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No.17010の一覧
[0] リリカルホロウA’s(リリカルなのは×BLEACH)[福岡](2011/08/03 21:47)
[1] 第壱番[福岡](2010/04/07 19:48)
[2] 第弐番[福岡](2010/03/07 06:28)
[3] 第参番(微グロ注意?)[福岡](2010/03/08 22:13)
[4] 第四番[福岡](2010/03/09 22:07)
[5] 第伍番[福岡](2010/03/12 21:23)
[6] 第陸番[福岡](2010/03/15 01:38)
[7] 第漆番(補足説明追加)[福岡](2010/03/17 03:10)
[8] 第捌番(独自解釈あり)[福岡](2010/10/14 17:12)
[9] 第玖番[福岡](2010/03/28 01:48)
[10] 第壱拾番[福岡](2010/03/28 03:18)
[11] 第壱拾壱番[福岡](2010/03/31 01:06)
[12] 第壱拾弐番[福岡](2010/04/02 16:50)
[13] 第壱拾参番[福岡](2010/04/05 16:16)
[14] 第壱拾四番[福岡](2010/04/07 19:47)
[15] 第壱拾伍番[福岡](2010/04/10 18:38)
[16] 第壱拾陸番[福岡](2010/04/13 19:32)
[17] 第壱拾漆番[福岡](2010/04/18 11:07)
[18] 第壱拾捌番[福岡](2010/04/20 18:45)
[19] 第壱拾玖番[福岡](2010/04/25 22:34)
[20] 第弐拾番[福岡](2010/05/23 22:48)
[21] 第弐拾壱番[福岡](2010/04/29 18:46)
[22] 第弐拾弐番[福岡](2010/05/02 08:49)
[23] 第弐拾参番[福岡](2010/05/09 21:30)
[24] 第弐拾四番(加筆修正)[福岡](2010/05/12 14:44)
[25] 第弐拾伍番[福岡](2010/05/20 22:46)
[26] 終番・壱「一つの結末」[福岡](2010/05/19 05:20)
[27] 第弐拾陸番[福岡](2010/05/26 22:27)
[28] 第弐拾漆番[福岡](2010/06/09 16:13)
[29] 第弐拾捌番<無印完結>[福岡](2010/06/09 23:49)
[30] 幕間[福岡](2010/08/25 18:28)
[31] 序章[福岡](2010/08/25 18:30)
[32] 第弐拾玖番(A’s編突入)[福岡](2010/08/26 13:09)
[33] 第参拾番[福岡](2010/10/05 19:42)
[34] 第参拾壱番[福岡](2010/10/21 00:13)
[35] 第参拾弐番[福岡](2010/11/09 23:28)
[36] 第参拾参番[福岡](2010/12/04 06:17)
[37] 第参拾四番[福岡](2010/12/19 20:30)
[38] 第参拾伍番[福岡](2011/01/09 04:31)
[39] 第参拾陸番[福岡](2011/01/14 05:58)
[40] 第参拾漆番[福岡](2011/01/19 20:12)
[41] 第参拾捌番[福岡](2011/01/29 19:24)
[42] 第参拾玖番[福岡](2011/02/07 02:33)
[43] 第四拾番[福岡](2011/02/16 19:23)
[44] 第四拾壱番[福岡](2011/02/24 22:55)
[45] 第四拾弐番[福岡](2011/03/09 22:14)
[46] 第四拾参番[福岡](2011/04/20 01:03)
[47] 第四拾四番[福岡](2011/06/18 12:57)
[48] 第四拾伍番[福岡](2011/07/06 00:09)
[49] 第四拾陸番[福岡](2011/08/03 21:50)
[50] 外伝[福岡](2010/04/01 17:37)
[51] ???(禁書クロスネタ)[福岡](2011/07/10 23:24)
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[17010] 第捌番(独自解釈あり)
Name: 福岡◆c7e4a3a9 ID:4ac72a85 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/10/14 17:12



読む前の注意
今回は、一部の場面で作者の独自解釈を含んだ描写があります。
それらが苦手な人は注意してください

ちょっとのツッコミ所はスルーしてやってください。





=======================================









もう、二十年以上も昔の話である

私には、一人の娘がいた
名前はアリシア……アリシア・テスタロッサ


可愛い娘だった

誰よりも何よりも大切な、愛しい存在だった


私と夫との間に生まれた、唯一の娘
父親ゆずりの金髪と赤い瞳
相手が大人であろうと物怖じしない性格は、多分私ゆずりのものだろう


明るく、はつらつとしていて
無邪気に、良く笑う娘だった


当時、仕事の重圧とストレスの板挟みの私だったが
アリシアの笑顔を見る度に、疲れた体は癒されて、渇いた心は潤され、活力が湧いてきた


子は親に支えられて生きていると言うが……

私は、娘に支えられて生きていた


生活の上では、娘との時間が取れない事以外は不自由しなかった
女だてらに中央開発技術局の局長をしていたから、給料は母子二人なら十分すぎる額は貰っていたし

夫とは生活のすれ違いで別れてしまったが、アリシアの事は変わらず愛し、十分な養育費を振り込んでくれていた



母と娘の二人きりの暮らしだが、それなりに幸せだった

いつかは娘も大きくなり、学校にも通い、大人になる
進学、就職、縁談……娘の事で、私は頭を悩ませる

そしていつか娘にも愛する人ができ、私から離れていき、妻となり、母となる

年老いた私の元に、娘夫婦は年に三・四回程度に孫の顔を見せに来て……私は孫を抱いて、微笑みかける



そんなどこにでもある、ありふれた「これから」を想像していた





――あの日、までは





当時、私は次元航行エネルギー駆動炉「ヒュードラ」のプロジェクトに参加していた
しかし当時の上層部の命で、当初の駆動炉の設計を大幅に変更……いや、改悪された設計でプロジェクトを進める事になった


私は、この変更に断固反対した
変更された設計は、当時の安全基準をほぼ無視したものであり、駆動炉としてもまともに働くかどうかも分からない代物だったからだ


だが、プロジェクトはそのまま続行される事になる

私が、折れてしまったからだ
私は技術者である前に、アリシアの母親だった


プロジェクトの抗議を続け、上層部から不満を買えば職を失う可能性もあったからだ


だが


私は後に、その事を一生後悔する事になる



「ヒュードラ」の起動は、失敗だった
その結果、中規模の次元震を起こし……多くの人間がその犠牲なった


私の同僚も

私の部下も

私の友人も


そして、私の娘も……




そこから先の事は、よく覚えていない


気がつけば、私はアリシアの亡骸を抱えて立ち尽くしていた

視界が妙にボヤけていたから、多分泣いたのだろう

咽喉が痛み、声もまともに出なかったから、多分泣き喚いたのだろう



私は、娘の死が受け入れられなかった

娘の遺体を保存液で保管して、それを保つための装置とプログラムを作り上げた




私は、娘を生き返らせたかった

アリシアに、もう一度会いたかった

あの愛くるしい笑顔を、もう一度見せて欲しかった



だが、それは駄目だった

あらゆる技術、あらゆる理論、あらゆる方法
時には非科学的、オカルト染みた方法も試した

でも、全ては失敗に終わった


何度も何度も娘の蘇生に失敗し、私の前には一つの絶望が現れ始めた




――アリシアを、生き返らせる事はできない――




受け入れられなかった

それを受け入れてしまったら、私は私でいられる事は不可能だったからだ



そして、私はそれと出会う事になる



プロジェクトF.A.T.E



簡単に言ってしまえば、人造生命の作成だ

アリシアの細胞を使って、クローン技術を用いて作成した肉体
その肉体に、従来の技術では考えられない程の膨大な知識と記憶を与える事のできる技術


つまりは、人間の複製だ


私は、それに手を出した



アリシアは生き返れない、それならもう一度アリシアを造ればいい



私は、きっとおかしくなっていたのだと思う

そんな考えに至ってしまったのだから、きっとおかしくなっていたのだと思う




そして、本格的に歯車は狂いだす

出来上がったソレを見て、私は思ってしまった……気づいてしまった






――違う、アリシアじゃない――






全てに、絶望した

もはや私に、アリシアと会う方法は残されていなかった



何度か、私の頭の中で誰かがこう囁いた




――もう、いいじゃないか――


――アリシアは確かに造れなかった――


――それなら、この娘をアリシアの分まで愛せばいいじゃないか――





だが、駄目だった

フェイトを娘として愛そうと思った、でも出来なった


娘と同じ顔なのに、私はフェイトを娘として見れなかった、愛せなかった


そして、徐々に頭の中にはドス黒い感情が芽生え始める




――ナゼ、アリシアじゃナイ?――


――あのコとオナジかお、あのコとオナジこえナノニ、どうしてチガウ――


――ワタシがホシカッタのは、オマエじゃナイ――


――ワタシがホシカッタのは、アリシアだ――


――コンナ、ニンギョウなんかじゃナイ――


――オマエのヨウな、ニンギョウなんかじゃナイ!!!!――




黒い感情はやがて怒りに、怒りはやがて憎しみに

もはや視界に入るだけで、ソレは嫌悪……いや、憎悪の対象になった



だから、私はもう一度探した

アリシアを生き返らせる方法を、アリシアにもう一度会える方法を……



そして、見つけた
娘を生き返らせる唯一の可能性、アルハザード

そして、そこに行くための移動手段


ジュエルシード、願いを叶えるロストロギア
願いを叶えるとは名ばかりの代物だが、その魔力は確かな物


私はジュエルシードを集め、全ての次元と空間を超越し、アルハザードへの道を開くつもりだった



そう



その「つもり」だった。





=======================================












「……アリ、シ、ア……」



私は、夢を見ているのだろうか?


それとも幻?


ああ、ダメだ
まともに思考が、脳が、頭が、働いてくれない


だけど、分かる

そこには一切の理屈もなく

一片の理論、一握りの根拠すらない


だけど、解かる

そういう物の全てを超越して、「理解」という結果だけがそこにある




私の目が、


鼻が、


耳が、


肌が、


心が




目の前に居るのは、本物だと


私がずっと会いたかった、ずっと愛していた存在なんだと




「アリ、シ…ア……!……アリ、シア!!……アリシア!!!」




ああ、ダメだ


理性が働かない

体が言う事を聞かない

涙が止まらず、視界が定まらない




私は、走った


走って、抱きしめた


娘の体を、力一杯抱きしめた



「……わっ!!」

「アリシア、アリシア! 私のアリシア!!」



この不思議な現象のせいか、体温という概念があまり感じられない
それとも、私が動転しているだけだろうか?


ただ、「実感」だけがそこにある

娘を抱きしめているという、「実感」がそこにある


だが、それだけで十分だった
十分すぎて、幸せすぎて、他には何もいらなかった



「アリシア、分かる? お母さんよ」

「……へ? おかあさん?」



意外そうな、不思議そうな声が、耳に響く

それを聞いて、私は無理もないと思った



「……ええ、そうよ。分からない? でも無理もないわ……」



アリシアが亡くなったのは、もう二十年以上も前
人の容姿が変わるには、十分過ぎる時間だろう

そして少しの間を置いて

アリシアは言った





「ごめんなさい、思い出せないです」














第捌番「再会、そして昏い希望」













「……説明を、お願いできる?」


少し時間を置いて、冷静さと落ち着きを取り戻して、私は口を開いた

ここは先程までの玉座の間ではない
あそこでは、邪魔が入る可能性もある

話をスムーズに進めるためにも、一度肉体に戻って私達は隠し部屋に移動した

アリシアが眠る、あの部屋へ



そしてウルキオラの不思議な技術で、私は再び肉体から分離した




「え~と、自己紹介するのも変な感じですけど、アリシア・テスタロッサです!
ついこの間まで、たぶん天国にいましたが、そこにいるウルキオラと一緒に昨日こっちにやってきました!」

「……天国?」

「うん! すっごく広くて、まっしろーいところ!」



両手を広げて、そのスケールの大きさを表わしているのだろう

私は未知への興味よりも、変わらないアリシアの仕草を見て……笑みを浮べていた



「あー! 笑ってる! 信じてないでしょー!!」



頬をぷくりと膨らませて、少し拗ねた様な表情をするが
その全てが、私には愛しかった



「いいえ、そんな事ないわ」



私は、そう言ってアリシアの頭に手を置いて、軽く髪を梳きながら撫でる

この子が、一番好きだった撫で方だ



「……本当?」

「ええ、お母さんは信じるわ。それとも、アリシアはお母さんに嘘をついたの?」

「ううん! 嘘なんて言ってないもん!」



実際、私はアリシアの言う事を疑っていなかった



「……でも、ごめんなさい。私は、『おかあさん』の事を……覚えてないの」



申し訳なさそうに、アリシアは沈んだ表情で私に言う

私は言葉よりも先に、アリシアを抱きしめていた



「そんな事、気にしなくていいわ。アリシアがここにいる、それだけでお母さんは幸せだから」



そして、私はもう一人の人物に目を向ける

ウルキオラと名乗った、白い男だ



「貴方に、心からの感謝の言葉を送ります。今日のこの奇跡は、貴方なくしては存在しなかったでしょう」

「急にどうした? 気味が悪いを通り越して悪寒がするぞ」

「……ふ、失礼な男ね。なら素に戻りましょう」



そう言って、私は素の自分に戻る



「……この状態になって、確信したわ。貴方、人間ではないようね」

「ああ、一緒にされては困るな」

「ウルキオラはねー、アランカルって言うホロウなんだってー」



アリシアが、私にそう教える



「アランカル?……ホロウ?」



そして、アリシアは説明する
時折ウルキオラの修正が入りながら、その存在を説明される



「なるほど……強い未練から長い時間をかけて、死者の魂は虚とよばれる物に進化し
その進化した虚のさらなる進化系・大虚
そしてその大虚から、虚という種の枠を超えた存在……破面」


成るほど、興味深い

時間と暇さえあれば、軽く論文にして纏めたい所だ

だが生憎と
今、私が知りたいのはそこじゃない



「……質問をいいかしら? アリシアも、その虚というのになってしまうの?」

「可能性はゼロではないな」



ウルキオラは即答する
しかしそれは危険の宣告というより、安全の知らせに近い



「直に見て確認した。アリシアの因果の鎖は未練や思い入れの類ではない、肉体との繋がりを示すラインだ
そして何より、アリシアの鎖の根元…胸元には虚変化の予兆の証たる穴がない。
人為的に手を加えない限り、今の段階で虚になる得る可能性はほぼゼロに等しい」



肉体との繋がりを示すライン

つまりは、私の胸元から生えている鎖と同種のもの



……つまり、それは……



「アリシアは、生き返れるの?」



さっき一度、この男の手によって私は肉体に戻れた

ならば、理論的には同じ事もアリシアには可能な筈

それこそが、私の長年の悲願
私の願い、望み




「ああ、可能だろうな」




その瞬間、私は天上にも昇る気分だった



「恐らく、肉体は死んでも霊体との繋がりは保ったままの段階を保存できたのだろうな
よほど死後の処置と今までの保存状態が良かったのだろう、肉体は朽ちず腐らず、傷みも微小だ」



その言葉を聞いて、私は確信した



私は間違っていなかった!

仮にアリシアの魂がここに帰ってこれても、肉体が無ければ蘇生はできない!

そして肉体があっても、質が悪ければ蘇生は不可能!!

私は間違っていなかった!

それが今、証明されたのだ!!





「だが、それだけだ」


「……え?」




だから、その言葉は正に不意打ちだった。

















「……どういう事?」


目を鋭くさせて、プレシアはウルキオラに尋ねる。

「このガキは今のお前とは違う、魂魄剥離で霊体となったお前とは違い
このガキの肉体には、『生命力』が殆ど残されていない」



その瞬間、プレシアの顔はハっと気づいた表情を浮べる

ウルキオラが更に続ける



「分かり易く教えてやろう。生命力がない、それは即ち死人が重病の半死人になる様なものだ
仮に俺がこの肉体にこのガキの霊体を無理矢理押し込んだ所で、このガキは一月と持たずにくたばるだろうな」

「……ひ、と…つき」



信じられない様に、落胆したかの様に呟く

ダメだ、それではダメだ…と
更にプレシアは脳を回転させる



「ジュエルシード……そうだ、ジュエルシード! あれは元々願いを叶えるロストロギア!
過去の文献から、瀕死だった人間の肉体を直したという事例も確認されているわ!
ジュエルシードの魔力で、生命力を補えば!」



「一つ間違えれば、肉体と共に霊体も粉々になるだろうな」





その言葉は、あっさりとプレシアの希望を砕いた





「アレの力は直に見た。だからその力も知っている……確かに、あれだけの力ならこのガキの肉体に生命力を溢れんばかりに注入できるだろう」



「だが」と、ウルキオラは一旦ここで言葉を切って



「アレの力を、こんな死体同然の幼年体の体に注ぎ込んだら、確実に肉体が耐え切れず粉々に消し飛ぶ
そして、その圧倒的な霊圧はこのガキの霊体、魂魄にも及び……肉体と共に霊体も粉々だ

そして文字通り、このガキは消滅する」


「!!……なら、肉体と魂が離れた状態で使えば! それなら万が一失敗しても魂は無事!」


「魂が離れている以上、『コレ』はただの肉の塊だ。お前の肉体とは違い、言ってしまえばただの物体だ、物体に生や死があると思っているのか?」



これもダメ

なら、ジュエルシードを使う案は除外した方がいい

そして、再びプレシアは脳をフル回転させる



「なら、他の生命体……つまり、他の人間の体を使うのは!?」

「多少は違うだろうが、結果は大して変わらん」



僅かに疲れた様な溜息を吐いて、ウルキオラは告げる



「通常の人間は、他の生物に比べて霊子・霊圧・霊体に対する抵抗力が極端に低い
他人の肉体に他人の魂を入れれば、何らかの拒絶反応が出る」



ウルキオラ達、破面との敵対勢力……死神

彼らは現世にいる人間、霊体に不要な影響は及はさない様に隊長格の死神は一部の例を抜かして
その霊力・霊圧は常に五分の一にまで抑えられている


そして、これは破面にも似た様な言える


死神の様な力を無理矢理抑える様な真似をしなくても
破面はその力の核を斬魄刀に宿しているので、隊長格の死神が斬魄刀のサイズを調整する様に
破面も体から放出されている霊圧を調節できる


現にヤミーとウルキオラが初めて破面として現世に赴いた時、ヤミーが調子に乗って魂吸を行うまで
付近の人間にはコレと言った変化は無かった



「仮に俺がお前の魂魄を剥離した状態で、このガキの魂魄をお前の肉体に定着させたとしよう
だが、お前の体はこのガキを受け入れられん。理由は単純だ、お前じゃないからだ。
まあ魂魄もしくは肉体に『特殊』な改造を加えた上でなら分からんが……まあ、それは置いておこう」



死神の持つ道具
義魂丸や義骸の様な特殊な例を上げようとしたが、ウルキオラは省いた

別に教える必要もないし、そういう物を造る技術を知っている訳ではない

そして、何よりこの女は「そういう物が造れないか」と絶対に考え付き……そして不可能という結論を出す

その一連の過程を、ウルキオラは想像できたからだ



「簡単に言おう。このガキの魂魄を受け入れられるのは、このガキの肉体だけだ
そして、このガキの肉体に魂魄を押し込んだ所で直ぐに死ぬ……それだけだ」


「……そ、ん…な……」



断言にも近い、ウルキオラの言葉

ソレを聞いて、プレシアは膝を着いて、落胆する


最初は、会えればそれで満足だった

愛しい娘に再び会えて、この手で抱きしめる事が出来て、この上無い幸せだった



だが、ダメだ

人間は、強欲だ

一度幸せを知ってしまうと、更にその上が欲しくなる



今のプレシアが、正にソレだった

もう一度、アリシアと親子として歩みたい

もう一度親子として暮らし、親子二人の時間を取り戻し、こんな筈じゃなかった未来を取り戻したい


だから、プレシアは考える

考えて考えて、やはりダメで

それでも考えて、必死に考えて



「ねえウルキオラー、難しい話ばっかで良く分からなかったけど、つまりはどういう事?」

「お前はこのまま、そういう事だ」



アリシアの問いを、ウルキオラは簡潔に答える



「ふ~ん、でも……それで、どうしておかあさんが悲しんでるの?」

「……アリシア」



暗い表情のプレシアに、アリシアはにっこりと笑いかける



「わたしね、いますっごく幸せだよ! ウルキオラと会えて、こっちで色々な物をまた見る事が出来て
そして、おかあさんにも会う事が出来て……わたしは、それで幸せ!
あの白い場所で、ずっと一人ぼっちの時に比べたら、本当にすっごく幸せだよ!!
……あ、でもケーキが食べれないのは少し残念かな? あははは、なーんちゃって」



頬を少し掻きながら、照れくさそうな笑みを浮べながら、アリシアは言う

それを見て、プレシアは思った



……良い筈が、ない……これで、良い筈がない!!……


……ここまで、二十年以上も掛けて……やっと! やっとここまで来れた!!……


……アリシアを、生き返らせてあげたい!!……


……この娘に、もう一度死者としてではなく……人間としての幸せをあげたい!!……


……その為なら、私はなんだってする!!……


……非道になろう! 外道にもなろう!!……


……悪鬼にもなろう! 鬼畜にもなろう!!……


……その為なら、人の道からも外れよう!!……


……冷酷無慈悲な悪魔にでも魂を売ろう!!……





「……あるはずよ、何か方法が……何とか出来る、方法が……」





プレシアは、考える

何でもいい、些細な事でもいい、小さな切っ掛けでもいい

自分の闇に一筋の光明を射す、何かが欲しかった




「……ふむ、そうだな……」




思い付いた様に、ウルキオラが口を動かす




「例えばの話だが」




そして、与えてしまう

プレシアに光を、僅かな希望を

















「霊力の素質を持った、生きたアリシアそのものの肉体があれば可能かもな」



















それは、雫が落ちる様にプレシアの耳に響いた



「…………ぇ?」



プレシアはゆっくりと顔を上げる



「簡単な話だ。他にアリシアに活きた肉体があるのなら、それは何の問題もなくアリシアを受け入れる事ができる
だが、それだけでは何らかの拒絶反応が出るだろう。アリシアの『本来の肉体』はこれであるし
さっきも言った様に普通の人間は霊的な物に対して、抵抗力が低い」



「だが」と、ウルキオラは再び言葉を繋げる



「霊力……お前らの言い方では魔力か?その素質さえあれば、それ相応の抵抗力はある。抵抗力があれば、相応の拒絶反応は抑えられる
お前ら人間でも、同じ環境にいながら病になる人間とそうでない人間がいるだろう?
あれと理屈は一緒だ
それに霊力の素質があるのなら、ある程度ならジュエルシードの力も生命力として使えるかもしれん」



事実、死神が扱う義骸や義魂丸は同じ様な理屈だ

魂の拒絶が起きない肉体、肉体の拒絶が起きない魂
それらの拒絶を徹底的にゼロに近づけたのが、それらの道具だ




「尤も、そんな都合の良い物が存在する筈が無いがな」





どこか諦めの響きを含ませながら、ウルキオラは告げる


「…………」


プレシアは動かない
ウルキオラの説明を聞き、俯いたまま顔を上げない



「……ウルキオラ、もう一度私を肉体に戻して……そろそろ戻らないと、肉体の方がもたないでしょう?」


「……まあ、そうだな」



ユラリと、プレシアは立ち上がり

ウルキオラは再び、その魂魄を肉体に押し戻す
虚ろな肉体には再び活力が戻り、二本の足で立ち上がる



「……少し、確認する事が出来たわ。ここで少しの間待ってて」

「妙な動きをしなければな」



軽くウルキオラが返して、プレシアはそこを出る



そして廊下へ出て、自分の研究室へと向かう







――霊力の素質を持った、生きたアリシアそのものの肉体があれば可能かもな――







…………ある…………







――尤も、そんな都合の良い物が存在する筈が無いがな――







…………そんな都合の良い物が、ある…………







研究室に入り、ドアに鍵を掛けて、ソレの資料を引っ張り出す




「……う、ふ……うふ、うふ、うふふふふふ……」




私は、笑いが堪えきれなかった







あったのだ



そんな都合の良い物が!



私の手元に!! 



何年も前から! 



そんな都合の良い物があったのだ!!!!



私がこの手で!! 



何年も前に! 



そんな都合の良い物を! 



作り上げていたのだ!!!!







「う、ふふ……あ、はは!!」






ああ、今日は何て素晴らしい日



私がずっと欲しかった物が、一斉に導かれる様に私の手元に集まった



だから


私は笑った








「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!」








必要な物は、全て手中に納まった!



アリシアの魂!



未知なる存在ウルキオラ・シファー!!



莫大な魔力の源・ジュエルシード!!!




そして、そして!!





「あはははははははははは! あははははははははははははははははははははははは!!!
喜びなさい! フェイトおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」







魔女は笑う




黒い魔女は嗤う






「初めてよ! 母さんは今日! 生まれて初めて貴方を造って良かったって思ったわあぁ!!!
あはははははははははははははは!! あははははははははははははははははははははは!!!
嬉しい! 嬉しいに決まっているわよねえぇ!!! 貴方はあんなに私に愛されたくて仕方がなかったんですからねえぇ!!!」





希望という名の、黒い望みを手に入れて



黒い魔女は、ひたすら嗤い続ける





「生まれて初めて貴方という存在に感謝するわあぁ!! フェイト・テスタロッサアアアアアアアアアァァァァ!!!!」






魔女は笑う



笑い続ける



歯車が狂った様に、魔女は一人で嗤い続けた。














続く










あとがき
 「流石はプレシアー! 俺たちに出来ない事を平然とやってのける! そこに痺れる憧れるー!!!」


……以上、プレシアさん大暴走&博識ウルキオラの回でした

多分人によってはこの話を読んで色々と突っ込みたい所があるでしょうが、作者の独自解釈ですので、スルーして頂けると助かります。

あと、プレシアに関してはアニメの設定を使っています
小説とアニメの設定が微妙に違うという事を、最近初めて知りました


作者的には、今回が一番の修羅場でした
ウルキオラが懇切丁寧にプレシアに説明していますが、それはプレシアへの評価&アリシアへのさり気ない気配り程度の補正でお願いします。


あと、読者の誰もが気になっていると思いますが

プレシアさんの研究室の防音設計は完璧です!!

それでは、次回に続きます!



追伸・とある友人達との会話

お題・BLEACH破面編での個人的名場面は?


作者「一角が卍解を使ったところ」

友人1「織姫がウルキオラにビンタしたところ」

友人2「大前田がバラガン様に追いかけられたところ」

友人3「ハリベル様帰刃でテンションマックス」







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