フェイトさんの母さんである悪い魔女さん、プレシアさんの願いを、娘自慢の様な与太話と共に聞きました。
なんと、昔死んでしまった娘さんを復活させたいという願いです。まあ願いが叶うアイテムがあれば誰もが叶えようとする事ですね。ありきたりです。
本来ならばジュエルシードで蘇生させるつもりは無かったらしいのですが、私が自由に操れるという事でプランを変更したらしいです。
実際に死者蘇生が可能なのかわからないのですが、無理だった場合はアルハザードという世界への道を開いてくれればいいとの事です。
ところで娘さんの話を聞いていて「たった一人の娘」と言ってた事に気付いたので、フェイトさんは娘ではないのかと聞いてみました。
するとフェイトさんは娘さんのクローンで所詮人形だと言われてしまいました。
ちょっと気になって聞いただけでしたが、まさかそんな重すぎる事実を知ってしまうとは思いませんでした。
同世代の子では唯一の友人である遠藤さんの次に仲がいいであろうフェイトさんが母親から嫌われてるなんて、流石に面倒とか関係なく何とかした方がいいのだろうかと考えてしまいました。
まあ家族関係に干渉するわけにもいかないので保留する事にしたのですが。
「では、とりあえずジュエルシードに蘇生が可能か聞いてみますので貸してください」
「ええ、五つで足りるかしら?」
「聞いてみなければ判りませんね」
という事でジュエルシード達と死者蘇生に関して会議を開く事になりました。
「おや、お久しぶりです五番さん」
『---』
「はい、物凄く面倒な事に巻き込まれて嫌になってますけど元気ですよ」
『---』
「あ、多分効果が出てます。以前より体が楽な感じがしないでもありませんし」
『---』
「ええ、そうですね」
「・・・何を話してるのかわからないけれど、早く聞いてもらえないかしら?」
おおっと、そうでした。久々にあったので盛り上がってしまいましたよ。・・・無機物のほうが友人が多いってちょっと悲しく感じました。
まあそんな事はさておいて、確認に移りますか。
「お聞きしたい事があるんですけど・・・」
『---』
「はい、お願いに関してです。死者蘇生って出来ますか?」
『---』
「あ、複数あれば出来るんですか」
「本当なの!?」
「はい、可能みたいですよ」
「ああ、アリシア・・・これで、これでまた会えるのね・・・アリシアァ・・・」
『---』
「ただ五つじゃ少し足りないみたいです。完全を期すならもう少し集めた方がいいみたいですね」
聞いちゃいません。完全にトリップしてしまってます。見た目が魔女のメイクのままなので物凄く怖いです。
しかし複数個必要なんですよね・・・よし、さっさと帰りたいですし集めちゃいましょう。
「えーっと、高町さんや時空管理局の方が封印したもの以外のジュエルシードをここに転送して集めたり出来ます?」
『---』
「じゃあお願いします」
ということで暴走しない様に私が調整しつつジュエルシードを召喚しました。高町さん達から奪わなかったのは単に面倒な事になりそうだったからです。
そして現在の個数が十三個になりました。つまり高町さん達は八個持っているって事ですね。
「十三個で足りますかね?」
『---』
「それは良かったです。早く帰りたいですから」
さて、後は蘇生する為に娘さんの死体をどうこうしなければなりませんが・・・死体、死体ですか。
インターネットでグロテスクな画像を見た事があるので多少は耐性がありますが、実際に見て気分が悪くなったりしたらどうしましょうか。昔の死体みたいですし、間違いなくミイラか白骨ですよね。
少し気が滅入ります。何で平和な世界でぬくぬく生きてきた小学三年生が死体を蘇らせるなんてイベントをこなさなければならないんでしょうか。
と考えていたのですが、死体は物凄く近未来的なカプセルに保管されていて綺麗だったので、そこまで気分が悪くなるものではありませんでした。
むしろ娘さんの死体よりも、既に涙を流して泣いていたり「失敗したらコロス」と言いたげな凶眼で見つめてくるプレシアさんの方が嫌です。
でも我慢しなければなりません。これが終われば私は平穏を取り戻す事が出来るんです。その為ならば私も多少は頑張ります。・・・面倒ですけど。
「じゃあいきましょうか」
『---』
「はい。皆さんお願いしますね」
ジュエルシード達から放たれる凄まじいまでの青い光。流石に十三個もあるおかげか、魔法が使えないし魔力もわからない私でも何かとてつもないものを感じます。
明らかに凄まじいパワーを感じてこんなものを制御できるのかと不安になりましたが、何の問題も無く制御できました。ジュエルシード以上に私の能力はあり得ないものだったみたいです。
まあ悪い事ではないので問題は無いですよね。
ジュエルシードから全方向に解き放たれていた青い魔力が、娘さんの体へと収束して包み込んでいきます。
魔力が原因か、それとも様式美なのか、娘さんの体が中に浮かび上がっています。いかにもなエフェクトですね。
しかし結構時間がかかってます。今で大体三分くらいでしょうか。プレシアさんの目がヤバイ事になってるので早く終わって欲しいのですが。
そしてそのまままた三分経過した所で、娘さんを包み込んでいた青い魔力が爆発するように、閃光と共に周囲に飛び散っていきました。
目が痛いです。何となく光りそうな気がしたので目を瞑っていたのですが、それでも瞼を貫通する勢いで光ったのでダメージを受けました。
そして目をゆっくり開けると・・・既にプレシアさんが娘さんの体を抱きしめて号泣していました。この人は目を傷めなかったんでしょうか。魔法でしょうか。
「生きてる・・・本当に、生きてる・・・アリシア!アリ、シアァァ・・・!!」
うん、幸せそうな光景・・・ですが、やっぱり納得できませんね。
フェイトさんもクローンとはいえ娘ですし、面倒ごとを持ってきてますが割りと嫌いではないので何とかしてあげたいものです。
うーん・・・よし、せっかくここまで関わったのですから、アフターサービスと称してフェイトさん達が家庭円満になる様にプレシアさんを何とかしてあげましょうか。
説得が面倒なのでジュエルシードで洗脳して。