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No.15974の一覧
[0] 【A's編完結】俺とデバイスとあるハザード(下ネタ注意)[T・ベッケン](2010/09/19 07:21)
[1] 再出発編 第1話 汚伝はじめました。[T・ベッケン](2010/01/29 00:17)
[2] 再出発編 第2話 だけどよだれが出ちゃう。だってオタクなんだもん。[T・ベッケン](2010/02/14 17:02)
[3] 再出発編 第3話 ここはジョークアベニューです。[T・ベッケン](2010/01/29 10:48)
[4] 再出発編 第4話 Q.まほうってなんでできてる? A.血汗に欲望、金のニワトリでできてるよ。[T・ベッケン](2010/01/29 18:19)
[5] 再出発編 第5話 危険物につき取り扱い注意[T・ベッケン](2010/01/30 03:08)
[6] 再出発編 第6話 感離極の黒い悪魔[T・ベッケン](2010/01/30 14:06)
[7] 再出発編 第7話 次元世界の真実?[T・ベッケン](2010/02/15 13:42)
[8] 再出発編 第8話 戦う決闘者達[T・ベッケン](2010/02/01 17:43)
[9] 出会い編 プロローグ 思い出は時の彼方に[T・ベッケン](2010/02/07 15:52)
[10] 出会い編 第1話 それは不可避な出会いなの?[T・ベッケン](2010/02/16 17:13)
[11] 出会い編 第2話 咄嗟の言い訳はロジカルなの?[T・ベッケン](2010/02/16 17:14)
[12] 出会い編 第3話 わかりあえない気持ちなの?[T・ベッケン](2010/02/06 13:35)
[13] 出会い編 第4話 街は危険がいっぱいなの?[T・ベッケン](2010/02/07 15:51)
[14] 出会い編 第5話 ライバル!?もうひとりの火砲少女なの?[T・ベッケン](2010/02/15 13:44)
[15] 出会い編 第6話 ここは湯のまち、海鳴地獄なの[T・ベッケン](2010/02/10 00:42)
[16] 出会い編 第7話 それは大いなる危機なの?[T・ベッケン](2010/02/11 02:45)
[17] 出会い編 第8話 三人目の魔法使いなの?[T・ベッケン](2010/02/11 18:58)
[18] 出会い編 第9話 決戦は海の上でなの[T・ベッケン](2010/02/13 02:34)
[19] 出会い編 第10話 それぞれの胸の誓いなの[T・ベッケン](2010/02/13 15:24)
[20] 出会い編 第11話 宿命が閉じるときなの[T・ベッケン](2010/02/15 19:32)
[21] 出会い編 エピローグ なまえをよんで[T・ベッケン](2010/02/20 11:07)
[22] 友情編 プロローグ Dear My Master[T・ベッケン](2010/03/17 03:22)
[23] 友情編 第1話 たくらみは公然になの[T・ベッケン](2010/03/17 03:24)
[24] 友情編 第2話 戦いの嵐、ふたたびなの[T・ベッケン](2010/03/17 14:45)
[25] 友情編 第3話 再会、そしてお引っ越しなの[T・ベッケン](2010/06/07 14:42)
[26] 友情編 第4話 新たなる力、乱用[T・ベッケン](2010/09/16 22:39)
[27] 友情編 第5話 それは新たなお友達なの[T・ベッケン](2010/06/07 14:44)
[28] 友情編 第6話 それは普通の日常なの[T・ベッケン](2010/05/08 04:58)
[29] 友情編 第7話 懲りない馬鹿と原罪となの[T・ベッケン](2010/04/24 06:36)
[30] 友情編 第8話 正しい決意、勇気の選択[T・ベッケン](2010/09/16 22:38)
[31] 友情編 第9話 運命[T・ベッケン](2010/09/24 10:54)
[32] 友情編 第10話 聖夜の送り物[T・ベッケン](2010/09/20 10:58)
[33] 友情編 第11話 夜の終わり、旅の始まり[T・ベッケン](2010/09/19 07:18)
[34] 友情編 エピローグ Lots of love[T・ベッケン](2010/09/19 09:42)
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[15974] 出会い編 第3話 わかりあえない気持ちなの?
Name: T・ベッケン◆73c3276b ID:e88e01af 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/06 13:35

 さて、俺たちはジュエルシードの前に魔法少女を発見してしまった訳だが、一体彼女は何者なんだろうか。
 ユーノの話ではここに来たとき彼女は既にここに居て、暴走したジュエルシードからの攻撃を魔法の盾で防ぎつつ封印魔法を唱えていたらしい。
 この少女、なんとなくユーノより強そうである。


「どうするユーノ?」

「とりあえず自己紹介でもしようか」

「噛まれないか?」

「噛まないよっ! わたし犬じゃないもん!」


 ちょっとからかってみたら本当に噛みつかれそうになった。
 ちっ。 少し魔法が使えるからっていい気になりやがって。
 

「相方が失礼なこと言ってごめんね? それと始めまして。 僕はさっき君が封印したジュエルシードを追ってきた魔導師で、ユーノ・スクライアと言います。 君の名前は?」

「あ、わたしの名前は高町なのはと言います! 今は小学校三年生で――」


 俺は名前さえわかればあとはどうでもよかったので、それ以降は彼女の持つ杖の方をよく観察することにした。
 その魔法の杖は先端部分に赤くて丸い玉が存在していて、それを金色の金属でできたフレームで杖に固定しているような形状をしている。
 そしてその杖は如何にも魔法使いっぽく、俺としては大変心惹かれるものがある。

 でもやっぱ防御魔法があるってことは攻撃魔法とかもあるんだろうなぁ。
 俺も一度はそういう魔法を使ってみたかったぜ。
 エターナルフォースブリザードとかやってみてー。
 あ、そうか。 圧縮魔法を逆に使って急激に断熱膨張させてやれば出来なくもないのか。
 今度やってみよう。


「――それで、あの、この子は……」


 いつの間にか自己紹介を終えていた少女は魔法の杖を自分の胸元に抱え、ユーノにそれをどうすればいいのか聞いてきた。
 なに? くれんの? ならくれ。


「ああレイジングハート、そんなところに居たんだ。 いやあ無事でよかった。 いきなり鳥に盗まれたから、すごく心配してたんだよ」


 ええっ!? その杖が昨日無くしたデバイスなの?
 昨日少し見たときとは形や大きさが全然違うじゃん。
 ……ああなるほど、これが四次元ポケット的な何かにつながるのか。
 次元世界すげえ。


『I don't admit that. (私はそう認識していませんが)』


 おお、しかもこのデバイスは英語でしゃべるのか。
 そしてユーノはめっちゃ疑われてる。
 実際即効で捜索打ち切ったしな。


「おいユーノ、お前そのデバイスに何したの?」

「別に何もしていないよ。 せいぜい荷物を運ぶのに使って内部空間を多少汚したくらいだよ」


 それだな。
 相性悪いのは自業自得じゃねーか。


「あの、それでこの子はお返しした方がいいんですか?」

「うーん、そうだね、まあ高いものだし……」

『Only it? (それだけですか?)』


 というかユーノの態度そのものにも問題がありそうだ。
 あとはこのデバイス自身も結構プライドが高そうだな。
 なんでデバイスのAI連中ってこう自分を高く売ろうとするんだ?


「つか、どうせ俺らだけじゃ封印できないんだろ? だったらいっそのこと協力してもらって、そのお礼としてプレゼントしてしまえばいいんじゃね? そのなんちゃってハート」

「まだ試したわけじゃないんだから無理だって決めつけないでよ」

『Impossible.  (貴方には不可能です)』

「ほらみろ。 経験者がこう言ってんじゃん」


 というかユーノ、こいつにマスターとして認められてないんじゃね?
 なんとなくあの杖は少女の方に信頼を寄せてて、ユーノはぶっちゃけどうでもいいみたいな感じがする。


「酷いよレイジングハート! 一つのジュエルシードであれだと、確かに僕一人じゃ難しいかもしれないけど――」

「あ、そうだ。 質問なんだけど、あんたって魔法始めてからどんくらい経つの? なんか凄かったらしいじゃん」


 俺は言い訳がましいユーノを無視して少女の方に話を振った。
 この天才児ユーノ・スクライアですらマスターとして認めて貰えなかったんだ。
 こいつが魔法を始めたのは2~3歳くらいか? 


「あの、えと、きょ、今日が初めてです」

「は?」「――僕の話を聞いて、って初めて!? 初めてであんな魔法を!?」


 え? まじで?
 初めて魔法覚えてそれでもうユーノより凄いの?
 なんだこのチート野郎。 ケツにウ○コ詰めて川に沈めるぞコノヤロウ。


「確かに潜在魔力量は明らかに僕より多いけど、それにしてもなんて才能なんだ!」

「というか初めてでも封印とかできちゃうんだ?」

「あの、でも、それはレイジングハートさんが協力してくれたからで、これはわたしの力じゃ……」

『No. It's yours. (違います、それは貴方の力です)』

「だとさ、ユーノ。 もうあげちゃえば? どうせ諦めてたんだろ?」


 ユーノは完全に振られてしまったようだ。 残念。


「ちょ、それは!」

『I thought so. (やっぱり)』

「ち、違うんだレイジングハート!」


 どう弁明してももう手遅れである。


「はいはい、終わり終わり」


 俺は見苦しく言い訳するユーノに最後通告を突き付けた。


「……はぁ。 もう言い訳しても仕方ないか。 でも一般の民間人に――」

「それも今更だろ。 既に魔法の存在は知ってる。 そして封印も容易くやってのけた。 ぶっちゃけ下手すると俺らよりこの件においては有能なんじゃねーの?」


 彼女は魔法の力を手放したくないのかそのデバイスを手で強く握りしめている。
 頼み込めば協力してくれそうだし、本人の意思を確認をするつもりで聞いてみるか。
 というか道具として使い倒してやろう、そうしよう。


「ちなみにそこの魔法少女、あんたはどうしたい?」

「わ、わたしは、できればみんなと協力して、ジュエルシードを集めて、そしてこの街を守りたいです」

「……そうだね。 見たところ資質で言うなら僕なんかより遥かに高い。 魔力量もかなりあるからレイジングハートに防御を任せれば安全性もある程度確保できる……となるとあとは管理局が来たときにどう説明するか、か。 管理外世界の現地人に訳もなく魔法の力を与えると問題になるし。 サニー、何かいいアイデアでもある?」


 そこでこっちに話を振るのかよ。
 俺は管理局がどういう組織なのかもよく知らないっての。


「んー、ようは協力してもらうのに正当な理由があればいいんだろ? そんでレイジングハートもユーノのもとには戻りたくないと」

『Of course. (絶対嫌です)』

「うん、こうしてはっきり言われると結構きついね」


 元所有者はその所有物からの言葉に酷く落ち込んだ。
 大丈夫、元気だせって。
 この世にデバイスはきっと星の数程ある……はず。
 だからお前に合うデバイスだっていつか見つかるさ……たぶん。


「だったらこうしたらどうだ? 『自分一人では上手くいかなかった状況で、現地の少女が僕に協力を申し出てくれた。 そこで試しにデバイスを渡してみたところ、彼女は魔法に対する適性が非常に高く、封印も速やかに行うことが出来た』」


 ここまでの説明に問題はないかユーノに目くばせすると、彼は頷いてくれた。


「『また人格面にも問題を感じられず、彼女の今後の安全等を考慮した結果、これを機に魔法に対する理解を深めておくべきだと判断し、デバイスを託す代わりに協力を要請した』って感じで。 ただしこの場合ユーノの立場が多少悪くなるかもしれないけどな」

「……うん、それなら大丈夫だと思う。 君もそれでいい?」

「う、え、えっと、ごめんなさい。 ちょっと難しくてよくわからなかったかも……」

「おいおい」


 こんだけわかりやすく纏めてやったってのに。
 まさに馬鹿魔力って奴だ。
 馬鹿は馬鹿でまた思い通りにならないから困る。


「要約すると、『身を守るためにも魔法は覚えた方がいい。 そのためにレイジングハートを貸してあげるから僕たちに協力してくれませんか?』ってこと。 協力してくれるならそのデバイスは君にあげてもいい」

「あ、はい、わかりました! それでいいので協力させてください!」

「それじゃあ高町さん、これからよろしくね」

「はい! こちらこそよろしくお願いします! それで、あの、私の事はなのはって呼んでください! 家族や友達のみんなはわたしのことをそう呼んでるんです」

「そう? じゃあこれからは、な、なのはって呼ばせてもらうよ」

「うん! よろしくね? ユーノくん」

「あ、うん、こちらこそよろしく」


 彼女に微笑みかけられてユーノの顔は少し赤くなった。
 さっきは否定してたけど、やっぱり惚れてるだろお前。


「えーっと……あ、そういえばまだお名前聞いてなかったよね? お名前教えて?」


 ユーノに惚れられた女が俺に話しかけてきた。
 なんだ? 急に馴れ馴れしくしやがって。
 ユーノが懐柔されたからって俺もそうだと思うなよ?


「ああいいぞ、教えてやる。 俺の名前はコニシキ・ボンレスハムって言うんだ。 将来は土俵で塩を撒くのが夢かな。 座右の銘は『体脂肪を失ったら負け』だ」


 ユーノが噴き出した。 おい笑うな。 ばれるじゃねーか。


「絶対嘘だよ!」

「ちっ。 よくわかったな。 俺の名前が嘘だと気付いたのはお前が2人目だ」

「わからないはずないよ! 今の明らかにおかしかったもん! それでホントの名前は?」

「本当の名前はササニシキ・コシヒカリって言うんだ。 将来は家庭で米を炊くのが夢かな。 座右の銘は『エルニーニョ 日本全国 米騒動』だ」

「また嘘だ! ねえねえ、どうして教えてくれないの?」


 少女が俺の肩を掴んで揺すってきた。
 ユーノは方を震わせて苦しそうにしている。


「気安く触るなよこのビッチ。 我が一族には知らない人に名前を教えてはいけないという仕来りがあるのだ」


 荷物のせいで重心位置が普段より高いから足元ふらつくようになっちゃったじゃねえかコノヤロウ。


「でもそれじゃあ一生友達ができないよっ!」

「くはっ!」


 こんなちょっとしたジョークに対してなんて容赦のない突っ込みをする女なんだ。
 やっべ、これはしばらく立ち直れそうにないわ。

 ちょっとした一言に深く傷ついた俺はその場に座り込み、地面に『鬱』の字を書き始めた。
 どうせ俺にはユーノぐらいしか友達はいねーよ。
 リア充はみんな死ねばいい。 というか死ね。 嫉妬の神によって裁かれてしまえ。
 あ、でもそうするとユーノも死んでしまうのか。
 じゃあ神様、やっぱり今のは無しの方向で。


「そんなに落ち込まなくてもいいじゃないか。 なのはもそんなつもりで言ったんじゃないと思うんだ、ほら」


 ユーノは苦笑しながらそう言い、その言葉に促された俺はガラスの少年型ハートを傷つけてくれた野ブタの方を見た。


「え? え? わたし何かまずいこと言ったの?」


 どうも彼女はなぜ俺が落ち込んでいるのか全く分かっていないようだ。
 ならいいや。
 俺は落ち込みやすいがその分復活も早いのだ。
 だって世の中はいつだって辛い事ほど積もりやすいからな。
 うまく心の掃き掃除をしてやらないとハウスダストでシックハウス症候群になってしまう。
 そう考えると俺が大半の過去を忘れてしまったのは非常に幸運なことだったのかもしれない。
 転生するときに記憶が消えるのは仕様なんすかね、神様?


「OK、わかった。 そこまで言うならお前に俺の名を知る権利を与えてやろう」

「あ、ありがとう、ございます?」


 少女はどこか納得がいかない様子にも関わらず、俺に向かって素直にお礼を言ってきた。
 こいつは将来何かの詐欺に絶対引っ掛かるような気がする。
 『納豆ダイエット』とか『DHMOは危ない物質だ』とかな。






 その後普通に自己紹介を終え、『今日はもう夜遅いし帰ったほうがいいんじゃないか? というか帰れ』という話をしていたときにその提案はなされた。


「え、もしかしてユーノくん達って野宿してるの?」

「まあな。 でもこの国の官警ってうるさいじゃん? だから今日は寝る場所を変えることにしたんだ。 で、さっきの騒動はそこへ向かう途中で起こったという訳」

「ちょ、ちょっと待って!」


 なんだ? そんなにこのダンボールハウスが気になるのか?
 そうだろうそうだろう。 ガムテープの1つもなしに強度と安定性と寝心地を追求した逸品だ。
 気にならないはずがない。 俺も始めその仕組みをユーノから聞いたときは感動したもん。


「なかなかお目が高いな。 実はこの――」

「かんけいってなに?」

「警察組織の事だよ」


 お前が気になったのはそこかよ!
 ダンボールハウスを見ろよ! コレまじすげーんだぞ!?
 ……あっ、そうか。 子供にはこの凄さが理解できないのかもしれない。
 なら仕方ないな。 『馬鹿には見えないガムテープを使ってるんでしょ?』とか言われたらそれまでだし。


「この街は比較的治安がいいことは昨日調べた時にわかってたんだけど、それも警察の方達が日々努力することで作られてるんだろうね」

「まあレスホームが増えると治安は乱れる傾向にあるからな」

「う~ん、よくわかんないんだけど、ユーノくん達って泊まる場所に困っているんだよね? だったら家に来たらいいんじゃないかな?」

「よくねえだろ」「それは悪いよ」


 俺達は即答した。
 そろそろ『お父さんと一緒にお風呂に入るのは嫌だ。 お父さん死んで』とか言い出すような年頃の女子がいる家に、不審な男子2名を泊めるなんてことは果たしてありえるのだろうか? いやない。
 だって俺が父親なら絶対嫌だもん。
 それに二人で野宿ってキャンプみたいで面白いしな。
 折角の楽しい時間をぶち壊されてたまるか。


「大丈夫だよ。 家にもよくアリサちゃんやすずかちゃんがお泊まりしに来るし。 あ、アリサちゃんとすずかちゃんっていうのはわたしの大切なお友達で――」

「それはお前のお友達が女の子だからに決まってんだろ」


 というかお前のお友達とかどうでもいい。 超どうでもいい。
 自慢か? ぶっ殺すぞコノヤロウ。


 その後もこっちがやんわりとオブリガードに包んで断ってるのに強引に手を引いて家まで連れて行こうとするので、俺達は仕方なく彼女について行くことにした。
 それで断られればさすがにこいつも諦めるだろう。
 そう思っていた。

 だが残念ながら俺の予想は外れることとなる。









「構わないよ。 好きなだけ泊まるといい」


 俺は高町家のリビングで、なのはの父親の高町士郎さん(年齢不詳)と向かい合っていた。


「でもほんとにいいんですか? 見ての通り俺達って不審者ですよ? もう、これ以上ないってくらいに不審じゃないですか。 不審者といったら俺、俺と言ったら不審者ってぐらいの不審者っぷりですよ?」


 現在ユーノは俺の想いとは裏腹に少しでも泊まれる確率を上げようと小動物の姿に変身中。
 俺は『いじめに耐えきれなくなって孤児院を脱走したら、旅の途中でこの子(ユーノ)を見つけ、孤独に耐えかねてそれを飼いはじめた男の子』という設定を付け加えられた。
 そしてなのはがその嘘設定を母親の桃子さん(こちらも年齢不詳、多分結構若い)に説明した結果、先ほどの様にこの家への滞在許可が下りてしまったのだ。


「本当の不審者は自分の事を不審者とは言わないわ」

「ましてやなのはと同じぐらいの子供だったら尚更だ。 恭也も美由希も、別にいいだろ?」


 俺は『そんな設定有り得ないだろ』と内心思っていたが、高町家のご両親はそれを信じたのか少し目がうるんでいる。
 そして何故か横で聞いていたなのはも泣きそうになっている。
 というかこの設定考えたのは半分お前だろうが。 アホか。


「ああ。 何の問題もない」


 と、なのはの兄の恭也さん。


「もちろんだよ! それにこのフェレットも可愛いしね~」

「キュッ!?」


 そしてなのはの姉である美由希さんはユーノに夢中である。
 身体を触られてくすぐったいのかユーノはピクピクしている。
 これ、人間形態なら逆セクハラで訴えられるよね?


「これで家族皆の同意が得られた訳だ。 さあどうする?」


 家族皆のその発言に気を良くしたのか、士郎さんは笑顔で俺に最終確認をしてきた。
 ……どうすっかな。
 確かに屋根付き壁つきトイレ付ってのは非常に助かる。
 ジュエルシードを探しに行く時も民間協力者(パシリ)の助力を得やすい。
 そしてなによりユーノが彼女に惚れている。
 よし、なら折角の御好意だ。 甘えさせて貰った方が失礼も少ないだろう。


「じゃあしばらくの間よろしくお願いします」


 俺は一度椅子から立ち上がって深く頭を下げた。


「うん、こちらこそよろしく、サニー君。 でもなのは」

「なに、お父さん?」

「夜は危ないから、もう勝手に出かけちゃ駄目だぞ?」

「は、は~い……」


 なのはは帰ってきてそうそう恭也さんと美由希さんに見つかり、深夜徘徊の件について一度注意されている。
 その際説明した外出理由は、『昼間可愛いフェレットを見つけたから餌付けをし、夜になって鳥や猫にでも襲われていないか心配でたまらなくなったから確認しに行った』である。
 ちなみにこの設定を考えたのはユーノとなのはだけで俺はこの件については一切ノータッチである。

 俺ならもっとマシな言い訳をするね。
 例えば、『昼間美味しそうなフェレットを見つけたから餌付けをし、夜になってチュパカブラや北京原人にでも喰われていないか心配でたまらなくなったから確認しに行った』とかな。
 突っ込みどころを多く作ることで相手の思考を逸らすのだ。




「ところで、サニー君はもう晩ご飯を食べたのかい?」

「あ、はい。 既に自分達で用意して食べました」


 俺は椅子に座りなおし、いざという時の為に野生動物の捌き方を勉強しておこうと思いながらそう言った。


「ちなみに何を食べたのか聞いてもいいかい? 話を聞いてると余りちゃんとしたものを食べてないんじゃないかと心配になってね」

「いえ、ちゃんと食べてますよ? 今日の晩御飯はつくしとタンポポの葉とノビルの鱗茎、それと菜の花のお吸い物ですかね。 最近の若い人は苦味を知らないで育つから味音痴が多いって言いますけど、その点僕は苦味だけじゃなくて臭味まで知っている点現代人よりも優れていると思います」

「うぅ、こんな若いのに……。 今はこんなものしかないけれど、もう食事の心配はしなくても大丈夫だからね?」


 桃子さんは何故か声を震わせながら俺にシュークリームを差し出してきた。
 第六の味覚について自慢したつもりだったのに、なんでだ?
 まあ折角なのでそのおやつはありがたく頂くとしよう。


「こ、これはっ!? 味覚の関東大震災や!」


 そのシュークリームを口に入れた瞬間、俺の口の中には暴力的なまでの味のオーケストラが身体全体に響き渡った。
 転生して始めて食べたお菓子は想像を絶する美味しさで、俺はその甘味の衝撃波によって再び昇天しそうになってしまった。
 砂糖の甘さってこんな感じだったっけ? 何か違う気がする。
 あー、でもこれ、めっちゃ美味いわ。 もう死んでもいいかも。




 それからしばらくの間若干上の空のまま高町家の皆さんとの交流が続き、今後についての話がひと段落ついたところで俺とユーノはお風呂を借りた。
 やはりシャンプーで髪を洗うのは気持ちがいいものである。
 そしてユーノ、やっぱりでけえ。


 風呂から上がった後、俺達は用意された部屋の布団に横になった。
 ユーノはなのはと美由希さんが作った小動物用の簡易ベッドで丸くなっている。


「なあ、ユーノ」

「なに?」

「この世界の人達ってみんなこんな風に暖かいんだろうか?」


 俺は昨日今日と会ったはや……て、いや、せ? のことも思い出しながらユーノに問いかけた。


「さあ? それはわからないよ。 もしかしたらこの家の人だけかもしれないし、そうじゃないかもしれない。 ところで前にサニーがいた世界ってどんな感じだったの?」

「そうだなぁ。 これは今俺に残されてる記憶が妄想でないという仮定の話だぞ?」


 というか知識があれだけちゃんとしてるのに妄想ってことはないだろう。


「うん」

「まず研究以外では必要最低限の会話しかなかった。 今みたいに友達なんていなかったし、『明日休校?』『そうみたい』って会話が年に1、2回あればいいほうだったな」


 俺がユーノと普通に話をすることができたのは一か月以上完全に人との交流が無かったことも関係あるのだろう。
 あの生活にも話し相手としてバールはいたけれど、いくらAIが優秀だと言ってもこいつは人間じゃない。
 それに引きこもっていてもネットや買い物なんかで、人との繋がりが完全に切れてしまうことはそうそうないのだ。
 やっぱり人という生き物は1人では生きられないのだろうか?


「そうなの? でもサニーだったら案外人気者になれそうな気もするんだけど」

「まあ当時は今みたく積極的に話しかけたりとかしてなかったからな。 ところでお前は昔どんな感じだったの?」

「うーん、僕の学生時代の話でもいい?」

「むしろそう言った話が聞きたい」

「うん。 えーっと……あれは僕がまだ5歳ぐらいの時だったかな――」



 その後俺とユーノは小一時間ほどお互いの過去について語り合った。
 夜も更けてみんなが寝静まった頃、俺は暖かい布団に包まれながら『ああやっぱり友達っていいなぁ』と、そう思った。


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