厳重にロックがかけられている扉を開き、中に踏み入ると多種多様な神秘の力を持つロストロギア達が---
「---溢れ返ってますね」
「おかげで管理に警戒に調査にと費用がとんでもない事になってるのよ。ここにあるのは比較的危険じゃないと思われるものだけど、出来るだけ減らしたいのよ。まだ増えるだろうし」
「成程、経済的に厳しい管理局の悩みの種を解消したいという意図もあった訳ですか」
しかし棚に隙間が無いじゃないですか。いくら危険が少ないと思われるロストロギアだからといって、こんな急ごしらえなカラーボックスにまで入れるのはどうなんでしょう?
一応封印魔法がかけられているみたいですけど・・・
「一応ロストロギアだから、杏さん以外はあまり触らない様にしてくれないかしら?」
それじゃあ皆さんがつまらないのではないでしょうか、という事で。
「皆さーん、今は私が許可するまで効果を発揮したり暴走したりしないで下さいねー!」
『---』
「ありがとうございまーす!・・・という訳で問題無いです。どんどん弄ってください」
「・・・まあ、持ち出さなければいいわ」
という訳で観光組によるロストロギア鑑賞会が始まりました。マッド組はなにやらデバイスを取り出して情報を得ようとしているんですが・・・気にしない事にしましょう。
さて、私はジュエルシードを探しつつ、ついでに面白いロストロギアを探し鑑定してリンディさんに教えましょう。ジュエルシードがメインなのは言うまでもありません。
まず手近にあった水晶の様なものを手にとってみました。中には森やログハウス等のミニチュアがありますが・・・
「えーっと、貴方の名前と効果を教えていただけますか?」
『---』
「ほうほう・・・それはそれは」
どうやら魔女の箱庭と呼ばれるロストロギアらしく、特定のキーワードを唱えるとミニチュアの中に入れるらしいです。
何でもこの水晶は小さい世界を一つ封じ込めた様なものらしく、かつて滅び去った世界で作られたロストロギアらしいです。
まああまり興味が引かれなかったのでさっさとリンディさんに情報を渡して次を探す事にします。
「コレは確か稀少獣の違法取引の時に見つかったもの・・・犯人は逃したけれど、もしかするとこの中に密輸の対象になった・・・」
何やら推察モードに入ってしまったリンディさんを放置して、今度は変な人形を調べてみましょう。
マネキンの様な顔の無い人形ですが、関節や肌の質感がとても人間に似ています。ミニチュア人間を持っている様な感じがして何ともいえない感触ですね。
人形というと呪いが思い浮かびますが、ご本人(ご本物?)に聞いてみるとそうでも無いみたいです。
何でも人形に自分の血を付着させ、魔力を篭めると自分と寸分違わない人形が作れるらしいです。勿論人形なので動きませんが、現在の状態を完全にコピーするらしいので色々と使い道はありそうですね。
でも他人の血を付けて自分の魔力を流しても問題無いらしいので、ストーカーや変態に使われるととんでもない事になりそうです。
「寸分違わぬ・・・そういえばこれが見つかったのは・・・」
名探偵の様なリンディさんを無視して次を探そうとすると、はやてさんが雪ウサギの様なぬいぐるみを持ってきました。
「何ですかそのぬいぐるみ?」
「いや、前の任務でたまたま見つかって封印した物何やけどな。どんな効果か気になったから見てもらおうかと思って」
「どうですか。少々待っててください」
雪ウサギのぬいぐるみをはやてさんから受け取ると、その素晴らしすぎるもふもふ感にちょっと嬉しくなりました。これ持って帰りたいですね・・・
とりあえずそのままもふもふしながらどんな効果か聞いてみました。そして---
「お返しします」
「ちょっ、何でそんないきなり!?」
「いえ、効果が『毒性魔力を撒き散らして辺り一帯を汚染する』というものだったので。私はそんな危険物を愛でる様な心を持っていません」
「危険が少ないロストロギアの保管室に何でこんな危険すぎる物が!?」
ちなみに名前は『振りまく獣』でした。愛嬌を振りまく とみせかけて毒を振りまくなんて趣味が悪すぎると思います。
暫く同じ要領で調べて回ったんですが、全然ジュエルシードに辿り着けないのでいい加減疲れてきました。
それなりの量を調べたのでもういいだろうと思い、周りのロストロギアにジュエルシードのある場所を聞いてみました。
「ジュエルシードは何処にあるか判りますかー?」
『---』
「・・・すいません、もう一度お願いしていいですか?」
『---』
「・・・あの、リンディさん。ジュエルシードが無いんですが、どういう事でしょうか」
「なんですって!?」
おや、ジュエルシードで私を釣って上手い具合に利用しようとでも考えていたのだと思いましたが、本気で困惑しているので違ったみたいですね。
というか、この様子だと本当に私に使わせてくれるつもりだったんですか。流石にとんでもない願いは叶えさせてくれないだろうと思ってましたが、それでも私に本気で使用許可を出すとは・・・
いやそんな事より今はジュエルシードが何処にあるかですね。リンディさんの反応から察するにここにある筈でしょうけど。
「ジュエルシードが何処に行ったのか知ってませんかー?」
『---』『---』『---』
おぉう・・・重大事件判明じゃないですか。勘弁してください。私が第一発見者とか面倒なんですが・・・いやジュエルシードさん達は仲のいいお友達?ですし、我慢は出来ますけど。
「リンディさん。ジュエルシードは横流しされたみたいです。というかここのロストロギアは結構な数が横流しされてるみたいです」
「そんな!?保管方法がちょっと雑とはいえ、目録も監視もしっかりしているのに!?」
「管理担当が一枚噛んでるんじゃないでしょうか?」
という訳で重大事件の発覚という事でリンディさんとはやてさんは大至急調査と確認をする為に忙しくなってしまいました。
私達はこんな時に本局観光をする訳にもいかないのでとりあえず本局の食堂で休憩する事に。私は第一発見者なので巻き込まれるかと思ったんですが、私の能力を説明するとそれはそれで面倒な事になるらしいのでリンディさんが何とか誤魔化してくれるそうです。
実際ジュエルシードが無いという事だけで十分ですしね。ジュエルシードを探した理由としても、私達が関わった事件に関する物と言えば問題は無いですし。
・・・あ、でも面倒な事になってしまいました。何で私は魔法関連に関わると毎回事件に巻き込まれるんでしょうか。
「毎回事件に巻き込まれる名探偵みたいだよね」
「主人公属性を持ってるのはなのはさんだと思うんですけどね」
「そ、そうかな?不思議な力を持ってる杏ちゃんも結構それっぽいよ?」
そんな事を言うと皆さん他と違う何かを持っていますよね。・・・ああつまり、最近よくあるみんな主人公って話ですか。
いや、そんな事はどうでもいいです。とりあえず暇ですし・・・
「飲み物でも注文しましょうか」
「そうだね」
「私はオレンジジュースねー」
「私はどうしよっかな」
私はリンゴジュースでお願いしますね。