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No.17010の一覧
[0] リリカルホロウA’s(リリカルなのは×BLEACH)[福岡](2011/08/03 21:47)
[1] 第壱番[福岡](2010/04/07 19:48)
[2] 第弐番[福岡](2010/03/07 06:28)
[3] 第参番(微グロ注意?)[福岡](2010/03/08 22:13)
[4] 第四番[福岡](2010/03/09 22:07)
[5] 第伍番[福岡](2010/03/12 21:23)
[6] 第陸番[福岡](2010/03/15 01:38)
[7] 第漆番(補足説明追加)[福岡](2010/03/17 03:10)
[8] 第捌番(独自解釈あり)[福岡](2010/10/14 17:12)
[9] 第玖番[福岡](2010/03/28 01:48)
[10] 第壱拾番[福岡](2010/03/28 03:18)
[11] 第壱拾壱番[福岡](2010/03/31 01:06)
[12] 第壱拾弐番[福岡](2010/04/02 16:50)
[13] 第壱拾参番[福岡](2010/04/05 16:16)
[14] 第壱拾四番[福岡](2010/04/07 19:47)
[15] 第壱拾伍番[福岡](2010/04/10 18:38)
[16] 第壱拾陸番[福岡](2010/04/13 19:32)
[17] 第壱拾漆番[福岡](2010/04/18 11:07)
[18] 第壱拾捌番[福岡](2010/04/20 18:45)
[19] 第壱拾玖番[福岡](2010/04/25 22:34)
[20] 第弐拾番[福岡](2010/05/23 22:48)
[21] 第弐拾壱番[福岡](2010/04/29 18:46)
[22] 第弐拾弐番[福岡](2010/05/02 08:49)
[23] 第弐拾参番[福岡](2010/05/09 21:30)
[24] 第弐拾四番(加筆修正)[福岡](2010/05/12 14:44)
[25] 第弐拾伍番[福岡](2010/05/20 22:46)
[26] 終番・壱「一つの結末」[福岡](2010/05/19 05:20)
[27] 第弐拾陸番[福岡](2010/05/26 22:27)
[28] 第弐拾漆番[福岡](2010/06/09 16:13)
[29] 第弐拾捌番<無印完結>[福岡](2010/06/09 23:49)
[30] 幕間[福岡](2010/08/25 18:28)
[31] 序章[福岡](2010/08/25 18:30)
[32] 第弐拾玖番(A’s編突入)[福岡](2010/08/26 13:09)
[33] 第参拾番[福岡](2010/10/05 19:42)
[34] 第参拾壱番[福岡](2010/10/21 00:13)
[35] 第参拾弐番[福岡](2010/11/09 23:28)
[36] 第参拾参番[福岡](2010/12/04 06:17)
[37] 第参拾四番[福岡](2010/12/19 20:30)
[38] 第参拾伍番[福岡](2011/01/09 04:31)
[39] 第参拾陸番[福岡](2011/01/14 05:58)
[40] 第参拾漆番[福岡](2011/01/19 20:12)
[41] 第参拾捌番[福岡](2011/01/29 19:24)
[42] 第参拾玖番[福岡](2011/02/07 02:33)
[43] 第四拾番[福岡](2011/02/16 19:23)
[44] 第四拾壱番[福岡](2011/02/24 22:55)
[45] 第四拾弐番[福岡](2011/03/09 22:14)
[46] 第四拾参番[福岡](2011/04/20 01:03)
[47] 第四拾四番[福岡](2011/06/18 12:57)
[48] 第四拾伍番[福岡](2011/07/06 00:09)
[49] 第四拾陸番[福岡](2011/08/03 21:50)
[50] 外伝[福岡](2010/04/01 17:37)
[51] ???(禁書クロスネタ)[福岡](2011/07/10 23:24)
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[17010] 第弐拾弐番
Name: 福岡◆c7e4a3a9 ID:4ac72a85 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/02 08:49

「……来たようね」


時の庭園の玉座の間にて、プレシアはポツリと呟いた

既に時の庭園の大部分は、虚数空間によって侵食されている
次元震も拡大している、このペースで拡大していけば次元断層までおよそ四十分といった所だろう


そして、プレシアは手に持ったデバイスを操作して、二つのディスプレイを展開させる

一つのディスプレイに映るのは、玉座の間へと向かう五人の人影
そしてもう一つに映るのは、大ホールにて交戦を続けているウルキオラの姿。


「……どうやら、きちんと役目は果たしてくれた様ね」


魔女は口の端を吊り上げて呟く
これで、計画は次の段階へと進める

ここから先は、自分次第という訳だ


そして、魔女は覚悟と決心を改めてその心に刻む


全ては、自分のために、自分達の未来のために


こんな筈じゃなかった未来を、こんな筈じゃなかったこれからを、この手で取り戻すために!!!



そして、玉座の扉は破壊される

プレシアは視線を移す、そこに映るのは五つの影



「……プレシア・テスタロッサだな……」



自分の前に五つの影の一つの、黒髪の少年
確か、クロノとかいう名前の執務官だった筈、その少年が一歩前に出て


「こちらも時間がない、手短に用件を言おう。今すぐに次元震を止めて、此方にジュエルシードを明け渡す事を要求する
……これは、最後通告だ。断れば、こちらも強硬手段に出るつもりだ」


クロノは、そう言ってプレシアに手に持った杖を向ける。

恐らく、今言った事は紛れも無い本心だろう
自分がNOと言ったその瞬間、その杖からは攻撃が放たれるだろう。

そして、プレシアは視線を動かす
そこには、金髪の黒衣の少女

自分が造った、自分が人形と呼んだ、一人の少女


「……母さん……」


その一言だけ、その一言だけをフェイトは呟いて

プレシアは、小さく息を吐いた。



「……クロノ執務官、だったわね。改めて、私の答えを言うわ」



プレシアは、五人の姿を視界に納める。



「これが、私の答えよ!!!!」

『lightning field』



その瞬間、紫電が奔った。












第弐拾弐番「最終決戦・vsプレシア」













突如五人の足元に紫の魔法陣が浮かび上がり、紫電が五人の体を駆け巡った。


「……っ!!!」


それは奇襲だった。

プレシアが向けた杖のデバイス、それが魔法名を呟いた事から五人はその杖から攻撃が来るものだと思った

だが、それは違った
それは死角からの奇襲、それは真下の死角からの攻撃だった

故に、その反応は遅れた。


「皆、飛べ!!!」


クロノがそう叫んで、次いで他の四人も飛行魔法を展開させる。

紫電が僅かに体に流れたが、ダメージ自体は小さい
故に戦闘には支障はない

全員がそう確認した、その時だった。



「呆れるくらいに単純ね」

『satellite cannon』



天上から、その砲撃は雨の様に降り注いだ
その奇襲から逃れた、その一瞬の心の隙間を突かれた。

死角からの奇襲・二連発
その雨の様な砲撃は、五人へ向かって一斉に放たれた。


「ブレイズ・キャノン!!!」

「ディバイン・バスター!!!」

「サンダー・バスター!!!」


しかし、三つの影がコレを即座に切り返す
先程までのウルキオラの戦闘、コレが五人の神経を鋭く尖らせていた

故に、死角からの奇襲の二連発に耐えられた
天上からの数多の砲撃を、三つの巨大な閃光が飲み込む。

だが!!!



『genocide braver』



魔女の攻撃は、二回ではなかった
プレシアの持った杖から、その砲撃は放たれた。


「……んな!!!」

「……ちぃ!!!」


紫電を帯びた、巨大で強大な砲撃魔法
それに対して即座に、ユーノとアルフがプロテクションを張る。

しかし




「紙の盾で、砲弾を防げるとでも思った?」




SSランクの収束砲撃魔法
その砲撃の威力は、Aランクの二つの防護の守りを、遥かに超えていた

その紫電の砲撃は、まるで紙を貫くようにアッサリとその防護を突破して、五人の姿を飲み込んだ。


「……がぁ!!!」

「ぐぅ!!!」

「……きゃあ!!!」

「……ぐぅ、あっ!!!」

「プレシ、アアァァ!!!」


なのはとクロノとフェイトは、砲撃で動けなかった
ユーノとアルフの守りは、砲撃を防げなかった

故に、五人はその砲撃から逃れる術はなかった

そして、五人は壁に、床に、それぞれが叩きつけられた。


「……ぐ、うぅ!!」

「が、は!!」


五人はそれぞれ、苦痛の呻き声を上げる
軽減があったとはいえ、SSランクの砲撃が直撃したのだ

そのダメージは、決して軽いモノではないだろう


だが




「まさか、コレで終わるとでも思った?」




魔女は、既に次の手を撃っていた
魔女の杖から、その紫電の弾丸は形成される

魔女の魔法陣の光に照らされて、その紫電の弾丸はその姿を増やしていく


一つ、二つ、三つ、五つ、十、五十、百、二百、四百、五百……千!!!!


千を超える、紫電の弾幕!!!



「フォトンランサー・ジェノサイドシフト!!!!」



魔女が、その杖を掲げる
そして次の瞬間、千の弾丸は五人の元に一斉に降り注がれた。



















時の庭園・大ホール


「……がぁ!!!」


その呻き声と共に、鮮血が奔った
白銀の三日月がロッテの体を斜に走り抜けて、その身を大きく切り刻んだのだ。



「……やはり、その程度か」



ウルキオラは小さく呟く
相も変わらない無機質な響きだが、その響きには何処か落胆の色が含まれていた。


相手の姿をその視界に納めて、ウルキオラは刀を振るって鮮血を落とす
ウルキオラの前に居るその三人、その三人の姿は既に血で濡れていた。


「……ちく、しょう……好き勝手言って……!!!」

「ロッテさん!……今、止血を!!!」


そう言って、リニスがロッテに駆け寄ろうとするが


「させると思うか?」


それを、ウルキオラは阻む
響転を発動させて、即座に二人に割って入るが


「邪魔をさせると、思いますか?」


アリアが動く、そして形成した青い宝剣をウルキオラに向ける。


「スティンガーブレイド・スナイプショット!!!」


青い宝剣は弾丸の様に射出されて、閃光の軌道を描いてウルキオラに迫る

だが切り裂く
ウルキオラは自分に迫ったその宝剣を一瞥することなく切り落として、その二人に追撃を掛ける


『ちぃ! リニス、治療は後回し!』

『解かりました! ロッテさん、サポートをお願いします!!』


念話で打ち合わせをして、二人は共にその場に魔力弾を形成する


「フォトン・ランサー!!!」

「スティンガー・スナイプ!!!」


二人で左右に飛んで、その光弾を撃つ

共に操作性に優れた高速軌道弾、これでウルキオラを撹乱して陽動を行うつもりだった


だが次の瞬間
ソレ等は全て、翠光の弾丸に撃ち抜かれた。


「「……!!!」」

「面倒だな」


だから、ウルキオラは動く前に破壊した
嘗ての交戦で、相手のその攻撃の応用性を身を持って味わったからだ。

細かい操作が可能で、その速度を自由に変えられるその攻撃
そういう応用性の利く攻撃は、時に自分の予想を上回る攻撃の仕方をしてくるからだ。



「お前等は、俺を過小評価し過ぎだ」



その指先がリニスに向けられる
そして次の瞬間、翠光が輝く。


「ブレイズ・キャノン!!!」


翠の砲撃を、アリアの砲撃が迎撃する
Sランクの砲撃が撃ち出され、ウルキオラの虚閃に唸りを上げて迎撃する。


だが


「……っ!!!」

「アリア!!!」


その白い影は駆ける
その二つの閃光の衝突に身を隠されながら、その獲物に襲い掛かる。


その死神は、アリアの背後にいた。

白銀の閃光が振り下ろされる
ロッテが同時に飛び出すが、それは間に合わない




鮮血が弾けた。




「……良い判断だ」



その光景を見て、ウルキオラは感心した様に呟く
その呟きの直後、宙を舞っていたソレはゴトンと音を立てて落ちた。


それは、血に塗れた腕だった。


そしてウルキオラは、自分の獲物に視線を移す
そこには、自分の攻撃から尚も生還した獲物の姿、アリアの姿

そしてその体に、あるべき左腕は肘から無かった。


「アリア!!!」

「アリアさん!!!」

「来るなあぁ!! 隙を見せるなあああぁぁぁ!!!」


駆け寄ろうとした二人に、アリアは怒鳴るように警告する。


「……存外、冷静だな」

「……腕一本と自分の命、比べるまでもありません」


鮮血をボタボタと垂らし、焼けるような激痛を放つその腕を、アリアは押さえようとしない
ここで、残った片手を塞いでしまっては意味が無いからだ。


片腕を捨てて、命を守った意味が無い
手負いの自分の所為で、味方二人が隙を見せては意味が無い

その事をウルキオラは理解した、それ故にその言葉を送ったのだ。



「だが、それでもお前等は俺達を過小評価し過ぎている」



その光景を見て、ウルキオラはそう呟く。

その言葉を聞いて、リニス達はギリっと奥歯を噛み締めた

確かに、と……その言葉に、心の中で同意してしまった
ウルキオラの言葉に、同意してしまった。



……動きが、速過ぎる……

……先程までよりも、更に動きが速くなっている……



三人は、その考えに至る



「……さっきまでは、手を抜いていたんですか?」

「全力だと思ったか?」



リニスが尋ねて、ウルキオラは即答する。

恐らく、それは虚言ではないだろう
今だからこそ、分かる


どんな理由があったかは知らないが、先程までのウルキオラは手を抜いていたのだ


その答えを聞いて、三人はギシリと唇を噛み締めた。


……これは、想定外だ……


今までは、八人だったから押さえられたのだ
八人がそれぞれの役割をこなしていたから、ウルキオラを束縛し、その攻撃を凌げたのだ

だが、今は三人
サポートの手が足りず、回転も回らない


それは承知だった、それを承知の上で自分達は足止め役を買って出た。


そうする事がベストだと
自分達がここで足止めをして、クロノ達五人が元凶を叩く、ソレがベストだと

斃す事を目的とするのではなく、時間稼ぎの足止めなら何とか出来ると
相手の実力と自分達の総合力を見比べて、勝てなくとも足止めは出来ると

そう判断したからだ。


だが、違う


それでも、ウルキオラは圧倒的に強い


自分達の予想を超えて、遥かに強い。


だが、それでも間違っていない
これで良い、これでウルキオラを足止め出来るのなら、それで良い。


時間稼ぎは出来ている
だがそれは、文字通り血の対価で掴み取っていた時間だった


自分達は負けても良い
クロノ達が勝つまで戦えていれば、それが自分達の勝ちなのだ。


そして、ウルキオラは更に言葉を続ける。


「俺だけじゃない、お前等はプレシアに対しても過小評価し過ぎている」

「……言ってくれますね。そっちこそ、私達の弟子を過小評価し過ぎですよ」


そう言って、アリアは激痛に耐えながらも魔力弾をそこに形成して、ウルキオラに向き合うが



「そういう意味ではない、お前等ではアレには『勝てん』……強弱の問題ではなく、一つの事実として『プレシアには勝てん』」



リニスの問いに対して、ウルキオラはあっさりとそう返す
まるでそれは一つの事実の様に、当然であり必然と言う様に、それが真実だと言う様に告げる


「……どういう、意味ですか?」

「そういう意味だ」


アリアの問いに、ウルキオラは即座にそう返す。



「お前等では、俺ともプレシアとも強弱の関係に『すら』なれん」



白い閃光が駆ける

そして次の瞬間、更なる鮮血が弾けた。






















「貴方達の考えは、大凡解っているわ」


瓦礫に埋もれた玉座の間にて、その魔女は壁、床、そして瓦礫に埋もれたその五人を見下ろしながら呟いた。


「ウルキオラには勝てない。だからウルキオラを足止めしてその間に私を確保して、次元断層を止める
ウルキオラの事は二の次、私さえ抑えれば、主犯である私さえ抑えれば何とかなる……そう思ってたんでしょう?」


パキリ、と僅かに瓦礫の山が動く


「ええ、その考えは正しいわ。確かにその考えは正しい。実に合理的、そこに反論の余地は無いわ」


パキリ、ビシリと、瓦礫の山が崩れる


「だけど、一つ大きな間違いがある」


そして、その影は瓦礫から飛び出す。



「ウオオオオオオおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっぉぉぉぉぉ!!!!」



その咆哮と共に、アルフは飛び出す

そしてその叫びに呼応する様に、もう一つの影は飛び出した


「プレシアアアアアアアアアァァァァァァァァ!!!!」

「プレシア・テスタロッサアアアアアァァァァァァ!!!!」


アルフが飛び出して、魔力弾を形成する
クロノが飛び出して、青い魔力を収束させる


「フォトンランサー・ブリットシフトオオオォォ!!!!」

「ブレイズ・キャノン!!!!!」


十の巨大な橙の魔力弾と、青い砲撃は同時にプレシアに襲い掛かる
必殺の気魄とその唸りを響かせて、それは黒い魔女に迫る

だが



「貴方達は、私にすら勝てないわ」

『sealing fall』



その防御幕は展開される
紫電を帯びたその壁は、十の光弾と青い砲撃を完全に防いだ。



「研究と論文だけで、SSランクになれるとでも思った?」



クロノとアルフは、その結果に表情を僅かに歪める



「大魔導師と名乗る私が、戦闘一つ満足に出来ないとでも思った?」



そして、その事実を改めて理解した。


自分達の敵は目の前のプレシアだけじゃない、この空間そのものだと言う事に。


先程の防御幕、アレは自分達の動きを見て対処したのでは間に合わなかった筈
最初の床からの奇襲も、真上からの砲撃も、その威力、その破壊力に不釣合いな程に、溜めが無かった。


プレシアの攻撃に、殆ど溜めはないのだ
最強クラスの魔法を、溜めなしに連発できるのだ


恐らく、この庭園の動力炉と駆動炉の存在がソレを可能にしているのだろう


溜めがない、それは即ち攻撃の回転速度だけなら……あのウルキオラをも上回るという事だ。

死角からの、必殺の威力を持った攻撃の連続発射
そんなもの一個の魔導師では、それが例えSSランクの魔導師でも到底不可能な所業の筈

故に、その結論に辿り着いた。

プレシアがこのフィールドにいる限り、自分達がここで戦っている限り勝率は低い。


「あらあら、額から血なんか流しちゃって……いい男が台無しよ?」

「その言葉……傷をつけた本人が言う言葉ではないな」


そう言って、クロノは左瞼の上からの流血を軽く拭う。

目の上の額、額には筋肉が少なく、小さな傷でも派手に出血して止まり難い。

クロノ顔の左半分、それは殆ど赤い血で覆われていた
プレシアの攻撃によって発生した瓦礫によっての傷だった

そして、メキリとクロノの体中の骨が軋んだ
麻酔の影響で肋骨の痛みは無いが、それでも痺れるような激痛だ……かなりのダメージを負った様だ。


そして次の瞬間、他の三つの瓦礫は音を立てて崩れて、その三人も姿を現した。


「……中々しぶといわね」

「……か…あ、さん……」


瓦礫の山から飛び出して、床に降り立ったフェイトは母と向き合う

既にバリアジャケットの至る所は破損していた、嘗てのプレシアによる虐待の傷が開いて
四肢からはその所々が青痣と火傷、そして鮮血が流れていた。


「……ユーノくん、血が! それに、その腕……!!!」

「大丈夫、大した怪我じゃないっ」


なのはが何かに気付いた様に声を上げて、ユーノはそれを力強く否定する

ユーノの右腕、肩口から出血して、その腕は痛々しく紫に腫れていた……恐らく、完全に骨折しているだろう
そしてその指、中指から小指にかけてのその指は、僅かにその角度がおかしかった

恐らく、こちらも完全に骨が折れているだろう。


「これは僕の過失だ、なのはが気にする事じゃない」


良く見れば、ユーノのバリアジャケットは破損だらけで、体中の至る所が青痣だらけ
背中に至っては肌がほぼ剥き出し状態だった
そして右の頬には大きく赤い斜の線が描かれて、そこからボタボタと出血をしている


そしてそれに比べて、なのはは無傷に近い
砲撃直撃のダメージで体が痛むが、それだけだ

そしてなのはとユーノは、ほぼ同じ位置からの瓦礫から飛び出した。


つまり、ソレは



「……まさかユーノくん、私を庇って……!!!」

「大丈夫、発掘していれば良くある傷さ」



そう言って、余裕のつもりなのだろうか
ユーノはなのはに微笑むが、その笑顔は明らかに激痛に耐えながらのぎこちない笑み

その笑みが、なのはの心を一層深く抉った。


「……ぐ! ぅ!!」

「アルフ! 大丈夫!!」


そして次の瞬間、アルフが苦悶の表情で膝をついた
元々アルフは、プレシアによって負った傷がまだ完治していなかった。

完治してない傷に、更に同じ電撃系の攻撃を喰らったのだ

アルフはその肌の所々で重度の火傷を負い、体中に焼けるような激痛が走っていた。


強化状態のバリアジャケットで、この惨状
恐らく平常のバリアジャケットのままだったら、既に戦闘不能状態に陥っていただろう。



「チェックメイトね。貴方達はもう詰んでいるわ」



その現状を見て、プレシアは言う


「貴方達では、私には勝てない。大ホールで戦っている三人も、直にウルキオラに斃される
私にすら勝てない貴方達が、私とウルキオラを二人同時に相手して……果たしてどの程度の勝算があるのかしら?」


クククと、口元を歪に歪めて、魔女は目の前の五人に尋ねる



「そして私は取り戻す……この闘いに『勝って』! 忘れられた都アルハザードへ旅立ち! アリシアを取り戻し! 親子二人の時間を取り戻す!!!
こんな筈じゃなかった未来を!! こんな筈じゃなかったこれからを!!! この手で取り戻すのよおおおぉぉぉ!!!」



両腕を大きく掲げて、プレシアは宣言する
狂喜に歪めてその表情で、絶対の自信と共に、その勝利を宣言する。

絶対の勝利
そして絶対の敗北

それはもはや覆せない、絶対の構図だった。




「……巫山戯るな……!!!」




そして、そんな構図の中で

その少年は呟いた。


「……クロノくん?」

「……クロノ……」


その少年の呟きを聞いて、なのはとユーノはクロノを見る
そしてそんな二人に釣られて、アルフとフェイトもクロノを見た。



「世界はいつだって! 『こんな筈じゃない』事ばっかりなんだよ!!!」



ピチャリと、顔面の血が振り撒かれる程の想いを込めた言葉で、クロノが叫んだ。



「ずっと昔から!! いつだって! 誰だって!! そんな事ばっかりなんだ!!!」



それはクロノが覚えている僅かな記憶

僅かな記憶の中で、どこかの場所で泣いている、母の姿

自分の前では必死に隠して、自分には見えない所で流していた母の涙



「こんな筈じゃない現実から! 逃げるか、それとも立ち向かうかは、個人の自由だ!!!
だけどそのために! 自分の勝手な悲しみに! 多くの無関係の人間を巻き込む権利なんか、何処の誰にもありはしない!!!!」



故に、クロノは認められなかった

プレシアの行動が認められなかった
自分の個人の感情だけで、多くの命を危機に晒そうとするプレシアは許せなかった



しかし



「それで終わり?」



魔女はその言葉を正面から受け止めて

その上で返した


「……っ!!!」

「クロノ執務官、貴方は強者と弱者の違いを知っているかしら?」


クロノの視線を真っ向から受け止めて、更にそれ以上の力を視線に込めてプレシアは言う


「知らないのなら教えて上げるわ。
運命に流される存在が弱者、運命を掌握する存在が強者……これが、この両者の違いよ」


その表情は、先ほどまでとは違う
その表情は歪んでなく、口元は引き締まり、真面目かつ真剣な表情だった


「そう、貴方の言った通り……世界はね、いつだって、誰だって、こんな筈じゃなかった事ばっかりよ
だからソレを受け入れるしかない、皆そうだから、いつだってそうだから、受け入れるしかない
皆が同じだから、受け入れるしかない……要は、そういう事でしょう?」

「………………」


クロノは肯定しなかった、だが否定もしなかった
そしてプレシアはクロノの沈黙という答えを聞いた上で



「これ以上に無い、典型的な弱者の思考ね。それは負け犬の発想よクロノ執務官」

「……な!!!」



プレシアは、これ以上にない答えでクロノの答えを否定した



「奪われたくないのなら、奪わせない……奪われたのなら、取り返せ
それが不可能なら可能に変えろ……それが運命なのなら運命を超えろ
それが天の意思なのなら天を堕とせ……それが神の命なのなら神を殺せ」



それは怨念にも満ちたプレシアの言葉
言霊と言っても過言では無い程の想いが込められた、プレシアの魂の言葉


「死者の蘇生は出来ないと、誰が証明できた?」


プレシアは語る


「失われた過去は取り戻せないと、誰が立証できた?」


魔女は語る



「空を飛びたいと願った者がいたから、航空機は生まれた
 海を渡りたいと願った者がいたから、船は生まれた
風の様に早く走りたいと願った者がいたから、車や鉄道は生まれた」



魔女は、説く



「命を殺めたいと思った者がいたから、武器は生まれた
 命を救いたいと思った者がいたから、医学は生まれた」



そして魔女は証明する


「常に世界は、歴史は、人間によって造られてきた
偉人と呼ばれる数々の歴史の強者は、その悉くが不可能を可能にしてきた」


その事実を、その真実を、魔女は証明する


「世界とは、歴史とは、常に人間によって造られてきた……そしてその数だけの、可能とされた不可能が存在した」


それを、魔女は告げる


「故に可能。死者の蘇生は可能……今の『不可能』は、『可能』に変える事が可能……それを、幾多の世界が、数多の歴史が、ソレを証明している」


故に、魔女は止まらない




「人の可能性に限界はない、人間は無限の可能性を持っている」




故に、そこにいる誰もが、何も言えない

そのプレシアの言葉が、姿が、気魄が、在り方が、そこにいる全員から反論という選択肢を奪っていた



「納得してくれたかしら? その沈黙は肯定の意と受け取って良いのかしら?」



魔女は五人を見て、改めて告げる

そして、そこに居る誰もが何も言えなかった




「さて、それじゃあ終幕と行きましょう」




プレシアは五人に杖を向ける


「人間には無限の可能性がある……それは即ち、今の状態でも貴方達は私に勝つ事が可能という事だものね?」


勝ち誇った様な笑みを浮べて、プレシアは五人に告げる

杖の先に、魔力が収束される

紫電が奔り、それは必殺の唸りを上げてそこに鳴動する




「死ね」




魔女が呟く


そして魔女は、血の塊を吐き出した。














続き













あとがき
 最初に一言、前回の投稿の後に皆さんからの沢山の感想を頂きました。
そしてその感想の中には、「未だに主要キャラが無傷なのはおかしい」と多数の意見が寄せられてきました

ぶっちゃけ十中八九、この手の感想は来ると作者は予想していました

これに関しては、作者は自分のプランとプロットで話を進めているので、無印編の最後まで見ていただいて、その上での評価をお願いします

ただ一つ言ってしまえば、作者的には「キャラ補正」「ご都合主義」これ等を実行するつもりは今の所ありません(皆さんからの視点ではそう見えるかもしれませんが)

そして余程の事が無い限り、自分のプロットとプランを崩すつもりはありません

ただ自分の考えとしては、自分は自分が描ける最高の作品を描いて、皆さんに心から楽しんで貰いたいと、そう思って執筆しております

その部分だけは、皆さんにはご理解をして頂きたいと思います。



それでは、次回に続きます。







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