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No.17010の一覧
[0] リリカルホロウA’s(リリカルなのは×BLEACH)[福岡](2011/08/03 21:47)
[1] 第壱番[福岡](2010/04/07 19:48)
[2] 第弐番[福岡](2010/03/07 06:28)
[3] 第参番(微グロ注意?)[福岡](2010/03/08 22:13)
[4] 第四番[福岡](2010/03/09 22:07)
[5] 第伍番[福岡](2010/03/12 21:23)
[6] 第陸番[福岡](2010/03/15 01:38)
[7] 第漆番(補足説明追加)[福岡](2010/03/17 03:10)
[8] 第捌番(独自解釈あり)[福岡](2010/10/14 17:12)
[9] 第玖番[福岡](2010/03/28 01:48)
[10] 第壱拾番[福岡](2010/03/28 03:18)
[11] 第壱拾壱番[福岡](2010/03/31 01:06)
[12] 第壱拾弐番[福岡](2010/04/02 16:50)
[13] 第壱拾参番[福岡](2010/04/05 16:16)
[14] 第壱拾四番[福岡](2010/04/07 19:47)
[15] 第壱拾伍番[福岡](2010/04/10 18:38)
[16] 第壱拾陸番[福岡](2010/04/13 19:32)
[17] 第壱拾漆番[福岡](2010/04/18 11:07)
[18] 第壱拾捌番[福岡](2010/04/20 18:45)
[19] 第壱拾玖番[福岡](2010/04/25 22:34)
[20] 第弐拾番[福岡](2010/05/23 22:48)
[21] 第弐拾壱番[福岡](2010/04/29 18:46)
[22] 第弐拾弐番[福岡](2010/05/02 08:49)
[23] 第弐拾参番[福岡](2010/05/09 21:30)
[24] 第弐拾四番(加筆修正)[福岡](2010/05/12 14:44)
[25] 第弐拾伍番[福岡](2010/05/20 22:46)
[26] 終番・壱「一つの結末」[福岡](2010/05/19 05:20)
[27] 第弐拾陸番[福岡](2010/05/26 22:27)
[28] 第弐拾漆番[福岡](2010/06/09 16:13)
[29] 第弐拾捌番<無印完結>[福岡](2010/06/09 23:49)
[30] 幕間[福岡](2010/08/25 18:28)
[31] 序章[福岡](2010/08/25 18:30)
[32] 第弐拾玖番(A’s編突入)[福岡](2010/08/26 13:09)
[33] 第参拾番[福岡](2010/10/05 19:42)
[34] 第参拾壱番[福岡](2010/10/21 00:13)
[35] 第参拾弐番[福岡](2010/11/09 23:28)
[36] 第参拾参番[福岡](2010/12/04 06:17)
[37] 第参拾四番[福岡](2010/12/19 20:30)
[38] 第参拾伍番[福岡](2011/01/09 04:31)
[39] 第参拾陸番[福岡](2011/01/14 05:58)
[40] 第参拾漆番[福岡](2011/01/19 20:12)
[41] 第参拾捌番[福岡](2011/01/29 19:24)
[42] 第参拾玖番[福岡](2011/02/07 02:33)
[43] 第四拾番[福岡](2011/02/16 19:23)
[44] 第四拾壱番[福岡](2011/02/24 22:55)
[45] 第四拾弐番[福岡](2011/03/09 22:14)
[46] 第四拾参番[福岡](2011/04/20 01:03)
[47] 第四拾四番[福岡](2011/06/18 12:57)
[48] 第四拾伍番[福岡](2011/07/06 00:09)
[49] 第四拾陸番[福岡](2011/08/03 21:50)
[50] 外伝[福岡](2010/04/01 17:37)
[51] ???(禁書クロスネタ)[福岡](2011/07/10 23:24)
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[17010] 第弐拾四番(加筆修正)
Name: 福岡◆c7e4a3a9 ID:4ac72a85 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/12 14:44
「こちらクロノ・ハラオウン、エイミィ応答してくれ」


クロノは手に持ったデバイスから、アースラに通信を入れる
そして僅かな間を置いて、エイミィから応答が来た。


『クロノくん!? こちらアースラ・ブリッジ! 状況は!?』

「現地はリンディ艦長のディストーション・フィールドによって次元断層の防止に成功。
安全領域までの鎮静にはまだ時間が掛かるが、一先ずは安心だ」


とりあえず当面の危機が去った事をクロノは報告し、通信越しからエイミィの安堵の溜息が響いた
そして更に、事の詳細を報告する。


「また今案件の最重要参考人プレシア・テスタロッサの死亡を確認。ロストロギア・ジュエルシード六個の回収に成功
ただ残りの六個はプレシア・テスタロッサが破壊したため、回収は不可能
現地では武装隊が尚も暴走状態の傀儡兵と交戦中、そしてリーゼとリニスが未だウルキオラと交戦中、今からこの戦闘を止めに行く」

『……了解。それなら急いだ方が良いよ……リニスさん達は、かなり状況が悪い』


そしてエイミィはリーゼ達の現状を手早く説明をして


「……解った。こちらも直ぐに向かう」


クロノが応える。どうやら、あちらも相当危険な状況の様だ
クロノはそう判断して、通信を切る。

クロノは視線を移す、そこには破損したバリアジャケットの修復をするユーノ
そして、そのユーノの腕と手に包帯を巻くなのはが映った。


「……よしっと、こんな所で大丈夫かな?」

「うん、大丈夫だよ。ありがとうなのは」


そう言って、ユーノは応急キットを手早く纏めて持ち主に返した。


「クロノ、これ」

「もう良いのか? その腕、完全に折れているだろう?」


クロノはそのユーノの腕を見る。
今は応急処置こそは済んでいるが、その包帯の下の痛々しい紫に腫れ上がった腕の記憶は新しい

それにユーノの怪我は、この五人の中で一番酷かった
故に、応急処置だけでも迅速に行う必要があったのだ。


「僕は元々サポートタイプだから、機動力と魔力に支障がなければ戦闘の影響は薄いよ
それを言ったら、クロノの方が厳しいだろ?」

「……いや、大丈夫だ。麻酔が効いている内は戦闘には問題ない」


数回脇腹を擦って、クロノは結論付ける
額の傷も、既に止血処置を終えて血も拭き取ってある。

そう、自分達は問題ない
問題なのは、もっと別の所だ。



「…………」



三人の視線は、自然とソレに集まる

そこに映るのは、一つの遺体
この案件の最重要参考人だった、プレシア・テスタロッサの遺体


その死に顔は、とても安らかな顔だった

一見すれば、それはまるで眠っているようにも見えた

その表情には一切の歪みも、淀みも、曇りもなく、その壮絶な最期からは想像も出来ない程に穏やかな顔だった。


そして、その遺体に寄り添う一人の少女
プレシア・テスタロッサの娘、フェイト・テスタロッサだ。


「…………」


彼女は、何も言わない。

自分の母の最期
その自決という事実を噛み締め、受け止めていた。


その背中は、どこか儚い

その存在は、どこか淡い

恐らくは、泣いているのだろうか?
それとも、泣いていたのだろうか?


こちらに背を向けている彼女の表情は、三人には解らなかった。

その表情が解るのは、フェイトの隣にいるアルフだけだろう。



「……気持ちは解るが、今は時間が無い」

「……だね」



クロノが一歩前に出てそう提言して、アルフもソレに同意する。
アルフとしても、もうプレシアの死に関してはこれ以上の時間を使いたくなかった。

フェイトにとってプレシアは、最愛の母だったかもしれない

だが、アルフにとっては違う
アルフにとって、プレシアとは憎むべき敵であり、嫌悪すべき対象だったからだ

プレシアに対しての怒りと憎しみ、負の感情の蓄積なら、アルフは他の四人を圧倒している

このプレシアの死でさえ、アルフはある意味自業自得だとも思っている

寧ろアルフにとっては、未だに絶望的な闘いに身を投じているリニス達の方が気掛かりだった。


だが、今の主を放ってはおけなかった
最愛の母を、目の前で失った主を、一人にしては置けなかった。


ここにいる五人は、なのは以外は相当のダメージを負っていた
バリアジャケットも大きく破損した

今の自分達の現状では、リニス達の加勢に言っても足を引っ張る可能性が高い

だからその応急処置が済むまで、クロノはフェイトに母の死を悼む時間を与えたのだ。



……しかし、今の状況はかなり切迫している



エイミィからの報告だと、アリアが片腕を失ったらしい
他の二人も、アリア程ではないがダメージは大きいらしい。



(……もう、これ以上は時間を掛けられない……)



故に、クロノはフェイトに歩み寄る。


「……時間だフェイト・テスタロッサ。もうこれ以上は此処に留まるのは無意味だ
まだリーゼとリニスが闘っている、今は三人とも生存しているがかなり旗色が悪いらしい
……僕達は、今すぐにでも彼女達の救援に行かなきゃいけない」

「……はい」


フェイトは、小さく呟いて頷いた。
フェイトのその早熟とも言える精神が、ここではプラスに働いた。


彼女自身も、良く解っていた


悲しむ事は、後で出来る

涙を流す事は、後でも出来る

母の死を悼む事は、後で幾らでも出来る


まだ、闘っている人たちがいる
自分達の道を切り開くために、命懸けの闘いに身を投じてくれた人たちがいる

今は悲しんでいる時ではない、今は闘う時なのだと言う事を

だから、彼女は立ち上がった。


「……時間を、ありがとうございます……」


そして、フェイトは四人に向かって頭を下げた

一応、気持ちの踏ん切りはついたのだろうか?
もうその顔には、迷いというモノはなかった



「……ここに放置したままでは、遺体が損壊してしまうな」



クロノは呟く、そして再びアースラに念話をして

次の瞬間、プレシアの遺体を囲むように魔法陣が浮き上がった
そして、その遺体は魔法陣の光に照らされてそこから消えた

クロノが、プレシアの遺体をアースラに転送したのだ。



「……行こう」



クロノがそう言うと、四人は了解と頷いた
そして、駆け出す。その戦地へと向けて、その足を進める。

最後の戦いを終わらす為に

そして、全ての闘いを終わらせる為に




「……つぅ……!」


そして、駆け出そうとしたその時

ユーノは僅かに痛んだ腕を押さえた
患部の固定が不完全だった所為だろうか?その不意の痛みを意識して、その足は一瞬止まり









……ペタ……









「……!!?」


その音は
小さくユーノの耳に響いた。

背後からの音、そしてその音源へと顔を振り向かせるが……そこには、何もなかった


「ユーノくん、どうしたの?」

「ん?……ああ、何でも無いよなのは」


そんなユーノの行動を不思議に思いなのはが尋ねるが、ユーノは何でもないとアピールして
再び足を進めた。



(……今、そこに誰かが居た様な気がしたけど……)



ユーノはもう一度、その音が響いた場所を振り向いたが

其処にはやはり、誰もいなかった。



(……気のせいか……)



そう結論づけて、ユーノは四人の背を追って足を進めた。












第弐拾四番「最終決戦」













「だああありゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


拳打が唸り、蹴撃が吼える


「うぉああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


白銀が瞬く、閃光が弧を描く


「うおらああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


光弾が飛ぶ、砲撃が爆ぜる。

それら全ては、血に餓えた獣の様に咆哮を上げながら襲い掛かる
その白い獲物へと、牙を剥いて爪を立てて、その咽喉元を食い破ろうと襲い掛かる。


しかし



「それが限界か?」



手刀が拳打を沈める、足刀が蹴撃を弾く

白銀は白銀で相殺し、閃光は閃光で撃ち落す

光弾は翠弾に破れて、砲撃は翠光に飲まれる


そして、その全てが三人の体に赤い軌道を刻み込んだ。


「……が!!」


ロッテの肩口に白い猛威は突き刺さり、赤い飛沫が飛ぶ


「……っ!!!」


リニスは迫るその白銀を盾で防ぐが、盾は切り裂かれてその掌が鮮血を吐き出す


「……ぐぅ!!!」


アリアは迫り来る翠光を盾で押さえるが、片手では踏ん張りが効かず壁に叩きつけられた


「まだです!!!」


だが、その影は飛ぶ。

他の二人に比べてまだダメージが少ないリニスは、その刀を握り締めてウルキオラへと駆ける
同時にウルキオラの視線がリニスを捕らえる。

リニスは止まらない、フェイトのブリッツ・アクションにも迫る速度で間合いを詰める
しかし、速度でもウルキオラがリニスを圧倒する。


それは、既に互いの経験で解っている。

だから、リニスは前に出た
そして、ウルキオラも迎撃に出た。


「……!!!」



そして、その魔法陣は浮かび上がる

次の瞬間、その魔法陣から鎖が飛び出てウルキオラを拘束する。


「流石の貴方も、初見の魔法には対応し切れない様ですね!!!」


ディレイド・バインド
その空間に踏み込んだ者を捕らえて束縛する、空間設置型のバインド


ウルキオラはリニスを、いやここにいる全ての魔導師の性能を圧倒している

だからこそ、その選択は容易に出来た

敵が真っ向から、それも手負いの敵が真っ向から攻め入れば、その申し出は断らないという事を
リニスは容易に想像できた。


だから、誘い込んだ


ウルキオラが迎撃という行動に出れば、それは少なからず予兆は出る
攻撃に対して、迎撃という手段を取れば……多少なりとも体は前に出る


その一歩を踏み出させる為に、リニスはあえて真っ向から斬りかかった


結果は、見ての通り

その策は成った!!!



「解っている筈だ。コレでは俺を束縛できん」



鎖に、罅が入る



「そんな事くらい」

「承知の上だああああぁぁぁ!!!!」



更に二重の鎖が、ウルキオラを束縛する。

血まみれのロッテが、片腕のアリアが
同時に咆哮を上げて、ウルキオラの鎖に更なる鎖を巻きつける


三重のバインド


そしてその束縛は、ウルキオラからあらゆる行動を奪う。



「これで、終わりです!!!!」



白銀が唸りを上げる

その剣は、必殺の牙となって唸りを上げる


「……まさかとは思うが……」


しかし、尚も死神は揺るがない




「構えが無ければ、攻撃できないとでも思ったか?」




束縛された腕から、指先のみがリニスに向けられる。

その指先から翠光が輝く。


「んな!!?」

「……リニス!!?」

「……ちぃ!!!」


その予想外の事態に、リニスは驚愕で目を見張る。

アリアが声を上げて、ロッテが行動に出る
その脅威を感じ取ると同時に、ロッテは自身が放った鎖を掴んで


「うおおおらあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


それを全力で引っ張り、その狙いを強引にずらす
その翠光は大きく軌道をずらして、翠の軌道を描く


その死神は、鎖を引き千切る
束縛から解放されて、ゆったりと着地する。


「……少し、想定外でしたね」

「……本当に、アイツは何でも有りだね」


リニスとロッテが吐き捨てる様に呟く
相手を追い詰めたと思ったら、相手は更にその上を行ったからだ。



「……流石に、これ以上は厳しいですね」

「血が足りないよねー、どうも」



アリアとロッテが呟く。

自分達三人は今まで多く傷を負い、血を流し過ぎた
アリアも片腕を失い、今はバインドの応用で無理矢理傷を止血しているが……やはり怪我のダメージは否めない。

それに、魔力も消耗し過ぎている。

そして何より、精神力
明らかな格上の強敵との死闘に、三人の精神は既に磨耗しきっていた。



「三人掛かりでこのザマか……時空管理局とやらの底が知れるな」

「「「……っ!!!?」」」



落胆する様にウルキオラは呟き、その言葉に三人の顔は歪む

体力、魔力、そして精神力
文字通り、精も根も尽き果てていた







『双方、直ちに戦闘行為を止めなさい』








――その瞬間までは――






その声は、そこに居る四人の頭に突然響いた。


「この声は……」

「リンディさん!!?」


アリアとリニスが声を上げて、ウルキオラもその突然の念話に行動が止まる

そして、更にその言葉を続く。



『私は時空管理局のリンディ・ハラオウンです。もう一度言います、直ちに戦闘行為を止めなさい。
ウルキオラ・シファー、直ちに武装を解除して此方に投降しなさい
貴方の共犯者、プレシア・テスタロッサは既に死亡。次元断層も我々が防ぎ、ジュエルシードも既に回収済みです』

「……ああ、その様だな」



そのリンディの念話に応じるように、ウルキオラは答える。

既にウルキオラの探査神経は、その事を捉えていた
プレシアの生体反応が消えた事も、ジュエルシードの霊圧が消えた事も、既にウルキオラには分かっていた。



『既にこの時の庭園も、我々が包囲しています。
もう一度言います。ウルキオラ・シファー、直ちに武装を解除して此方に投降しなさい
今こちらの指示に従えば、情状酌量の余地ありと貴方の罪も相応に軽くなるでしょう』

「……ほう」



その言葉に、ウルキオラの眉間が僅かに動く。

そして次の瞬間
その五人は姿を現した。



「終わりだ、ウルキオラ」



その五人はそこから翔ける様に移動して、リーゼ達の前に立つ
そしてその五人の姿を納めて、リーゼ達は驚愕の表情を浮べる。


「クロノ!」

「クロスケ!!?」

「フェイト、アルフ……皆も、無事な様で」


怪我こそは負っているが、五体は無事でしっかりとその足でそこに立っている
その事実を確認して、三人は僅かに安堵の表情を浮べた。


「アリアさん! う、腕が!!?」

「っ!!! アリアさん、その腕!!?」


なのはとユーノが気付いた様に声を上げて、そこに視線が集中する。

それは、片腕を無くしたアリアの姿

そして続いて気付く
ロッテもリニスも、その姿は至る所に傷を負って、血にまみれている事に



「……すまない、時間が掛かりすぎた」

「……ごめんなさい」

「まあ、結果オーライよクロスケ。フェイトちゃんも気にしないで」



申し訳なさそうにクロノとフェイトが呟き、ロッテは笑みを浮べて答える
そしてアリアも笑みで二人の言葉に応える。

弟子の前では気弱な態度を見せられないのは、師の義務だ。


「……アルフ、ユーノ、三人に治療魔法を」

「ああ、分かった」

「了解さ!!」


クロノが治療を始める五人の前に立って、フェイトとなのははその両サイドに距離を取って構える

その視線の先、杖の先には、最後の強敵がいる。



「……成程、随分とアレに手こずったと見える」

「……ああ、プレシア・テスタロッサは強かった。だから、なるべく君とは戦いたくない
君もプレシア・テスタロッサが死んだ今、もう管理局と争う意味は無い筈だ」



ウルキオラの言葉にクロノが応える
そして、更にウルキオラにその言葉を繋げる。


「最後通告だ。こちらに投降しろ、ウルキオラ・シファー……もう、君に逃げ場は無い
君は単身では空間転移を行えないのだろう? そして時の庭園そのものを管理局は既に包囲している、もはや君に逃げ場はない」


「……どういう意味だ?」


「既に君の魔力データは既にアースラに記録済みだ、君が何処へ逃げようと管理局はソレこそ地の果てまでも追える。
早いか遅いかの違いだけだ」



クロノは告げる。
如何にウルキオラが超高速の移動術を持っていたとしても
仮にそれが音速を超えようと、光速に迫る速度であろうとも、ソレは必ず魔力の痕跡を残す。

そして魔力の痕跡を捉えれば、管理局はどこまでも追える

暗闇の中の光を辿るように、容易くその追跡を行える

空間転移の様に空間から空間を跳躍し、過程そのものが存在しない移動を行わない限り
管理局はそれこそ永久にウルキオラを追跡できる。



「……成程、良く解った……」



クロノの言葉の意味
それをウルキオラは理解して、噛み締めて、ゆっくりとそう呟き


「……そうか、理解してくれたか……」

「ああ、良く解った」


そしてその言葉を聞いて、クロノの心は安堵の気持ちを胸に抱く。



「貴様等ゴミ共が、この程度で俺を追い詰めたと」



翠光が輝く




「見当違いな考えをしている事が良く解った」




「っ!!!?」

その翠光を視界に収めると共に、クロノは前に出て掌を突き出す。

そして、その盾を形成する
傾斜と高速回転を伴った、改良型ラウンドシールド

それは自分達に迫る翠光を弾いて壁を破壊する、そしてクロノ達は再び戦闘体勢を取る。



「こちらも、最後通告だ」



目の前の八人を視界に納めて、ウルキオラは告げる。



「俺も、もうお前等と闘う理由は無い。
だからさっさと無駄な抵抗は止めて、道を開けろ……そして、今後一切俺に関わるな」



その言葉に、八人は驚愕する
追い詰めた筈のウルキオラが、逆に自分達を追い詰めた様な言葉を放ったからだ。

そして、そんなウルキオラを見て唖然とする八人に、ウルキオラに更に言葉を繋げる。



「ああ、そうだ。事のついでだ……お前等全員と、この時の庭園にいるゴミ共の全てを撤退させろ」

「……んなっ!!!」

「俺はまだ、ここでやる事が残っている
以上の俺の要求を飲めば、俺はお前等全員に一切の手出しをしないで見逃してやる
お前等にして見れば、これ以上に無い破格の条件だろう?」



そのウルキオラの要求を聞いて、クロノは思わず声を上げる

自分を見逃せ

自分を追うな

ここから直ぐに出て行け

そして、二度と自分に関わるな


ウルキオラの要求を要約すれば、こういう事だ。



「巫山戯るなぁ!!! そんな要求飲めるはずないだろ!!!?」



クロノは叫ぶ様にして言う。


既に安全領域に入ったとはいえ、未だ時の庭園の次元震は収まってなく、空間そのものが不安定な状態だ

そして如何な理由があろうとも、ウルキオラは次元断層を引き起こそうとしたプレシア・テスタロッサの共犯者

そしてウルキオラは単体で次元震の増大と、空間歪曲を引き起こせる程の魔力の持ち主だ。



果たして、そんな人物を残して自分達が撤退したらどうなる?



そして、ウルキオラを此処から逃す訳にも行かない。

クロノは「ウルキオラは単体では空間転移は出来ない」と言ったが
それはあくまで、今までの闘いからの推測だ。


それは、確実な事実とは言えない
ウルキオラ自身が、そう誤認する様に今まで自分達に振舞っていただけの可能性もある。



そして、ウルキオラ自身が空間転移を使えるか否かも、然程重要ではない。



自身が空間転移を使えなくとも、空間転移を利用する方法は幾らでもある。

自身が使えなければ、他者を利用すればいい

今までプレシア・テスタロッサと協力関係にあったウルキオラも、この手段にはとっくに気付いているだろう

それに、プレシア・テスタロッサ以外にも協力関係にある魔導師がいる可能性も捨て切れない。



そして、一度でもウルキオラに空間転移を許してしまえば……今度こそ、管理局はその存在を追う術は無くなる。



完全に不可能、とは言えないが……それでも、その追跡の難易度は跳ね上がる。



故に、ここからウルキオラを逃す訳にはいかない。



確実に、此処でウルキオラを確保しなければならない。



そして、ウルキオラの協力者であるプレシア・テスタロッサが死亡した今この時こそが
ウルキオラを確保する最大のチャンスなのだ。



故に、クロノはウルキオラの要求は認められなかった。


ウルキオラを見逃す
この恐ろしいまでの脅威と危険因子を野放しにする

そしてこの暴虐の塊の様な存在に、今後一切関わる事すら許されない

それはクロノにとって
否、時空管理局にとって大凡受け入れ難い要求だった。


「……そうか……」


そして、ウルキオラは呟く

クロノの言葉を聞いて、クロノ達の答えを理解して。



「闘う理由は、まだある様だな」



その白い影は翔け


もう一つの白い影が翔けた。











「リニス!!!?」

「リニスさん!!!?」


その突然の衝突を目の当たりにして、クロノとなのはが叫ぶ。

目の前に映る光景は、鍔迫り合いをして互いに睨み合うリニスとウルキオラの姿

そして次の瞬間、リニスは叫んだ。



「早く散って下さい!!! 固まっていては危険です!!!?」



そして次の瞬間、他の七人は気付いた様にそれぞれが飛び
戦闘体勢を取った。

そしてリニスもその事を確認して、ウルキオラと距離を取る。


「どうやら」

「治療タイムは、終わりみたいだね」


アリアとロッテも、戦闘体勢に入る

そして改めて現状を見て、クロノが念話を行う。


『皆、もう少しで此処にも武装隊の応援は来る! だからそれまで持ち堪えるんだ!!?』


そのクロノの言葉に、全員が「了解」と返事を伝える。


既に、自分達の答えは決まっている

既に、自分達は戦闘体勢に入っている


そして、全員が悟っていた


これで、最後だと

これが、最後の戦いだと



もはや、そこに迷いはない

そして、全員が決めていた


敵は、強敵

だからこそ、決着をつけよう



これまでの闘いに

今までの闘いに


ウルキオラに勝利して

全ての闘いに、決着をつけよう!!!








八人が、弾けた様に散開する。


「ウルキオラさん! 私は、貴方とお話したい事が沢山あります!!」


なのはが叫ぶ。


「俺は話す事など無い」

「ええ! 貴方の答えは分かっています!!!」


ウルキオラが指先に翠光を収束させる
なのはも杖の先に桜色の魔力を収束させる


「だから! 私達が勝ったら! 話を聞いてもらいます!!」

『divine buster』


桜色の砲撃が撃ち出され、翠光の砲撃がソレを迎撃する。

翠光は、桜色の砲撃を喰らう

その結果は、既にお互い解っていた。


なのははそこから更に飛ぶ
そして金の影も飛ぶ


「ディバイン・シューター!!!」

「フォトン・ランサー!!!」


四つの桜色の弾丸
四つの黄金の光弾

合わせて八つの魔弾が、ウルキオラに照準を定める。


「スティンガーブレイド・マルチシュート!!!」


青い魔法陣が浮かび上がり、その剣を精製する
十の青い宝剣が、その切っ先をウルキオラに向ける


合わせて、十八

その全てが、白い死神に狙いを定める。


「全弾!!」

「射出!!」

「行けえええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


なのはとフェイトとクロノが、同時に叫ぶ

その全ての攻撃は、疾風の速度でウルキオラに迫る。


「……舐められたものだ」


翠光が輝く

白銀が走る



そして、その二つの影が飛ぶ。


「流石のアンタも!!!」

「攻撃の最中に、防御は出来ないでしょう!!!?」


その二つの影は、宝剣と弾丸の間を走り抜ける

橙の影は、拳打を繰り出す
白い影は、剣戟を繰り出す



「……っ……!」



ここで、初めてウルキオラの空気は変わる。

今までとは、タイミングが違う

攻撃の、継ぎ目がない
攻撃と攻撃の間隔が、極端に短いのだ


必殺のタイミングに近い、その襲撃

それは、ウルキオラに僅かな動揺と焦りを生んだ。


だが、崩れない
ウルキオラはまだ崩れない。


「……っ!!」

「……ちぃ!!」


リニスの剣を剣で迎撃する

アルフの拳を手刀で捌く


もしも、リニスやアルフ……クロノやフェイトが万全の状態なら、結果は違っていたかもしれない

だが、今は違う
ここにいる全員は、大なり小なりダメージを負っている


故に、崩せない。



「……が!!」


蹴撃がリニスの体に減り込んで、その体はミシリと鳴って壁に叩き付けられる


「……あぐぁ!!!」


手刀がアルフの脇腹に突き刺さり、メキメキと骨を鳴らしてその体が凪ぎ飛ばされる



そして次の瞬間

ウルキオラの服の袖口は破けて、胸元は肌蹴た。


「……っ!!」


ウルキオラは、僅かに驚愕する

回避し切れていなかった

防御し切れていなかった


二人の攻撃は、当たっていたのだ。



(……連携の錬度が、上がっている?……)



そして、ウルキオラと八人は再び距離を取る。


互いは互いにタイミングを計り合う
場は再び膠着する。


『皆、良く聞いて下さい』

『一つ、かなり良い感じの策を思い付いたよ!!』


アリアとロッテが、他の六人に念話を送る。



『この策は絶対にウルキオラに通じる筈! だから皆、良く聞いてね!!?』



物語は進む

一つの結末へと向かって、確実に進む。

















……俺は、何を焦っている?……


自分に迫る幾多の攻撃を捌きながら、ウルキオラは考えていた。


何時からかは分からないが、ウルキオラは何故か焦りを覚えていた

頭の何処かで危機感を感じて、胸の中では焦燥感を覚えていた。



……なぜ、こいつ等程度に焦る必要がある?……



ウルキオラは、理解できなかった。

確かに、こいつらは先程よりも手強くなっている
そして奴等にダメージがあるように、自分も確実に体力を消耗している

だがそれでも、自分の方が依然優勢の筈


だから、ウルキオラは自分の現状を理解できなかった。


そして、依然その頭の中にはノイズが走っていた。


アルフとロッテの拳打を捌く


――ノイズが走る――


アリアとリニスの魔弾を斬り落とす


――ノイズが響く――


虚閃と虚弾を放ち、斬魄刀を振るう


――ノイズが流れる――


理由は分からないが、ウルキオラは確かに焦り、危機感を覚えていた。

理由は分からないが、ウルキオラは確かに勝負を急いでいた。


……何故、だ……


拳打と蹴撃を捌く


……何故、俺は焦っている……


光弾を斬り落とす



……何が原因で、俺はコレほど焦っている……



それは、謎の焦燥感

そしてそれは、謎の危機感であった。


勝敗の問題ではない

そういう次元ではない


ソレ等とは違う別の「何か」が原因で、ウルキオラは焦りを覚えていた。



「……がっ!!!」



そして、相手に隙が出来た
ウルキオラはロッテの肩口を切り裂いて、その腹部に蹴りを叩き込んだ。


苦痛に顔を歪めて、ロッテは床を転がる

そしてウルキオラは追撃を掛けようと、ロッテとの距離を詰めて



「お久しぶり」



その相手が、ウルキオラの目の前に突然現れた。


「……っ!」


その突然の事態に、ウルキオラは思わず目を見張る。
そして目の前に現れたアリアの掌には、既に雄々しく魔力が咆哮を上げている。



「ブレイズ・キャノン!!!」



アリアが行った事、それは近距離の空間転移
そして超近距離からの砲撃魔法の合わせ技だ


「……!!?」


迎撃は間に合わない

ウルキオラは咄嗟に響転を発動させて、横に駆ける
だが、それは回避しきれなかった。

その砲撃は、唸りを上げてウルキオラに襲い掛かってその体の一部を飲み込む。

予想外の反撃
ウルキオラは響転を発動させたまま、安全圏まで距離を取ろうとそのまま駆けて




そして


『何か』が、ウルキオラの服からポロリと落ちた。
















「………………ぁ」
















『ソレ』を見て、ウルキオラは思わず声を上げた


それは、一つの腕輪


白と緑のビーズで出来た、一つの腕輪だった。



――えへへー凄いでしょー、良いでしょー。これね、私がビーズで作ったんだよ――



ウルキオラは知っている
その腕輪を良く知っている



――腕輪だよ、ウルキオラの分の腕輪!――



何故なら、それは自分が良く知る相手が造った物だったから
自分によく纏わりついて来る相手が造った物だったから



――どう、良く出来てるでしょ! 色もね、ウルキオラの白い肌と目の色に合わせたんだよ!――



それは、そんな相手が自分に送った物だったから

自分は要らないと言っても、それでも自分に強引に渡した物だったから




――これもね、わたしの手作りなんだよ。だからウルキオラに上げるね!――




ウルキオラは、その腕輪を良く知っている




――受け取ってくれてもいいじゃない! わたしからのプレゼントなんだよ!! 一生懸命作ったんだよ!!――



何故なら、ソレは



――そこが間違ってるんだよ! 心が篭ったプレゼントはね! それだけで受け取る理由がてんこ盛りなんだよ!!――



アリシアが自分のために

心を篭めて作ってくれた、自分へのプレゼントだったからだ。





……俺は、何をしている?……





ウルキオラは理解できなかった

その腕輪にではなく、自分の行動を理解できなかった。


その足は、止まっていた

その目は、敵を見ていなかった

その手は、構えていなかった



ウルキオラは、未だに理解できなかった。


何故なら自分の足は

何故なら自分の目は

何故なら自分の手は



アリシアの腕輪しか、捉えていなかったからだ



だから、ウルキオラは理解できなかった。



攻撃もせず

防御もせず

回避もせず


アリシアの腕輪を拾おうと
腕を伸ばした自分自身を、理解できなかった。



だがそれは


この場においては


余りにも大きい、余りにも致命的な



絶対の、隙だった。






「今だ!!!!」






誰かが、叫ぶ

次の瞬間、ウルキオラの腕に鎖が絡みつく
そして、ウルキオラの全身に鎖は絡みつく。


「……っ!!!」



その鎖は一つや二つではない

五重の鎖

五人の魔導師が全力の魔力を込めた、絶対の束縛だった。


「準備完了!!!」

「なのは! フェイト! クロノ!!!」

「ブチかませえええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


そんな声が響くが、ウルキオラの耳には響かない

束縛した鎖を千切ろうと力を込めるが、それは破壊できない



そして、その光はウルキオラに照準を合わせる

その圧倒的魔力の全ては、その勝機を絶対に逃さないと咆哮を上げる。



「フォトンランサー・ファランクスシフト!!!!!」

「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!!!!!」

「スターライト・ブレイカアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!!!!!」



三人が咆哮を上げて、その必殺の攻撃は完成する


その圧倒的閃光は、ウルキオラに向けて放たれる。



……何だ、この鎖は?……



だが、ウルキオラはソレに気付かない

その腕輪を拾おうと、未だにその眼は腕輪しか捉えていない



……邪魔を、するな……



鎖の束縛は、未だにウルキオラを捉えている



……俺の邪魔を、するな…!!!……



光の奔流が降り注がれて、ウルキオラを飲み込む





そして





――だからはい、ウルキオラ――





アリシアの腕輪は





―― 一生懸命作ったんだから――





ウルキオラの目の前で





――大事にしてねウルキオラ!!――







バラバラに、砕け散った。



















続く












あとがき

 色々な意味で\(^o^)/オワタ






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