これまでのあらすじ
・ユーノを動物病院に送り帰宅する(詳細を描写しているとまず作者側の心が折れるためカット)
夜。漆黒が支配する魔の時間帯。ありとあらゆる社会の闇が蠢き始める、悪夢の始まりの時間帯。
今日も今日とて私は来るべき『総合絶霊雄能力者管理局』(私の名付けた神秘パワーを隠匿管理し、世界を裏側から操る超巨大秘密結)の『執行者』との戦いに備えてイメージによる戦闘訓練を行っていた。
―――力を、貸して下さい!
そうしていると突如、声が聞こえてくるではないか!
―――魔法の…、力を……っ!
間違いない。『絶霊雄波』の能力者同士でのみ使える連絡手段、『情報風蝕』だ。
―――あなた、何者なの?
存在だけは脳の内部に絶霊雄波によって受信していたから知ってはいたが、実際に使うのは始めてだ。
故に、実際に届いているかどうかは定かではなかったのだが……。
―――念話!? 現地の魔導師の方ですか!?
心配は無用であったらしい。流石は放逐されたとはいえここ百年では最大の『絶力』(絶霊雄波の力の大きさ。私が名付けた)を誇る私である。
―――答えは否、だよ。私はただの”絶霊雄波”に目覚めた能力者。……そう。ただ、それだけなの…。
―――えっと…、この世界での魔法の呼び方でしょうか。あれ? でも確かこの世界には魔法文明は存在しないって……。
―――表側では隠匿されているからね。”第一世界”の人間には知られていないかな?
『情報風蝕』の受信が可能な私だからこそ知り得た真理である。
―――と、とにかく、助けていただけませんか?
―――それによって発生する、私へのメリットは?
人間の本性は悪だ。
世界は悪意に満ちていて、社会は欲望によって成り立ち、廻っている。
故に、私がここで救援に駆け参じるメリットが見つからなければ動くわけにもゆくまい。
―――お礼はなんでもします! 何なら、僕の現在使っているデバイスを差し上げても構いません!
―――『制波紋章』、か……。話に聞いてはいたけれど、初めてなの…。
悪くない。あの伝説の古代遺物が実在していたのならば、その力は大いに私の”平穏なる生活”を保つための助けとなるだろう。
―――交渉成立、だね!
私は部屋の窓を開けると、そのまま靴を履き(一階が刺客に占拠された場合に備えておいた)、いざという時のために用意しておいた縄梯子(同じく刺客対策)を使い、この胡散臭くも明るく温かい我が家の唯一安堵できるプライベートスペースから夜の闇へと飛び出し、走り出した。
――疾駆。回る足は無音にして上体は不動、ただ前方へと効率的に身体を押し出す。
闇に溶けつつ、最適の肉体動作で最大効率を維持しながら、波動を感じる方向へとただただ駆けつける。
その適度に絞られた体躯から為される疾走は、いっそ芸術的とも―――
「疲れたの」
……ただ駆けつけることに装飾など不要、余計な肉体の統制に使用する精神力の無駄である。
だからして、普通に駆け始めたのだ。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「そんな! 思念が実体化するほどの”絶魔”だなんて!」
「すみません、ジュエルシードというロストロギアのせいなんです!」
「もはや私の力ではどうしようもないよ! 早くデバイスを!」
果たして、駆けつけたその先にいたのはイタチ状の精霊と不定形の”絶魔”(私の受信した人類の絶対的な敵対存在。想念によって構成されている)だった。
実体化しない程度の”絶魔”ならば私でも殺せる。だが、こうまでなってしまうともはやいくら私でも手のつけようが無い。
おそらくは精霊クンのいうロストロギアの『忘念奇晶』とやらが作用したせいなのだろう。まったくもって忌々しい。
「これですが、起動パスワードをお願いします」
と、絶魔の攻撃をサイドステップで避ける私に精霊クンが紅玉を渡す。
パスワードを尋ねると、かなり良い言葉に設定されていた。
――素晴らしい! それでこそ、この私、…”紅塵”の高町なのはに使用されるに相応しい!
「我、使命を受けし者なり。契約の下その力を解き放て!」
精霊クンから教わった通りの手順を踏む。
「風は空に、星は天に、そして不屈の心はこの胸に!」
思い浮かべるべきは”杖”と”防護服”
「この手に魔法を、レイジングハート、セット・アップ!」
否! 思い描くは常に最強の自分!
そのイメージとともに私の視界は桜色――根本に埋まる死者の血を吸い上げ美しく咲くという花の色――に包まれた。
「……なんて魔力だ」
漆黒に染まった学校の制服。
手にするは、黒の基本フレームに金の意匠が映える、メカニカルな突撃槍。
目前に立つは、実体化して現世にまで干渉することが可能となった不定形の”絶魔”……。
だが、私の心には一片の恐怖もない。
「フフフ……感じるよ、鼓動を……。絶霊雄波の、鼓動を……ッ!」
なんたる力!
なんたる全能感!
今の私にならば何だってできる!
そう、
「神を殺せ……」
《Divine Buster》
例え神であろうと、
「私を止めることなどできはしないのっ!」
圧倒的な破壊音とともに、桜色の光芒が今、確かに絶魔の血を吸って花開いたのであった。
あとがき
駄目だ、ユーノじゃ邪気眼のストッパーにならない。
回復してきたためどうにかシーンを飛ばして書いたのに、すぐにHPがゼロになった。後半の文の邪気眼濃度が低めなのはマイナス状態で書き上げたため。
でもはやてのオチが思いついてしまった以上、一応関西の血が混じっていなくも無い自分としては飛び飛びでもAsまで書いてしまいたい。次は一気にフェイト(14)まで飛ばし、その後はクロノ(常識人)まで、その次にいきなりプレシア倒して無印エンドでいいかなーなんて思ってます。というかHPが持ちません。
皆さんも相当ダメージ食らっているようですが、たぶん作者が一番キツい気がします。Mですけど。