「ふぁ・・・ぁふ。おはようございます・・・」
「おはよう杏」
「最近はいつもより少し早めに起きてるわねぇ」
「早めに起きないとアリシアちゃんに飛び掛られますから・・・いくら軽いといっても寝起きでアレは流石に苦しいです」
テスタロッサ一家・・・というよりもフェイトさんとアリシアちゃんとアルフさんが引っ越してきてから、私は少しだけ起床時間が早くなりました。
テスタロッサ一家で料理が出来るプレシアさんとリニスさんは本格的な引越しの準備や情報の整理で忙しく、それ故に朝食と学校の弁当はうちが作っているのですが・・・その時に私が眠っているとアリシアちゃんが起こしに来るんです。
よりによって妹キャラにありがちなダイビングで。結構ダメージが大きいんですよアレ。止める様に言っているんですが。
まあ懐かれて悪い気はしないですが。・・・というか自分でも知りませんでしたけど、意外と年下には優しかったんですね。基本的に他人にはあまり関わらなかったので今まで気付きませんでしたが。
「おはようございまーす!」
「おはようございます」
「おはよー」
「おはようございます、フェイトさんアリシアちゃん。アルフさんも」
「おはようございます」
「おはようございます。娘がお世話になりました」
「あ、プレシアさんとリニスさんもおはようございます。情報整理は終わったんですか?」
「ええ、昨日地球に来ている管理局の次元航空艦に連絡を入れたわ。今日の夜に向かうつもりよ」
「あら、そうなんですか。じゃあ二人とも今日はたっぷりプレシアさんに甘えておかないとね~?」
ともかくこれで本格的にジュエルシード事件は終了ですね。何だかんだで割と時間がかかりましたが、これで一安心です。
さて、今日以降はそう簡単にプレシアさんに会えなくなるでしょうし、せいいっぱい親子の団欒をさせてあげましょうか。
いえ、これで静に朝ごはんが食べれるなんて思ってないですよ?親子の団欒を邪魔しちゃいけませんから。ええ、朝から元気なアリシアちゃんの相手をしなくていい事にちょっと安心しているのは確かですが。
朝はゆっくりしたいですしね。いえ、朝だけと言わず年中ゆっくりしたいんですが。
というか知ってたわけでもないのに、なんでお母さんはこの人数に足りる分の朝ごはんを作ってあったんでしょうか。
まるで予知・・・あ、常識的に考えれば電話か何かで事前連絡しますよね。最近ファンタジーばかりでちょっと常識が吹っ飛んでいたみたいです。気をつけないと。
「では、行ってきます」
「行ってきまーす!」
「行ってきます」
さて、今日も憂鬱な気分で登校です。学校なんて無くなればいいのに。
「お昼ごはんたのしみだなぁ」
「今日は母さんが作った弁当だもんね」
「プレシアさんの料理は本当に美味しいですしね」
料理もクローンもなんでもござれな人ですからね。研究して作るという行為に対する天性の才能でもあるんでしょう。
アリシアちゃんは絵が上手ですから、多分そっちの才能を引き継いだんでしょうね。そして魔法の才能はフェイトさんなんでしょう。
・・・という事は、アリシアちゃんは将来あれほど美味しい料理を作れるようになる可能性があるわけですか。可愛くて元気で料理上手とは優良物件にも程がありますね。
フェイトさんも将来綺麗になりそうですし・・・私はどうなんでしょうか。せめて身長が150cmを超えてくれればそれでいいのですが。
「またお昼にね~!」
「ばいばいアリシア!」
「頑張ってくださいね」
学校に到着し、学年が違うアリシアちゃんを別れて教室へ。
フェイトさんはやはり人気が高いらしく、一緒に歩いていると様々な方向から視線を感じます。フェイトさんは気付いていないみたいですけどね。
しかしあの美少女ヒロイン三人組にフェイトさんが加わったんですよね・・・お陰で他のクラスからのお客さんが増えたような気がします。
その集団に私が居るのは正直どうかと思いますが。特別可愛い訳でもありませんし。覇気も皆無ですしね。
「さて、寝ます」
「相変わらずだね・・・おはよう杏ちゃん、フェイトちゃん」
「はい、おはようございます。希さん」
「おはよう希」
遠藤さんとはバニングスさんと月村さんの友達騒動の時に、何だかんだあって名前で呼び合う事になりました。
ちなみにバニングスさんと月村さんを苗字で呼ぶのはささやかな抵抗だったりします。大して意味はありませんが。
「最近アリシアちゃんのせいで寝不足です・・・」
「十分くらいしか変わらないって言ってなかった?」
「朝起きてからの二度寝の十分は何ものにも変えがたい至福の時間なんです」
「ちょっと気持ちが分かるかな。二度寝気持ちいいし」
「私は寝起きが良いみたいですぐ目が覚めちゃうから・・・」
「フェイトさんはちょっと勿体無いですね。今度二度寝してみるべきです」
朝の学校でこんなに会話する様になったのも魔法関連に関わったからなんですよね。もう少しだらける時間を確保したいのですが。
「とりあえず会話が面倒になったので寝ます」
「あはは・・・お休み杏ちゃん」
「時間になったら起こしてあげるね」
うん、やはり持つべきは協力的な友人ですね。これがバニングスさんだったら眠らせてもらえなかったでしょうから。
さて、今度こそ惰眠を貪りま・・・
「全く、一体何処に行ってたのよ!」
「にゃはは・・・色々ありまして・・・」
「なのはちゃん疲れてるみたいだけど、大丈夫?」
「うん、大丈夫なの!」
あぁ、考えてみればそうですね。昨日時空管理局に連絡を入れたんですから、今日から高町さんが来る可能性がありましたね。
まぁ私にはあまり関係が・・・あ、フェイトさんは思いっきり関係ありました。
ちょっと気になったので机から顔を上げると、フェイトさんは物凄く驚いた顔で高町さんを見ています。・・・あ、高町さんも気付いて急停止しました。
「なのは?どうしたのよ?」
「なのはちゃん?・・・あ、あの子はちょっと前に来た転校生のフェイトちゃんだよ」
「てんこう、せい・・・?」
「そうよ。・・・もしかして知り合いだったの?」
「あ、あはは、あははは・・・」
「え、ちょっとなのは?なのは!?」
「なのはちゃん!?」
あ、壊れて崩れ落ちて真っ白になりました。凄いです。人間って本当に真っ白になるんですね。実際に色が変わったわけではないんですが、雰囲気が真っ白です。
しかしあそこまで驚くなんて、どうしたんでしょうか?存在しないジュエルシードを探しただけじゃあフェイトさんを見てもああならないと思いますけど。
「何か心当たりありますか?」
「ふぇ!?えぇっと・・・そういえば、お話がしたいって言ってたような」
「ああ、成程。そういうことですか」
高町さんの事ですから多分友達になりたかったんでしょうね。という事は、ジュエルシードを探していたフェイトさんと会う為に今までずっと頑張っていたんでしょうか。
それなら仕方が無いですね。なにせそんな事をしなくても学校に来たら友達になれたんですから。ご愁傷様です。
「うぅ・・・ジュエルシード探しはいきなり終わっちゃうし、フェイトちゃんは学校に居るし、散々なの・・・」
「よく分からないけど、本当に大丈夫なの、なのはちゃん?」
「それにしても杏の他になのはもフェイトの知り合いだったなんて、世間は狭いわね」
「あん、ず?」
「うん、松田杏ちゃん」
あ、ちょっと、今それ言ったら間違いなく面倒な事に・・・
「あ、あ、あ、杏ちゃーん!!」
「いきなり名前で呼ばれるとは思いませんでした」
「そんな事はどうでもいいの!それより聞きたい事があるの!!」
「面倒ですから一つだけですよ」
「ジュエルシードが見つからなかったのって、杏ちゃんが全部集めたんでしょ!?」
「はい」
「にゃぁぁぁぁぁーーーー!!!!!!!」
あ、完全に壊れました。というか魔法関係の単語を叫ばないで下さい。後で困った事になっても知りませんよ。
それからお昼まで高町さんは真っ白でした。お疲れ様です。
ちなみにお昼にアリシアちゃんと遭遇して高町さんがまた混乱していました。お疲れ様です。
そしてお昼に事情説明するととうとう反応を返さなくなりました。本当にお疲れ様です。
あ、でもフェイトさんとアリシアちゃんの二人と友達になれた時はとても嬉しそうでした。良かったですね。