か相克だっけ?それも出来そうだよね」
「元々霊力とか妖怪とかが存在してる世界ですしね。むしろ今まで魔力が使われていなかった事の方が凄い事なのかもしれません」
「あ、凄い。水で一気に植物が成長してる・・・相生関係だっけ?」
そんな会話を、戸棚に入ってた煎餅を食べながら四人でのんびりと眺めます。
んー、煎餅を食べるなら私も皆さんと同じ様に緑茶にした方がよかったでしょうか。でもコーヒー飲みたかったんですよね。まあこの後に緑茶を飲めば良いんですが。
しかし・・・地球が本格的に魔法のきっかけを与えられただけでこんな事になるとは。これだと裏側で活動していた対魔師とかが表に出ても問題がなくなるんじゃないでしょうか。
・・・テレビで頻繁に特集しているのも、そういった人達が表に出やすい様にする為だったりするんでしょうか。流石に夜の一族は吸血鬼のイメージが怖いのでそう簡単に表に出てこれないと思いますけど、霊能力者くらいなら何の問題も無さそうですし。
「凄いなぁ・・・地球の魔法が最終的にどうなるか気になるよ」
「私も気になるな。・・・あ、あの人相変わらずプラズマで説明しようとしてる」
「つまり魔力の正体はプラズマなんですねわかります」
「・・・あれ?私達って何で杏の家に来たんだっけ?」
え?えーっと・・・あ、そういえばご先祖様の残した日記的なものを見に来たんでした。すっかりテレビに夢中になってました・・・
「という訳で、目の前にあるのがその日記的なもの・・・もとい、ちょっと未来的な劣化してる金属板です」
「あれ?いつ探したの?」
「能力でちょちょいっと」
「・・・便利だね」
そんな事はどうでもいいです。さて、ご先祖様の過去について読んで・・・読めないので色々教えてもらいましょう。
そして、私が皆さんに通訳しつつご先祖様の過去が明らかになりました。簡略化すると以下の通りです。
旧支配者『あんたちょっと好き勝手やりすぎだって』
ご先祖様「あ、す、すいません。じゃあ止めます」
『いや、止めなくていいわ。むしろ能力強化するコレあげるから世界の管理とかよろしく』
「えっ」
『いや、もう面倒になってたんだよね。丁度いいからあんたに任せて遠い世界の果てにでも行って寝るわ』
「ちょっあの」
『はい能力強化に使う本。中身白紙だから適当に何か書いといてじゃ、さいなら』
「いや面倒・・・おーい」
こうして旧支配者は地球から旧神に追い出され・・・もとい、旧支配者は地球を旧神に押し付けて何処かに行ったそうです。・・・いやいやいやいや。
「何ですかそのクトゥルフファンに喧嘩を売る様な内容の過去」
「っていうか、杏ちゃんってやっぱり旧神だったんだね・・・」
「そっか・・杏のめんどくさがりは旧支配者から続くものだったんだね・・・」
「ゴメン、僕はまだ杏を取り巻く超展開についていける精神が無いみたいだ・・・ちょっと事実の受け入れに時間がかかりそうだよ・・・」
「ユーノ君。受け入れるんじゃなくて、受け流すんだよ。まともに受け取ってたら疲れるだけだよ」
私はそれを真っ向から受け止めなければいけない身の上なんですけど・・・まあ旧支配者が来る可能性が低そうなのが唯一の救いですけど。
でも・・・ご先祖様の後継者って事は私も世界に関して何かしなくちゃいけないんでしょうか?ご先祖様は次元世界を増やしたみたいですけど・・・うーん。
「・・・とりあえずフェイトさん、緑茶お願いしてもいいですか?」
「うん。ちょっと待ってて」
「よし・・・杏は旧き神で、旧支配者が・・・ゴメンなのは、クトゥルフ神話だっけ?それに関する本を読んで知識を補完したいんだけど、何かある?」
「知識補完したら余計に頭が痛くなると思うから、私が知ってる分だけ説明するね」
あー、平和です。
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『最高評議会は満場一致で八神はやてを時空管理局局長に推薦する』
『ミッドチルダ政府内閣も右に同じです』
『地上本部上層部も右に同じだ』
『という訳で、数日後から貴女が時空管理局のトップになります。式典の際に挨拶をお願いしたいので、よろしくお願いします』
そんなやり取りがあった後、はやての前に展開されていたモニターが同時に消えた。
そして残るのは、機動六課の会議室を包む耳に痛い静寂。
「・・・うん、アレや。コレはアレなんやな。神が私に与えた試練なんや。コレを乗り越えた時私は天上へと行く事が・・・」
「主、気持ちはわかりますがしっかりして下さい・・・それと、それだとこの状況をもたらした杏が神になってしまいます」
「杏ちゃんが神かぁ・・・きっと旧神やなぁ・・・そして宇宙がヤバいんや・・・SAN値もヤバいんや・・・」
「落ち着けはやて!まだ俺達が居る!だから耐えるんだ!」
「そうだ!お前が壊れたら大変な事になるぞ!」
何気に杏の正体?を的中させているはやてだった。
それはさておき、杏の洗脳の効果範囲が一応制限されたものだったのか、機動六課の局員のうちはやてとそれなりに親しい者達は洗脳の影響を受けなかった。
具体的に言うと、上層部・守護騎士・フォワード陣、並びにそのメンバーの繋がりでよく一緒に会話した数人だ。ヘリパイのヴァイス等がコレに当たる。
「せや、落ち着け私。これはある意味、私が願ってた平和を実現するチャンスや・・・あれ・・・ネガってた・・・?」
「誰か助けてくれよぉぉ!はやてが(精神的に)死んじまうよぉぉぉ!!」
はやての呟きとティーダ達の励まし、そしてヴィータの嘆きが会議室に響いていた。
それを会議室の外で聞いたフォワード陣は揃って目を押さえながら空を仰いだという。