どうもこんにちは。松田杏です。
春先には魔法的な出来事に巻き込まれたり魔法の宝石でお願いを叶えてもらったりとファンタジーなイベントが多々ありましたが、それも終わった今では平和な日が続いています。
テスタロッサ一家もすっかり日本の暮らしに慣れた様です。まあ海鳴はとても住みやすい町ですしね。
最近は夏の暑さも過去のものとなり、おかげで外出した時も不快な気分にならずに済んでいます。いえ、外出するという行為だけで個人的にはちょっと不快というか、面倒なんですけどね。
まあともかく季節は秋も終盤、というか冬でそろそろ雪が降るこの時期にも私は堕落の秋を満喫し、そして堕落の冬を継続しています。次点で満喫しているのは食欲の冬でしょうか。やはり翠屋のシュークリームは魔性です。体重が増えないので食べ放題なのがとても嬉しいですね。
・・・しかし体重が増えないからといって安心する事は出来ません。何故なら身長も変わる気配を見せていないからです。
私の今の身長は135cm。ジュエルシードで3cm伸ばしてもらっているので実質132cmです。そんなにすぐ伸びるものではないのは確かですが、それでもクラスメイトを見ると順調に伸びてきている人も居ます。
男子には春から比べると4cmくらい伸びてそうな人も居ます。ジュエルシード分を追い抜かしてしまう成長速度。妬ましいです。
まあ恐らく小学校高学年から中学入学くらいの時期には私も身長が伸びると思うのでまだ余裕がありますが・・・伸びなかったらどうしましょう。もしアリシアちゃんに追い抜かされたりしたら流石にショックで引き篭もるかもしれません。
まあ、放課後や休日は基本的に引き篭もっているのであまり生活リズムは変わらないでしょうけどね。
「やっぱりフェイトちゃんは早いの」
「でも、なのはの砲撃も凄いよ」
「そうですね。でも、二人とももう少し防御魔法をしっかりしましょう。ダメなわけではありませんが、流石に偏りすぎです」
「「はーい」」
なのはさんは夏休みが終わった頃にフェイトさんに誘われて、リニスさんから一緒に魔法訓練を受けています。リニスさん曰く「感覚だけで魔法を組み上げる天才タイプ」らしいです。
確か魔法ってプログラムみたいなものなんですよね?プログラムを感覚で組むとか頭がどうにかなっているんじゃないでしょうか。私には理解できません。
まあ、そんな私も機械にお願いして人間には到底組めない様な完全に無駄の無いプログラムを組んでもらったり出来るわけですが。おかげで私の家のパソコンは処理能力が異常です。難点は常に全力稼動なので熱が溜まりやすい事でしょうか。
機械の修理自体は簡単なものならリニスさんが出来るらしいので問題ないのですが・・・とりあえず壊れたら大変なので、今は速度より安全性を重視したプログラムで処理してもらっています。
ちなみにバルディッシュで似たような事をしようとしたら止められました。下手に弄られるとメンテナンスの時に訳がわからなくなる可能性が高いかららしいです。それなら仕方ないですね。
・・・そういえば最近、リニスさんはミッドチルダの最新魔法理論を勉強してプログラムを組む勉強をしているみたいです。もしかして悔しかったんでしょうか。
「コーヒー淹れてくるね。杏も飲む?」
「はい、お願いします。砂糖とミルクたっぷりで」
「うん。待ってて」
フェイトさんは先ほど言った通りなのはさんと魔法訓練をしていますが、それ以外でも色々しているみたいです。
アルフさんと一緒に散歩に行く日もあればアリシアちゃんと一緒に魔法の勉強をする日もあり、私と一緒にのんびりテレビを見る日もあれば一人で本を読んでいたり。
散歩以外は基本的に屋内で過ごしている辺りは私の影響なんでしょうか。何気にテスタロッサ一家の中ではフェイトさんは一番一緒にのんびりする事が多いんですよね。
訓練の話を聞いていると若干バトルマニア的な片鱗が見え隠れしていたのですが・・・バトルマニアとインドア派って両立出来るんでしょうか?
「リニス、ここって・・・でもってここは・・・」
「いえ、ここは・・・するとこうなって・・・」
アリシアちゃんは正直天才過ぎて引きました。なんでもう中学生の数学を勉強をしてるんですか。やはりクローンを作れるプレシアさんの子供だからでしょうか。
アリシアちゃんはリンカーコアを持っていないのに何故魔法の勉強をしているのか疑問でしたが、どうやら魔法やデバイスの研究者になりたいんだそうです。目指すは母親プレシアさん。
言ってる事はとても子供らしいんですが、やってる事は既に子供ではありません。アリシアちゃんとリニスさんの会話が専門的過ぎてついていけません。フェイトさんもたまに理解できない部分があるらしいです。
やはり魔法資質を受け継がなかった代わりに知能を受け継いだのでしょう。数年後にはいっぱしの研究者になっていそうで怖いです。
リニスさんは仕事が順調らしく、最近は趣味と実益を兼ねてプログラム関係の資格の取得にも力を注いでいるようです。
資格取得が趣味の人が存在するのは知っていましたが、まさかリニスさんがその類の人になるとは思いませんでした。というか勉強が好きなんですね。流石テスタロッサ家で最も真面目な人です。
しかし勉強だけに意識を割いている訳でもなく、家事もとても頑張っています。本当に働き者です。
私も手作りの夕飯を食べさせてもらっている身なので、恩返し的な意味でたまにテスタロッサ家の掃除をしたりしています。勿論能力を使ってですが。
ほこりや汚れなんて私の思い通りなんですよ、ふふふ。ゴミと会話するという構図があまり好きではないので無駄話はしませんが。
「そういえば最近・・・佐藤さんでしたっけ?結構一緒に出かけてますよね」
「あぁ、信二かい?そうだねぇ、何でか知らないけどそういえば結構誘われるね」
アルフさんはバイトが楽しいらしいです。何のバイトをしているのか聞いてみると、建設現場での作業でした。まあ似合っているというか何と言うか。
作業場の同僚達も気の良い方々ばかりらしく、笑い話をしながら楽しく働いているそうです。たまにお酒を飲んで帰ってくる事もあります。人生を満喫していますね。
そして、最近良くアルフさんにお誘いの電話が来ている事を私達は全員知っています。アルフさん本人はただ一緒に遊んでいる認識のようですが、まあ普通に考えてそれは無いでしょう。
この先アルフさんが色恋に目覚めるかどうか・・・という話以前に、使い魔と人間が交際して大丈夫なのかみんなでドキドキしながら見守っています。アルフさんは美人ですがやはり根底は動物ですし、妙な価値観の違いで相手の男性が可哀想な事になりそうな気がします。
この予想出来ない展開が待っていそうな感覚、まるで昼ドラを見ているようです。・・・ちなみにこれに関してはリニスさんも興味津々でした。交際は無いだろうと確信している様ですが。
ともあれ面白そうなので頑張ってください、佐藤さん。
アリサさんとすずかさんと遠藤さんは時折一緒に遊んでいます。
フェイトさんとアリシアちゃんがお呼ばれした時に私も誘われるのですが、何とか断り続けています。流石に遊びには強制的に付き合わされる事が無いので逃げ切る事が出来ています。
その代わりに学校では逃がしてもらえなくなりました。まあ、月村家に行ってメイドロボに監視されるよりはマシです。面倒事は勘弁ですから。
まあそんなこんなでそれなりの友人関係を保っています。・・・今普通に友人って言っちゃってましたね。友人はもう増えなくていいとか自分で言っておいて思いっきり絆されてるじゃないですか。まあいいですけど。
しかし遠藤さんしか友人が居なかった私がいまやこんなに友人が居るとは・・・悪くは無いのかもしれません。今のところ面倒な事には巻き込まれていませんし。
というわけで冬の十二月。赤い服を着た老人が空を徘徊する季節です。
「寒いです」
「寒いね・・・でも、夏の暑さよりは我慢できるかも」
「フェイトも杏おねえちゃんもだらしないよー!そんなにさむくないよ?」
「私がだらしないのは常の事です」
ただいま下校中の私達は冬の道をテクテクと歩いています。寒いです。確かにフェイトさんが言った様に夏の暑さよりはマシだと思いますが、それでも寒いのは嫌です。
しかし当初の危惧とは裏腹に春から今まで平和に過ごす事が出来ました。魔導師と友人になった事でそういった事件に巻き込まれやすくなるかと思っていたのですが。ほら、魔は魔を呼ぶとかよく言いますし。
とはいえ油断してはいけません。天災は忘れた頃にやってきます。ならば忘れなければやってこない筈です。心の片隅で常に注意を・・・するのは面倒なので、まあただ忘れない様にしておきましょう。
リニスさんがそんなに心配する事はないと言ってましたから問題ないとは思いますけ・・・ど・・・?
「結界!?」
「あー、油断したら本当にやってきましたね」
「ねえ、何でリンカーコアのないわたしと杏おねえちゃんが中にいるのかな?」
「そうですね・・・私はジュエルシードで色々サポートしてもらってますし、アリシアちゃんはジュエルシードで生き返ってます。恐らくその辺が関係しているんじゃないでしょうか」
「あ、そっか。わたし死んでふっかつしたんだったね」
「えっと、杏とアリシアももうちょっと警戒して欲しいんだけど」
いや、魔法の使えない私達が魔法関連の出来事で警戒してもどうしようもないと思いますけど。確かに何とかしようと思えば能力で色々出来ますけど、やっぱり魔法には魔法ですよ。
というわけで。
「「がんばれー」」
「う、うん。頑張る。バルディッシュ、セットアップ!」
『Set up!』
さて、今度は一体どんな事件に巻き込まれる羽目になるんでしょうか。出来ればジュエルシードの時の様に、私に得のある事件だととても嬉しいのですが。
まあ期待しないでおきましょう。そう何度も美味しい話があるわけもありませんしね。
・・・あ、誰か飛んできました。
「・・・幼女ですね」
「わたしと同じくらいかな?」
「でも、油断しない方がよさそう」
おぉう、フェイトさんがそう言うとは、やっぱり強いんでしょうか。
というかあの子ハンマー持ってませんか?あれもデバイスだと思いますけど、ハンマーは魔法の杖扱いでいいんでしょうか。斬新です。フェイトさんの鎌も似たようなものですけど。
「三人?・・・まあいい、お前らの魔力を貰うぞ」
三人のうち二人は魔力持っていないんですけどね。
-----あとがき-----
A's編突入まで投稿しました。
杏ちゃん活躍にご期待ください。