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No.17010の一覧
[0] リリカルホロウA’s(リリカルなのは×BLEACH)[福岡](2011/08/03 21:47)
[1] 第壱番[福岡](2010/04/07 19:48)
[2] 第弐番[福岡](2010/03/07 06:28)
[3] 第参番(微グロ注意?)[福岡](2010/03/08 22:13)
[4] 第四番[福岡](2010/03/09 22:07)
[5] 第伍番[福岡](2010/03/12 21:23)
[6] 第陸番[福岡](2010/03/15 01:38)
[7] 第漆番(補足説明追加)[福岡](2010/03/17 03:10)
[8] 第捌番(独自解釈あり)[福岡](2010/10/14 17:12)
[9] 第玖番[福岡](2010/03/28 01:48)
[10] 第壱拾番[福岡](2010/03/28 03:18)
[11] 第壱拾壱番[福岡](2010/03/31 01:06)
[12] 第壱拾弐番[福岡](2010/04/02 16:50)
[13] 第壱拾参番[福岡](2010/04/05 16:16)
[14] 第壱拾四番[福岡](2010/04/07 19:47)
[15] 第壱拾伍番[福岡](2010/04/10 18:38)
[16] 第壱拾陸番[福岡](2010/04/13 19:32)
[17] 第壱拾漆番[福岡](2010/04/18 11:07)
[18] 第壱拾捌番[福岡](2010/04/20 18:45)
[19] 第壱拾玖番[福岡](2010/04/25 22:34)
[20] 第弐拾番[福岡](2010/05/23 22:48)
[21] 第弐拾壱番[福岡](2010/04/29 18:46)
[22] 第弐拾弐番[福岡](2010/05/02 08:49)
[23] 第弐拾参番[福岡](2010/05/09 21:30)
[24] 第弐拾四番(加筆修正)[福岡](2010/05/12 14:44)
[25] 第弐拾伍番[福岡](2010/05/20 22:46)
[26] 終番・壱「一つの結末」[福岡](2010/05/19 05:20)
[27] 第弐拾陸番[福岡](2010/05/26 22:27)
[28] 第弐拾漆番[福岡](2010/06/09 16:13)
[29] 第弐拾捌番<無印完結>[福岡](2010/06/09 23:49)
[30] 幕間[福岡](2010/08/25 18:28)
[31] 序章[福岡](2010/08/25 18:30)
[32] 第弐拾玖番(A’s編突入)[福岡](2010/08/26 13:09)
[33] 第参拾番[福岡](2010/10/05 19:42)
[34] 第参拾壱番[福岡](2010/10/21 00:13)
[35] 第参拾弐番[福岡](2010/11/09 23:28)
[36] 第参拾参番[福岡](2010/12/04 06:17)
[37] 第参拾四番[福岡](2010/12/19 20:30)
[38] 第参拾伍番[福岡](2011/01/09 04:31)
[39] 第参拾陸番[福岡](2011/01/14 05:58)
[40] 第参拾漆番[福岡](2011/01/19 20:12)
[41] 第参拾捌番[福岡](2011/01/29 19:24)
[42] 第参拾玖番[福岡](2011/02/07 02:33)
[43] 第四拾番[福岡](2011/02/16 19:23)
[44] 第四拾壱番[福岡](2011/02/24 22:55)
[45] 第四拾弐番[福岡](2011/03/09 22:14)
[46] 第四拾参番[福岡](2011/04/20 01:03)
[47] 第四拾四番[福岡](2011/06/18 12:57)
[48] 第四拾伍番[福岡](2011/07/06 00:09)
[49] 第四拾陸番[福岡](2011/08/03 21:50)
[50] 外伝[福岡](2010/04/01 17:37)
[51] ???(禁書クロスネタ)[福岡](2011/07/10 23:24)
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[17010] 第壱拾番
Name: 福岡◆c7e4a3a9 ID:4ac72a85 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/28 03:18


海鳴市付近の海上、虚空とも言える海の上で黄金の魔法陣が形成されていた

その魔法陣を形成するのは一人の少女フェイト・テスタロッサだ。


「アルタス・クルタス・エイギアス……」


虚空に浮かび、魔法陣を形成して、詠唱をしながら魔力を注ぎ込む

その様子を、フェイトの使い魔のアルフは僅かに離れた場所から見守っていた。



(……魔力を送り込んで、海の中にある六個のジュエルシードの強制覚醒……
……そして、覚醒したジュエルシードをそれぞれ封印……)



アルフは考える
確かに、今目の前で主の取っている行動は間違ってはいない

こっちからジュエルシードを取りに行けないのなら、あちらから出向いて貰えば良い
そして出向いた所を封印すれば良い


確かに、これだけ見れば実に合理的な作戦に見えるだろう

しかし、実際は違う

一つや二つなら、その作戦もありだろう……しかし、ジュエルシードの数は六個だ。



(……幾らフェイトでも、無理があるんじゃないかね?……)



もしも、フェイトが今までの様な無茶をする様に、今回の作戦を行ったのならアルフも止めたかもしれない

だが今回は違う

今まで一緒にいた、使い魔のアルフだからこそ分かる
今のフェイトは体力・魔力・精神力、それらが全快とも言える程に力強く漲っている事を

今までの無茶と苦難が、六日間という休養が、ここに来てフェイトのレベルを一回りアップさせた事を。



『アルフ……多分、これから少し厳しい戦闘になると思うけど……大丈夫?』



主からの念話

これから相手にするのは、六個の暴走状態のジュエルシード
自分達にとっては、未知の領域


それは使い魔である自分を気遣っての事、それを聞いてアルフの迷いも吹っ切れた


どんな相手が敵だろうと、主は、フェイトは、自分が守る!!



『いつでもOKさ! だから、フェイトは安心して作業を続けておくれよ!』

『分かった……ありがとう、アルフ』



念話を終えて、フェイトもその準備を終える

その手に握った杖の先に、黄金の魔力が収束される
そしてその魔力を、自ら形成した魔法陣に向ける


ジュエルシードの細かな位置は分からない

ならば、遠近無視の広域に魔力を注ぎ込めば距離など関係ない



「サンダーフォオオオォォォル!!!」



次の瞬間、雷鳴が轟き暴風とも呼べる突風が吹き荒れる

六つの蒼い竜巻が、唸りを上げてその姿を現した。








同時刻、次元航行艦『アースラ』



「何て無茶を……全く、呆れた無茶をする子達だわ!」



ブリッジの艦長席でリンディが僅かに口元を歪めながら言う
その表情は呆れというよりも、心配の要素の方が強いだろう


「ええ、あれは無茶を通り越して無謀の領域です。間違いなく、あの二人は自滅する」


リンディの隣に立つクロノが淡々と言う

彼らの前にある巨大なディスプレイ
そのディスプレイは、海鳴市海上のフェイトとアルフの様子を写していた


六個のジュエルシードの反応、それは管理局側もバッチリその反応を捉えていた

そしてその様子を探ろうと思ってサーチャーを現地に仕向けて、映像を遅らせたら今の状況が映った訳である。



「……フェイトちゃん!」

「あれは……まさか、ジュエルシード!!」



そして、ブリッジに新たに二人の少年少女が入室する
なのはとユーノだ


ジュエルシード発見の知らせを聞いて、二人はブリッジに来たのだが……どうやら、予想はその斜め上の事態になっていた様だ。



「……クロノくん、これは!?」

「見ての通りだ」



なのはの問いに、クロノはどこか苦い顔をして呟く



「海に沈む六個のジュエルシード、そしてそのジュエルシードを覚醒させる為に彼女達は広域に莫大な魔力を注ぎ込んだんだ
そして彼女達の魔力の影響で六個のジュエルシードは完全に暴走して、彼女達に襲い掛かっているんだ」

「!!?……そんな!」



無茶だ
なのはは瞬時にそう思った。

今まで暴走したジュエルシードの相手は何回かはしたが、一度たりとも楽に封印できた事なんかなかった

そして、それが六個
単純計算で六倍の力となって襲い掛かってくる

そして、それが意味する事は幼いなのはでも分かった



即ち、無謀だと……



「助けに、助けにいかなきゃ!!」

「その必要はない」



しかし、なのはの言葉は冷淡に斬られた
斬ったのはクロノだ



「あれだけの魔力を打ち込んだんだ、どうせすぐに自滅する。そこをジュエルシードと一緒に捕獲すればいい」



クロノの言葉に、なのはが驚愕するがクロノは更に言葉を続ける。



「仮に自滅しなくても、力尽きた所を捕獲すればいい」

「そんな!」



なのはが抗議の声を上げる
なのはの隣に居たユーノも声こそは上げなかったが、気持ちはなのはと同じな様だ

更になのはが抗議の声を上げようとするが、








「あの白い魔導師と闘う戦力を、少しでも温存しなくちゃいけない」








なのはの声を止めたのも、クロノの言葉だった



「……!!!」

「これだけの魔力だ……あの魔導師も、今のこの状況に気づく可能性もある……
彼の力は、正直言って強大だ。今のアースラの残存戦力でも、はっきり言ってかなり分が悪い」



その言葉を聞いて、なのははつい一週間前の光景を思い出す
あの人間としてのあるべき部位を失ってアースラに帰って来た、武装隊の隊員の姿を

空間凍結魔法を喰らいながらも、無傷で立っていたあの白い魔導師の姿を……



「彼との戦闘を考えれば……ここで余計な戦力は割けない。六個のジュエルシードとニアSランクの魔導師
その両方を相手にするとしたら、こちらもそれ相応も戦力が必要になる……だからこそ、僕らはここで冷静な判断をしなくちゃいけない」



なのはとユーノをその視界に納めながら、クロノは更に言葉を続ける



「冷酷だと思っても構わない、非情だと思っても構わない……これが、僕らに出来る最善だ
僕らがここで撃って出れば、彼女達とジュエルードと両方を相手にすれば……あの魔導師に、格好の隙を晒す事になるかもしれない

ジュエルシードは彼にも彼女達にも渡す訳にはいかない
僕らが判断を誤れば、次にこのアースラに帰ってくる時は……死体になっているかもしれないんだ」



法と秩序を守る時空管理局員は、大なり小なり皆が命を賭ける覚悟をもって任務に望んでいる

だが、命を賭ける事と命を軽く扱う事は正反対の行為だ


命を大事に扱うからこそ、命を賭けるという言葉が存在するのだ


少なくとも、危険と分かっている行動を何の考えもなく、ただ勢いに任せて実行する事は命を大事にしているとは言えないだろう


命を賭ける、だからこそその意味を重く取らなければならない

命を助ける、だからこそ目の前の事態に対して冷静に判断しなければならない


だからこそ、ここで下手な判断はできない

犠牲は最小限に抑え、確実に任務を遂行できる策を取らなければならない


例え、それが非情とも言える策でもだ。



「大丈夫、フェイト・テスタロッサは必ず保護する。彼女が戦闘続行不可能になった所を、まずは僕と武装隊が保護する
ジュエルシードが一つでも覚醒状態なら、そこで封印。既に全て封印状態なら即座に撤退
今のアースラの戦力で出来るのは、これが最善なんだ」



なのはは、動けなかった
フェイトの事は確かに心配だった

だが、それ以上にクロノの気持ちを理解してしまったからだ



「……フェイトちゃん……」



眼前に広がる金髪の少女の戦闘を見ながら、なのはは小さく呟いた。












第壱拾番「リニス」












「……プレシアの、使い魔だと?」

……はい……


時の庭園にて、ウルキオラはとある出会いを果たしていた

耳に響いた奇妙な言葉
その発信源を辿り、とある倉庫にまで足を運び、そして……



(……霊体、か? だが通常の霊体とは少々異なるな……)



何というか、酷く存在感が薄い

それに普通の霊体なら、アリシアはともかく自分ならとっくにその存在に気づいていた筈


薄いショートカットの茶髪、頭の上には小さな帽子、どこか穏やかな整った顔たち
白を基調にしたノースリーブの上着、黒と鳶色を基調にしたアンダーシャツ

胸には因果の鎖もない……恐らく、完全な霊体



……お願いです、プレシアを止めて下さい……



「意味が解からんな」



目の前のリニスと名乗った女の霊体は言うが、ウルキオラはその言葉をバッサリと切り捨てた



……私の主は、プレシアは……恐ろしい事を企てています……


「恐ろしい事?」



僅かにウルキオラが反応した
思い付くのはあのジュエルシード
あれほどの霊子結晶体が複数個あれば、恐らく相当よからぬ事が出来るだろう。


しかし






……プレシアは、フェイトの魂を殺し……アリシアにフェイトの肉体を授けようとしています……






どうやら、ウルキオラの思っていた事とは少々違う様だ


「……なぜ、そんな事が分かる?」


疑念を色濃く宿した瞳でウルキオラはリニスに言う



……私が、プレシアの使い魔だったからです……



リニスは説明した



優れた魔導師は、自分の手足となる相棒ともなる助手ともなる「使い魔」という人造生命が造れる事を

そして、自分は嘗てプレシアの飼い猫だった「リニス」を素体に造れられた使い魔だった事を

使い魔と魔導師は特殊な繋がりで結ばれて、魔力の補給や精神や感情もある程度リンクしている事



……私は、フェイトの教育係として、世話係として、プレシアに造られました……


……フェイトとアルフの世話をしながら、それなりに穏やかで幸せな時間を過ごしていました……


……プレシアが、フェイトを拒絶している事以外は……



「拒絶している?」



その言葉を聞いて、ウルキオラは「ああ」と思った

アリシアは知らないがフェイトとアリシアの本当の関係を、既にウルキオラはプレシアに聞かされている

そしてアリシアも、フェイトという存在を「そういう名前の人がいる」と単語程度でしか知らない

プレシアが、頑なに教えようとしていなかったからだ
そしてウルキオラも、フェイトに関してはアリシアに特には聞かれなかった

後に知るが、プレシアがフェイトに出した待機命令の目的の一つがコレだった


そしてアリシアにとっては未だここは興味の塊であり、何でもない事が娯楽の塊だった故に、フェイトの存在を隠す事は
プレシアにとってはそう難しい事ではなかった。



……私は、プレシアにもっとフェイトに親子としての時間を過ごしてほしかった……


……普通に一緒に食事をして、優しく、時に厳しく、どこにでもあるそんな親子としてフェイトに接して貰いたかった……


……決して多くなくてもいい、ほんの少しだけでもいい……フェイトに、優しくして欲しかった……


……でも、私が幾らプレシアにそう願っても……プレシアは応えてくれなかった……



「寧ろ、悪化した……そんなところだろう?」



ウルキオラのその言葉に、リニスは苦い表情で頷いた



……次第に、私とプレシアの間にも諍いが起きるようになり…プレシアは私との精神リンクを完全に切りました……


……プレシアは本当に一人のまま……何かの研究に没頭してしまいました……


……そしてある日、私はとうとう知ってしまったのです……フェイトの事を……そして、アリシアの事を……



更にリニスは説明する

ある日、体調を崩し始めたプレシアの為にリニスは薬を研究室に持っていた

だが、研究室はもぬけの殻だった
違和感と、胸騒ぎがした

探査魔法でプレシアの行方を調べたところ、プレシアは直ぐに見つかった庭園の地下室に居たのだ

リニスは直ぐに薬を持って地下室に下りた
地下室で、プレシアは血だまりを作って倒れていた

急いでプレシアを介抱し、薬を飲ませた


そして、地下室に眠るソレを見てしまった。





……地下室の奥、そこには透明なカプセルの中に緑色の液体と共に……ソレはありました……


……フェイトとそっくりの少女の遺体、アリシア・テスタロッサの遺体を……





アリシアを見られ、感情的になったプレシアとリニスとの間に一瞬だが完全にリンクが繋がったのだ


そして知った


嘗て本当にプレシアが愛し、そして失った一人娘アリシア・テスタロッサ

失ったアリシアの代わりに造られたフェイト

そしてアリシアになれなかったフェイトに対するプレシアの憎悪





……理不尽だ、そう思いました……





プレシアの悲しみと苦しみを、リニスは痛い程に理解できた
それと同時に、プレシアに怒りを覚えた


ならば、なぜ
フェイトを愛してくれないのか

確かに、あの娘はプレシアが失ったアリシアではない
だが、フェイトは紛れも無いプレシアの娘なのだ

失敗作なんかではない、フェイトはフェイトだ

プレシアを母として愛して慕う、紛れも無いプレシアの娘なのだ


そこまでアリシアを愛した貴方が

娘を失う悲しみと苦しみを誰よりも知っている貴方が!

どうして、フェイトを愛してくれないのか!!




……ですが、プレシアの気持ちは変わりませんでした……




そして残ったのは、使い魔の契約破棄……即ち、自分の死



……ですが、まだ私は死ぬ訳にはいかなった……


……プレシアにはまだ数年の時間があり、フェイトの事もまだ何とか出来る可能性があったからです……



フェイトの秘密の保持に、リニスは自分の延命をプレシアに約束させた

せめてフェイトが一人前の魔導師になるまで、そう条件を突きつけたのだ

残された少ない時間で、やれるだけの事をしたかった


しかし






……何も、できませんでした……






フェイトは本当に優秀な魔導師だった
自分の課す課題を次々にクリアして、着々と実力を高めていった

自分が思っていた一月以上も早く、フェイトはリニスの課す課題を全て終えたのだ


そして、プレシアとの契約は破棄されたのだ



……ですが、肉体が死んでも……酷く虚ろで曖昧でしたが、私の意識はここに存在していました……


……これはあくまで私の仮定ですが、病の影響でプレシアは完全に私との契約を破棄出来なかったのだと思います……


……肉体は滅びても、意識だけがある状態で……私はここに存在していました……


……そして時折、プレシアの思考や感情が……私に流れてくるのです……




……そして、知ってしまったのです……




プレシアとアリシアの再会

そして、プレシアが思い付いたアリシアの蘇生方法



……そして私は、プレシアがアリシアの為にフェイトを犠牲にしようとしている……その事を知りました……


……これが、私の知る今までの全てです……



全ての説明を聞き終えて、ウルキオラは「フム」と考えた



「アリシアを生き返らせる為に、フェイトの体を使うか……なるほど、確かにアレが考えそうな事だな」



淡々と、ウルキオラは答える

薄々は勘付いていた
プレシアがフェイトを犠牲にして、アリシアを蘇生させようとしていると……



「……だが、疑問がある。なぜわざわざフェイトの体を犠牲にする? 新しいクローン体でも造る方がリスクは少ないだろう?」



……プレシアの病の原因は、FATEプロジェクトの合間に扱った薬品です……


……それに、ただでさえフェイトを造る時…プレシアは数年間の時間を要しています……


「……なるほど、ただでさえ少ない時間が更に少なくなる……最悪の場合、途中で力尽きるのがオチか……」



納得がいった様に、ウルキオラは呟く





……お願いします、プレシアを止めてください!!……





リニスはそう懇願しながら、ウルキオラに頭を下げた



……ずっと、今までずっと! 私の姿は貴方以外には見えなかった!! 私の声は貴方以外に届かなかった!……


……フェイトも! アルフも! プレシアも! アリシアにも! 私の声が届かなかった!!……



リニスは顔を上げる
その両頬は濡れていた、両目からは大粒の涙が流れていた




……貴方だけなんです! 私の声が届いたのは貴方だけなんです! 私が頼れるのは貴方だけなんです!!……



……救ってくれ! 等とは言いません! せめて、逃がして下さい!! フェイトとアルフを、プレシアの元から逃がして下さい!!……



……お願いします!! お願い、します……!!!……




そう言って、リニスは土下座をする様に頭を下げた
こうする事しか、リニスには手段が残されていなかったからだ

誠心誠意などというレベルではない

必死の言葉だった、決死の願いだった
元より死者であるリニスには、自分の願いを全力で伝える事しか方法が無かったのだ


そして少しの間を置いて

ウルキオラは答える。



「随分と、丁寧に色々な事を説明してくれた様だが……簡潔に、俺の答えを言おう」



リニスはゆっくりと顔を上げ












「断る、ゴミが俺に指図するな」













その心は、絶望に染まった。



























……なぜ、ですか?……


動揺を隠し切れない表情で、リニスはウルキオラに問いかける
その問いに、ウルキオラは淡々と答えた



「簡単な話だ、俺はフェイトを殺す理由は無いが……救ってやる理由もない」



ウルキオラにとって、フェイトは正に「どうでもいい」存在だ

闘う理由があれば闘うし、救う理由があれば救う
その程度の存在だ


そして、今までの話の中でウルキオラがフェイトを救う理由が見当たらなかったのだ

更に、ウルキオラが断ったのはもう一つ理由がある



「それに、下手をすればプレシアを敵に回す事になる。アレとはそれなりにメリットがある関係を築けているのでな
あちらから壊してくるのなら兎も角、此方から壊してやる理由は今の所ない」



それは、プレシアとの協力関係だ
ウルキオラはプレシアとの協力関係が結べたから、霊子の補充の心配が無くなり、
管理局の目から逃れられる、本拠地を手に入れる事が出来た

これは、ウルキオラにとって大きなメリットだった

そして、今のリニスの言葉で確証が得られた
プレシアが企てている、アリシアの蘇生

その為には、自分の力が必ず必要だ
恐らくここ数日自分が付き合わされていた『研究』とは、そのための物だったのだろう



だからこそ、ウルキオラは解かった
プレシアは、絶対に自分を裏切らない



少なくともアリシアが蘇生するまでは、こちらが裏切らなければ、プレシアは決して自分を裏切る事は無い


その事が、リニスの言葉で証明されたのだ



そして、その逆も解かった

自分が裏切れば、アリシアの次の肉体となるフェイトの逃亡を促す様な真似をすれば

プレシアは、確実に敵となる
それこそ、どんな手段を用いても、どんな力を用いても、必ずフェイトを取り返そうとするだろう


プレシアの魔力と技術力の高さは、この数日でよく解かった


ベクトルこそは違うが、ザエルアポロに匹敵する程の頭脳

自分の鋼皮に傷をつける程の魔力


例えジュエルシードの力が無くても、その力は決して油断できない……警戒に値する相手だろう



そして、プレシアが敵となった時……恐らく一筋縄ではいかないだろう
場合によっては、フェイトも自分の敵として相手をするかもしれない


それでも、自分は負けはしないだろう

例えプレシア・フェイト・アルフの三人を同時に相手にしても、ウルキオラは勝つ自信がある



だが、問題はその後だ



プレシアの頭脳は替えが効かない
ジュエルシードの魔力が莫大と言っても、いずれは使い切る

この時の庭園にも、居られなくなるだろう


これらは、デメリットだ

プレシアを裏切った場合のデメリットは、メリットに対して余りにも大きすぎるのだ



「と、言う訳だ。俺はお前の要求に応える義理も理由も無い。他を当たるんだな」


……そ、そんな!!……そんなの無理です!……


……貴方以外、私の声は届かなかったんです! 本当に、私には貴方しか頼れる人が居ないんです!!……



「じゃあ、ここ以外にはいるかもな」



……それも、無理です……試せる事は全部試しました……


……でも、ダメなんです……


……デバイスには、触れる事すら出来なかった! 空間転移の装置も私を認識してくれなかった!!……


……それでも、何度も何度も試して……でも、やっぱりダメで……


……それでも試して、試し続けて……やっと!やっと貴方に声が届いたんです!!……


……本当に、頼れるのは貴方だけなんです! 私の希望は貴方しかいないんです!!……


……お願いします! あの娘を!フェイトを! 助けて上げて下さい!!……



何度も何度も、目から霊子の雫を垂らしながら
リニスは何度もウルキオラに懇願した


だが、何度頭を下げられても

何度も懇願されても

ウルキオラの考えは、答えは変わらない


そしてその愚直なまでのリニスの行動を見続けて、ウルキオラはとある人間の姿を思い出していた




(……コイツも、黒崎一護と同じタイプか……)




無駄だと分かっている行動を、何度も愚直に続けた男

そしてその愚直な無駄の末に、自分を打ち倒した男

自分にとっては未知なる存在、心の力でその勝利を手繰り寄せた男



ウルキオラの考えは、今でも変わらない




だから、こそ


だからこそ、ウルキオラは思った





(……試してみる価値はあるか?……)






だからこそ、ウルキオラはその事に気づいた

その可能性に、気がついたのだ。





「……リニス、とか言ったな?」


……はい……



ウルキオラの呼びかけで、リニスは再びウルキオラと向かい合う

そして、ウルキオラもまたリニスに向かい合った



「改めて、俺の答えを言おう」



ゴクリと
リニスは僅かに息を呑んで、身構える

その表情は正に真剣そのものであり、未だ微かな可能性に全てを掛けていた。


そして、そんなリニスを
ウルキオラは緑の瞳で見つめる


そして








「これが、俺の答えだ」








それは、一瞬の出来事だった


ウルキオラはリニスとの距離を、瞬時に詰めて




斬魄刀を、鞘から引き抜き







……え?……









リニスの胸を、一直線に貫いた。














続く














あとがき
 先日、東北から帰って参りました。どうやら自分が行った時は東北方面は暖かい日だった様なので、
寒さに震える事無く、東北を旅する事ができました!(一番の目当てのスポットが実は休みで、一日はアニキの新居で小説を読んでました)


さて、話は本編……リニスがどえらい事になっています。
ウルキオラは現時点ではフェイトに対してプレシアを裏切ってまで助ける理由が無かった為に、以上の描写みたいな感じになっちゃいました!
これがアリシアだったら、今のウルキオラならどういう行動をするんだろう?


補足としましては、リニスの声はアリシアに聞こえていなかった様です。
でもウルキオラの前で表わした姿なら、同じ霊体のアリシアにも見えるかな?みたいな感じです

後、リニスには空間転移が働かなかった様です
同じ霊体のウルキオラには空間転移が出来ていますが、これは二人の霊体としての差だと思ってください

ウルキオラの体は生身の人間並みに霊子密度が高いですが、リニスはその密度がとても薄いです
プレシアみたいに魔力を解析して挑むのならともかく、現時点ではリニスだと装置そのものがリニスの存在を認めてくれない感じです。


ちなみに、プレシアの病の原因は「FATEプロジェクトの合間に使った薬品」というのは、小説版のプレシアの設定です


実はつい最近まで作者もこの設定を忘れていたのですが、これは本編の中では中々都合が良い設定だったので、使わせて貰いました!

……ご都合主義、どうもスイマセン!!

あとウルキオラはプレシアに対しては個人の信頼関係よりも、メリット・デメリットで物事を決めている感じです。


それでは、次回に続きます! あと、その内外伝的な話も投稿するかもです。





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