あれから結局高町さんも友達?になってしまいました。もう増えなくてもいいと言っているのに話を聞いてくれません。
以前なのはさんが使っていた魔法もそうでしたが、一切合財を無視して直進する事が好きなんでしょうか。真っ直ぐな人といえば聞こえはいいですけど、私からするととても面倒です。
ただなのはさん自身も私に苦手意識があるらしく、持ち前の一直線な行動もちょっとだけ弱くなってる様な気がします。
具体的に言うと、
「むー・・・杏ちゃん、いい加減名前で呼んで欲しいの!」
「何故でしょうか?」
「だって友達・・・」
「私は別に友達じゃなくても良いんですが」
「いや、あの・・・」
「はい」
「えっと・・・うぅ・・・」
「なんでしょう」
「・・・」
といった感じでしょうか。
まあこの後アリサさんに怒られたりして結局色々面倒になって名前で呼ぶ事になったのですが。全く強気キャラは鬼門です。
というか関わってしまった時点でもう手遅れだったんでしょうね。今のところは学校での朝とお弁当後のお昼寝は何とか死守出来ていますが、これもいつ侵食されてしまうのか・・・
特にお昼寝はアリシアちゃんに起こされる事も多いですからね。フェイトさんだけが頼りですけど、何だかんだでやはりアリシアちゃん優先な部分がありますし。
希さんは他の友人グループへ行く事が多いらしく頻繁には助けてもらえませんし。ああ、面倒です。
その一方で、自宅では比較的以前までと同じ様なだらけた生活が満喫できています。
家の中での移動は勿論フライング座布団。それも三枚連結して主に寝そべったまま移動です。移動するその姿はまるで人間ロケットだとはアリシアちゃんの言葉。
ちなみにアリシアちゃんもフライング座布団がちょっとお気に入りだそうです。魔法が使えないみたいですから空を飛べて嬉しいそうです。
フェイトさんは私に影響されたのか、特に何かをする訳でもなくのんびりする事が結構好きになったみたいです。曰く、「今までこうやってのんびりした事無かったから」だそうです。なんて勿体無い人生でしょうか。
アルフさんは専ら犬型でのんびりしています。が、最近怠けすぎだとリニスさんに怒られたらしく、今はバイトを探しているようです。ニートなんて羨ましい生活をさせない為に協力しようか悩みどころです。
リニスさんはプログラム関係の仕事に就職したみたいです。まあ魔法もプログラムみたいなものらしいので、フェイトさんに魔法を教えていたリニスさんには丁度良い仕事ではないでしょうか。
・・・何となく察する事が出来ると思いますが、テスタロッサ家の皆さんは基本的に私の家に集合しています。
私の両親は既に世界旅行を再開しているので私は一人だけですし、リニスさんも仕事があるので平日の日中はアルフさん一人。
学校が終わったらフェイトさんとアリシアちゃんは大抵こっちに遊びに来るので、アルフさんも着いてきて・・・と、まあそんな感じで全員集合しています。
全員集合してもやる事はのんびりするかゲームくらいしか無いのですが、アリシアちゃん曰く、「人数が多い方がとりあえず楽しいから」だそうです。
まあ強制的に外出させられる訳でもないので、その点については賛成しないでもありません。
そんなこんなで夏休みに突入しました。しかしやはり基本的に外出はしません。
というか暑いのに外に出る理由がわかりません。自分から苦しもうとするなんて、変態なんでしょうか。
「やはり夏がクーラーの効いた部屋でだらだらするのが一番ですね」
「ミッドは涼しかったけど日本は暑いね・・・」
「杏おねえちゃーん、アイスたべていい?」
「あ、あたしも食べて良いかい?」
「良いですよ。ついでに私の分も持ってきてくださいね。あ、フェイトさんも食べます?」
「あ、うん」
この頃になると全員のんびりする事が好きになっています。見事に私に影響されてますね。良い事です。
まあフェイトさんとアルフさんは魔法の腕が鈍らない様に練習していますし、アリシアちゃんはリニスさんから貰った教科書で魔法の勉強をしているみたいですから完全にだらけている訳では無いみたいですが。
・・・ちなみに私に魔法が使えるか聞いてみたところ、魔法を使う為に必要なリンカーコア?が無いので不可能だと言われてしまいました。残念です。
とはいえ完全に無理な訳でも無いんですけどね。フェイトさんのバルディッシュにお願いしてフェイトさんの魔力で勝手に魔法を発動させる程度なら可能です。
それを見たリニスさんは「これは流石に非常識過ぎます!」だとか言ってましたが気にしません。
ある日、すずかさんの家でお茶会をするという事でお誘いを受けました。
お茶会です。なんという貴族的な響き。現代日本人の小学生が誘ってくる様な行事では無い気がします。やはり良家のお嬢様は住む世界が違うのでしょうか。単純なお金なら私の家も結構あるんですが。
ともかくお茶会です。勿論断ろうと思ったのですがフェイトさんとアリシアちゃんにも誘われてしまい断れきれませんでした。将を射んと欲すればという奴ですね。
別に断ろうと思えば断れたんですが、まあ成り行きとはいえ、友達になった相手の家に一度も行かないのもどうかと思ったので。
あ、勿論遠藤さんの家にも行った事はありますよ?めんどくさがりですけど、その辺は割とちゃんとしているので。まあ一回しか行ってませんが。
そしてお茶会当日。私の家に迎えが来るという高待遇です。これがあったから参加した様なものです。真夏に外を歩くなんて苦行をする気はありまえんので。
アリシアちゃんはすずかさんの家に始めて遊びに行くという事で楽しそうです。フェイトさんは以前ジュエルシードを探している時に不法侵入した事があるらしいですが、ちゃんとお客さんとして行くのは始めてらしいのでやはり楽しみにしています。
ちなみにアルフさんはバイトが決まって働きに行っています。何の仕事かは知りませんが。
インターホンが鳴りました。迎えが来たようです。
「さて、行きましょうか」
「楽しみだね」
「猫がいっぱいいるんだって!」
アリシアちゃんは猫好きの様です。使い魔にする前のリニスさんを飼っていたのもアリシアちゃんらしいですね。
私も猫は好きなので楽しみですね。わざわざ移動するのは面倒ですけど。
しかし、まさかこんなものに遭遇するとは思いませんでした。
「杏様、フェイト様、アリシア様。お迎えに上がりました、月村家メイドのノエルと申します」
「あ、はい、よろしくお願いします」
「よろしくおねがいしまーす!」
「・・・あぁ、えっと、よろしくお願いします」
予想外です。何処からどう見ても人間にしか見えませんが、能力がある私には分かります!この人は本物のメイドロボじゃないですか!?
凄まじいですね月村家。まさかこんな現代科学の最先端でも実現不可能と思われる様な完全なメイドロボが存在しているなんて、実は魔法に関わりのある一族だったりしないんでしょうか?
うーん・・・私の手で触って中身をあちこち見たら色々わかるんでしょうか。ジュエルシードはあまり理解出来ませんでしたが操作や改造自体は可能でしたし、少なくとも操る事は可能でしょうが・・・
しかし生物では無いとはいえ強い意志があるでしょうし・・・いやでも操作できたバルディッシュさんもAIとはいえ強い意志がありましたし・・・ううむ、興味深いです。弄繰り回したい。
「あの、何かございましたか?」
「あ、いえ、なんでもないです」
まぁ実験する訳にもいかないので諦めましょう。それに多分操作可能でしょうし。
万が一操作したことがバレて向こうに私の力のことがバレたら面倒な事になりそうです。何せメイドロボを問答無用で服従させる事が出来る天敵の様な存在ですからね。
ここは手を出すべきではありません。ジュエルシード事件で学んだ事です。変な事をしたら面倒な事態が発生しますから自重しましょう。
その後、普通にお茶会をしながら猫と戯れました。もふもふは癒されます。これだけで来た甲斐がありました。
でももう行かない方が良いかも知れません。何故ならメイドさんが気取られぬ様に私を凝視していましたから。こと非生物に関しては私を誤魔化す事は出来ません。
・・・やはり初対面であからさまに驚いてしまったのがいけなかったんでしょうか。証拠は無いので接触してくる事は無いと思いますが、もう面倒事は嫌なので絶対に回避しなければ。
「またいきたいなー」
「じゃあ、また今度お呼ばれしたら一緒に行こう」
ええ、たとえフェイトさんとアリシアさんに誘われても行きません。行きませんとも。