あれから暫くの間、アリシアちゃんはプレシアさんとリニスさんに協力を求めてユニゾンデバイスの開発に集中するようになりました。
どうやらデバイスの人格は一から専用AIを組むと時間がかかるらしいので省略し、代わりに以前皆さんのデバイスに登録して遊んだ闇の書の未使用人格を使うらしいです。
まさかあの偉そうな自称王を使うのでしょうか・・・等と考えていましたが、流石に黒なのはさんの時の人格を使うらしいです。確かに一番それらしいですしね。
デバイスの形なのですが、ユニゾンデバイスは大抵人型です。どうやら融合対象と同じ形だと波長の同期がしやすいらしく、それによって他のデバイスよりも融合事故が発生しにくいらしいです。
なので普通なら人型にするのですが・・・何故か今回は普通のデバイスの様にアクセサリー型で作る事になりました。アリシアちゃんに理由を聞いてみたのですが、
「杏お姉ちゃんなら問題無いと思うし」
との事でした。これで失敗なんかした日にはどうしてくれましょうか・・・ふふふ。まあ、あの三人が大丈夫と言ったのなら大丈夫なんでしょうけどね。
ちなみに今回作っている私専用のユニゾンデバイスは、完成してユニゾンに成功したらそのまま私にくれるとの事です。実験作を渡されて困るのですが、どうやら何度も調整してくれるらしいのでOKしました。
なので前述したAIと形態以外は完璧に仕上げようとしている為、結構な期間をかけてデバイスを作っています。なおデバイスの形態に関しては完成してから変える事も可能らしいです。
しかしここまで本腰入れて作る様になるとは思いませんでした。私はただ魔法を使ってみたかっただけなのですが、あのマッド三人はその先に様々な事を考えている様です。
たまたま私の家に集まって会議していた時に色々聞こえていたのですが・・・
「特許取って管理局に売り込んだら・・・」
「戦力不足も人手不足も・・・」
「他の違法研究もある程度・・・」
「人造魔導師研究も・・・」
とまあ、何か凄い事になってました。魔法の世界の事情に関しては詳しく知らないので良く分かりませんが、とりあえず何か特許とか言っていたので大金持ちにはなりそうですね。本格的に働かなくてよさそうです。
しかし、三人が研究漬け(プレシアさんとリニスさんは管理局の仕事もしていますが)になってしまった為、私とフェイトさんとアルフさんは全く話しについていけずです。
まあおかげでこちらものんびり出来ているので問題はありませんけどね。外出の機会も減りましたし、万々歳です。外出なんて必要ありません。日光は好きですけど。
「しかしプレシアさんもリニスさんも残念ですね」
「そうだね。物凄く口惜しそうにしながら言ったもんね」
最近はデバイスの最終調整に入っていたのですが、もうじき完成という時にプレシアさんに管理局から応援要請が来てしまいました。
ただの嘱託魔導師ならば断る事も不可能ではなかったらしいのですが、現在のプレシアさんは懲役後の勤労奉仕期間の真っ最中。断る訳にもいかず、リニスさんを連れ立って管理局へ行ってしまいました。
もう完成直前だったらしく、二人はアリシアちゃんに全てを託していきました。一切心配をしていなかった辺りに信頼が伺えますが、僅か小学三年生で一流の科学者から信頼してもらえるアリシアちゃんは、ある意味私達の中で一番凄い存在なのではないかと思えてきます。
「そろそろ出来上がる頃でしょうか?」
「うん。2時頃に完成すると思うって言ってたから、もうそろそろだね」
「上手くいけば私も今日から魔導師ですか・・・」
「・・・もし成功したら模擬戦しよ?」
「嫌です」
「残念・・・」
残念と言いつつも表情が全然残念そうじゃないので、断られるのが判ってて聞いたんでしょうね。というか、判りきった答えでしょうけどね。
模擬戦とか面倒ですよ。確かに魔法は使ってみたいですけど、戦いたい訳じゃありませんし。それにフェイトさんの模擬戦相手にはなのはさんや守護騎士の皆さんが居るじゃないですか。
それでも戦いたいと言うならばそれでもいいですけど、問答無用で能力使いますよ?面倒ですし。
「二人ともお待たせー!完成したよっ!」
「おお、お疲れ様です」
「お疲れアリシア。何か飲んで休憩する?」
「それより先に試してみて!早く早く!」
「アリシアちゃんが落ち着けそうに無いみたいですし、試しましょうか」
アリシアちゃんからついさっき完成したばかりのデバイスを受け取りました。受け取ったデバイスはなのはさんのレイジングハートの様な丸い形をしていて、色は白です。
赤だと宝石みたいに見えますけど、白だとどちらかというと石に見えますね・・・製作者本人に言ったら何か言われそうですが。
「さて、確かAIが入ってるんですよね?」
『はい。よろしくお願いします』
「あれ?何か声がアリシアに似てるね」
「うん、サンプルボイスに私の声を使ったんだけど、今回はテストだからそのままにしたんだ。それに杏お姉ちゃんなら自分で弄れそうだし」
「まあ確かに弄れますね。・・・でも今回はこのまま行きましょうか」
『了解しました』
さて、とうとうユニゾンする訳ですが・・・何をどうすればいいんでしょうか?
「えっと、デバイスがリンカーコアの波長読み取りに特化されてるから、その情報を基にしてデバイスの擬似リンカーコアの波長を杏お姉ちゃんが調整して」
「え?リンカーコアの読み取りが出来ないくらい小さいから非魔導師扱いなんじゃありませんでしたっけ?」
「ただ読み取るだけなら一応可能なんだよ。ここまでの性能で読み取れるのをデバイスに搭載するには不可能だから誰もやってないけどね。今回だって、一番容量の必要な波長同期プログラムを大半省いたから何とかなったんだし」
それじゃあ完全に私専用じゃないですか。量産がどうこう言ってましたけど、これで大丈夫なんですか?・・・いや、これで大丈夫なんでしょうね。何と言ってもあの三人の作品ですし、多分完全にデータを取るだけにするんでしょう。
まあそれは私には関係の無い事ですし、とりあえず始めましょうか。
「それでは・・・あ、名前って何かありますか?」
『マイスターアリシアからはユニと呼ばれています』
「アリシア、もしかしてユニゾンデバイスだからユニ?」
「安直ですね」
「い、いいでしょ別に!ほら早く!」
「そうですね。それではユニ。お願いします」
『了解。リンカーコア読み取り開始・・・完了。同期をお願いします』
さて、能力を使って・・・ふむ、相変わらず何だか良く分かりませんが、これが私のリンカーコアの波長ですね。この波長と同じ様にユニの擬似リンカーコアの波長を弄れば良いんですよね。
では、ここを・・・こうやって、こうして・・・おっと、ここはこうで・・・よし、完了です。
『波長同期完了。ユニゾン準備完了です』
「では・・・ユニゾンお願いします」
『了解しました。ユニゾンを開始します』
ユニの言葉の後にデバイスが光りながら私の中へと入ってきました。特に苦しかったりはしませんが・・・しいて言うならば、何だか胸の部分がポカポカします。多分リンカーコアのある部分なんでしょう。
そして視界が光で埋め尽くされます。眩しくはありませんが、目を瞑っているのにここまで視界が光で埋め尽くされるとは・・・周りのフェイトさんとアリシアちゃんは眩しくは無いんでしょうか?
・・・っと、光が収まってきましたね。
『ユニゾン完了しました。こちらからは異常は見られませんが、大丈夫ですか?』
「はい、大丈夫・・・ん?」
頭の中に響くユニの声に返答しながら目を開けると・・・何だか視界が高い位置にあります。それに私の声も少し変わっている様な・・・
「・・・」
「・・・」
「あの、何故そんな驚いた顔をしているんでしょうか?というか、何故か二人とも小さく見えるんですが・・・」
「あ、えっと、杏、だよね?」
「はい」
「・・・こうなるとは思わなかったなぁ・・・」
い、いったい何が起きたんでしょうか。フェイトさんとアリシアちゃんが私を見上げているんですが・・・!?ちょっと待ってください、見上げている!?
まさか・・・まさか!?
「まさか身長が伸びている!?」
「身長だけじゃなくて、外見が高校生くらいになってる・・・」
「まさかこんな事が起こるなんて・・・いったいどのプログラムが働いたんだろ?」
高校生くらい!?いや確かに変身すると大きくなるのは王道ですが、まさかそれが実際に起きるとは・・・
いや、それよりも!高校生くらいの私の身長がここまで高くなるという事は・・・
「私の身長はちゃんと成長するんですね!そうなんですね!!」
「あ、喜ぶ所そこなんだね」
「杏お姉ちゃん、気にしてたもんね・・・」
その後落ち着いてから冷静に検証した結果、外見は成長しただけで髪の毛や目などの色彩に変化は無く、魔法に関してはあまり才能が無かったのか簡単な魔法しか使えませんでした。
飛行魔法が使えなかったのが残念ですが・・・それでもちゃんと身長が伸びると判明しただけでも十分です。
ああ、本当に良かったです!