「今回の横流し事件の犯人を知っていたら教えてください」
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「えー、ヴォルクス・ワーゲンさんとランボー・ルギーニさんとケイト・ラックさんの三人みたいです」
「・・・情報提供はありがたいけれど、誰に聞いたのかしら?」
「本局さんです」
「・・・そうよね。アースラとも会話してたみたいだものね」
という訳で横流し事件の犯人についての情報をリンディさんに渡し、私達はミッドに戻る事になりました。
本当ならもう少し本局で見て回る予定だったんですが、流石にこんな大事件が発覚してしまった状態で観光案内など出来る筈がありませんしね。
アースラさんとお話出来なかったのは心残りではありますが、今回は仕方がありません。
でも予定を邪魔された事は確かなので、とりあえず犯人が本局から逃げられない様に、犯人の三人だけ転送装置を使えない様に本局さんにお願いしておきました。
さっさと捕まって塀の中に行ってくださいね。
「これからどうするの?結構時間余っちゃったし」
「またクラナガンでもぶらつきますか?お土産でも買うついでに」
「私はもう地上本部で買ってしまったのでホテルでのんびりする事にします」
それぞれ自由行動する事になりました。といっても、ホテルに戻るのは私とフェイトさんとアルフさんだけですが。
フェイトさんとアルフさんはお土産を買っていなかったので買いに行ってもいいのではと聞いてみましたが、私が心配と言われてしまいました。
フェイトさんは私の保護者か何かなんでしょうかと考えたら、何かどころかむしろ、それがピッタリと当てはまる事に気付いてしまいました。
流石にもう少し自立した方がいいのでは・・・とも考えましたがそれに関しては今更なので気にしない事にします。
という訳でホテルに戻り、フェイトさんが行ってみようと言ったのでホテル内の喫茶店へと向かいました。
フェイトさんが注文したのはオススメらしいケーキ。研究熱心ですね・・・でもフェイトさんが頑張ればその分私も美味しいものが食べられるので応援します。
私が注文したのはコーヒーとシュークリームで、アルフさんは紅茶とショートケーキです。翠屋と比べて採点してみましょう。
「ところでフェイトさんは中学卒業したらヨーロッパに修行に行くんですよね?」
「あ、うん。そのつもりだけど」
「そうですか・・・いえ、フェイトさんなら色々な次元世界を巡って文字通り世界中のデザートを見て回ってもいいのではと、今思いまして」
「あ、それもいいかも。・・・でもそれだと中々家に帰る事が出来なくなりそう」
「旅ですし、そんなに頻繁に帰らなくてもいいのでは?」
「杏が心配」
「姉というか保護者というか、むしろ嫁というか・・・何でしょうねこの心配されっぷり」
「フェイトは杏に甘いからねぇ」
私ってここまでフェイトさんに心配かけるほどだったんでしょうか。確かに端から見ると物凄いダメな人に見えるとは思いますけど。
でもまるで信用されていない様な感じがして微妙に凹みます。
「う、えと、杏を信用してない訳じゃ無くて、心配なのもあるけど・・・」
おや、今までにない展開。いつもは心配とだけしか言いませんが、他にも理由があったんでしょうか?
「心配というのは理由の一部だけなんですね。じゃあ、他に何か理由があったんですか?」
「うぅ、その・・・」
フェイトさんがここまで言い淀むなんて結構珍しいですね。出会った当初はこんな風になる事も結構ありましたけど、最近では全然こうなりませんでしたし。
しかし何処にこんな風になる様な理由があるというんでしょうか。私には全然思いつきませんが・・・あとアルフさんは何故ニヤニヤしているんでしょう。
「その、杏が・・・」
「はい」
「私が杏と、一緒に居たいから・・・」
・・・よーし落ち着きましょう。深呼吸です。冷静になる事が今この場ではとても大事です。
というかなんですかその不意打ちというか何というか・・・うわー、いや嬉しいですけど、えぇー?
「ほ、ほら!杏のお陰でみんなと暮らせる様になったし、色々お世話になってるし、・・・私の、初めての友達だし、その・・・」
「あー、えっと、はい、えぇ、その、まぁ、んぅ、えぇ?」
どうすればいいんですか!?言われた事は嬉しいですけど、この状況どうすればいいんですか!?
アルフさんニヤニヤしてないで助けてください!!
「その、迷惑だった?」
「それは無いです。・・・まぁ、私もフェイトさんにはお世話になってますし、初めてではないですが大事なお友達ですし、今では一番親しい人ですし・・・」
実際両親よりも精神的な距離が近いですし。いやあの旅行しっぱなしの両親だと仕方が無い気がしないでもないですが。
というかあの両親はいったいどれだけ旅行に行っているんでしょうか。というか本当に旅行なんでしょうか。地球の裏を多少なりとも知った今では両親が何らかの組織に属していると言われても驚かない自信があります。
・・・いや、今はそれは関係ないですね。あー、これ程までに動揺したのは初めてかもしれません。
「まあ、その、何ですか。こ、これからもよろしくお願いします・・・」
「あ、えと、よ、よろしくお願いします・・・」
「くふっ・・・あはははは!!もう我慢出来ない!なんだいその初々しいカップルみたいな会話は」
「カ、カップル!?」
「いや、そういう意味での言葉では無かったんですが・・・いえ、でも端から聞いたらそうとしか聞けませんよね・・・他のメンバーが居なくて心底助かりました」
今絶対顔が真赤です。他の人達が居なくて本当によかった・・・アリサさん辺りなんかは物凄い勢いでからかってきそうで恐ろしいです。
「・・・と、とりあえずケーキを食べて落ち着きましょう」
「う、うん。そうしよう」
「アタシは席を外そうかい?」
「アルフぅ~」
「ですからそういう意味での言葉では・・・」
あー、何とか皆さんが帰ってくるまでには落ち着かないといけませんね。コーヒーを飲んで落ち着きましょう・・・