さて、唯一の完全一般人かと思ってい希さんが退魔師等という魔導師とはまたベクトルの違う異能者という事が判明してしまいました。
つまり私の身の回りで一般人と言える存在はアリサさんだけという事に・・・しかしそのアリサさんも本人が知っているかどうかはともかく、この流れだと何らかの秘密がありそうですよね。
という事は私の身の回りには一般人ならぬ逸般人しかいないという訳で・・・類は友を呼ぶとはよく言ったものです。でも一人くらいは類友以外が居てもいいと思うんですが。
『ん、あれ?何これ?』
「あ、杏。希にサーチャー見つかっちゃった」
「はぁ。でも何だか判ってませんしそのままでいいんじゃないですか?」
「そっか、じゃあそうするね」
「それでいいんか魔導師って・・・」
はやてさんの呟きに他の魔導師達は誰も答えません。聞いていなかったのか、何だかどうでも良くなっているのか・・・でも魔導師軍団の中で一番変な事になっているはやてさんが突っ込んでもどうかと思いますよ?
まあ、助ける為とはいえ私が原因なんで私の方があまりどうこう言える事では無いのですが。
『うーん、何かさっきのノヅチみたいな得体の知れないエネルギーを感じるけど・・・』
「ノヅチ?」
「さっきのツチノコですよ。確か日本神話に出てくる妖怪か何かの名前がノヅチだった筈です」
「さっきのツチノコと同じエネルギーって言ってるけど、魔力だよね?」
「なるほど、あのツチノコなんか普通の妖怪とは違和感があると思ってたけど魔力だったのね」
でも、それだと何でツチノコが魔力を持っていたんでしょうか。希さんの反応を見る限り、普通は魔力なんて持っていないみたいですけど・・・得体の知れないって言ってますし。
というか希さんがサーチャーを突っついてるんですけど、迂闊すぎる気がします。これが何かの妖怪とかだったら怪我するかも知れませんよ?
実は凄腕の退魔師なので多少油断しても問題が無いという事ならともかく。
『・・・えいっ』
「あ、サーチャー壊されちゃった」
「お疲れ様でしたフェイトさん」
「うん、ありがとう」
「でも、何か変な事になっちゃったね」
「とりあえず希が旅館に戻ってきたら追求しましょうか」
「そうね。私も一応海鳴の管理者として話を聞いておきたいわ。あんな子が居るなんて知らなかったし」
そうですか。私はもう興味が遥か彼方に飛んでいってしまったので参加しませんね。見る限り私が色々弄って遊べそうなものは無さそうですし・・・あ、札はちょっと気になりますけどね。
後から聞いた事を教えていただければ問題無いですし。今日はもうただひたすらにダラダラしたいです。布団の上か中で。
「という訳で後はお任せします」
「あんた・・・まあ今更よね」
はい、今更です。
さて、そのままのんびり布団の上に寝転がって両親の大冒険活劇や、なのはさんのお父さんがボディーガード時代に経験した事などとても興味深い事を聞いていると希さんの元へ言っていた皆さんが帰ってきました。
早速話を聞こうかと思いましたが皆さん眠そうです。時計を見たらもうそれなりに遅い時間でした。それならまあ仕方が無いですね。
なので皆さんの邪魔をしないようにバルディッシュに話してもらいました。
遠藤希さんは母方から連なる退魔師の一族らしいですが、そこまで力の無い分家だったらしく、一応技術の継承はしているものの割と普通な生活を送っていたようです。
希さんのお母さんが結婚した相手が希さんのお父さんで、温泉大好きなお姉さんはそのお父さんの連れ子だったそうです。バツイチだったんですね。
で、結婚したという事で退魔師という秘密を打ち明けたもののお姉さんに退魔師の才能がある訳でもなく、特に変化は無くそのまま普通に結婚生活。そして希さんが産まれたらしいです。
そして希さんに退魔師の才能があったのでとりあえず訓練中。つまり希さんは見習い退魔師という事ですね。
ちなみに月村家という管理者に知られていなかったのは単純明快、別に報告される程のものでもなく、しかも希さんのお母さんが結婚して苗字が変わったので全然関わりが判らなかっただけみたいです。
この話を聞いた時点でそれでいいのかと忍さんに聞いてみたら笑って誤魔化されました。冷や汗が見えたので割と不味い事なのかもしれませんね。
で、ツチノコを退治していた理由は、危険かも知れないから。ついでに修行も兼ねてだそうです。
危険と断定しない理由なんですが・・・ここ最近霊力とも妖力とも違うよく分からないエネルギーが海鳴近辺でよく感じられているらしいです。
それをたまたま取り込んだり妖怪や、そのエネルギーと何かしらが混ざって産まれた妖怪が居るらしいのですが・・・妖怪の性質とそのエネルギーが合わないのか意味の無いものとなっているかららしいです。
妖怪が生まれたりしているのはそのエネルギーの中でも妙なものらしく、具体的に言うと去年の春頃によく感じていたものらしいです。
で、そのエネルギーも粗方駆逐し終わっていたんですが、今日たまたま話を聞いて調査してみたらツチノコが居て・・・という事らしいです。
さて、去年の春先と聞いて思い浮かんだのはジュエルシード。思わずなのはさんとフェイトさんに目を向けてみると、私の目線に気付いた途端目を逸らされました。どうやら大当たりの様です。
まあジュエルシードなら妖怪が生まれる事くらい普通に起こりそうですし、納得ですね。という事はあのツチノコは私が去年ここに旅行に来た時に見つけた・・・確か、十八番さんでしたっけ?彼の残滓から生まれたという事ですよね。
懐かしいですね・・・またジュエルシードさん達とお話したくなってきました。まあ実際にまた会ったら会話よりも色々とお願いをするんでしょうけどね。
「あ、杏の事も言っておいたからね」
「別に言わなくてもよかったんですけど・・・」
「希ちゃん驚いてたの」
まあクラスメイトの殆どが魔導師やら吸血鬼やら異能者だと驚くしかないとは思いますけどね。私はもうすっかり慣れてしまってますけど。
「とりあえずこれで後はアリサさんの秘密が明らかになるのを待つだけですか・・・」
「本当に止めて・・・せめて私だけは一般人でいたいのよ」
「アリサちゃんには悪いが・・・ボディーガード時代に『バニングスグループは誰も知らない秘密の部署が存在する』って噂を聞いた事があるよ」
なのはさんのお父さんの発言でアリサさんが布団に沈みました。ご苦労様です。
「・・・とりあえず、近いうちに家族に色々聞いてみるわ」
「頑張ってください」
さて、満足しましたし私はもう寝ましょうか。おやすみなさい。