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No.17010の一覧
[0] リリカルホロウA’s(リリカルなのは×BLEACH)[福岡](2011/08/03 21:47)
[1] 第壱番[福岡](2010/04/07 19:48)
[2] 第弐番[福岡](2010/03/07 06:28)
[3] 第参番(微グロ注意?)[福岡](2010/03/08 22:13)
[4] 第四番[福岡](2010/03/09 22:07)
[5] 第伍番[福岡](2010/03/12 21:23)
[6] 第陸番[福岡](2010/03/15 01:38)
[7] 第漆番(補足説明追加)[福岡](2010/03/17 03:10)
[8] 第捌番(独自解釈あり)[福岡](2010/10/14 17:12)
[9] 第玖番[福岡](2010/03/28 01:48)
[10] 第壱拾番[福岡](2010/03/28 03:18)
[11] 第壱拾壱番[福岡](2010/03/31 01:06)
[12] 第壱拾弐番[福岡](2010/04/02 16:50)
[13] 第壱拾参番[福岡](2010/04/05 16:16)
[14] 第壱拾四番[福岡](2010/04/07 19:47)
[15] 第壱拾伍番[福岡](2010/04/10 18:38)
[16] 第壱拾陸番[福岡](2010/04/13 19:32)
[17] 第壱拾漆番[福岡](2010/04/18 11:07)
[18] 第壱拾捌番[福岡](2010/04/20 18:45)
[19] 第壱拾玖番[福岡](2010/04/25 22:34)
[20] 第弐拾番[福岡](2010/05/23 22:48)
[21] 第弐拾壱番[福岡](2010/04/29 18:46)
[22] 第弐拾弐番[福岡](2010/05/02 08:49)
[23] 第弐拾参番[福岡](2010/05/09 21:30)
[24] 第弐拾四番(加筆修正)[福岡](2010/05/12 14:44)
[25] 第弐拾伍番[福岡](2010/05/20 22:46)
[26] 終番・壱「一つの結末」[福岡](2010/05/19 05:20)
[27] 第弐拾陸番[福岡](2010/05/26 22:27)
[28] 第弐拾漆番[福岡](2010/06/09 16:13)
[29] 第弐拾捌番<無印完結>[福岡](2010/06/09 23:49)
[30] 幕間[福岡](2010/08/25 18:28)
[31] 序章[福岡](2010/08/25 18:30)
[32] 第弐拾玖番(A’s編突入)[福岡](2010/08/26 13:09)
[33] 第参拾番[福岡](2010/10/05 19:42)
[34] 第参拾壱番[福岡](2010/10/21 00:13)
[35] 第参拾弐番[福岡](2010/11/09 23:28)
[36] 第参拾参番[福岡](2010/12/04 06:17)
[37] 第参拾四番[福岡](2010/12/19 20:30)
[38] 第参拾伍番[福岡](2011/01/09 04:31)
[39] 第参拾陸番[福岡](2011/01/14 05:58)
[40] 第参拾漆番[福岡](2011/01/19 20:12)
[41] 第参拾捌番[福岡](2011/01/29 19:24)
[42] 第参拾玖番[福岡](2011/02/07 02:33)
[43] 第四拾番[福岡](2011/02/16 19:23)
[44] 第四拾壱番[福岡](2011/02/24 22:55)
[45] 第四拾弐番[福岡](2011/03/09 22:14)
[46] 第四拾参番[福岡](2011/04/20 01:03)
[47] 第四拾四番[福岡](2011/06/18 12:57)
[48] 第四拾伍番[福岡](2011/07/06 00:09)
[49] 第四拾陸番[福岡](2011/08/03 21:50)
[50] 外伝[福岡](2010/04/01 17:37)
[51] ???(禁書クロスネタ)[福岡](2011/07/10 23:24)
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[17010] 第弐拾番
Name: 福岡◆c7e4a3a9 ID:4ac72a85 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/23 22:48




『ククククク! クハハハハハ!!! アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!』




嗤う、魔女は嗤う

可笑しくて堪らない

滑稽で堪らない

そんな風に顔を醜悪に歪ませて、プレシアは歯車が狂ったかの様に大声で嗤った


だから、気付いてしまった

フェイトは、それで悟ってしまった。


ソレが、事実であると言う事を

母が、自分を殺そうとしたのだと言う事を


フェイトは、これ以上に無い程に理解してしまった。




『フェイト……貴方は私にとって、出来損ないの人形だったわ』

「……!!!?」




ザクリ、と


魔女の嗤い声や止み、言葉という名の刃がフェイトに放たれた。



『フェイト……貴方は考えなかった? 
アリシアを失ってアリシアを求めた私が造った貴方に、どうして『アリシア』と名づけなかったのか』

「……ぁ……」



ザクリ、ザクリと

更にフェイトのその心に、言葉という名の悪意が、悪意という名の刃が放たれて
フェイトの心を刻み、貫いていく。



『簡単な事よ。貴方が出来損ないの不良品だったからよ』

「……ぁ、ぁ……ぁ」



魔女の言葉が、投げられる。



『折角アリシアの姿と記憶を上げたのに、役立たずで使えない人形だったから……
私はねアリシアを汚さない為に、貴方から『アリシア』と名づけられた記憶を削除したのよ』

「……やめて、よ」



お願いだから、止めて
そんな事は聞きたくない

そんな意思を込めてなのはが呟くが、魔女は止まらない

言葉という名の悪意が、悪意という名の刃が投げられる。



『アリシアはね、もっと明るく笑ってくれた。アリシアは偶に我侭を言ったけど、最後には私の言う事をちゃんと聞いてくれた
私はね、そんな愛らしかったアリシアの記憶を汚したくなかったから……貴方からアリシアという名前を消したのよ』



放たれる

突き刺さる

フェイトの心に、幾十幾百の刃は突き刺さる。


『所詮、貴方は人形。アリシアが蘇るまで私が慰みで使う……それしか利用価値の無い、出来損ないの不良品』

「……ぁぁ、ぁ、あ、あ……!!」



……ビシリ、と……

ソレに、罅が入る


壊れる

ソレは、壊れる

ソレは嬲られて蹂躙される

悪意と言う名の刃で切り裂かれて、絶望と言う力で引き裂かれる。


『フェイト、貴方に一つ良い事を教えて上げる。私はね、貴方を造り出してから』

「もう止めて! もう止めてよおぉ!!!」


懇願にも似た、そんななのはの声がプレシアに放たれるが

それは、僅かな意味も無く




『ずっと貴方の事が、大嫌いだったのよ』

「……!!!?」




だから、壊れた

その心は、その瞬間を持って跡形も無く確実に壊された。


壊された……筈だった






「それは嘘ですね、プレシア」





繋ぎとめた

その一言が、僅かに砕けかけたフェイトの心繋ぎとめた。













第弐拾番「決戦開始」













「……リニ……ス?」

「プレシア……自分で言っていて気付きませんか? 自分の言葉の矛盾が?」

リニスは、射抜く様な視線でディスプレイ越しのプレシアの瞳を見る。
プレシアはそんなリニスの視線を受け止めて、僅かに眉間に皺を寄せて


『どういう意味かしら? それとも聴覚機能に異常が出たのではなくて? 後で検査する事をオススメするわ』

「お気遣い、ありがたく頂戴しておきます……ですが、今はそれは置いておきましょう
プレシア、もう一度貴方に言います……貴方の言葉には、矛盾している部分があります」


それは、今までリニスが抱えていた疑念
ここで明かしていない、プレシアの『真実』を加味した上での疑念だった。


「……今までの、フェイトに対する全ての暴言。百歩譲ってソレが貴方の正直な気持ちだとしましょう
貴方が心の底から、アリシアの事を最愛の存在と愛していて……フェイトはその対極の存在だとしましょう」

『…………』


プレシアは言った。

フェイトは人形
フェイトは役立たず

フェイトは不良品
自分はフェイトの事がずっと大嫌い


だから、リニスは思った。




「じゃあ何で、そんな『大嫌いで役立たずな不良品』の肉体を『最愛の存在』であるアリシアの肉体にしようとしたのですか?」

『……!!!?』




リニスは知っている
アリシアを蘇生させる上での、『フェイト』がアリシアの器に選ばれた理由を知っている

だから、リニスは思った
そのプレシアの『真実』を知っているからこそ、リニスは思った。


「アルフから、今までの貴方のフェイトの扱いを聞いています……貴方が今まで、何度も何度もフェイトの体を傷付けて来たのを知っています
貴方にとって、フェイトがフェイトである以上……その精神や魂は勿論、肉体すらも嫌悪の対象だったと言う事に疑いの余地はありません」

『……何が言いたいの?』

「少なくとも、私が貴方だったらそんな今まで自分が傷付けた肉体……
それも心の底から大嫌いな、役立たずで不良品と思っている存在の肉体
普通はそんな存在の肉体を、最愛の存在の肉体にしようとするでしょうか?

少なくとも、私はそうはしませんね……例えソレが、アリシアの『器』がフェイトでなくてはならない『理由』があったとしてもです」


アリシアの魂は、フェイトの肉体でなければ受け入れられない

そして、プレシアは病の影響で新たな肉体を用意する程の時間を残されていない
器は一つしかない、代わりを用意するのも難しい

だから、フェイトの肉体でなければならない
大嫌いなフェイトの肉体だがしょうがない、ソレしかないのだからしょうがない


『ええ、確かにそうね……だから、私はフェイトで『妥協』したの。
使える器が一つしか無いのなら、こちらが妥協するしかないじゃない』


確かに、それは辻褄が合っている様に見える

だが、何処かソレは不自然に思えたのだ


「妥協……その単語ほど、貴方に不釣合いな言葉があるとは思えませんね
貴方が妥協? それは無い、絶対にない、まず有り得ない」


もしも、これがプレシアではない、他の誰かであったらリニスはソレを考えなかっただろう
相手がプレシアだから、自分が良く知るプレシアだから、リニスはその一握りの可能性に気付いた。


『随分な言い様ね、何を根拠に貴方はそう思っているのかしら?』


プレシアは僅かに眉間に皺を寄せて、鷹の様に眼を鋭くさせて、刃の様な視線でリニスを射抜く
そしてリニスは、その手札を切った




「理由は簡単です。何故なら『アリシア』が死んだあの事故について、それは自分が折れてしまったから……
『妥協』してしまったから起きたのだと、深く嘆いていたじゃないですか」

『……!!!』




リニスは知っている、その事実を知っている。

自分がプレシアに破棄される切っ掛けとなった出来事、自分がアリシアの遺体を見てしまい
感情的になったプレシアとの間に一瞬完全に繋がった精神リンク

その時、流れて来たから知っている。

プレシアが如何にアリシアの死に悲しみ、傷つき、嘆いたのか良く知っている。


そして、勿論その死因となった原因についても知っている。



「あの『ヒュードラ』の事故は、回避できた筈の事故だった、アリシアの死は回避できた筈の死だった
貴方が当時の上層部にその危険性と安全面の抗議を続けていれば、貴方が『妥協』さえしなければ、それは本来防げた筈の事故だった

ずっとずっとそんな風に……貴方はずっと後悔していたんじゃないですか。
自分の妥協がアリシアの死を生んだと、ずっと貴方は後悔していたんじゃないですか」

『…………』


リニスは知っている

もし自分があそこで折れなければ、アリシアは死なずに済んだんじゃないか?
プレシアはそれこそ、我が身を引き裂きたくなるほど苦しみ、後悔していた事を知っている


「だから、有り得ない。例えソレしか無くても、時間が無くても、貴方が妥協する事なんて有り得ない
増してや、今回のこの一件は最愛の娘の新たな肉体を求めての事……だから、尚更有り得ない!
妥協でアリシアを失った貴方が、妥協でアリシアの肉体を選ぶ事は先ず有り得ない!!!」

『……言ってくれるじゃない。そうね……確かに、私らしくは無かったわね。柄にもなく焦っていたのかしら?
他が無いからと言って……そんな傷物の人形をアリシアの肉体にしようとしていたなんて、我ながらどうかしていたわ』


だが、プレシアは崩れない
だが、リニスはまだ止まらない

まだ、手札はある

プレシアを突き崩せる手札はある
だからリニスは、その手札を更に切った。



「では質問を変えましょう、なぜ最後の瞬間にフェイトを褒めたのですか? フェイトをその手で抱きしめて、その存在を認めるような発言をしたのですか?
貴方なら、そんな手段を取らなくても簡単にフェイトをアリシアの器にする事が出来た筈です」



それは、フェイトとアルフの話を聞いて思い浮かんだリニスの疑問だった。

今まで、プレシアは何度もフェイトに虐待をしていた。

そして、フェイトは一切ソレに逆らわなかった
母の悪意と暴力によるソレを、フェイトは今までずっと受け入れていた。

だから、必要は無かった筈


そんな回りくどい方法を、選ぶ必要はなかった筈なのだ。


「適当に呼びつけて、適当な理由で睡眠薬を飲ませる。
何かの検査だと言って、フェイトを研究室に連れ込んでソレを行う。
実験または研究を手伝って欲しいからと言って、フェイトを騙してソレを実行する」


適当にリニスは自分が思い付いた方法を挙げてみる
使い魔の自分でさえ、これだけの方法が思い付くのだ

だから、プレシアの行動に違和感を覚えたのだ。


「貴方にはそれこそ無限に近い手段と方法が合った筈、では何故わざわざ回りくどい方法を取ったのですか?
フェイトを褒めて、喜ばせる……そんな方法を取ってしまったが故に、貴方の真意にアルフは気付いて、貴方は失敗した」


今回プレシアが取った手段以上に、楽で安全で確実性のある策はそれこそ無限にあった筈

だが、ソレをプレシアは取らなかった。


『……そうね。アレは我ながら悪手だったと反省しているわ』

「らしくない……余りにも、貴方らしくない失敗です。
貴方なら、真っ先にその可能性に気付いていた筈です。精神リンクによってフェイトの異常を、アルフが気付く
私という使い魔と、数年間共に過ごしていた貴方ならその可能性に気付いていた筈です」


気付かない筈が、ないのだ
プレシアは過去の大きな、回避できた筈の大きな失敗している。

だから、危険を含む可能性は徹底的に排除する筈

だから、そんなプレシアだからこそ…気付かない筈がないのだ。


「……だから、こう考えれば……貴方の行動は、辻褄は合います」


故に、リニスは結論付けていた



「フェイトを褒めた事も、その存在を認めた事も、全て貴方の本心。
貴方は、確かにフェイトを殺すつもりだった……だから、伝えたかった。その前に伝えておきたかった
フェイトが『フェイト』で無くなってしまうから、貴方はフェイトが『フェイト』である内にその気持ちを伝えておきたかった」

『夢物語ね、人形を愛でる趣味は私には無いわ』

「じゃあ説明してください。
どうして安全で確実な策を選ばす……貴方が人形と言って嫌うフェイトを喜ばせてまでリスクのある方法を選らんだのか……
私達が心から納得する理由を、説明して下さい」

『……人の揚げ足を取るのは随分上手くなったようね、リニス。で、貴方は何をもってそんなふざけた可能性を考えたのかしら?
それはただの貴方の推測でしょ? 根拠も証拠もない、口先だけの夢物語なんてモノに説得力はないわよ?』


「根拠はあります。貴方がフェイトという存在を認めたという根拠なら」



鼻で笑いながらプレシアはリニスの言葉を一蹴して、そのプレシアの言葉を更にリニスは返す。

そしてリニスは、ソレを口にした。




「何故なら、フェイトが居たから貴方はウルキオラと出会い、その『希望』を手に入れたからです」

『……!!!!?』




その一瞬、プレシアの目は僅かに見開いて
その瞬間を、リニスは見逃さなかった。


今のプレシアは、嘗てのプレシアからは考えられない程の活力に満ちていた
それは、リニスの当時の記憶と比較しても明らかだった。


なぜなら、今のプレシアには希望があるから

アリシアの魂と、その蘇生方法と言う希望を持っていたからだ


では、どうしてプレシアはそれらの希望と巡り合えた?
それは、ウルキオラがプレシアとアリシアを巡り合わせたからだ。


では、どうやってプレシアはウルキオラと巡り合えた?
それは、フェイトがウルキオラとプレシアを巡り合わせたからだ。


リニスはその事の経緯を大凡アルフから聞いている、そしてプレシアとの僅かな精神リンクを経由してその事情を知っている。



「今の貴方は、希望を持っている! 可能性を持っている! 
そしてその始まりは、貴方がウルキオラと出会い、希望を知りその可能性を知ったから!
フェイトが貴方とウルキオラを巡り合わせたから! 今の貴方はある!!!」



全ての始まりは、フェイトとウルキオラが出会ったからだ。

フェイトがウルキオラに名乗ったからこそ、ウルキオラはアリシアとフェイトの繋がりに興味を持った。

フェイトがその事をプレシアに報告したからこそ……プレシアはウルキオラの存在を知った。


そして、フェイトがウルキオラとプレシアを巡り合わせたからこそ……プレシアは、アリシアと再会できた。



「違うとは言わせません! 貴方が持っていたモノが貴方の『希望』なら、その始まりは紛れも無くフェイトです!!
貴方のその希望の根源には、フェイトの存在が……貴方の娘、フェイト・テスタロッサの存在があるんです!!!」



フェイトがいたから、プレシアの希望は生まれた

フェイトがいたから、プレシアは希望を手に入れる事が出来た

フェイトがいたから、プレシアはアリシアと再会できた

フェイトがいたから、プレシアはアリシアを抱きしめる事が出来た


それは、つまり



「フェイトがいたから、貴方は幸せになれた! これは私の夢物語でも口先だけの出任せでもない!
これは純然たる事実です! それすらも否定するのなら、是非してみて下さい!
フェイトの存在を否定してみて下さい! フェイトがもたらした貴方の希望と幸せを否定してみて下さい!
『フェイトなんか造らなければ良かった』と、一言でも良いからその口で言ってみて下さい!!!」



リニスは、考えていた。

もしも、フェイトが最悪の場合で真実を知った時に、どうやったらフェイトを守れるか
どうやったら、壊れたフェイトの心を救えるか

だから、その結論に至った



プレシアによってもたらされる絶望から守れるのは、プレシアによる希望だと。



何か一つでも良かった

プレシアが、何か一つでも良いからフェイトの存在による『何か』を認めている
それを、プレシアに認めさせる……それしか、思い付かなかった。


これは、リニスにとっても博打だった

もしも、ここでプレシアが更に切り返して来たら……もう、リニスには手札が無かったからだ。


出し切った
リニスはその手札の全てを出し切った。


今まで情報の全て、アルフからの情報とフェイトからの情報
そして、プレシアからの情報


この僅かな時間で集めた情報から汲み取った断片的な事実を、継ぎ接ぎだらけの様な手札を

フェイトが最悪の形でその真実を知っても、何とかその心を繋ぎとめられる様にリニスが必死の想いで揃えた手札を

リニスは、この僅か数分のやり取りの中で全て出し切った。





『……もう良いわ、これ以上貴方達と話しても不愉快なだけだわ』





冷淡な声が響いた。

ディスプレイの魔女は、ソレを掲げた
螺旋の軌道を描きながら空を舞う、十一個の蒼い宝玉

そして次の瞬間、エイミィが何かに気付いた様に声を上げた。



「時の庭園から、魔力反応多数!!」

「……アレは、ジュエルシード!!」

「プレシア・テスタロッサ! 何をするつもりですか!!!?」


クロノが驚愕の声を上げてソレに気付いて、リンディもその余りにも突然の行動に対して声を荒げて尋ねる。

そしてその十一個の蒼い宝玉は、共鳴する様に唸りを上げて輝きだした。



『こうなってしまった以上、アリシアの蘇生は難しい……だから、私達は旅立つ事にしたのよ!
忘れられた都……『アルハザード』へね!!!』



プレシアは両手を空高く掲げて、声高らかに宣言する。



『光栄に思いなさい! このプレシア・テスタロッサの偉業をその眼に出来る、その歴史の証人になれる事を光栄に思いなさい!!!』



十一個の蒼い宝玉は、更にその輝きを増していく
そしてソレらは互いに共鳴し合ってその力をグングンと高めていき



そしてそれは起きた。




「次元震です! 中規模以上!!」
「振動防御! ディストーション・シールドを展開して!!」

「ジュエルシード、暴走発動!!次元震、更に強くなります!!」
「転送可の距離を維持したまま、影響の薄い空域に移動を!!」

「了解!!」

「規模、更に増大! このままでは次元断層が!!」


その場が、一瞬にして混沌となる。
その異常事態と危険現状を知らせる報告が矢継ぎ早にリンディの元に届けられて、
リンディはその一つ一つを迅速かつ的確に処理をしていく。


「次元震、更に増大!」

「この速度で震度が増加していくと、次元断層の発生予測値まで、あと六十分足らずです!!」


だが、間に合わない。

その進行速度は、リンディの処理能力の上を行っていた
そしてその現状を見て、クロノが叫んだ。


「止めるんだプレシア・テスタロッサ! アルハザードなんてモノは御伽噺だ!! そんな事をしたって、失った過去は取り返せない!!」

『いいえ! アルハザードは実在する!! そして私はそこで全てを取り戻す!!!
アリシアを蘇らせて! 過去を取り戻して! こんな筈じゃなかったこれからを取り戻す!!』


そのプレシアの言葉を聞いて、リニスは声を荒げてプレシアに叫んだ。


「プレシア、止めるんです!! このままでは、次元断層すらも発生しかねません!!!
貴方がソレを起こすと言うのですか!!? あの悲劇と同じ事を! 最愛の娘を奪ったあの悲劇と同じ事を! 貴方がその手で引き起こすと言うのですか!!!」

『アルハザードの道は次元の狭間にある! 次元と空間が砕かれた時、その時アルハザードの道は開かれる!!!
だからその為には、次元断層を引き起こす事が必要なのよ!!!』


その顔は憤怒だろうか、それとも愉悦だろうか
その表情は狂喜だろうか、それとも自棄だろうか

混沌を絵にした様な、歪みきった表情で、怨念の塊の様な声でプレシアが語る。

そして、そのプレシアの言葉を聞いてクロノは憤怒の表情で声を上げた。


「巫山戯るな!!! 次元断層を引き起こす!!? そんな事をすれば、何億の命が失われるか解かっているのか!!!」

『それが何? こんな世界、私には何の価値もないわ……さて、そろそろ潮時ね。
この世界とはコレでおさらば、貴方達はソコでゆっくり眺めていると良いわ……
このプレシア・テスタロッサが、その悲願を達成する様をね!!!
フフフフフ! アハハハハハ!! アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」


魔女は嗤う。

己の勝利に酔う様に、既に勝ちを確信したかの様に、狂った様に嗤い声を上げる。

そしてその嗤い声を最後に、その通信が完全に切れた。


「通信、切れました!」

「武装隊の応援編成部隊の用意と、その転送準備を! 現地へ赴いて元凶を直接叩きます!!」


リンディは直ぐに今後のプランを頭の中で組み立てて、指示を飛ばす。
そして更にそこから動き出す者がいた。


「リンディ艦長、僕も現地に向かいます!!」

「……行けるのですか?」

「緊急の事態に備えて、船医に頼んで麻酔の用意は既にして貰っています。
それに痛み自体もある程度落ち着いています……それに、今はこの程度の怪我を気にしている場合ではありません」


リンディの問いに対して、クロノは確かな意志を込めた視線と言葉でそれに答えた
そして、リンディはその答えに頷いて


「……解かりました。なのはさん、ユーノくん……クロノのサポートをお願いできるかしら?」

「はい!」

「分かりました!!」


なのはとユーノも、同時に頷く

そしてクロノに視線を送り、クロノも頷いた


「リーゼ! 出動の準備は!!?」

「とっくに出来ているわよ!」

「こっちはいつでもOKよ、クロスケ!!」


返事は直ぐに帰って来た

二人もクロノは既にその準備を終えていて、クロノの問いに対して力強く頷いて答えた。


「よし、それじゃあ四人とも直ぐに転送ポートに……」


直行してくれ

クロノがそう言おうとした、その瞬間だった







「……私も、行きます……」







その少女が、名乗りを上げた。

五人の視線が、その少女に集まる



「……フェイトちゃん」

「私も……現地へ行きます、そして母さんを止めます」



フェイトは告げる、自分の意思をそこにいる全員に伝える
そしてそんなフェイトを真正面から見据えて、クロノは尋ねた


「……君は、自分の言っている事の意味は分かっているのか?
僕達はこれから、君の母親を止める為に現地へ赴くんだ……君は、君の母親と、闘う覚悟はあるのか?」

「あります。そして、私も母さんを止めたいです」

「……フェイト」


フェイトの真正面から、クロノの視線を受け止める
そしてその背中を、リニスとアルフは見つめていた



「……私は、今日……本当に、色々な事を知りました。自分が知らない事を、沢山知りました……」



フェイトは、今日一日だけで数年分の激動を味わった様な気分だった。

色々な事を知った

自分が知らない事実を知った

だから思った。



「……私は、今まで何も知らなかった……母さんの事も、アリシアの事も……本当に何も知らなかった」



だから、分かった



「私達の全ては、まだ何も始まっていなかった」



だから、フェイトは決めた



「……終わり、たくない……」



だから、フェイトは闘う事を決めた



「私はこれで、終わりになんかしたくない!!」



だから、フェイトは頭を下げた
クロノ達に向かって、まるで土下座をする様に深く頭を下げた



「お願いです!! 私も一緒に連れて行って下さい! 私は母さんを止めたい!
私はやっぱり、今でも母さんの事が大好きだから! だから母さんを止めたい!!
だからお願いです!!! 私も一緒に、連れて行って下さい!!!」

「……フェイトちゃん」



それは必死の懇願だった
そしてそんなフェイトに続いて、更に二人がフェイトに並んだ。



「私も、プレシアを止めたい……嘗てプレシアの使い魔だった者として、主の犯そうとしている罪を止めたい
それに……プレシアに聞きたい事が、少し増えました」

「あたしもね。あの鬼ババは、一発思いっきりブン殴ってやらないと気が済まない……だから、あたしも連れて行って欲しい」



そして二人も、フェイトと同じ様に深く頭を下げた
そしてそんな彼女等を見て、その声は響いた。


「クロノ執務官、彼女たちの同行を許可します。現地までの転送をお願い」

「……良いのですか?」

「今は少しでも、多くの戦力が必要です。協力する理由は有っても断る理由は無いでしょう」

「……解かりました」


クロノは頷いて、その同行を許可する。

準備は整った

戦力は揃った


さあ、行こう


全ての戦いを終わらせる為に!

全ての決着をつける為に!!















「……さて、撒き餌はあんなもので良いわね」


時の庭園の玉座の間にて、確認する様にプレシアは呟く。



「……ぐ!! ぅっ!!!」



プレシアはその椅子に座り、そして胃が軋んで咳き込んだ
口元を手で押さえて咽る様に咳き込んで、赤い雫が指の間から流れてきた。


「……ち、ぃ……流石に、広域次元魔法二連発は、体に無理があったようね」


ボタボタと赤い液体は床に落ちて、赤い水溜りを形成していく。

口元の血を拭って、そしてプレシアは胸元のプレートのスイッチを入れる
ジュエルシードを利用した、生命増幅装置だ。

プレートに埋め込まれた宝玉は蒼く輝いて、プレシアの体にはエネルギーが巡って活力が満ちてくる。



「……リニス、あの不良品が……言うに事欠いて良くもまあ、あんな虫唾が走る事を言ってくれたものね」



ギシリと、奥歯を噛み締めながら顔を怒りで歪めて
吐き捨てる様に、プレシアは呟く。


そして、頭を振って直ぐに思考を切り替える。


落ち着け、アレはただの妄言
活きた亡霊の、妄想にも近いただの世迷い事

気にするな、考えるな、それを意識するな
僅かに熱した頭を、プレシアは急速に冷やしていき


頃合を見計らって、プレシアは胸元のスイッチを消した。



「今は、そんな事を考える時じゃない」



今は、闘う時

だから、プレシアはソレを心に刻み込む。



「だから……もう少し、もう少しだけで良い……私の体よ、もって頂戴」



既に賽は投げられた
後は吉と出るか凶と出るか


魔女は、その時を静かに待つ

やがて来るその時に備えて、静かにゆっくり、その力を研ぎ澄ます。















時の庭園・エントランス

その広い玄関部に、多数の魔法陣が浮かび上がって、彼等はそこに転送された


「……ここが、時の庭園?」

「なのは、そこら辺にある穴は『虚数空間』という空間の歪みだ。そこに落ちれば魔法が使えないから気をつけて」


なのはが辺りを見渡しながら呟いて、クロノが床の所々に有る穴についての説明をして

そして、ソレ等は現れた。



「さっそく、歓迎されているみたいだな」



クロノは正面を見据えて言う

彼等の目の前には、多数の甲冑
その手に剣を、槍を、斧を持った、プレシアの傀儡兵

その数は十や二十ではきかない……軽く見積もって、百は優に超えているだろう


「……プレシアの、傀儡兵ですね」

「気をつけて下さい。母さんの傀儡兵はそれ一体で、Aランク相当の戦闘力を有しています」

「しかも、やたら硬いんだよコイツ等」


リニスが敵を見据えて、フェイトが説明して、アルフがその補足をする

入り口でコレだ、恐らく内部はこの数倍の数が犇めいているだろう

だが
それでも、自分達が行う事は変わらない。



「総員、突入だ!!!」

『了解!!!!』



クロノの号令で、そこに居た全員が戦闘体勢に入った
そして自分の達の魔力に反応した傀儡兵も、迎撃体勢に入る


「スティンガー・スナイプ!!!」


青い弾丸が青い閃光となって傀儡を縫っていく
閃光は流星となって、幾多の傀儡兵を次々と貫いて黙らせる


「ヒュウ、やるじゃんクロスケ!」

「ロッテ、余所見しない。命取りになるわよ」


二つの黒い風は、同時に吹き荒れる
ロッテが傀儡兵を四肢を用いて粉砕して、アリアが雨の様な光弾を傀儡兵に撃ち込む


「行きますよ、アルフ!!!」

「了解リニス!!!」


白い影が疾風となって駆け抜けて、白銀の閃光を振り撒いて敵を切り裂く
橙の影が唸りを上げて飛び掛り、両の拳と魔力弾を持って敵を破壊していく



「チェーン・バインド!!!」



ユーノが巨大な魔法陣が形成して、そこから多数の鎖が射出する
十以上の緑色の鎖は幾十の敵を縛り上げて拘束し、その場に縫い止める。



「ディバイン・バスター!!!」

「サンダー・スマッシャー!!!」



そこに、二つの砲門が照準を合わせる
桜色の砲撃と黄金の砲撃が同時に発射され、傀儡兵を塵芥の様に蹴散らした。



所要時間、僅か十数秒
そこに居た二百体近くの傀儡兵を、全て一掃した。

そしてクロノがその事を確かめていると、クロノの元に念話が届いた。



『こちら特別武装編成部隊・部隊長のエル・ロオライトです…クロノ執務官、応答願います』

『こちらクロノ・ハラオウン。そっちはどうだ?』



それは、自分達とは別ルートから突入した武装隊からの念話だ。


『迎撃に来た機械兵と交戦、破壊しました。これより「時の庭園」の動力炉及び中枢駆動炉の制圧に向かいます』

『了解した。こちらは手筈通り、プレシア・テスタロッサの確保に向かう』

『了解、御武運を』


互いの報告を終えて、念話を切る
そして、クロノはそこに居る全員を改めて見る。


「これより、時の庭園内部に突入する! 皆、くれぐれも気を抜かない様に!」


クロノのその言葉に皆が頷く
そして全員は再び駆け出す。


エントランスを抜けて、クロノ達は内部に突入する

そしてその直後、床から、壁から、天井から、幾多の傀儡兵が出現する。


「ディバイン・シュート!!」

「フォトン・ランサー!!」

「ブレイク・インパルス!!!」


しかし、直にコレを迎撃して破壊していく
行く手を阻む敵の全てを、破壊して道を切り開いて行く。


砲弾が

鎖が

拳が

脚が

刀が


迫り来る全ての敵を排除して、その目的地までの道を作り上げていく。



「クロノ執務官、この廊下を抜ければ大きなホールに出ます! そしてそこの中央にある扉を潜り抜ければ
プレシアが居る玉座の間は、目と鼻の先です!!」

「分かった! 皆も聞こえたか!?」

「うん、バッチリ!!」

「クロスケも、中々執務官が板についてきたねー」



そこにいる全員は廊下を走り抜ける
そしてその出口である扉まで走って、大ホールへと突入して















「……漸く、来たか……」
















その男は

そこにいる全員の行く手を、阻む様に立っていた




「……やはり、立ちはだかるか」




その男を視界に納めて、クロノは至って冷静にそう呟く

その顔に、表情に、心に、特に驚きは無い。



なのはも

ユーノも


フェイトも

アルフも


リニスも

リーゼも



そこに居る全員が、その事を受け止めていた




不思議と、驚きはなかった

不思議と、動揺はしなかった



何となく、予感はした

その人物が、そこに居るであろうと感じていた



白い服、白い肌

黒い髪、緑の瞳


頭に張り付いた、角のある奇妙な防具

腰元には、一振りの刀



見間違いは、ない

目の前の光景は、現実



その白い死神は、現実



恐らくは、この案件の解決の為の……最大の難関

圧倒的な実力を持った……紛れも無い、最大最強の敵




「……ウルキオラ……!!!」




クロノが噛み締める様に言う

そして、ウルキオラもそこに居る全員を見据える




「……ここまで来れば、余計な会話は必要ないだろう……」




既に、互いの立場は分かっている


既に、互いの目的は分かっている


既に、互いの在り方は解かっている





故に不要


会話は不要、言葉は不要


あるのは事実のみ


目の前の存在は、斃すべき敵という事実のみ



故に、それで十分





「ここから先は、通行止めだ」





そして死神は、ゆっくりとソレを引き抜く

白銀の波紋を帯びた刀の切先が、その敵へと向けられる

それは、合図

戦闘の開始を知らせる合図






さあ、始めるとしよう


そろそろ、決着をつけよう



死神は刀を抜いて

法と秩序は杖を構える



お互いに、退く理由ない

互いは互いに、負けられない





最終決戦、開始。











続く













あとがき
 分割投稿の後半部を投稿しました! 漸くウルキオラ参戦です!!

さて、続いての本編。今回はスーパーリニスタイム発動です!
今回のリニスとプレシアのやり取りは何回も書き直して、色々矛盾が無い様に仕上げたつもりですが、どうだったでしょうか?
やはり最終決戦はテンポ良く進めたかったので、ここでフェイトが一時離脱してしまうとまた話数が掛かってしまいそうだったので、手早く参戦させました

そして、その甲斐あって漸く最終決戦突入&ウルキオラ参戦です!!

いやー、中々手ごわかった(笑)

次回から、本格的に最終決戦スタートです! ああ、なんか本当に終盤だなーと感慨深くなってしまいます

それでは次回・「最終決戦・ウルキオラVS使い魔連合」に続きます!!!



追伸 最近、友人の一人がこんな事を言っていました

友人3「ギンが普段から眼を瞑ってるのってさ、藍染の鏡花水月対策なんじゃねえの?」

……ヤヴァイ、否定できなかった……(汗)




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