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No.15974の一覧
[0] 【A's編完結】俺とデバイスとあるハザード(下ネタ注意)[T・ベッケン](2010/09/19 07:21)
[1] 再出発編 第1話 汚伝はじめました。[T・ベッケン](2010/01/29 00:17)
[2] 再出発編 第2話 だけどよだれが出ちゃう。だってオタクなんだもん。[T・ベッケン](2010/02/14 17:02)
[3] 再出発編 第3話 ここはジョークアベニューです。[T・ベッケン](2010/01/29 10:48)
[4] 再出発編 第4話 Q.まほうってなんでできてる? A.血汗に欲望、金のニワトリでできてるよ。[T・ベッケン](2010/01/29 18:19)
[5] 再出発編 第5話 危険物につき取り扱い注意[T・ベッケン](2010/01/30 03:08)
[6] 再出発編 第6話 感離極の黒い悪魔[T・ベッケン](2010/01/30 14:06)
[7] 再出発編 第7話 次元世界の真実?[T・ベッケン](2010/02/15 13:42)
[8] 再出発編 第8話 戦う決闘者達[T・ベッケン](2010/02/01 17:43)
[9] 出会い編 プロローグ 思い出は時の彼方に[T・ベッケン](2010/02/07 15:52)
[10] 出会い編 第1話 それは不可避な出会いなの?[T・ベッケン](2010/02/16 17:13)
[11] 出会い編 第2話 咄嗟の言い訳はロジカルなの?[T・ベッケン](2010/02/16 17:14)
[12] 出会い編 第3話 わかりあえない気持ちなの?[T・ベッケン](2010/02/06 13:35)
[13] 出会い編 第4話 街は危険がいっぱいなの?[T・ベッケン](2010/02/07 15:51)
[14] 出会い編 第5話 ライバル!?もうひとりの火砲少女なの?[T・ベッケン](2010/02/15 13:44)
[15] 出会い編 第6話 ここは湯のまち、海鳴地獄なの[T・ベッケン](2010/02/10 00:42)
[16] 出会い編 第7話 それは大いなる危機なの?[T・ベッケン](2010/02/11 02:45)
[17] 出会い編 第8話 三人目の魔法使いなの?[T・ベッケン](2010/02/11 18:58)
[18] 出会い編 第9話 決戦は海の上でなの[T・ベッケン](2010/02/13 02:34)
[19] 出会い編 第10話 それぞれの胸の誓いなの[T・ベッケン](2010/02/13 15:24)
[20] 出会い編 第11話 宿命が閉じるときなの[T・ベッケン](2010/02/15 19:32)
[21] 出会い編 エピローグ なまえをよんで[T・ベッケン](2010/02/20 11:07)
[22] 友情編 プロローグ Dear My Master[T・ベッケン](2010/03/17 03:22)
[23] 友情編 第1話 たくらみは公然になの[T・ベッケン](2010/03/17 03:24)
[24] 友情編 第2話 戦いの嵐、ふたたびなの[T・ベッケン](2010/03/17 14:45)
[25] 友情編 第3話 再会、そしてお引っ越しなの[T・ベッケン](2010/06/07 14:42)
[26] 友情編 第4話 新たなる力、乱用[T・ベッケン](2010/09/16 22:39)
[27] 友情編 第5話 それは新たなお友達なの[T・ベッケン](2010/06/07 14:44)
[28] 友情編 第6話 それは普通の日常なの[T・ベッケン](2010/05/08 04:58)
[29] 友情編 第7話 懲りない馬鹿と原罪となの[T・ベッケン](2010/04/24 06:36)
[30] 友情編 第8話 正しい決意、勇気の選択[T・ベッケン](2010/09/16 22:38)
[31] 友情編 第9話 運命[T・ベッケン](2010/09/24 10:54)
[32] 友情編 第10話 聖夜の送り物[T・ベッケン](2010/09/20 10:58)
[33] 友情編 第11話 夜の終わり、旅の始まり[T・ベッケン](2010/09/19 07:18)
[34] 友情編 エピローグ Lots of love[T・ベッケン](2010/09/19 09:42)
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[15974] 出会い編 第7話 それは大いなる危機なの?
Name: T・ベッケン◆73c3276b ID:e88e01af 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/11 02:45
 楽しかった温泉旅行も終わり、慌ただしくも充実感のある日常が再びやってきた。
 俺の方は喫茶店の仕事を手伝っているのは以前と同じだが、それが終わった後で士郎さんや恭也さんにサッカーを教えてもらったり、休みの日にはサッカークラブで練習したりと以前よりも活動的な毎日を送っていた。
 というかサッカー以外していない。 だってサッカー楽しいし。
 しかし肝心要であるユーノ達のジュエルシード探しは全く進展していなかった。


「やっぱり駄目だ。 前に反応があった場所も今は反応が見られない。 たぶんフェイトという子に全て持っていかれてるみたいだね」


 俺はあの後、ユーノにだけジュエルシードをネタにフェイトと友達になったこと、それと彼女がジュエルシードを集めようとする理由を教えた。
 なのはに教えなかったのは、彼女の場合フェイトに感情移入をしすぎて冷静な思考ができなくなると判断したからだ。
 今も1日3回は『会いたいなぁ』とか『お話したいなぁ』と呟いているのを耳にするしな。


「あのとき聞いたんだけどな、フェイト達は結構近くに住んでいるんだってさ。 今度会いに行ってどれだけ集めたか確認してきてやろうか?」

「ならお願い。 あとできれば向こうが必要としてる数も聞いてきてくれると嬉しい」

「わかった。 でも勝手な判断をして悪かったな」

「それはもういいって。 一番最悪なのは何もわからないままに事態が進み、最後は暴走によって周辺世界も巻き込んで崩壊させてしまうことだからね」

「そういってくれると助かる」


 俺を信頼してジュエルシードを預けてくれたのに、俺は勝手な判断でそれを別の人間に渡したのだ。
 何を言われても、それこそ友達をやめると言われてもおかしくはなかった。
 だけどユーノは俺に理解を示してくれ、むしろ下手に取り戻そうとして争いにならなくてよかったとまで言ってくれた。
 俺はそんな風に言ってくれるユーノの力に、今まで以上になってやりたいと思った。


「でもジュエルシードってそんなに危険なものなのか」


 そりゃ素粒子が目で見えるほどに圧縮されてできたものだ。
 そのエネルギーが解放されれば恐ろしいことになるのはわかる。
 しかしまさか世界の1個2個を容易く崩壊させる程とは思ってもいなかった。


「うん、凄く危ないね。 あれは生物の願いごとでも簡単に暴走するけど、近くで膨大な魔力にあてられて暴走した時が一番怖いんだ。 ただ、魔力によって暴走を起こさせるにはAAAランク魔導師が数人がかりで同時に大きな魔力を叩きこむ必要がある。 だからそこまで気にする必要はないよ」

「いや、それなら尚更なのはにジュエルシードを集めさせるのは止めた方がいいんじゃないか? もしまたフェイトと争うことになったら結構ヤバイだろ」


 つい最近聞いた話では、次元世界では魔法に関わる様々な事柄がSSS~F(ランク無しと同義)といったランクに分けられているそうだ。
 その中でも比較的使われることの多いものに魔道師ランクと言うものが存在する。
 このランクは当人が保有している魔力量や技量、使える魔法の種類、魔法に関する知識等を示すものであり、管理局が行っている認定試験を受けて合格することで正式に認定される。
 また試験そのものも総合ランクや空戦ランク等に細かく分類されており、一概に魔導師ランクが高い人間が単純に強いとは言えず、これはあくまでも目安に過ぎないという。

 また魔法ランクとはその魔法を使用する為に必要な知識や、要求される魔力素の操作技術の難易度、そしてその魔法に必要な魔力量等によって分類されているとのこと。

 ちなみにユーノが見た限りだと、なのはとフェイトはAAAランク魔導師に相当するらしい。
 やだし、なのはが現在練習している魔法が完成すれば彼女の魔導師ランクは下手をするとAAA+、もしくはS-に相当するかもという話なので、俺は彼女達がジュエルシードの傍で直接対決するのは避けた方がいいと考えたわけだ。


「サニーの心配もわかるけど、向こうもジュエルシードの危険性はわかってるはずだし、ジュエルシードに直接攻撃を加えるようなことはしないと思うよ? どうしても心配なら釘を刺しておけばいいんじゃないかな」

「了解。 まあやるだけやってみるさ」





 それから数日後。
 俺はお土産に翠屋のケーキをいくつか桃子さんに分けてもらい、貰ったお小遣いを使って隣の遠見市まで出かけた。
 そうして辿り着いた場所にはやたらと高級そうなマンションが建っており、そんなところを探し物のためだけにわざわざ借りて住んでいるテスタロッサ家の財力に、俺は驚愕の念を禁じ得なかった。
 なんで俺にできる知り合いは尽く金持ちばっかりなんだ?
 アリサの家はなんかいろいろ手広くやってるらしいし、すずかの家は屋敷を見れば言わずもがな。
 彼女達の家に比べれば劣るものの高町家だって道場付きの広い庭を持っている時点で俺の感覚からいえば充分過ぎる。


 ピンポーン


「――誰だい?」


 そんなことを考えながら玄関のチャイムを押すと中からアルフの返事が聞こえた。
 友達になったあと聞いたのだが、アルフはフェイトの使い魔という存在らしい。
 元々は犬かなんかで、病気になって死にかけているところをフェイトが拾い、疑似魂魄とか言う物を与えて使い魔の契約を結んだとのこと。


「フェイトのあんちゃんだよ」

「ほんとにフェイトのあんちゃんか?」

「ほんとのほんとにフェイトのあんちゃんだよ」

「だったらアタシの出す問題に答えてみな。 あのババアをぎゃふんと言わせてフェイトにやさしくさせるには?」

「泣くまで殴る」

「なんだ、アンタか。 余計な手間を取らせるんじゃないよ」


 この短い問答の結果、俺は無事部屋の中に入れてもらうことに成功した。
 ちなみにあのババアとはフェイトの母親の事である。
 なんでもフェイトに向かって酷い仕打ちを繰り返しているそうだ。
 フェイト本人は母親にもちゃんと理由があると納得しているみたいだが、もし直接会う機会があったら俺はそいつを心から懲らしめてやりたいと思った。


「つかこのマンションめっちゃ広いな。 あ、あとこれお土産」


 案内された部屋の天井の高さと綺麗さに驚きながら、アルフにケーキの入っている箱を渡した。


「ところでフェイトは?」

「フェイトは今シャワーを浴びてるよ。 今日も遠くまで行って汗を掻いたからね」

「ふーん」


 自分で髪の毛を上手く洗えないとか言ってたけど、洗えるようになったのか?
 いや、良く見るとアルフの髪も濡れてるな。
 ってことはアルフが髪の毛だけ洗ってやったのか。
 犬は風呂が短いのが常識だからな。


「おっと覗くんじゃないよ? 覗こうとしたらガブッといくからね」

「まだ精通もしてねえのに女の裸になんて興味持つかっつの。 というか今日もジュエルシードを探しに行ってきたのか?」

「その通りさ。 もう8個も見つけたんだよ」


 ということは俺達は現在6個だから全部で14個は既に見つかっていることになるのか。
 ラッキー、こっちから聞き出す前にバラしてくれたぜ。


「集め始めてからそれほど経っていないのにもうこれだけ集めたんだ。 これなら流石にあのババアもフェイトの事を認めざるを得ないさ」

「ちなみに全部で何個必要なのかとか聞いてもいいか?」

「さあ? でも最低14個あれば何か安定させられるんだーとか言ってたよ。 確か」


 ふむ、ならババアが目的を達成する為にはフェイトが残り7個のうち6個を集めなければならないってことか。
 ならなのはがあと2つ集めてしまえば管理局が来るまでの時間稼ぎはできそうだな。
 もう聞きたいことは聞いたし、あとは普通に会話でも楽しむとしよう。


「ところであんな小さい石どうやって集めてるんだ?」

「あの石はちょっと独特の嫌な臭いがするんだ。 まるでなにかのフン、みたいな」

「へえそうなんだ」


 犬の嗅覚使って糞の臭いを……!
 俺は窓の方へ顔を向け、噴き出しそうになるのを必死で堪えた。


「でも不思議なんだよ。 あんたから貰った奴だけはその臭いがしないんだ」

「それはアレだ、たまたまお前が集めてる奴がどっかの犬に糞でもひっかけられてたからじゃねえの?」

「ガブッ!」

「ッアー! 何しやがる!」

「アタシを前にしてそんなこと言うんじゃないよ!」

「おお、確かに。 今のはあんまりな発言だったな。 素直に謝罪しよう」


 こいつは元犬だもんな。


「やけに素直だね。 なんか心境の変化でもあったのかい?」

「いや、特になにも」


 このままだといろいろばれそうなので話を逸らすとしよう。


「まあせっかくおいしいお土産も持ってきたんだ。 もうその話はやめにしようぜ?」

「それもそうだね。 ところでこれ、甘くていい匂いがするけど、中を見てもいいかい?」

「別にいいけど、見終わったらフェイトが風呂から上がってくるまで冷蔵庫に入れといてくれ」

「あいよー」


 そう言ってアルフは箱の中に入っているケーキの臭いを狂ったように嗅ぎながら台所の方へ向かった。
 俺はその姿を見て、桃子さんの作るお菓子には怪しげな何かが入っているのではないかと本気で心配になった。







「――それならそん時は寝てる隙を見計らって目元と鼻の下にワサビを塗りたくればいいだけじゃん。 とにかくワサビは絶対必要だ。 これだけは譲れない」

「あんたにそう言われるとそんな気もしてくるから不思議だよ」

「あれ、サニーだ。 いらっしゃい。 来てくれたんだ?」


 その後俺とアルフで『フェイトの母親をぎゃふんと言わせる方法』について話をしていたら、いつの間に風呂から上がったのかフェイトがやって来た。


「おう、邪魔させてもらってる。 お土産にケーキを持ってきたから一緒に食べようぜ」

「あ、じゃあ私はお茶の用意をするね?」

「アンタはフェイトの入ったお風呂の残り湯がいいんだっけ?」

「なあフェイト、この頭に糞みそ詰めてる馬鹿犬剥製にしてもいい? 燻製でもいいけど」


 俺はいきなりとんでもないことを言い出した駄犬の頭を小突きながら言った。


「なんだい、ちょっとした冗談じゃないか。 あとアタシは狼だよ」

「そのちょっとした冗談で人を貶めるな。 ちょっとした爆弾みたいになってんじゃねーか。 ほらフェイトを見てみろ。 脅えて震えてるじゃん。 そういうのは洒落になんねーんだよ」

「でも少しはそういう気持ちもあるんだろ? フェイトは可愛いからね。 仕方ないよ」

「そんな気持ちこれっぽっちもねえよ! 第一俺はそんなキャラじゃねえ! 鼻の穴にワサビ詰めて悶絶させんぞ!」

「ちょっ、やめろ! アタシの鼻は敏感なんだ!」

「あは、あはははは!」


 俺がアルフの鼻に指を突っ込んで躾をしていると突然フェイトがお腹を抱えて笑いだした。


「フェイト?」

「なんだ? アルフの鼻毛でも飛び出してたか?」

「ガブッ」

「ッアー! 手を噛むなっ! なんだよ、ちょっとした冗談じゃねーか」

「その冗談のせいでアタシの人権が損なわれそうになってるじゃないか。 そういうのは笑い話にならないんだよ」

「何言ってんだ、お前は狼なんだから人権なんてないだろ、ぐあっ!?」

「次言ったらぶん殴ってやる」

「殴ってから言うな!」

「あはははは! 二人とも面白いね。 たしかマンザイって言うんだっけ? こういうの」


 よくそんな言葉知ってるな。
 というか俺の事を変態だと思ってたわけじゃないのか。
 ならよかった。


「いや、今のは漫才っていうよりはどっちかっつーとかけあいって言った方が正しいんじゃないか?」

「へえそうなんだ。 普段使ってるのと違う言葉ってやっぱり難しいね」

「そうだな。 外国語って難しいよな」


 俺は冷静を装ってそう言ったものの、記憶に残っている研究発表でやらかした恥ずかしい失敗を思いだし、辺りを無性に転げ回りたくなった。
 SEM(Scanning Electron Microscope=走査型電子顕微鏡)が『セム』で通用するのは日本国内だけなんだよな。
 そういうことも学校でちゃんと教えろっての。
 というかフェイトは翻訳魔法だけじゃなく日本語もちゃんと勉強してるのか。 偉いなぁ。


「でもフェイトもちゃんと笑うようになってよかったよ。 あんたもフェイトを笑わせるためなら汚れキャラでも何でもなればいいのさ。 それがアンタの存在意義だよ」

「いたっ」


 羞恥の記憶を思い出し胸や背中を掻きむしっているとアルフが俺の背中を掌ごと叩きながらそう言った。
 おま、付き指したらどうしてくれんだコノヤロウ。


「それ俺の価値すっげえ低くね? 俺は将来ドナルドになる男だぞ? 年収億超えも余裕だっつーの」


 俺は指を擦りながらそう言い、アルフに思いっきりローキックを叩きこんだ。


「なら汚れキャラでいいじゃないか」

「そうだな。 ……あれ?」


 ……有名なサッカー選手ってドナルドじゃなかったっけ?
 ってちょ、やめろアルフ、首を絞めるな。 意識が、遠……のく……


「サ、サニーっ!? 大丈――」






 遊びに来てから数時間。
 俺はフェイトから彼女が使える魔法の話や自分のデバイス、そして母親に対する思いを聞き、俺の方からは昔やらかした失敗の話や鉱物学等の話題を提供した。
 話のネタが尽きた後は3人でトランプでババ抜きやYU-NOをして遊び、俺はひたすらアルフを嵌めようとして何度も肉体的報復を受け、そして何度もフェイトに介抱された。
 身体能力が根本から違うともうどうしようもないと思う。

 そうこうしているうち、夜も更けてきたので俺は高町家に帰ることにした。
 晩御飯の前には帰ってきてと言われたからな。


「じゃあそろそろ俺はこれで」

「うん。 今日はすごく楽しかった。 お土産もおいしかったってちゃんと伝えてね?」

「そこは任せろ」

「じゃあ何処は任せられないって言うのさ」

「それ以外全部とか?」

「ちょっとした言い間違いでえらい言われようだな、おい」

「あはは、やっぱり日本語は難しいね?」


 フェイトがとても綺麗な笑顔でそう言った。
 今日一日で彼女が笑う姿はかなり多く見ることが出来た。
 俺との下らない会話によって、母親からの辛い仕打ちによる見えないストレスが少しでも解消できたのなら、それは凄く嬉しいことだと思う。


「まあな。 今のところお前にあやしい日本語はなかったが、いつか必ず揚げ足をとってやる。 それじゃまたな」

「またね」

「次はお土産に肉を持ってくるんだよ?」

「ハッ、お前には玉ねぎしか持って来ねえよ糞犬」


 最後はアルフに蹴りだされたものの、今回の訪問はお互いにとってとても楽しい物だったと思う。
 だけどその楽しさは相手を騙しているという俺の罪悪感を刺激して、ちょっとだけ胸が痛くなった。
 あー、とっとと全部終わってくれねーかなぁ。







 そうして今日フェイト達とした話を思い出しながら高町家へと戻る道中、俺は疲れた様子のなのはとユーノの姿を見つけた。


「おう、二人ともこんな時間までジュエルシード探しか? ご苦労さん」

「うん。 ……でも今日も見つからなかった。 飛行魔法とかも覚えたから今日は遠くまで行ってみたんだけど……」


 そう言って彼女は少し思いつめた表情でため息を吐いた。


「それは確かに残念だけど、まあそう落ち込むなって。 お前はよく頑張ってるよ。 過去形ってことはもしかしてこれから帰るのか?」

「うん」

「そうか。 ならちょっとユーノ借りてくぞ? おいユーノ、ちょっと起きてくれ」


 俺はなのはの肩の上で疲れて眠っている生き物を摘み上げた。


「ユーノ君? 何かお話でもあるの?」

「ちょっとな。 『こっちに来て結構経ったけど管理局はあとどれぐらいで来るのか?』とか、まあそういった話だ。 おいユーノ、早く起きろって」


 俺はなかなか目を覚まさない小動物をバーテンダーのように激しくシェイクした。
 しかしユーノはなかなか目を覚まさな、あっ!


「だったら私も関係あるん、あっ!」

「うわぁあああああっ!?」


 "I can fly!" "Yes, you can." (「私は飛ぶことができます! 」「はい、あなたはそうすることができます」)
 状況的にはそんな感じ。
 うっかり文字通り手が滑ってしまったが、そこは流石冷静かつ俊足なことで知られる俺。
 落下地点に誰よりも早く到着し無事救出することに成功した。
 めざせアイシールド。


「ま、まあ別にいてもいいけどさ、管理局に対する俺らの不満とか聞いてて楽しいか?」

「そ、それは楽しくなさそうだね。 ところでその、ゆ、ユーノくん、大丈夫なの? 今すごく危なかったよね!?」


 なのはは俺の手の中で目を回しているユーノが心配なのか手をわたわたさせながら聞いてきた。
 確かに一度手の中でお手玉のようになってしまったからな。


「大丈夫だって。 赤ん坊にする高い高いと一緒だから」

「僕は危うく他界しそうになったよ!」

「こっちが話しかけてるのに目を覚まさないからだ。 疲れてるのはわかるけど返事ぐらいしろって」


 俺は目を逸らしながらスキル『責任転嫁』を発動した。
 そういえばなんで転嫁の『か』って嫁と書くんだろうか?
 きっと男の方が強かった古き良き時代の名残なんだろうなぁ。


「それは悪かったけどさぁ、まさか自分がペットボトルロケットになるとは思いもしないじゃん」

「うん、正直すまんかった。 それで今からお前に少し話たいことがあるんだが、ちょっといいか?」

「……あの話だね。 じゃあなのはは先に帰っててくれる?」


 俺が謝罪と共に少し真剣な目で見つめると、ユーノは俺の言いたいことを理解してくれたのか、怒りの感情を鎮めてなのはに帰宅することを勧めてくれた。
 無益な争いは何も生まないからな。 建設的って良い言葉だよね。


「あ、うん。 じゃあユーノくん、サニーくん、また後で!」

「おう」

「また後で」



 その後俺達はなのはの姿が見えなくなるまで見送ってからようやく本題に入った。
 とりあえず家に着いたら『よそ見しながら歩くのはさっきみたいに電柱に頭をぶつけるからやめた方がいい』と教えてあげよう。


「どうだった?」

「バッチリ。 一応ジュエルシードには攻撃しないように釘も刺しといたぞ」


 一応周囲には消音結界と言うものを張っているが、俺たちの姿自体は周りから見えているそうだ。
 これは下手に空間を切り取る結界魔法を使うとフェイトに気付かれる可能性がある為にそうしたらしい。
 またフェレット形態は既にフェイトに見られているということなので、ユーノには念の為人型に戻ってもらっている。

 周囲に居る人達が俺達の声に反応していないことをしっかりと確認し、俺は今日の訪問によって入手した詳細な情報をユーノに伝えた。 


「現在フェイト側は8個、目標個数は14個。 そしてジュエルシードは願いを叶える等の目的ではなく、何かのエネルギー源として使用する予定らしい。 この分だと俺の予想した通り規定数に達するまでは安全そうだな」

「ならとにかくあと2つ集めてしまえばいいんだね。 そこから先は管理局と協力して残りを纏めて取り返すと」

「それがベストじゃないか? あとフェイト達の収集方法は彼女の使い魔が元犬でな、そいつに臭いを追わせてた」


 あれ? 狼だったっけ? ま、どっちでもいいや。


「そうか、それで発動前のジュエルシードを見つけていたのか。 でも僕らにその方法をとることはできないね」

「あれ? お前は変身魔法を使ってる時に嗅覚がよくなったりとかはしないの?」

「残念だけどね」


 なんだ、変身魔法ってのも案外大したことないんだな。
 変身するときってそこら辺の強化が1番重要だと思うんだが。


「後は……そうだね、その方法で見つからなくなったらどうするかって聞いてたりする?」

「おう。 魔力流というものをぶつけてあぶり出す作戦に出るそうだ。 でもそれってやっぱり危ないんだよな?」

「絶対安全とは言いきれないけど、1つずつならサポートが万全なら案外大丈夫かもしれない。 管理局と合流した後は僕らもこの作戦でいってもいいんじゃないかな? 次元震も中規模までならなんとかなるって聞いたことあるし」


 次元震とは魔力素を超高密状態へ急速に収束させたとき発生する、時空間を波のように伝播していく空間歪みのことである。
 大規模なものになると隣接する次元世界の多くをたった一撃で滅ぼすほどの破壊エネルギーが発生するらしく、その場合に出来る次元境界の事は次元断層と呼ばれ、実際に何度か発生した記録が残っているそうだ。
 そういったものが発生してしまえばもう俺たちにはどうしようもない。
 そうなると世界の崩壊はもう管理局次第なわけで、事態を安全に収束させる為にも彼らには早く来て欲しいものである。


「その管理局の人達ってあとどれくらいで着きそうなんだ?」

「連絡が取れないから正確な時間まではちょっとわからないかな」

「それはきついな」


 状況的にそろそろ厳しいっつーのにいつ来るかわからないってのはやっぱり不安だよなぁ。


「でもこの辺りの次元空間は原因不明の事故が起きたりするせいで管理局の要警戒領域に指定されているんだ。 そのこととロストロギア関連の場合『海』の動きが早いことを考えれば、案外もうすぐなんじゃない?」

「ならよかった」


 この『海』というのは管理局の次元世界そのものの安全を担っている部署全体を指して使う言葉らしい。
 時空管理局は大きく分けてこの『海』と『地上』に分れており、地上のほうは管理している各次元世界の治安維持等を目的としている部署全体を指すそうだ。
 他にも法務関係を司っている部署や兵器開発を担当する部署、『地・海』両方の部署を監査する部署などもあり、外部組織等も含めると管理局の仕事はかなり広い範囲に渡っているため、意外と上の立場の局員ですら全てを把握しているわけではないという。
 人間が自分自身の各臓器の働きの詳細を全て知ることが難しいのと同じようなものなんだろうか?


「ところでやっぱりその管理局の人達って船で来んの? あの空飛ぶ奴」

「まず間違いなくそうだろうね。 僕らがこの間乗ってた時空艦船はもうかなり古くなったものを改修して使ってたって話だから、たぶんあれよりは新しい奴が来るんじゃないかな?」

「なら事件が解決したら俺もそれに乗ってミッドに連れて行って貰う訳か。 やべえ、かなり楽しみになってきた」

「船が?」

「それもそうだしミッドチルダっていう未知の世界もそうだな」


 始めて出来た友達とそこへ遊びに行くことを考えるとわくわくさんが止まらない。
 ミッドチルダには『ゴロリもびっくり、紙でできた遊園地』とかもあるかもしれない。
 やべえ、冗談で言ったつもりだったけど魔法世界だけに本当にありそうな気がしてきた。


「ミッドに行ったらまずどこに行く?」

「随分と気が早くない? まずは身分証明書とかの申請をしないと。 それに一番初めに行くのは多分本局の方になるんじゃないかなぁ」

「え? 身分証明書? 本局?」

「うん。 本局というのは時空管理局の本局のことで、次元漂流者は本来そこに行くように推奨されている。 まあこれはあくまでも推奨で、管理局の施設があれば実際はどこでもいいって話だったから僕はミッドに行くつもりだったんだ。 本局は管理局の中でも特に忙しいから身分証明の手続きには時間が掛かるって聞いてたのもあったし」


 ふーん。
 よくわからん、というか全くわからなかったけれど俺はただユーノに従うだけである。
 こいつと離れ離れになったりしなければそれでいいや。


「あと身分証明書なんだけど、これは管理局が発行している本人確認の為に必要なものでね。 実際の形状は『書』じゃないんだけど、それが無いと世界移動なんかはまずできなくなるよ。 というか捕まる」


 ああ、つまりパスポートみたいなもんか?
 そりゃないと捕まるわな。


「それにミッドは犯罪が多いからこれがないとお店に入れて貰えないなんてこともあり得るし」

「おお、それはまたえらく厳しいな。 でもそういうのって自称人権派団体とかが煩くないの? 『他の次元世界に住んでいる者に対する差別だ!』とかさ」

「その人達が何を言いたいのかよくわからないけど、これは人権を守るために導入された制度でもあるんだ。 実際これで冤罪とかもかなり減ったし、なにより管理世界、つまりミッドに住んでる人も全員対象だからね。 登録してない人は密入国している犯罪者ぐらいじゃないかな?」

「ですよねー」


 まあそういうのに反対する奴って元から犯罪をする気まんまんの奴ぐらいだよな。
 俺は前世であった某市民団体の独善的な抗議活動を思い出し、何とも言えない気持ちになった。




 それから俺達は『ミッドの伝統料理って基本的に不味いんだよね。 まあ慣れてしまえばそんなもんだけど』といったような会話をしながら高町家へと戻り、玄関前でユーノは小動物フォームに再び変身した。
 そんな話をしていたからかその日の夕食はいつもより美味しく感じられ、俺は舌が可哀そうなことになってしまったユーノにいつもより多くのおかずを分けてあげた。


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