あの宇宙戦艦会議以降、何だかんだで時空管理局が私に接触してくる事はありませんでした。
絶対関わろうとするんだろうなぁと思っていたので予想外ですが嬉しいです。
後日、学校に行くと高町さんが家庭の事情で学校を暫く休むと担任の先生が言っていました。
恐らく時空管理局の手伝いをするんでしょう。ぜひとも私の代わりに頑張っていただきたいものです。
そして私の方に面倒事を持ってこないようにして下さいね。
それにしても、ここ最近は面倒に、巻き込まれてばかりだった気がしていたので今の平穏がとても素敵に感じます。
ジュエルシードでお願いを叶える事はもう出来ませんが、十分なくらいの効果は既に手に入れているのでそこまで悔しくはありません。
願わくばこのままジュエルシードも集め終わって、何の事件にも巻き込まれずにいつも通りにダラダラと過ごしたいものです。
何か事件が起こったとしても私を巻き込まなければどうでもいいんですけどね。
そんな事を考えていたのがいけなかったんでしょうか。
「ごめんなさい、母さんが貴女と会って話したいって・・・」
「面倒なので嫌です」
「あの、でも母さんが・・・」
「嫌です」
目の前には縁があるのか何かと出会うフェイトさんとオレンジの犬。しかも今回はご指名ですよ。絶対面倒事です。
それにしても母さんですか、この子はジュエルシードで何か企むようなタイプとは思えませんし、多分その母さんが黒幕なんでしょうね。
・・・ってことは、私の能力を当てにしてるって事ですか?うわぁ、やっぱりあの時能力使わなければ良かったです。止め処ない後悔の波が押し寄せてきますよ。
しかしどうしましょう。フェイトさんは儚げな雰囲気を纏いながらも何だかんだで意志が強いみたいで、今回も瞳が「絶対連れてかなきゃ!」と自己主張しています。
これは恐らく私が一緒に行くというまで付き纏われそうですよね・・・面倒ですけど付き合わなきゃいけないんでしょうか。
「ああもう、用件が終わったらさっさと帰りますよ?そしてもう付き纏わないで下さいね、面倒ですから」
「あ、うん!ありがとうございます!」
はぁ・・・何時になったら以前と同じ様な平穏が戻ってくるんでしょうか。ソファーとテレビが恋しいです。
というわけでフェイトさんの実家?に転移してきました。なんか凄い立派な建物ですね。お嬢様なんでしょうか。
というかなんでこうも身近にお嬢様ばかり居るのか・・・ああ、私も資産だけで言えばお嬢様と言えなくも無いんでした。私が生放送の抽選会に干渉して当てた宝くじのお金ですが。
とりあえずフェイトさんが先導してくれているのでそのまま着いていく事にします。
気が付けばオレンジ色の犬が犬耳のお姉さんに変身していましたが、まあ魔法ですしフェレットも人間になってましたから気にする事でもないですよね。
・・・しかし、外見は豪華ですけど何処となく寂れた感じがしていますね。隅の部分なんかには埃も溜まってます。
ちゃんと掃除しているんでしょうか?こんなに大きい家だから仕方ないといえば仕方ないのかもしれませんが、もったいない気がします。
「母さん、フェイトです。連れてきました」
さて、大きい扉を開くとそこには玉座に座る女性が居ました。さてまずはどこから突っ込めばいいんでしょうか。
いかにも悪い魔女にしか見えない服装とメイクをしたフェイトさんの母さんに突っ込めばいいのか、一般家庭に玉座の間がある事に突っ込めばいいのか。
というか物凄く不機嫌そうにしてますね。正直怖いです。なんというか、明らかにラスボスっぽい感じがします。命の危機すら感じますよ。
「(あの、物凄く怖いので、何か危険な事になったら皆さん助けてくれませんか?)」
『『『---』』』
「(ありがとうございます、安心できました)」
とりあえず身の安全は保障してもらいました。周りの強力を得た時の私はたとえ戦車が相手でも無傷で過ごす自信があります。戦車操れますけど。
「・・・フェイト、下がりなさい。二人っきりで話がしたいの」
「あ・・・はい」
空気がヤバイです。もしかしてこの母さんってフェイトさんの事嫌ってたりするんでしょうか?物凄く険しい目つきで睨んでるんですけど。
こんな家庭環境最悪な親子にはなりたくないですね。家みたいな放置系も問題ではありますけど、こんな空気になる親子は流石に・・・
ああ、フェイトさんが部屋を退出してしまいました。物凄く心細いです。命の保障は既に取れているんですけど、あまり長居したくないですね。
まあそんな事を言いながら全然焦ってはいないんですけど。
「さて、貴女。ジュエルシードを使いこなせるというのは本当かしら?」
「あ、はい。もうお願いを叶えてもらった事がありますし」
「なっ!?本当に!?」
あ、空気を気にしすぎてうっかりバラしてしまいました。でもまあそんなに問題は無いですよね。
「どんな願いを叶えたというの!?」
「えっと、最大限怠けてもいい様に最低限の身体能力を確保する事と、食事が偏っても問題ない様に必要な栄養を毎日自動的に摂取する事です」
「・・・そ、そう」
思いっきり引きつった顔で短くコメントされました。まあそんな反応だろうなとは思ってましたよ。でも便利なんですからいいじゃないですか。
「とりあえず、ジュエルシードを制御して願いを叶える事が出来るのね?」
「はい、出来ますよ」
「・・・実は、どうしても叶えたい願いがあるの。協力して貰えないかしら?」
「面倒なので嫌です」
「・・・もう一度言ってもらえないかしら?」
「面倒なので嫌です」
というかいきなり知らない人にそんなことを言われても困りますし。
どんな願いかは知りませんけど、自分でジュエルシードを制御して願いを叶えればいいじゃないですか。・・・あ、そういえば普通は暴走するんでしたっけ。
でも面倒なんですよね。黒幕の願いなんて世界制服とかでしょうし、そんな願い「ズガァンッ!」ッ!?危なっ!?
うわ、いきなり魔法使うとか危ないじゃないですか!?ああ、最初に周りのものにお願いしておいて助かりました。ありがとうございます、飛び出た床材さん。
「・・・何をしたの?」
「いやこっちの台詞なんですが」
「ふん、まあいいわ。私はどんな事をしてでも願いを叶えるのよ。痛い目を見たくなければ大人しく従いなさい」
おおぅ、悪役過ぎます。なりふり構わない人は怖いと漫画やテレビで聞いた事がありましたが、実際に遭遇すると本当に怖いですね。
こんな人の相手なんてしたくないです。早急に帰りたいんですが。
「ですから、面倒なんで嫌です」
「言っておくけれど、私に従わない限り家に帰してあげるつもりは無いわよ?」
最悪じゃないですか、両親に心配はかけたくないんですけど。・・・仕方が無い、お願いを聞いてさっさと帰らせてもらったほうがよさそうですね。
はぁぁ、面倒です。ジュエルシードと関わった事は後悔してませんが、これが今までの幸せの代価なんでしょうか。
「・・・はぁ、わかりました。早くお願いを教えてください。そして早く私を帰らせてください。ワイドショーでも見ながらだらダラダラしたいんですから」
「・・・もう少しやる気は出さないのかしら?」
「出るわけが無いです。いいから教えてください」
随分イライラしてるみたいですが、私だっていい加減イライラしてるんですよ。こんな半ば無理やり連れてくるような事されて気分悪いんですから。
これで下らないお願いだったら帰りますからね。たとえあらゆる物を操ってでも。
「叶えられなかったら、別の願いに協力してもらうわよ?・・・私が叶えたい願いは---」
「わがままですね。・・・願いは?」
「---私のたった一人の最愛の娘、アリシアの蘇生よ」
・・・最早面倒とかそういう次元の話じゃなくなってきてしまいましたね。本当に勘弁してください。