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No.17010の一覧
[0] リリカルホロウA’s(リリカルなのは×BLEACH)[福岡](2011/08/03 21:47)
[1] 第壱番[福岡](2010/04/07 19:48)
[2] 第弐番[福岡](2010/03/07 06:28)
[3] 第参番(微グロ注意?)[福岡](2010/03/08 22:13)
[4] 第四番[福岡](2010/03/09 22:07)
[5] 第伍番[福岡](2010/03/12 21:23)
[6] 第陸番[福岡](2010/03/15 01:38)
[7] 第漆番(補足説明追加)[福岡](2010/03/17 03:10)
[8] 第捌番(独自解釈あり)[福岡](2010/10/14 17:12)
[9] 第玖番[福岡](2010/03/28 01:48)
[10] 第壱拾番[福岡](2010/03/28 03:18)
[11] 第壱拾壱番[福岡](2010/03/31 01:06)
[12] 第壱拾弐番[福岡](2010/04/02 16:50)
[13] 第壱拾参番[福岡](2010/04/05 16:16)
[14] 第壱拾四番[福岡](2010/04/07 19:47)
[15] 第壱拾伍番[福岡](2010/04/10 18:38)
[16] 第壱拾陸番[福岡](2010/04/13 19:32)
[17] 第壱拾漆番[福岡](2010/04/18 11:07)
[18] 第壱拾捌番[福岡](2010/04/20 18:45)
[19] 第壱拾玖番[福岡](2010/04/25 22:34)
[20] 第弐拾番[福岡](2010/05/23 22:48)
[21] 第弐拾壱番[福岡](2010/04/29 18:46)
[22] 第弐拾弐番[福岡](2010/05/02 08:49)
[23] 第弐拾参番[福岡](2010/05/09 21:30)
[24] 第弐拾四番(加筆修正)[福岡](2010/05/12 14:44)
[25] 第弐拾伍番[福岡](2010/05/20 22:46)
[26] 終番・壱「一つの結末」[福岡](2010/05/19 05:20)
[27] 第弐拾陸番[福岡](2010/05/26 22:27)
[28] 第弐拾漆番[福岡](2010/06/09 16:13)
[29] 第弐拾捌番<無印完結>[福岡](2010/06/09 23:49)
[30] 幕間[福岡](2010/08/25 18:28)
[31] 序章[福岡](2010/08/25 18:30)
[32] 第弐拾玖番(A’s編突入)[福岡](2010/08/26 13:09)
[33] 第参拾番[福岡](2010/10/05 19:42)
[34] 第参拾壱番[福岡](2010/10/21 00:13)
[35] 第参拾弐番[福岡](2010/11/09 23:28)
[36] 第参拾参番[福岡](2010/12/04 06:17)
[37] 第参拾四番[福岡](2010/12/19 20:30)
[38] 第参拾伍番[福岡](2011/01/09 04:31)
[39] 第参拾陸番[福岡](2011/01/14 05:58)
[40] 第参拾漆番[福岡](2011/01/19 20:12)
[41] 第参拾捌番[福岡](2011/01/29 19:24)
[42] 第参拾玖番[福岡](2011/02/07 02:33)
[43] 第四拾番[福岡](2011/02/16 19:23)
[44] 第四拾壱番[福岡](2011/02/24 22:55)
[45] 第四拾弐番[福岡](2011/03/09 22:14)
[46] 第四拾参番[福岡](2011/04/20 01:03)
[47] 第四拾四番[福岡](2011/06/18 12:57)
[48] 第四拾伍番[福岡](2011/07/06 00:09)
[49] 第四拾陸番[福岡](2011/08/03 21:50)
[50] 外伝[福岡](2010/04/01 17:37)
[51] ???(禁書クロスネタ)[福岡](2011/07/10 23:24)
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[17010] 第壱拾参番
Name: 福岡◆c7e4a3a9 ID:4ac72a85 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/04/05 16:16




「残念だったな、俺は人間なんかじゃない」



僅かに首元を晒し、胸と首の境目にポッカリと開いたソレを見せ付けて
ウルキオラはそう断言した


三人の少年少女は、目の前に白い魔導師の首元のソレを注視する


それは孔
肉体を貫通し、ポッカリと開いた一つの穴

首、胸……如何な人間……いや生物にとってもそこは重大な意味を持つ部位

少なくとも、目の前の魔導師の様な直径数cm程の孔が、人間の同じ部位に開けば忽ちその命を落とすであろう


つまりは、そういう事
少なくとも、目の前の男は人間ではない



「で、でも!! こうしてお互いに会話できる!! それなら!!」



しかし、なのはは諦めない
確かに驚いた、動揺した、目の前の魔導師の言葉が嘘ではない事も直感で理解した

だから、なのはは諦めなかった
例えば、自分の持つデバイス・レイジングハート
レイジングハートは知能を持ったインテリジェントデバイス、もはや生物のカテゴリに入っていない物

だが、自分はそのレイジングハートと、パートナーの関係を築けている
出会ってほんの二ヶ月程だが、それでも自分達は共に歩めている。


そして、もう一人の魔導師フェイト・テスタロッサ
彼女のパートナー・アルフは使い魔……本人は狼と言っていたから、これも恐らく狼から造られた生命だから人間という訳ではない

でも、彼女達はお互いに解かり合えている


故に、なのはは諦めなかった
寧ろ、よりその言葉には力が宿っていた


だが



「例え人間じゃなくても解かり合える、か?」

「っ!!!」



なのはの言葉は途切れる、その通りだった

目の前の白い魔導師は、なのはが今正に言おうとした言葉そのものだった




「お前は今まで肉を食べた事はあるか?」

「……え?」




突然の質問
しかも今までの流れに余りにもそぐわないその質問に、なのははついその動きが止まる

しかし、ウルキオラは再び言葉を続ける



「牛、豚、鳥、魚……何でもいい、他の生物の肉を食った事はあるか?」

「それは、あるけど……」



何で、突然こんな事を言い出すんだろう

なのははそう思いながら、ウルキオラの質問に答える
そして、ウルキオラはなのはの答えを聞いて、再びなのはに問う



「なら、解かり合えた事はあったか?」

「え?」

「一度でも良い、お前が今までその口で、歯で、舌で、胃で、自らの糧とし、捕食してきた生物と解かり合えた事が一度でも在ったか?
……いや、自分は自分が食する他の生物と心の底から解かり合える……そんな思考を持った事はあるか?」



なのはは、再び沈黙する

この人は何を言っているんだろう? それが、なのはが抱いた率直な感想だった

話の流れもそうだが、目の前の人物(?)の真意が読み取れない
だから、なのはは沈黙した



「おい、質問しているのは此方だ。あるのか? ないのか?」

「……ありません、でも、それが一体なんだって言うんですか!」



少しの間を置いて、なのははそう答える
目の前の人物の真意は見えない、だからこそなのはは正直に自分の答えを口にした




「だろうな。態々食われる身の気持ちになっていては、食事は出来ん」




変わらず無機質な響きを纏った言葉が、なのはに届く
それに対して、目の前の人物はどこか上機嫌な様に思えた

予想通り

それは当然の事

彼は正にそれを表情で、態度で、三人に語っていた


そして、そんな不毛な会話の末に



「……!!!」




……まさか……と




なのはは、

クロノは、

ユーノは


その可能性に、気付く



……まさか……真逆、マサカ、まさか!?……




「やっと解かったか、存外鈍いな」




三人の頭に過ぎった、一つの可能性

目の前の人物の正体

目の前の人物が語った、余りにも場違いな無意味な言葉


故に

三人は、その答えに辿り着いた






「その通りだ。俺の食物は、お前ら人間だ」






まるで詠う様に、男は告げる




「「「……っ!!!」」」

「とは言っても…欲望の儘に見境無しに人間を襲って喰らう品性下劣な獣とは一緒にするなよ、非常に不愉快だ。
少なくとも、俺はそういう奴等とは違う」



そして再びウルキオラは、なのはに視線を定めて



「そこのガキ、お前の言った事は間違っていない。食う者は食われる者の事など考えない、それは真理だ」



驚愕の表情を浮べて、目を見開いて自分を見る少年少女に再び語る



「故に、俺は貴様等人間の事など考えない」



葉は土を喰らう、虫は葉を喰らう、鳥は虫を喰らう、人は鳥を喰らう

そして自分は人を喰らう

それは同然の事だと、それは真理だと
そう言った響きを纏わせて、ウルキオラは語る



「故に、俺が貴様等と解かり合える事など有り得ない」



これで話は終わりだ
ウルキオラは口に出さず、態度で告げる


そして、腰の斬魄刀に手を掛ける



「最後に、訂正しよう。お前等をゴミと称し、同一視していた事を訂正しよう」



鞘からその刀身が解き放たれて、白く波紋を帯びた輝きを放つ



「「「……っ!」」」



その光景を見て、三人が抱いた感情は恐怖よりも先ず納得だった

目の前の光景
刀を手にした白い魔導師…その滑稽とも言える組み合わせは、どこかシックリしていた

まるで欠けたジグソーパズルに、最後のピースが当てはまった様なそんな一体感

違和感なく溶け合う自然体、一つの完成形



「詫びの代わりに、此方も少々本気を出してやる」



完成された魔導師の剣の切先が、三人に向けられる

そしてそこで、ようやく三人は戦闘に意識を戻した


今までは、ほんの序章に過ぎなかった

これからが本番
彼に対する考察は、後で出来る

今必要なのは、生き残る事




「行くぞ」




ウルキオラは構えて、そして翔ける
この三人はゴミではない、敵として認識する


そして、その一刀の元に三人を斬り捨てる

筈だった





『ストップよ、ウルキオラ』





その一言が、ウルキオラの足を止めた

プレシアからの突然の念話によって、ウルキオラはその手を止めた



『今こっちで確認したわ。もう貴方が闘う必要は無いわ、フェイトが手にしたジュエルシードの数でこっちは足りるわ。
フェイトはフェイトでちゃんと逃げられた様だし…態々リスクを犯してまで、管理局と闘う必要はないわ』

「随分な言い様だな、俺がコイツ等に劣るとでも?」

『まさか。でも、念には念よ……藪を突いて蛇を出す様な事態はこっちも避けたいの』

「……まあ良い。無駄な働きをするつもりはない、それならとっととそっちに転送しろ」

『分かってるわよ、それじゃあね』



利益のない労働をするつもりはない、だからこれ以上闘う理由は無い
そして念話は終わり、ウルキオラは刀を納めた



「……誰との念話だ? 君の協力者か?」

「答える義務は無いな」



突然のウルキオラの行動を見てクロノが尋ねるが、それをウルキオラは即座に斬り捨てる

そしてウルキオラの足元に、魔法陣が浮かび上がった



「……こっちの事情が変わった、今日の処は撤退してやろう」

「なに?」

「闘う理由が無くなった。俺はもうお前らと闘う理由も、ソレを奪う理由も無くなった……それだけだ」



クロノはその言葉に不審な表情を浮べるが、ウルキオラのその態度と足元の転移用の魔法陣がその言葉が事実であるという事を語っている

どうやら、嘘ではない様だ



「……逃げるのか?」

「続けるのか?」

「……っ!!!」



即座に切り返されて、クロノはギリっと奥歯を噛んだ

逃がしたくない

逃げたくない


だが、ソレは敵わない

闘いながら、クロノもなのはも、そしてユーノも良く分かった



ウルキオラは、実力の半分も出していない



言ってしまえば、遊びの領域だったのだ
自分達の戦いは、目の前の相手にとってはその程度の物だったのだ


改造バリアジャケットの影響で、自分達は既に息を切らしている

下り坂の自分達に対して、目の前の相手はようやく実力の一端を見せる


このまま闘えば……結果は火を見るより明らか


だから、クロノは追えない

だから、クロノはウルキオラを引き止められない



だから、クロノは許せない



相手の撤退を聞いて、僅かに安堵してしまった自分が許せない

目の前の相手に遠く及ばない自分が許せない



「……クソ……!!」




……負け、だ……


……これ以上に無い程の、敗北だ……




クロノは、血が滴る程に拳を握り締めて


そして、目の前の白い死神はその存在を消し

海上の決戦は、一先ずその幕を下ろした。











第壱拾参番「動き始めた計画」












次元航行艦アースラ・医務室



「……色々言いたい事はあるけれど、とりあえず大した怪我じゃなくて安心したわ」



リンディがベッドで横たわるクロノに言う

医務室にはクロノ、リンディ、エイミィ、なのは、ユーノが居た
そして粗方の傷の手当を終えたクロノが、リンディに尋ねる


「……武装隊の皆は?」

「皆命には別状は無いわ……でも、ダメージはかなり大きいわね」

「でもなのはちゃんとユーノくんが無事で良かったよ。クロノくんも、左の肋骨が一本軽く折れただけだったし」

「……そうね、本当に安心したわ」


エイミィの言葉にリンディも心の底から同意した様に頷く

明確に言葉にこそしなかったが、武装隊のダメージは相当大きく
中にはあのウルキオラの砲撃魔法によって、重度の火傷を負った者

片目を失明した者、その衝撃で手足の筋や腱が千切れた者

更には海に沈んだ際に大量の海水を飲み込み、一時は呼吸が止まった者もいた


故にこの三人の今の状態は、ある意味奇跡に近かった



「……それにしても、あの白い魔導師が人外……いいえ、人間を食するタイプの種族とはね」



リンディがその事実を改めて確認する



確かに、幾つもある次元世界の中には人間を主食とする種族や魔獣は存在する

だが、彼等の殆どは人間よりも……寧ろ獣に近い生き物だ

そしてウルキオラは、外見もそうだが中身も人間と大差ない
言葉を話し、会話でコミュニケーションができ、落ち着きもあって理性も知性もある

だから、どうしてもそんな獣のイメージとウルキオラのイメージは重ならないのだ

そしてそのリンディの言葉に、クロノは同意する



「恐らく事実でしょう。闘いながら、僕も彼には得体の知れない恐怖を感じていました
コルド隊長が言っていた言葉の意味も……今では良く分かります」

「……でも、そんな人が……って、なんか人っていうのも変な感じだけど、どうしてジュエルシードを?」

「……それは、分からない……」



話ながら疑問に思った事をエイミィが質問するが、答えはやはり分からない

そもそも、なんでそんな種族がジュエルシードを欲していたのか
なぜ、ジュエルシードがこの世界にある事を知っていたのか

そして、彼はどんな種族なのか
彼の協力者とは一体どんな人間なのか

あの白い魔導師、ウルキオラに対しての疑問が尽きることは無かった



「……そう言えば、なんでフェイト・テスタロッサは彼の名前を知っていたんだろう?」



ふと思いついた様に、ユーノが声を上げた



「ジュエルシードの探索途中に遭遇したとかじゃないか?」

「でも、彼の実力なら……あの時、フェイト・テスタロッサとその使い魔の逃走を阻止する事も可能だった筈
彼の目的がジュエルシードだったのなら、それこそあそこから一人も逃がしたくはなかった筈……でも彼は彼女達の逃走を阻止する素振りすら見せなかった」

「……そう言えば、あのアルフ、さん? アルフさんもウルキオラさんに対しては、全然敵視してなかった感じだった」



クロノがユーノの問いに答え、なのはも思い出した様に続く
思い返せば、あの時のアルフの行動も不自然だった

過去にウルキオラと遭遇し、その名前を知る程に関わっていたのなら、彼の実力を知っている可能性は高い

そして彼の実力を知っていれば、あの時あの場では迂闊に動く事は出来なかった筈

彼の狙いが、自分達が持つジュエルシードだとすれば尚更だ



「多分、過去に何らかの密約を交わしたか、若しくは休戦状態か」

「それとも」



……最初から手を組んでいたか……



奇しくも、そこにいる全員が同時にその答えに辿り着く



「可能性は、ゼロじゃないわね……寧ろ、高いわ」



リンディも納得がいったかの様に呟く
それなら、全ての疑問の説明がつく



「その線で、恐らく間違いないでしょう。だとすれば、彼が念話で話していた人物は……」

「……プレシア・テスタロッサ……」



クロノの言葉に、エイミィが繋げる

プレシア・テスタロッサ
フェイトと同じテスタロッサの姓を持ち、その消息が不明の魔導師

現状では、この件に関しての重要参考人・最有力候補だ



「……プレシア・テスタロッサ、嘗ては大魔導師とも言われ総合ランクSSの魔導師」

「プレシア・テスタロッサだけじゃない。フェイト・テスタロッサも今日の闘いを見る限り、Sランクに届く実力はある」

「そして、あのウルキオラ……実際に闘ってみて分かった。あれはAAAランクやSランクの魔導師でも、どうにか出来る存在じゃない
潜在的な実力はSS……最悪、最高魔導師ランクSSSにも届く恐れのある相手だ」



リンディの言葉に、ユーノ、クロノが続き、その空気は否応なく重くなる

敵の戦力は、あまりにも強大
もしもプレシア、フェイト、そしてウルキオラが手を組んでいたら……自分達は最悪Sランクオーバーの魔導師三人を相手にしなければならない

その上、もしもこの三人が手を組んでいたら……既に彼女達は最低でも七個、最悪の場合十二個のジュエルシードを有している事になる



「……戦力差としては、絶望的ね。こちらはもうあのウルキオラに武装隊を二部隊潰されている」



リンディが頭を抱える様にして呟く
そんなリンディに、クロノが尋ねる



「艦長、応援はやはりまだ……」

「ええ、とりあえず今から十五時間後……明日の午前十時ね。応援の先遣隊がこちらに到着するわ」

「人数とランクは?」

「AAAランクが四人、それと彼等の所属チームのAAランクの魔導師が十人」

「……厳しいですね」



もしもこれが通常の任務だったら、何と心強い事だろうと両手を上げて喜んでいる事だろう

だが、やはり足りない
援軍の戦力は申し分ない、だがやはり足りない



「とりあえず、バリアジャケットの強化は必須ね……それに、新しく防刃機能の強化も必須事項ね」

「ええ、それで良いと思います……彼の本当の武器は、あの質量兵器だと思いますので」



リンディの考えを聞いて、クロノも同意も示す
あのウルキオラと今後戦闘になったとき、あの刀という質量兵器を使用してくる可能性は高い
それならその事も踏まえて、対策は練っておくべきだ


クロノ達は、今後の事や作戦について検討を始める


そして





「……やっぱり、分かり合えないのかな?」





誰にも聞こえない程の、それこそ自分の耳にも届かない程の小さな声で
なのはは、呟く


フェイトと協力関係にある可能性がある……ならば、それこそ自分達はあのウルキオラとも解かり合える可能性があるという事なんじゃないか?と……


そして、あの人は言った



……自分は欲望の儘に、見境なく人間を襲ったりはしない……

……品性下劣な獣と自分を一緒にするな……



それはつまり、あの人にも食べたくない人がいる……「傷付けたくない人」がいると言う意味なんじゃないか?と……


あの人にとって食べ物である人間の中にも、あの人が傷付けたくない……「大切な人」がいるという意味なんじゃないか?と……



「…………」



勿論、これらは何の確証の無い自分の推測だし……あの人が、人間を食べるという事には変わりは無い

もしかしたら、本当にあの人の言う様に……自分達が解かり合える事は出来ないのかもしれない


でも

それでも


高町なのはは、その一握りの可能性を捨て切れずにいた……。







そして夜は明けて、朝日が昇る……その朝日が夕闇に沈み、再び夜になる

そこから更に、朝日の光と夜の帳のサイクルは続く










海上の決戦より、四日後


時の庭園にて、その二人は居た


「それじゃあ、あたしはここまでだから」

「……うん、ありがとうアルフ」


玉座の前の扉にて、アルフは待機をしてフェイトを見送る
今日、フェイトとアルフはプレシアに一連の事の報告に来ていた

あの海上の闘いでの後、二人は更に二日ジュエルシードの探索を行った
しかし、結果はゼロ

この時二人は、もう野放し状態のジュエルシードは残されていないという結論に達した
全てのジュエルシードは自分と管理局に、全て回収された……そう判断したのだ

これはその報告と、新しく入手したジュエルシードの報告

そしてフェイトのデバイス・バルディッシュの中には、数日前に入手した四つのジュエルシードが収納されてある


……母さん……


扉の向こうにて待つであろう母に、その想いを一層高まらせる

あの海上での闘い、あの時ウルキオラがあそこに現れたのは……恐らく、偶然ではない


そしてあのウルキオラが自らの危険を顧みずに、自発的に自分達を助けに来るという事は考え難い
自分達と彼の間には、まだそれほどの親交は無いからだ


つまり、あの時のウルキオラは……誰かに頼まれたのだ

自分達の手助けをしてきて欲しいと、ウルキオラと親交を持つ誰かが……そう頼んだ


そんな人物、フェイトが思い当たるのは一人しかいない



「母さん、フェイトです」



ノックをして、入室する

入室した玉座の間には、フェイトが脳裏に浮かんだその人物が……自分の母、プレシアがいた



「……フェイトね、とりあえず体は元気そうで何よりだわ」

「!!!……あ、ありがとうございます! そ、それと、今日は報告にやってきました」



予期せぬ母の言葉に、フェイトは舞い上がってしまいそうになったが、それを咄嗟に我慢する
ここで甘えてしまっては、自分はまた悪い子になってしまう

そう強く自分の心に言い聞かせて、フェイトは冷静さと落ち着きを取り戻す



そして、バルディッシュから四つのジュエルシードを取り出す



「新しく、四つのジュエルシードを手に入れました。これで、未蒐集状態のジュエルシードはもう最後だと思います」

「……そう……」



四つのジュエルシードを手に収めて、プレシアはそれをじっくりと眺める

その間、フェイトはその胸を締め上げるプレッシャーで、顔を持ち上げられる事が出来なかった



今までとは、比較にならない程のプレッシャーだった
今回は、今までとは違う

今までは、問答無用でお仕置だった……でも、今回はそれだけじゃない


自分には、希望がある
これで母さんは自分の事を認めてくれるかもしれないという期待が、希望がある


それ故に、フェイトの中では二乗されたプレッシャーが目まぐるしく蠢いていた

氷の器の中に、沸騰したお湯を注ぎこむ様な……そんな感じだ


フェイトはそのプレッシャーに、俯いて硬く目を閉じる

そして









「良く頑張ったわね、フェイト」









その言葉で


フェイトを襲っていた、心の中で蠢いた物は……恐ろしい程に静まり返った



「……え?」



その言葉を聞いて、フェイトは顔を上げる
母はいつの間にか、自分の目の前にいた



「……か、ぁ、さ……」

「良くここまで、今まで……頑張ったわね」



次の瞬間、フェイトは母の腕の中に居た

両腕を背に回されて、その体を引き寄せられて……体を、抱きしめられた


思考は、置いてきぼりだった

理解は、凍り付いていた


ただ、体温だけは理解できた
母の体から伝わってくる、その暖かな温もりだけは理解できた



「……かあ、さん……!」



感情が、抑えられなかった

涙が溢れて、止まらなかった



「フェイト……母さんは、今まで悪い母親だったわ……本当に、酷いお母さんだったわ
貴方の大切な体を何回も何回も傷付けて……苦しめきたわ」



母の謝罪の言葉が、フェイトに耳に、心に響く
フェイトは涙を流しながら、自分の体から黒い何かが浄化されていく様な気持ちだった

まるで長い間、暗雲と台風によって閉ざされていた空から……陽の光が零れていく様な感じだった



「ごめんなさいフェイト。もうそんな事は絶対にしないわ……貴方の大事な体に傷を付ける様な真似は絶対にしないわ」

「……かあ、さん!……母さん!!」

「……今まで、貴方の事を何回も悪い子、いけない子……そう貴方の事を呼んできたけど、今は違うわ」



感情が抑えきれずに、涙は留まる事を知らなかった

ダメだ、泣けば母さんの服が汚れてしまう
せっかく抱きしめて貰ったのに、母さんに迷惑を掛けてしまう

涙をとめなくちゃ

それがダメなら、母さんから離れなくちゃ


フェイトは、そう思う
しかし、そのどちらも……フェイトは実行する事が出来なかった




「今は、心の底から思うわ」




そして、プレシアの言葉がフェイトに届く








「フェイト、貴方が居てくれて良かった……貴方が母さんの娘で、本当に良かった」








もうダメだった
感情を抑えきれず、自分の顔を母の体に思いっきり擦りつけた



「……母さん、母さん!母さん!!」



……やっと……

……やっと、報われたんだ……


……やっとやっと、母さんはあの優しい母さんに戻ってくれたんだ……


……これからやっと、普通の家族としての「これから」が始まるんだ……



フェイトの心に溢れるのは、これからに対する期待と少しの不安
そして、有り余るほどの……心の中には納まり切らない程の、溢れんばかりの幸せ



「だから、だからねフェイト」



フェイトの心は、正に幸せで埋め尽くされていた











「オヤスミ」











その瞬間までは。










「……え?」


パチリ、と
一瞬、フェイトの耳にそんな音が響いた


次にフェイトは体の力を失い、目の前が急速に暗くなっていった


……アレ、眠い……


僅かな一瞬にそう思い
フェイトの意識は、闇に堕ちた


フェイトの体が崩れ落ちるが、プレシアの手がソレを支える





「……本当に、貴方を造って良かったわあぁフェイトオォ……」





魔女の顔は歪む、そして嗤う

そしてその体を抱かかえて、その足を進める


その顔は、歓喜にも見えた、狂喜にも見えた

その顔は、愉悦にも見えた、恍惚にも見えた、至福にも見えた



魔女の顔は、心は、黒い幸福に満たされていた





……アリシア……今まで、たくさん待たせてごめんなさい……


……今までたくさん辛抱させてごめんなさい……






……でも……






……それも、今日で終わり……


……さあ、アリシア……私の愛しいアリシア……




……こんな筈じゃなかった未来を……




……こんな筈じゃなかったこれからを、一緒に取り戻しましょう……















続く












あとがき
 この話を描き終わった時、「ああ、やっと折り返しに入ったな」とつい感慨深くなりました


本編の話ですが、ウルキオラのオサレ演説が発動です
そしてそれに伴って、なんだかんだでなのはがウルキオラの真実に気付きかけている様な感じです

それとウルキオラはまだ念話を習得できていません。本編の会話はプレシアが監視映像を見ているから成り立っている
そういう脳内補正をお願いします

あと、プレシアがウルキオラの撤退を命じたのは、管理局との戦闘によるデメリットがメリットを超えた事によるものであり

ウルキオラの方も、原作では元々闘う必要のない相手とは態々戦わない、殺す必要のない相手は態々殺さないというスタンスなので
闘う理由がなくなれば、あんな感じの行動を取ると思いました(一護の二回目のグリムジョー戦とか)


あとウルキオラ=SSSランク説が浮上しました、確か管理局認定の最高ランクはSSSでしたよね?(少々うろ覚えなので)

ヤバイなー、ジャンプ漫画特有の戦闘力のインフレは避けたいと思っている今日この頃です


さて、続いてはプレシアとフェイト……この二人が、何だかとんでもない事になっています
とうとうプレシアさんの準備が整った様です、フェイトはマジで大ピンチです

余り描くと今後のネタばれも描いてしまいそうなので自重しますが、次回はアルフの出番が少し多くなると思います


それでは、次回に続きます





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