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No.17010の一覧
[0] リリカルホロウA’s(リリカルなのは×BLEACH)[福岡](2011/08/03 21:47)
[1] 第壱番[福岡](2010/04/07 19:48)
[2] 第弐番[福岡](2010/03/07 06:28)
[3] 第参番(微グロ注意?)[福岡](2010/03/08 22:13)
[4] 第四番[福岡](2010/03/09 22:07)
[5] 第伍番[福岡](2010/03/12 21:23)
[6] 第陸番[福岡](2010/03/15 01:38)
[7] 第漆番(補足説明追加)[福岡](2010/03/17 03:10)
[8] 第捌番(独自解釈あり)[福岡](2010/10/14 17:12)
[9] 第玖番[福岡](2010/03/28 01:48)
[10] 第壱拾番[福岡](2010/03/28 03:18)
[11] 第壱拾壱番[福岡](2010/03/31 01:06)
[12] 第壱拾弐番[福岡](2010/04/02 16:50)
[13] 第壱拾参番[福岡](2010/04/05 16:16)
[14] 第壱拾四番[福岡](2010/04/07 19:47)
[15] 第壱拾伍番[福岡](2010/04/10 18:38)
[16] 第壱拾陸番[福岡](2010/04/13 19:32)
[17] 第壱拾漆番[福岡](2010/04/18 11:07)
[18] 第壱拾捌番[福岡](2010/04/20 18:45)
[19] 第壱拾玖番[福岡](2010/04/25 22:34)
[20] 第弐拾番[福岡](2010/05/23 22:48)
[21] 第弐拾壱番[福岡](2010/04/29 18:46)
[22] 第弐拾弐番[福岡](2010/05/02 08:49)
[23] 第弐拾参番[福岡](2010/05/09 21:30)
[24] 第弐拾四番(加筆修正)[福岡](2010/05/12 14:44)
[25] 第弐拾伍番[福岡](2010/05/20 22:46)
[26] 終番・壱「一つの結末」[福岡](2010/05/19 05:20)
[27] 第弐拾陸番[福岡](2010/05/26 22:27)
[28] 第弐拾漆番[福岡](2010/06/09 16:13)
[29] 第弐拾捌番<無印完結>[福岡](2010/06/09 23:49)
[30] 幕間[福岡](2010/08/25 18:28)
[31] 序章[福岡](2010/08/25 18:30)
[32] 第弐拾玖番(A’s編突入)[福岡](2010/08/26 13:09)
[33] 第参拾番[福岡](2010/10/05 19:42)
[34] 第参拾壱番[福岡](2010/10/21 00:13)
[35] 第参拾弐番[福岡](2010/11/09 23:28)
[36] 第参拾参番[福岡](2010/12/04 06:17)
[37] 第参拾四番[福岡](2010/12/19 20:30)
[38] 第参拾伍番[福岡](2011/01/09 04:31)
[39] 第参拾陸番[福岡](2011/01/14 05:58)
[40] 第参拾漆番[福岡](2011/01/19 20:12)
[41] 第参拾捌番[福岡](2011/01/29 19:24)
[42] 第参拾玖番[福岡](2011/02/07 02:33)
[43] 第四拾番[福岡](2011/02/16 19:23)
[44] 第四拾壱番[福岡](2011/02/24 22:55)
[45] 第四拾弐番[福岡](2011/03/09 22:14)
[46] 第四拾参番[福岡](2011/04/20 01:03)
[47] 第四拾四番[福岡](2011/06/18 12:57)
[48] 第四拾伍番[福岡](2011/07/06 00:09)
[49] 第四拾陸番[福岡](2011/08/03 21:50)
[50] 外伝[福岡](2010/04/01 17:37)
[51] ???(禁書クロスネタ)[福岡](2011/07/10 23:24)
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[17010] 第四拾番
Name: 福岡◆c7e4a3a9 ID:a15c7ca6 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/16 19:23




「……遅い……」


とある建物の一室にて、その小さな少女は呟いた
ピンと背筋を張って、その小さな体を直立させて、ムスっと小さく頬を膨らませながら

アリシアは満面に不満を露わにしながら、主不在のその部屋の中で呟いた。


「遅い、遅いおそいオソイ、遅おおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!
ウルキオラ遅おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!」


クワっと両目を見開いて、一気に思いの丈を爆発させてアリシアは叫んだ。


「もう頭に来たんだよ!由々しき事態なんだよ!イカンの意をここにひょーめいするんだよ!
かくめーの時は来たんだよ!わたしの事をいつまでも『つごーの良いオンナ』だと思っていると痛い目を見るんだよ!!!」


グアっと拳を掲げながら、アリシアは勢い良く叫ぶ。
そのままグルグルと部屋の中で転げ回る。


「おかーさんも居ないし、前に見つけた『つーしんき』は繋がらないし!大体こういう時は一言なにか言ってから出かけるべきなんだよ!
ウルキオラはいっつもそーなんだよ!淡白でクールドライでつれなくてポーカーフェイスで!
乙女心というものをまるで理解してないんだよ!」


思いの丈を吐き出しながら、アリシアはそのままゴロゴロと部屋の中を転がる。


「は!まさかコレが噂の倦怠期!!? 幾多の若きカップルを破滅に導くという噂の!!?二股でブチ切れでヤンデレでNICE BOAT END!!!?
いやいや、それはない!ぶっちゃけ有り得ない!どれ位有り得ないかと言うと、ウルキオラがある日突然

『やあ、僕の名前はウルキオラ。気軽に「よっちゃん」って呼んでね』

って爽やかスマイルで言うくらい有り得ないんだよ!」


HAHAHAと、効果音が付きそうな程にアリシアは高らかに笑い声を響かせて

不意に、ピタリと転がる体を止める
そのまま仰向けになって、天井に設置されてあるライトを見つめる。


「……つまんない……」


ポツリと呟く。

いつもなら、今頃自分は顔面を鷲掴みにされている頃だろう
いつもなら、今頃自分は毒を吐かれて額に青筋を浮べている頃だろう。


「……つまんない、よー……だ……」


だが、それらは一切襲ってこない
顔への圧力も、自分への毒舌も、一切存在しない。

一言で言えば、物足りない
言い方を変えれば、つまらない

それらの事をアリシアは心から実感して



「はやく帰って来ないかなー……ウルキオラ」



その小さな呟きは、静かに寂しげに響いた。












第四拾番「夜天の戦い 烈火の一撃と黒き翼」












夜天の空を、翠の閃光が覆う
闇夜に染まる空を、一気に翠色に染め上げる。


「……が、ば!…っ!…ごっは……あがっ!!!」


灰煙を体中から漂わせながら、白い体躯から鮮血が流れる。
傷つき墜ちる体を必死に支えて、再び夜天の空に立つ。


(……なんだ……何だ今の一撃は!……単純な威力なら、黒虚閃の上をいくぞ!……)


たった一撃で肉体が焼き焦げて、鋼皮の大部分が破壊された
その有り得ない損傷に、グリムジョーはその激痛に顔を歪めて


「意外だな……今の一撃を受けて、まだ解放状態を保っていられるとはな……」


その声が響く
黒い双翼を羽ばたかせて、その白い死神はグリムジョーを見下ろす。


「……クソがあぁ!!!!」


黒い掌を突き出して、そこに赤い光が収束する。
赤い光は雄々しく唸り、砲撃として撃ち出される。


しかし


「だが、それだけだ」


翠閃が奔って、赤い砲撃は切り裂かれる。


「っ!!!」
「威力も火力も通常の半分以下……どうやら、燃料切れのようだな」


その言葉を聞いて、グリムジョーの顔が歪む
ウルキオラの言葉は、揺ぎ無い事実からだった。

グリムジョーは先程の「豹王の爪」からのラッシュで、一気にウルキオラを仕留めるつもりだった
故にあの一連の攻撃に、ほぼ全ての体力と霊力を注ぎ込んでいた。

その時の反動と疲労、そして今まで体に蓄積されていたダメージ
それが、先程のウルキオラの一撃が引き金となって……一気に噴出してきたのだ。



「……相変わらずだな、テメエは……」



肩を大きく上下させて、呼吸を荒く整えながらグリムジョーが呟く
僅かに俯かせた体勢から、ギラリとウルキオラを睨みつけて


「そういうトコが気に食ねえんだよ!!!!」


――響転!!!――


一気に距離を詰める
一息で己の最大速度を練り上げて、ウルキオラの己の間合いに捉える。


「自棄になって勝負を投げたか?」


その指先に翠光が収束し、砲撃が放たれる。
翠光の砲撃は己に迫るグリムジョーを瞬時に飲み込み、その姿は消える。


「やはり、な」


どこか納得したかの様に呟く。


「同じ手は食わん」


背後を振り向き、己の背中に陣取る白い影を切り裂く。
次いで、その影もまた消滅する。

そして、次の瞬間



「無駄撃ちは死期を早める羽目になるぞ?」



六つの白い影が、ウルキオラを包囲した。


「くたばり、やがれえええええええええええええええええぇぇぇぇ!!!!」


六つの影が同時にウルキオラに襲い掛かる
六方向からの襲撃を、ウルキオラは極めて冷静に見極めて


「初見では対応しきれなかったが」


ウルキオラは、その中の一つに視線を移す。


「もう慣れた」


衝撃音が鳴り響く、ウルキオラは迫る黒い拳を弾いて白い肘鉄を白い掌で掴み取る
その掌に、グリムジョーの肘を完全に掌握して


白い肘から、緑の牙が生えた。


「っ!!!」

「油断したな!!!」


ウルキオラの目が見開かれる。

次いでゼロ距離から、緑の牙が放たれる
五つの牙は虚弾に劣らぬ速度で放たれて、目の前の獲物に唸りを上げて襲い掛かる。


「油断?違うな」


その声が響いて



「これは『余裕』と言うものだ」



五重の衝撃音が鳴り響き、翠の光剣が閃光の軌道を描く
閃光は多角の軌道を描いて、ウルキオラとグリムジョーの間に展開され

緑の牙はその全てが切り払われた。


「っ!!!?」

「言った筈だ。お前は強い、その事を認めたと」


その結果にグリムジョーの目が見開かれて、その無機質な声が響く。


「だから、何か仕掛けてくると予測出来ていた」


白い体に、翠閃が奔る。


「っ!」
「予測が出来れば、対処するのはそう難しい事ではない」


衝撃音と共に、グリムジョーの体が弾ける様に後方に飛ぶ。

「……ぐ、ぎ……がっ!」

その顔が歪む、腹部に響く鈍痛、全身の激痛、体中から噴出すダメージ
ありとあらゆる負の蓄積を感じ取りながら、鮮血に染まった顔が苦悶の表情を作りながら宙を漂い


その視界に、黒い閃光が映り込む。


「っ!!!」
「今度は、外さん」


黒い閃光は、爆発的に収束する
黒い奔流は白い指先に収まる程までに収縮し、その霊力を凝縮・圧縮させて


「黒虚閃」


死に体となった豹王目掛けて、黒い砲撃は一気に撃ち出され



「……糞が……っ!!!」



次の瞬間、夜天の空で爆発が起きた。

















そこは、とある民家の一室だった。


「……やっぱり、おかしいかも……」


自室の窓から夜の街並を見つめながら、なのはは呟いた。
自分がこの魔力反応を察知してからそれなりに時間は過ぎたが、未だに鎮静の兆候は見られない。

この魔力反応は、平常はとても小さく穏やかなものだ
それこそ、自分が今まで気付かなかった程にその反応は小さいのだが

時折感じる魔力が一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、爆発的に高まるのだ
嘗て自分が関わったあのジュエルシード級に思える程にまで、その魔力は高まるのだ。



(……もしかしたら、また何かのロストロギアが関わっているのかも……)



なのはは、数ヶ月前の出来事を思い出す
自分が魔法の資質に目覚める切っ掛けになった、とある事件を思い出す。

自分だけでなく、多くの人間を巻き込んで被害を出した……とある事件を思い出す。


「……やっぱり、放っておけない……」


なのはは呟く
誰かが闘っているのか、それとも何らかのロストロギアか、若しくはそれ以外の何かかが関わっているかは分からない

何が起きているのか全く分からない、が……『何か』が起きている事は間違いない。

何か被害が起きてからでは遅い、被害を未然に防ぐ意味でもやはり出来る事はしておくべきだ
場合によっては、時空管理局への連絡も必要になる事もあるだろう。


「……行ってみよう……」


故に、なのははその赤い宝玉を手に握る。

そして、静かに呟く


「レイジングハート・セット」


なのはが己のデバイスを起動させようとした、正にその瞬間だった





――死ぬのが嫌なら、最初から戦場に出てくるな――






「…………え…………?」





不意に、頭の奥底でその言葉が響き

なのはは、その動きを止めた。


















衝撃と轟音がサークル状に広がり、それらは空間と結界を軋ませる。
灰煙が立ち込めて、そこから一つの影が大地に向かって落下していく。


「……ぐ、が……ぁ……」


力なく、苦痛の呻き声が響く
体中からメキメキと軋む音が鳴り響いて、その体は徐々に変形していく。

体中の白い装甲は砕け散り、白い衣へと変わる
長い髪は収縮し、両の耳は徐々に縮み変色していく。


「咄嗟に虚閃を撃って、ダメージを緩和した様だが」


耳元で、その声が響く。


「とうとう解放状態も維持できなくなった様だな?」
「っ!!!」


その顔面を、白い掌が鷲掴む。
落下する影は直角にその軌道を曲げる。

次いで夜天の空で衝撃と閃光が数珠繋ぎに発生する、爆発と轟音が連鎖的に起こる。


「……まだ、だ……まだだあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」


大気を揺るがす様に咆哮して、グリムジョーは手の中にある斬魄刀を振るう
目の前の敵に向けてその一撃を繰り出すが、その一撃は翠の光剣に弾かれて


「諦めろ、最早お前に勝機はない」


その体が弾き飛ぶ、衝撃が咲き乱れる
空間内を、黒い翼が縦横無尽に駆け抜ける。


「帰刃状態の俺と帰刃状態を保てなくなったお前、その意味を俺達『破面』は身を持って理解している筈だ」

「ぐっ!!!!」


結界内を、鮮血を振り撒きながら一つの影がピンボールの様に行き来する。


「……ぎ、が……っ!!!」
「まだ、お前は勝てると思っているか?」


灰煙と黒煙がドーム状に立ち込めて空を覆い、流星の様に虚空から大地へと白い影が落ちて
ソレを追いかけて、黒い翼が疾走する。


「ぐっ!っ!っぶ……っぁ!」
「コレだけの力の差を目に見ても、お前はまだ俺に勝てると思っているか?」


その影に拳を打ち下ろし、白い影が大地でバウンドする
バウンドした影に追いついて、その首を掴み上げる。


「ここまで絶対的な力の差があっても、未だお前は俺に勝てると思っているか?」


中空に足を着けて、その体を宙吊りにする
宙吊りにされた影はダラリと力なく四肢を垂らして、その呼吸を荒く弱々しく繰り返し


「……なに、かちほこって……やが、る……」


その声が、小さく響く。


「……まだ、だ……っ!!!」


ギラリと、蒼い瞳が翠の瞳を捉える。



「まだ終わってねえぞウルキオラアアアアァァ!!!!」



宙吊りになった体勢から、その腕を振りかぶる
腕のリーチでは自分が上、ウルキオラの腕が届くこの距離なら確実に自分の攻撃が届く。

その顔面向けて、一気に打ち下ろす
心底気に入らない無機質な表情を歪ませようと、その拳は唸りを上げて滑走して



「……ここが、限界か……」



だが

その一撃は、余りにもあっさりと止められた。


「……っ!!!」
「満身創痍の未解放状態で、俺に一矢報いれるとでも思ったか?」


グリムジョーの表情は歪む
血染めの拳を白い掌に収めながら、ウルキオラは無機質に呟いて。



「終わりだ、グリムジョー」



翠の瞳が冷徹な光を帯びて目の前の獲物を見る
次いで拳を収める白い掌に、翠の光が収束して






―――翔けよ、隼―――






紅い閃光が放たれた。


「――っ!!!」


そこはとあるビルの屋上
ウルキオラを完全に見下ろす角度から、シグナムは手に持つ得物から紅い一撃を射出する。

その速度は音速を超えて
その威力は必殺を宿して

その獲物を貫こうと虚空より飛来して、紅い軌道を描いて一気に迫る。



「……狙撃か」



だが防ぐ
黒い片翼を盾の様に展開させて、その紅い一撃を塞き止める。
ギチギチと火花を散らしながら紅い閃光は黒い翼と拮抗しながら滑走し、そのまま軌道を逸らして飛んで行き

烈火の騎士は、既に次の手を打っていた。


「……耐えてくれ、レヴァンティン……」


その影は、上空より飛来する。
一振りの剣を携えて、桜色の髪を靡かせて、シグナムは獲物目掛けて一気に間合いを詰める。


「カートリッジ・フルロード!!!!」


刀剣の付け根から連続音が鳴り響き、ありったけの魔力を吐き出させて、その剣は紅い魔力を纏う

紅い魔力は烈火の如く唸りを上げて、激しく雄々しく燃え盛り



「紫電一閃!!!!」



烈火の一撃は放たれる。
その炎剣は唸りを上げて、全身の力を両腕に収束させて、烈火の一撃は死神目掛けて振り下ろされる。


「惜しいな」


次の瞬間、紅い炎剣と黒い片翼が激突する。

衝撃が爆発し、衝突音が鳴り響き
紅い剣と黒い翼がギチギチと音を立てて噛み合い、互いに拮抗する。


「……っ!!!」
「嘗ての一撃とは文字通り桁違いの威力……コレがお前の切り札か」


翠の瞳に射抜かれる。

そのプレッシャーに、シグナムの全身に怖気が奔る。
その圧倒的威圧感に、電撃の様に冷たい重圧感が全身に襲い掛かる。

悪寒と恐怖が全身が支配して、反射的に後退しそうになるが


「ぐ!ぎっ!……が…!…あ!!!」


だが耐える
ギチリと歯を食い縛って、シグナムは全身に襲い掛かるプレッシャーに耐え抜く。

そして尚も烈火の一撃を宿す両腕に力を込めて


「だが、手間が省けた」


だが崩れない、死神は未だ崩れない。

両腕でグリムジョーを捕らえて、両翼でシグナムの攻撃を捌いて
白い死神は、尚もそこに佇んでいる。


「ぬ、ぐ……!……っ!っく……!!!」


烈火の一撃は尚も唸りを上げているが、それでも黒い翼を突破する事は出来ない
それに、シグナムもまだ体調が万全という訳ではない

体には未だダメージは残っているし、その全身は尚もギリギリと苦痛に晒されている
体力も魔力もそれほど回復した訳でもない、後数回魔法を使えば自分はその疲労でまともに歩く事すら出来なくなるだろう

今の一撃でカートリッジも使い切った、文字通りコレがシグナムの最後の一撃だ


「こっちとしては、コレは好都合だ」


そして、白い死神は尚も揺らがない。


「一応アレからは、生け捕りにしろと言われていたからな」


翠の瞳が烈火の騎士を捉える
その瞳に明確な敵意を宿して、その体が攻撃態勢に移行しようとして





突如、ウルキオラの背中で爆発が起きた。





「「「っ!!!!」」」


その衝撃が肌に響く
その轟音が耳に響く

その突然の事態に、ウルキオラの表情が驚愕に染まる
予期せぬ不意打ちに、ウルキオラの思考が一瞬停止する
突然の背後からの衝撃に、ウルキオラの視界が一瞬揺れる


「……な、に……?」


反射的に、ウルキオラは背後を振り向く
無意識の動作でその視線を攻撃の発信源へと移して


「……う、お……!」


ウルキオラは一瞬、その二人から視線を逸らしてしまい


「……オ、ォ……!!!」


ウルキオラは一瞬、その二人から意識を離してしまい


「「ウオオオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」


その一瞬、ウルキオラは僅かに力を緩めてしまい

その二人は、その一瞬を見逃さなかった。

拳が掌に圧し勝つ
炎剣の一撃が黒翼ごと叩き込まれる。


「っ!!!」


その二つの一撃は、同時にウルキオラに叩き込まれる。
その衝撃でウルキオラの体は、後方に弾き飛ばされた。



(……ちぃ、迂闊だった!気を緩めた一瞬を狙われたか!!!……)



地面をバウンドし転がる体勢から、黒翼を羽ばたかせて立て直す。
地面と片膝を擦らせながら、体勢を整えながら大地を滑走する。

そして己の現状を確認する。


(……目立ったダメージはない……いや、問題なのは先の一撃……アレは、一体……!!!)


ウルキオラは、再び視線を移す。
自分の背中を襲った攻撃方向に眼球を動かして、その発生源へと目を向ける。

そしてウルキオラは、その存在を確認する。

自分を襲ったイレギュラーの正体を見極めようと、その瞳にその存在を捕らえる。



「……アレか……」



ウルキオラの視線の先


そこには夜天の月に照らされる、黒き翼が映っていた――。














「大丈夫か!しっかりしろ!!!」

ウルキオラの手から解放され、大地へと墜落するグリムジョーの体をシグナムが支える
その血濡れの体を抱き留めて呼びかけるが、一向に返事はない。

呼吸は浅く弱く、その閉じられた瞼が開く兆候は見られなかった。


「意識が無いのか、それにこの出血、クソっ!……おい!しっかりしろ!!!」


思い返せば、先のやり取り
この男は自分の乱入に対して、何もリアクションがない様に見られたが


(……アレは反応していなかった訳じゃない、その反応を表す事すら出来ない程に体力を失っていたのか……!!!)


恐らく、先の一撃で完全に残りの体力を使い切ってしまったのだろう。
あの死神の拘束から解放された事で僅かに気が緩み、意識を手放してしまったのだろう。


だから、悟った
これは、非常に危険な状態だと


「……ふざ、ける…な……っ!!!!」


奥歯を噛み締めながら呟いて
シグナムはその体を抱えて、虚空を蹴る。


「……私は、まだ借りを返していない……っ!!!」


虚空を蹴り、距離を取りながら術式を組み上げる。


「……私は、貴公の名前すら知らない……っ!!!」


その思いの丈全てをぶつける様に、シグナムは呟く。


「……我等は誓った、主の道は決して血で汚さないと!……」


それは嘗て仲間達との間に決めた誓い

主との誓いに背いても、絶対に他者の命を殺めない
絶対に、誰一人殺さないと

堅く心に決めた、絶対の誓い


「……ここで貴公が死ねば、私は貴公を『見殺し』にした事になる……っ!」


その意味を胸に刻みつけて、シグナムは翔ける。


「だから、死なせない!絶対に貴公は死なせない!!!」


その術式を組み上げ終わる、その演算が終了する。



「だから、死ぬな……絶対に!絶対に死ぬなあああああああああああああああああああぁぁぁぁ!」



その叫びが轟くと同時に、シグナムの足元に魔法陣が形成されて

二人の姿は、そこから消え去った。















続く












後書き
 今回も色々と難産でしたが、何とか書き上げられました。
最近はいつもと比べて文量が多い回が続いて、今回は文量が少ないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが
それは平にご容赦ください

さて、話は本編
今回は久しぶりにアリシアの出番がありました。
この娘はある意味日常パートの象徴的キャラなので戦闘パートでは出番が無くなってしまうのですが、今回は小ネタみたいな感じで出させてみました

ちなみに、アリシアの「どれくらい有り得ないかと言うと~」の下りは何回か書き直しました

ちなみに最終候補として最後まで悩んだのが、以下のセリフ



「は!まさかコレが噂の倦怠期!!? 幾多の若きカップルを破滅に導くという噂の!!?二股でブチ切れでヤンデレでNICE BOAT END!!!?
いやいや、それはない!ぶっちゃけ有り得ない!
どれ位有り得ないかと言うと、『コナン』でもう一度『弁当型ファックス』の出番があるくらい有り得ないんだよ!!!」



あまりにもマニアックなネタなので、極少数の方にしか分からないネタなので自重しました(笑)


そして次はグリムジョーとウルキオラ
一応、今回の戦いはコレで決着です。蓋を開けてみればウルキオラの完勝です。

今回は色々とシグナムに動いて貰いました。
ちなみにシグナムは最初は結界の中では空間転移は使えないと思い込んでいましたが(ウルキオラの妨害)
仮面の男が簡単に自分達を空間転移させた事から、結界内でも空間転移は可能という事に気付きました

後は二人がウルキオラを出し抜いたシーンですが、コレも特に細くする所はありません

背後からの不意打ち→ウルキオラ、つい二人から目を離す→ダブルアタック!

とまあ、こんな感じです。油断大敵というヤツです
どこぞの統括官様も、虚化+刀剣開放という大技を繰り出したにも関わらず
卍解すら出来ない自分の部下に負けるという事態も……ゲフンゲフン、失礼しました


ちなみに、なのはがウルキオラ達の戦闘にどうして気が付いたのか?という点ですが
これは次回以降で補足説明するので、今はご容赦してください。


さて、ウルキオラといいグリムジョーといい、まだ少しイベントは続きそうです

夜天での戦いも何だかんだで終盤です、次回もそこら辺の所を上手く描いていきたいと思います!

……あ、そう言えば今回プレシアさんがでてな……ゴホン

それでは、次回に続きます


追伸 とある友人の言葉


友人1「なんかこのグリムジョーってさ、完全に木原くんのポジションじゃね?

……なん、だと……?




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