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No.15556の一覧
[0] 【俺はすずかちゃんが好きだ!】(リリなの×オリ主)【第一部完】[[ysk]a](2012/04/23 07:36)
[1] 風鈴とダンディと流れ星[[ysk]a](2012/04/23 07:36)
[2] 星と金髪と落し物[[ysk]a](2012/04/23 07:36)
[3] 御嬢と病院と非常事態[[ysk]a](2012/04/23 07:36)
[4] 魔法と夜と裏話[[ysk]a](2012/04/23 07:37)
[5] プールとサボりとアクシデント[[ysk]a](2012/04/23 07:37)
[6] プールと意地と人外[[ysk]a](2012/04/23 07:37)
[7] 屋敷とアリサとネタバレ[[ysk]a](2012/04/23 07:37)
[8] 屋敷と魔法少女と後日談[[ysk]a](2012/04/23 07:42)
[9] 怪談と妖怪と二人っきり[[ysk]a](2012/04/23 07:42)
[10] 妖怪と金髪と瓜二つ[[ysk]a](2012/04/23 07:42)
[11] 閑話と休日と少女達[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[12] 金髪二号とハンバーガーと疑惑[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[13] 誤解と欠席と作戦会議[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[14] 月村邸とお見舞いとアクシデント[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[15] 月村邸と封印と現状維持[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[16] 意思と石と意地[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[17] 日常とご褒美と置き土産[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[18] 涙と心配と羞恥[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[19] 休日と女装とケーキ[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[20] 休日と友達と約束[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[21] 愛とフラグと哀[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[22] 日常と不注意と保健室[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[23] 再会とお見舞いと秘密[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[24] 城と訪問と対面 前篇[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[25] 城と訪問と対面 後篇[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[26] 疑念と決意と母心[[ysk]a](2013/10/21 04:07)
[27] 管理局と現状整理と双子姉妹[[ysk]a](2012/04/23 07:39)
[28] 作戦とドジと再会[[ysk]a](2012/04/23 07:39)
[29] 作戦と演技とヒロイン体質[[ysk]a](2012/04/23 07:39)
[30] 任務と先走りと覚悟[[ysk]a](2013/10/21 04:07)
[31] 魔女と僕と質疑応答[[ysk]a](2012/04/23 07:39)
[32] フェイトとシルフィとともだち[[ysk]a](2012/04/23 07:38)
[33] 後悔と終結と光[[ysk]a](2012/04/23 07:38)
[34] 事後と温泉旅行と告白[[ysk]a](2012/04/23 07:38)
[35] 後日談:クロノとエイミィの息抜き模様[[ysk]a](2012/04/23 07:38)
[36] 後日談:ジュエルシードの奇妙な奇跡。そして――――。[[ysk]a](2012/04/23 07:37)
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[15556] 魔女と僕と質疑応答
Name: [ysk]a◆6b484afb ID:96b828d2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/04/23 07:39
 
 プレシア・ベルリネッタ。
 前世を思い返せば必ずと言って良いほど思い出す、俺とシルフィ双方に共通する超天敵の名前である。
 ぶっちゃけシルフィの実の母親で、俺にとってのお義母様なんですけどね。

 そんなお義母様を一言で表すとすれば―――――ずばり、マッドサイエンティスト。これしかあるまい。

 前世における大富豪世界ランキングトップ10に入るような財力と、世界一と呼んでも差し支えない超大企業、ヒザキコンツェルンの医療生体科学研究局の局長とかいう肩書を持ち、当時加速度的に深刻化していた少子化問題の解決手段として、後に大流行することとなる代理出産用人工子宮型培養機を開発した〝現代の聖母/マリア〟と称される大天才様。
 だが、それはあくまで表向きの顔。
 実態は 双子の娘の内片方しか愛さず、その愛していた片方の娘が死んだとなると、すぐさま全財産と人生を費やして死者蘇生紛いの技術を完成させた挙句、その実験に必要だからと人様の血液欲しさに殺しにかかって来るような、モンスターペアレンツも真っ青なヤンデレママである。
 そんな、金を持っているマッドサイエンティスト程質の悪いものは無いカテゴリに入るお方のおかげで、前世ではホントに酷い目に遭った。シルフィも十分性格がアレだったが、その母親も母親だ。
 ちなみに、その殺されかけた奴っていうのは言うまでもなくシルフィの事であり、ヤンデレ選手権ぶっちぎりトップのプレシアお義母様に愛され過ぎている双子の片割れというのが、実はシルフィの姉だったりする。転じて、シルフィはその内のもう片方―――つまり、〝愛されずに捨てられた〟方だってわけだ。
 親子関係が歪んでるどころの騒ぎじゃない。
 そんな背景事情を知ってしまえば、シルフィのあの破天荒な性格にも思わず納得が言ってしまうばかりか、よくもまぁこんなにも正しい方向にひねくれてくれたもんだ、と感心する事しきりだった。
 無論、一度だけ俺は、シルフィに家族関係の事について詳しく訊ねて見た事がある。だが、シルフィはその姉の事も含めて多くを語らなかったし、プレシアお義母様に至っては「貴様なんぞに語る舌などもたぬわ!」みたいな態度だったので、実のところシルフィの姉というのがどんな人物だったのか、俺はまったくもって知らない。
 ただ、シルフィが言うには「本当なら、死ぬのはボクの方だったんだ」と語っていたことから、きっと何かの事故に巻き込まれたのかもしれない。
 シルフィの姉に関する事は、全て憶測だ。俺が知っている事と言えば、シルフィには姉がいた事。プレシアお義母様はその姉を生き返らせようとしていた事。そのためにはシルフィの血液――遺伝情報――が必要だった事。そして、そのシルフィの血液をめぐって、俺とシルフィがものすんごくエライ目に遭わされた、ってことだけ。
 その過程の中で、シルフィは自身の血液と引き換えに大金を得て、〝ベルリネッタ〟の名前を捨てた。
 結果だけを見れば、それは決してハッピーエンドとは言い難い。
 口では憎まれ口を叩きながら、愛が欲しいと行動で示し続けた醜いアヒルの子は、結局一滴一欠片の愛情すら得ることなく、天涯孤独の身で空へと旅立ったのだから。
 
 だが、俺はそんなシルフィを心から誇りに思うと共に、最後まで偏屈な科学者であり、たった一人の娘の母親であり続けたプレシア・ベルリネッタを、色んな意味で尊敬する。
 
 最終的に、その頑固比べはプレシアお義母様の勝利で終わってしまったわけだが、負けてもタダでは転ばないシルフィの強かさは、間違いなくあのヤンデレお義母様譲りに違いない。
 ともあれ、頑固者で意固地で一度決めたら絶対に曲げないところなんて、ホント親子そっくりだ。
 そのそっくりさ加減が、まさか〝こっち〟でも当てはまるなんて、ホント世界ってのはフシギで一杯だ。



「それで、二回もいたいけな少年を拉致した理由ってなんなんでしょーか」
「先日は邪魔が入ったから聞き出せなかったでしょう? 今日はその続きよ」
「うわーい全然うれしくねー」
 
 
 
 ホントに――――しつこさまでもが〝あっち〟のお義母様とそっくりって、勘弁しろよ畜生。




 





                           俺はすずかちゃんが好きだ!










 フェイトに拉致された後、俺が案内されたのはまたしても、あのバカでかい広間だった。
 ぶっちゃけ鼻血を出したり殺されかけたりすずかちゃんに情けないカッコ見せたりで、全然良い思い出がないんだが、連れてこられた以上しかたあんめぇ。
 拉致されたのは予想外にしても、できればもう一度落ち着いて話を聞きたかったというのは少なからず考えていた事なので、こうして再び見えた事は棚から牡丹餅な出来事であるとも言える。
 ……そうポジティブに捉えないと、いいかげん俺の身体どころか魂に染み付いているとしか考えられない不幸体質にめげそうになるのですよ。
 実はね、恥ずかしながらワタクシ、前世におきましても数回拉致されたことがありまして、ええ。
 さらに付け加えますと、その度に助けてくれたのは何を隠そう、重度の邪気眼厨二病患者ことワタクシの嫁さんでしてね?
 いやー、もう今世でも既に心の中の嫁ことすずかちゃん(+その他数人)に一度拉致から助けてもらっている以上、またこうして拉致されてしまうとなると、もはや不幸の星の下に生まれたというより、魂の芯までヒロイン体質が染み込んでるんじゃなかろうかと疑ってしまう次第でして……。
 …………ちくしょうっ!
 今度こそは絶対に自力で脱出してやるからな! 今度という今度こそヒロインみたいな助けられ方はしてやらねぇぞクソッタレがァっ!



「……なんて思っていた時期がボクにもありました」

 
  
 冷静に考えてみたら、自力で脱出しようにも俺ってば魔法使えないから無理なんだった。てへぺろっ♪
 どう考えてもこの〝時の庭園〟とやらは地球にはないだろうし、仮にあったとしても海鳴の近くとは絶対に考えられん。
 城の外に出れば青空が広がり、青草の香りを一杯に孕んだ風も吹いているしで、たぶんどっか別の星か何かなのかもしれんが、まさか歩いて帰れる距離にあるわけじゃないだろ。
 もしくは、クロちーとかが言う別の〝次元世界〟って線もありかもしれん。ていうかそっちのほうが濃厚な気がする。
 ……どちらにせよ、脱出は不可能ってわけだ。



「どうやら、お話をしてくれるつもりにはなったようね?」
「そりゃまー、拉致を二回もされちゃぁ、逃げ回る気も失せますって」
「賢明な判断が出来る子で助かるわ」



 表情を一切変えず、前回と同じように広間の中央奥、デン!と設えられている玉座に腰掛けている妙齢の奥様は俺を見据えていた。
 俺を連れてきたフェイトは既にいない。あのオバサンに、広間にはいるなり「下がりなさい、フェイト」と労いの言葉もなく追い出されたからだ。
 下手すりゃクロちー達に現行犯逮捕されてもおかしくないほどのリスクを背負って、アイツは俺を拉致したと言うのに……薄々思っていたが、このオバサンからは、前世の〝お義母様〟と全く同じ匂いを感じてしまう。
 同時に、胸の奥にどろっとした何かが溜まっていくのを感じ、俺はそれをぐっと堪えてわかりきったことを聞いた。



「……んで、何が聞きたいんですかァ? 人一人攫うっていう博打を打った娘に労いの言葉一つ賭けられない冷血オカーサマ?」
「娘というのが誰の事を言っているのかわからないけど、そうね。回りくどいのは私も好きではないから、単刀直入に聞くわ」



 ……おいおい、マジですか。そんなところまで瓜二つってか。
 だが、ここでそれを突っ込んでもまた話がグダグダになりそうなので再び我慢。



「貴方、どうやってジュエルシードを制御したの?」
「へ?」
「とぼけても無駄よ。あの出来損ないから話は聞いているもの。先日、ジュエルシードを発動した際に、その力を制御したらしいわね?」
「いや、あの、いきなりなんのことやら……」
「本来、アレを発動させてかつ自分の思い通りに制御するには、大規模な演算能力を持ったデバイスが複数必要なはずよ。それも演算能力が高いだけでなく、〝使用者〟のイメージを出来る限り具体化できる〝偶像抽象化〟の補助も可能なものでなければならない。とてもではないけれど、人一人が個人で制御しうるものではないの」
「……えくきゅーずみー? 自分、てんでお話についていけないんですが~」



 ジュエルシードの制御って、もしかしてすずかちゃんと忍さんの身体入れ替わり事件の事を言ってるのか?
 確かに二人の身体を元に戻すために発動したのは俺だけど、その後どうやって封印したのかとか全然知らん。制御方法なんて以ての外。
 そもそも、そんな事できるんだったら既にやってますがな! 大事な大事なマイ・サンッを取り戻してますがな! ないジュエルシードは高町から死んででも奪い取って!
 ……でもなぁ、最近の高町おっかないんだよなぁ。鬼ー様とかしろーさんとかに鍛えられてるのもあるし、魔法なんていうチート技覚えた所為で妙に強気になってきたって言うか。
 以前は自分に自信がないからか、言動に主体性が無くて見てるこっちがイライラしたり、周囲に合わせようと必死にへらへらしてたりで見ててむかつくような奴だったのに、今じゃしっかりと「だめだよほんだくん、それはやっちゃいけないことなんだから!」とか何とか某金髪学級委員様みたく歯向かってくるようになっちゃってまぁ……いいことだな、うん。

 ってそうじゃねぇよ!

 高町なんてどうでもいいんだって。そんなことよりジュエルシード、そうジュエルシードです!
 


「俺がアレを制御って……魔法少女でもない、極々一般家庭に生まれ育ったいち小学生の俺にそんなことできるわけないじゃないですか」
「……なるほど、発動した事に関しては否定しないのね」



 うげ、墓穴掘った!?
 ええぃ、隠す事でもないし、ここは素直に話を続けよう。



「いや、まぁ確かに発動はしましたよ。危急の状況でしたし、俺がやらなきゃ誰がやる!的な感じで切羽詰まってましたもん! でも、だからってアレを制御できたとかいうのとは別の話です! 俺はただ発動しただけで、その後どうやって封印されたのかなんて知りませんし、仮に俺が制御したんだったとしても、やり方なんて覚えてるわけでもないし後遺症出てるしで失敗もいいところですがな!」
「それでも、貴方は今こうして無事に生きているわ。つまり、最初の目的は〝叶えた〟ということよ。そして、願いを叶えて生きているということは、十分制御できたと言えるわね」



 組んでいた膝を組み換え、頬杖をつきながら冷然と俺を見据えてくるプレシアおばさん。
 同時に、俺はその威圧感の向こう側に潜む心の声を聞いた。



「つまりなんですか――――速い話、自分も使いたいからその制御方法を教えろ、と?」
「理解が速くて助かるわ。そうよ、それさえ教えてくれれば、すぐにでも貴方を家に帰してあげるわ」
「魅力的な提案ですが、残念ながら知りません。あえていうなら〝イメージしろ!〟としか」
「……そう。とりあえず、この質問は後回しにしましょう」



 あれ?
 やけにあっさりと引き下がったな。
 てっきり前回のように力尽くでも危機だそうとして来るかと思って、内心かなり身構えていたんだが……。



「次の質問だけれど……」
「はぁ。俺としてはさっさと家に返してほしいんで話がサクサク進むのはありがたいんです―――「〝シルフィ〟」―――がっ」



 心臓がとび跳ねた。
 全く予想していなかったわけじゃない。
 前回アレだけ凄まじい〝尋問〟をしかけてきた以上、その名前がこのオバサンにとってタブーに等しいモノであったのはわかりきっていた事だ。
 ならば、次に会う機会があれば、その事について聞かれるんじゃないか、ってくらいには俺も頭の中では考えていた。
 でもこれは不意打ちすぎる。
 ゆっくりと、先程よりさらに冷え込んだ、まさに絶対零度の眼差しで俺を見据える魔女の方へと向き直る。
 


――――殺される。
 


 下手な回答をすれば、文字通りその運命が俺の目の前に待ち受けている事を理解した。
 虚偽も誤魔化しも許さない。ただ真実のみを語ること以外に、この城を出る術は無い、とその双眸は語っている。
 間違いない。
 俺は、無意識にも――――またもや特大の地雷の上に足を乗っけてしまったのだ。



「何故、貴方がその名前を知っていたのかしら?」
「そ、れは……」
「いえ、貴方がその名前を知っている事にはなんの問題もないわ。もしかしたら貴方の暮らしている世界にいた知人かもしれないし、なんらかの縁がある人間なのかもしれない」
「や、やだな、そんなわかりきってるなら、なんでわざわざ――――」
「問題はね、坊や。何故、貴方がその名前を、私に訊いてきたのか、ということなのよ」


 
 今度こそ、全身に緊張が走った。
 意識しなくとも足の指先にまで力が入り、手のひらには気持ち悪いほど汗が溢れてくる。
 鋭いなんてもんじゃない。このオバサン……ほとんど答えをわかっていながら聞いてきてやがる。
 確かに、普通に考えれば俺が〝シルフィ〟なんていう名前をしっていようがいまいがどうでもいいことだろう。
 仮に生き別れの兄弟か何かだとして、行く先々の人に聞いているんです、とでも言えば言い訳としては成り立つ。



 あくまでも、赤の他人に対しての質問であれば。



 だが、それが関係者―――つまりシルフィの肉親だったり、ないしはそれに近い、深い関係を持っている人間であれば、話は違ってくる。
 もし、もし仮にだ。
 この目の前の魔女様がシルフィの実の肉親、つまり母親だったとして、見ず知らずの別世界に住む小僧が、突然「シルフィって子のこと知りませんか?」と実の娘の名前を出してきたらどう思う?
 当然警戒するはずだ。
おまけに、あの時俺はシルフィの事を聞くのに合わせて、アイツの具体的な性格までもをうっかりはちべぇどころではないレベルで暴露してしまっているのでした。
 だとしたら、この魔女様の懸念が何であるのか――――容易に想像できる。
 
 
 
「今までのやり取りでわかったことだけれど……貴方、見た目とは不相応に頭が賢いものね。私が何を聞きたいのか、わかるのではなくて?」
「か、かか、買いかぶり過ぎじゃないっすかねぇ~……いやほら、ホント自分、単にませてる小3のガキでしかないんで……」



 噛み噛みの返事をしながらも、俺は必死にこの後につなげる会話を考えていた。
 今の俺に出来ることと言えばそう多くはない。
 せいぜい、このまま必死に知らぬ存ぜぬで突っぱね続けてデッドエンドを迎えるか、命がけの慣れもしない虚実入り混じった会話で駆け引きをするか、それとも死ぬ気で高町達が助けに来てくれるのを期待してここから全力で逃げるか。
 どれも、生還率一割を下回る事間違い無しの大博打なのは言うまでもない。気分的には鬼畜何度で有名なアドベンチャーゲームで、調子に乗っていたらいつの間にかデッドエンド直前の選択肢に遭遇した時のアレに似ているな。そんな呑気な自己分析でもしていなければ、正直どうにかなってしまいそうなほど、心臓がバクバクと痛いくらい動悸を起こしている。
 だが、逆に考えればどの行動を取っ手も、俺が生き残れる確率は五分といったところだろう。なら―――、 



「――――昨日のように逃げるつもりかしら? 残念だけれども、それは無駄よ。私が納得できる答えを聞くまでは、貴方をここから逃がすつもりもなければ、時間をかけて聞き出すつもりもないわ」



 それは、ぞっとするほどに冷たい声色だった。
 差し向けられる視線は絶対零度の凛冽を極め、逆らう事を許さない、膝が笑いだす程の威圧感を孕んでいる。
 嘘をつけば、その言葉に違わずどんな手段を使ってでも真実を引きずりだそうとするだろう。
 駆け引きなんて生温い会話をさせてくれるとも思えない。
 ましてや、逃げだそうものなら、あの時のような不可思議な壁で捕まえてくるのは当然として、ロシアンマフィアも真っ青な拷問をしかけてきても妙に納得できてしまう。それほど凄惨な決意と、強迫的な威圧感を纏っている。
 ……もしかしなくとも、俺は事態を軽く見ていたのだろう。
 前世で、初めてお義母様に会いに行ったときのように――――心の中の何処かで、今の自分の立ち位置を、まるで映画を観賞しているかのような気分で、軽々しく、実感もないままに首を突っ込んでしまった。
 ……ホント、バカってのは死んでも治らないらしい。
 あの時、アレ程反省したと言うのに、結局死んでから二度目の生でも、やってることは死ぬ前と何一つ変わっていない。
 中途半端な覚悟で首を突っ込めばどうなるか、嫌になるほどわかっていたはずなのに……。
 ここにきてようやく、俺は胸の奥につっかえていた何かが取れたような気がした。ふっきれたと言っても良い。

 そうだよ……そもそも、俺の本当の目的はなんだった?

 初めてここに来る時、何を考えてフェイトの誘いに乗った?
 のらりくらりと、できもしない下ッ手クソな会話をするためか?
 違うだろ。
 例え偽善だろうが自己満足だろうが、俺の納得いく答えを手に入れたかったからじゃないのか。
 だったら、いつまでも趣旨を履きちがえた行動をしてるわけにはいかねぇよな。
 俺がこうしている間にも、高町達は間違いなくクロちー達と合流し、どうやってここに侵入しようか考えているはずだ。
 アニメや漫画的なお約束が通じると考えれば、この城が秘密基地みたいな存在だったとしても、バレるのは時間の問題に違いない。
 そして、その時までに状況が今となんら変わりなければ、結末は俺や高町、アリサとすずかちゃん全員にとって、誰も幸せになれない、いつだって突きつけられる〝現実は残酷だ〟という夢も希望もない話に終わってしまう。
 ……そんなの、絶対に嫌だ。
 〝俺とシルフィの物語〟は、どう贔屓してみても幸せな結末とは言い難かった。
 どれだけ母の愛を求めても報われることなく、終いには自分の血液と引き換えに母と決別したことのどこが幸せだと言うのか。
 あれだけ、何時になるともしれない結婚式を楽しみにしていたっていうのに、結局ドレスを着ることすらなく死んでしまった結末が、どこをどう見れば幸せだったと言えるのか。
 だから。
 せめてこの、生まれ変わった二度目の人生では、あと少しで手が届くところにある幸せな結末を逃すなんてことは、したくない。
 


「おっけ、わかりました。観念しました。どの道、このまんま誤魔化し続けても、その後におっそろしい尋問が待ってそうなんで素直にゲロしますよ」
「……あら、存外素直ね。こちらとしては、貴方の言う尋問とやらを真剣に考えていたのだけれど」
「本気で命の危険が!?」


 
 知らずと死亡フラグその1を回避できたことに心から安堵。
 ともあれ、ここまできてしまったらもう腹決まったようなものである。
 


「ただ、俺もタダで喋るつもりはありませんよ。お互い一問一答。ギブアンドテイク――――ってのはどうでしょ?」



 ニマァ、っと笑みを浮かべながら、俺を見下ろす玉座の魔女様を見返す。
 見れば、そこには意外にも俺と同じように、うっすらと嗤う妙齢の魔女様がいた。
 それはかつて、今でさえも鮮明に思い出せるあの時――――〝前世〟でシルフィが母親を目の前にして自分の血を売ると宣言したあの瞬間。その宣言を聞いたお義母様の表情とそっくりだった。
 それが何を意味しているのか、考えるまでもない。
 シルフィの言葉が終わるや否や、あのマッドサイエンティストお義母様がシルフィに向かって小切手を投げつけてきたように。
 雷の御姫様の母上は、頬杖を吐きながら俺を見据えると「では、次の質問は坊やからね」と、話の続きを促してきたのであった。











 なんて、かっこつけて質疑応答に臨んだものの、今もって俺の頭の中で渦巻いている第一の欲求は全然変わっていない。
 


「(あ~……ここ最近、すずかちゃんと全然話せてない)」



 玉座に腰掛けた魔女様の質問には真面目に答えつつ、脳裏ではラブリーマイゴッデスすずかちゃんの微笑を無限ループで上映中。
 器用な真似ができるもんだ、と思われるかもしれんが、自分伊達に精神年齢三十超えてませんから。
 深夜バイトで眠くて仕方ない時、授業中少しでも真面目に授業を受けているように見えるためには、と試行錯誤を積み重ねた末の努力が実を結んだ、と思ってもらえればいい。
 ちなみに、魔女様の答えに真面目に答えているのは、文字通り後が怖いから。下手に答えてこないだみたいなデッドエンドまっしぐらとか絶対に御免こうむる。
 ともかく。
 ここ最近、フェイトの事やらジュエルシードの事やらで、我が癒しのオアシスことすずかちゃんと触れ合う機会がほとんどない。なさすぎる。
 あいや、確かにさ? ここに来る直前に猫すずかちゃんなんていう至宝もののレアイベントに遭遇出来ましたよ? 加えて、不可抗力とは言えあのすずかちゃんのやわ肌をちらりとも見ることができてしまったわけですよ!? これが嬉しくないはずないじゃないですかっ!
 あぁそうさ、すずかちゃんの柔肌を拝めただけでも奇跡モノの幸運さ!
 だがな、それはそれなんだ。あくまでも〝遭遇したら嬉しい〟イベントであって、〝すずかちゃんと仲良くなれる〟イベントじゃぁないんだよっ!
 ぶっちゃけると、俺はもっとすずかちゃんと仲良くなりたいんですッ! つーか最近すずかちゃんと気まずいイベントばっかり起きてたから少しでも関係修復したいんだよっ神様のバカヤロォオオオオオオオ!!!
 ……うぅ、そのためにも、早いとここの魔女様とフェイトの問題を処理しないといけないんですけどね。



「……つまり、ジュエルシードを制御しようとしたわけではない、ということかしら?」
「だから、さっきからそう言ってるじゃないですか。こっちはあくまで発動しただけ。その後どうにかなったのは、一緒にいた高町かユーノのおかげなんですってば!」



 だというのに、この魔女様のしっつこい追求である。さすがは俺を二回も拉致させた魔女様。しつこさで言えば前世のお義母様と比類する。
 既にこの問答も三回目だ。先程身の危険を感じたばかりの〝シルフィ〟というキーワードよりも、どうやらこの魔女様はジュエルシードの制御方法にご執心の様子。
 中身は相も変わらず、すずかちゃんと忍さんの身体入れ替わり事件の事で、どうやって俺がジュエルシードを制御したのかということをしつこく聞いてくる。
 答えなんて俺すら知らないと言うのにどう答えろってんだ。
 そのくせ、俺の質問には「それは答えられないわ」「貴方に話せる事柄ではないわね」「貴方とはまるで関係のない事よ」という政治家みたいな回答ばかりをくれやがる。
 この世界にジュエルシードがあるってなんでわかったのか、ジュエルシードを集める理由はなんなのか、ジュエルシードの制御法を知ってどうするつもりなのか。
 どれも悉く回答保留、もしくは回答拒否という一問一答もへったくれもない有り様だ。さすがの俺もこれにはやる気がうせてくる。
 ……最初から予感してはいたことなんだけどさ。
 この魔女様が、前世のお義母様にそっくりな時点で、他人様の質問に律儀に応えるような人間だなんて絶対にあり得ない、って。
 思いっきり嘆息しながら、俺は大分距離の離れた位置に腰掛けている魔女様を見やる。
 心なしか疲れたような表情をしているのは気のせいか?
 あるいは、期待通りの返事が得られなくてがっかりしているのかもしれんな。
 どちらにしても、ご期待に添えず申し訳ございませんという気持ちは毛頭ないのでどうでもいい。
 さて、それじゃ今度はこっちの番だ。



「で、俺としてはもう、碌な答えが返ってこないんで期待してないんですが……」
「あら、失礼ね。私は貴方との約束通り、きちんと質問には答えているわよ?」
「そういうのは回答拒否と対して変わんないんですよ。どの道、それならもう回りくどいのも面倒なんで聞かせてもらいますけど」
「なにかしら?」
「――――俺が〝シルフィ〟って名前を知ってると、何か不都合でもあるんですか?」



 ぞくり、と背筋が寒くなる。
 暫くの間消えていた緊迫した空気が、再び、今度は濃密な圧力を伴って再来した。
 〝シルフィ〟という名前が地雷ワードだっていうのは、先刻の問答で百も承知だ。しかし、どうせこちらから質問しても得られる回答が碌にないのなら、虎穴に入らずんばなんとやら、である。
 結果として、俺は虎穴に入った挙句にその尻尾を踏んだらしいが。



「……知ってるのね?」
「その名前は知ってます。俺にとって、世界で一番大切な二人の内の一人でしたから」



 だが、もう怯まない。
 そもそも、俺が最初にここに来た理由は、シルフィとフェイトの関係を知りたかったからだ。
 単純に二人が瓜二つなそっくりさん、ってなら別にいい。だが、何かの要因で――例えば、俺の場合のように――同一人物だというのならば、無視するわけにはいかない。
 もはやここにきて、俺はすずかちゃんの微笑みだけを思い浮かべているわけにはいかなくなった事に気付く。
 変わらず俺の中での大切な人一位はすずかちゃんであるが、アイツに関する事は別枠なのだ。つまり、それはそれこれはこれ。
 残念な事に、この本田時彦と言う人間は、大切な人を一度に二人も考えられるほど器用な人間ではなくてね。胸を割き、断腸の思いを振り切って、俺は一端すずかちゃんの事は忘れる事にする。
 
 

「こればっかりは、俺も引くつもりはありませんよ。事と次第によっちゃ、時空管理局に通報させてもらいます」
「……なんですって?」
「ふっふっふ……これ、なーんだ♪」



 そう言ってとりだしたのは、俺が普段持ち歩いている携帯電話。
 それをこれ見よがしに持ちあげて軽く振ってみる。普段からストラップを付けていないまっさらなものだが、遠目から見た限りでは新品そのものに見えるだろう。



「なるほど……私を脅迫しようというのかしら?」
「どうとって頂いても結構。けど、このボタンをひと押しするだけで、この秘密のアジトの場所が大公開って結果がありえるということは留意してもらいたいですね」
「それを私が信じるとでも?」
「信じなくとも、警戒せざるを得ないでしょう? 質問に真面目に答えてさえもらえば、俺はこれを押すつもりはないですし、答えてもらった後にこれを渡してもいいくらいですから」
「今まで連絡しなかった、という保証はない以上、その言葉を鵜呑みにはできないわ」
「ここにきてからもう大分時間が経ってますが―――外に動きは無いんじゃないですか? それが答えですよ」



 お互いに余裕そうな笑みを浮かべながら、腹の探り合いを兼ねた短い会話を交わす。
 手に持った携帯電話は、いわゆる昔の二つ折りタイプではなく、海外で主流となっているようなストレート式のものだ。オマケに、簡単単純なボタン操作三回で、登録している相手にすぐに電話がかけられる便利機能付き。
 ここまでくれば、俺がどんな事を言っているか理解してもらえるだろう。
 そう、つまりはこのボタンを押すだけで、管理局の皆さんに繋がるのですよーという――――ハッタリである。
 ボタン一つで管理局のクロちー達に繋がるなんて嘘八百。実際はうちのこわーい母上殿の携帯に繋がるだけであって、管理局に繋がるなんてこたぁ一切あり得ない。
 ただ、このハッタリに、先程俺が言ったように信じる信じないは関係ない。ようは、相手が警戒さえしてくれればいいのである。
 質問にさえ真面目に答えれば、それだけでこの秘密の場所がバレるというリスクは減らせると俺は明言している。
 それはつまり、この場所をバラされるリスクと、〝シルフィ〟について話すことのリスク、その両方を天秤にかける事を意味しているのだ。
 正直、俺としては真面目な答えが貰えるとは思っていない。それは先程からの俺の質問に対する態度からも明らかだしな。
 となれば、俺の撮る手段は一つ。
 つまり、この魔女様にとって〝シルフィ〟ってのがどれくらい重要なものなのか、ってことだ。
 その比較対象として、隠れアジトがバレるってリスクは妥当なものだろう。クロちーの言葉通りに考えれば、ただでさえこの魔女様はフェイトを使って超違法行為をやらかしているわけだし、管理局に見つかれば逮捕は当り前だ。
 そんな危なっかしいリスクを抱えてまで話したくないっていうのであれば、〝シルフィ〟が今回の件で重要なカギになっているのは確定的に明らか。そうでなければ問題無し。どっちに転んでも、俺としては万々歳、ってわけだ。
 ……ふ、ふふふ!
 我ながらこの知略が恐ろしい! さすが精神年齢三十●歳の第二人生! 僅か小学三年生ながら妙齢の大人とネゴシエーションできることがこんなにも気持ち良いなんて知らなかったぜ! フゥーハハァッ!



「……やっぱり、見た目の年齢で判断するのは危険のようね」
「子供を甘く見ると、痛い目見るっていうことですな。それで、返答は如何に?」



 調子に乗り過ぎて痛い目に見たことも数多いので、ここらへんで止めておく。
 最悪、問答無用で電撃が飛んでくるとも限らんので油断はできない。前回は文字通りに問答無用で酷い目にあわされたからね。
 さて、今回はどう動く?
 ごくりと唾を呑みこみ、表面は大胆不敵に、その実背中にはイヤな汗をだらだら流しながら戦々恐々としつつ、魔女様の返事を待つ俺。
 沈黙は短いものだったが、それでも俺には数時間にも感じられるほど長いものだった。
 もういっそこのまま「やっぱいいですすみません変な事聞いちゃいましたねあはははー!」となかった事にしたくなってきた頃、ようやく魔女様はその思い口を開いた。



「はっきり言って、別に不都合な事は何もないわ」
「その割にゃ、前回はエっライ剣幕で脅された記憶があるんですが?」
「不都合はなくとも、問題は大いにあるのよ」
「……えーと、それは何かの頓知問題でしょうか?」



 不都合はないのに問題あるって、さっぱり意味がわからん。
 穿って見れば、俺が〝シルフィ〟を知っている事自体は問題ないけど、どうして知っているのか、ってことが問題なのか?
 それだって、仮に俺が知ってると思いこんで詰問してきても、俺が「俺の世界で関係があったんで」とか言ってしまえばそれでおしまいだろうに。
 ……いや、まてよ?
 たしか、前回だったかシルフィについて聞く際、いらんことをたくさん口走ったような……具体的にはアイツの性格とか特徴とか言葉遣いとか――――ってこれかぁあああああ!!!?
 


「いいえ、極常識的な話よ」
「……と、申されますと」



 この時点で、ときひこくんのせなかにはひやあせが滝のように……ッ!



「――――自分の娘の事を、赤の他人が詳しく知っていたら気になるでしょう?」



 予感的中ウううううう!!??!!!?
 


「い、いいいいいやぁあ、そりゃまたすごいぐうぜんですねまさかボクの知っているトモダチがそちらのおこさんだったなんてわーせかいってせまいなぁっていうかそんなそっくりさんがふたりもいるなんてすご――――」
「けど、残念ね。その〝シルフィ〟という名の〝出来損ない〟は、もういないわよ」
「――――今、なんて?」



 いま、ときひこくんのみみに、ちょっとありえないことばがとびこんできたようなきがしたんですが。
 知らず強張る体を無理矢理動かして見ると、こちらを睥睨しながら楽しそうに嗤っている魔女様がいた。
 その表情からは、冗談の色を欠片も窺う事が出来ない。妖しげに嗤っているのに、くだらない冗談だとかつまらないハッタリだとか、そんな〝嘘〟めいた色が何一つ見当たらなかった。



「本当に、がっかりしたわ。ただの失敗作なだけならまだしも、アリシアの顔と声で私に暴言を投げるだなんて」
「……」
「〝ボクはアリシアじゃない〟? アハハ! 当り前じゃない、あんな〝出来損ない〟が私のアリシアであってたまるものですかッ!」
「………」
「しかも、言うに事欠いてアリシアの妹ですって? フザけるのも大概にしてほしいわね。私のアリシアに、あんな〝出来損ない〟の妹なんて存在すらしないわッ!」



 最後には玉座から立ち上がり、ふらつく体を杖で支えながら喉が裂けろとばかりに叫ぶ魔女様。
 その形相はもはや名状しがたく、歪んだ口角は悪魔の如く、見開かれた目は有らん限りの憎悪を湛えてここにはいない誰かを睨みつけている。
 そして俺は、ただ無言でその独白を聞き続けた。



「――――フフ、でも、フフフ……そうね、あの〝出来損ない〟にも少しは感謝しなくてはね?」
「…………」
「アリシアとそっくりなのは忌々しい事この上なかったけれど、その分駒としてはそれなりに役だったんじゃないかしら?」
「……………」
「失敗作の〝出来損ない〟とはいっても、素は私の娘ですもの。当然と言えば当然かしら……記憶の再構築の御蔭で、あの忌々しい口調も話し方もきれいさっぱり消えたようだし」
「………………」
「あぁ、そうそう、安心しなさい坊や。貴方の言う〝シルフィ〟という人間自体は、まだ生きているわよ。――――最も、貴方を連れてきたあの〝出来損ない〟の中身までは、保証しないけれど」
「…………………そうか」



 ここまで語られてしまった以上、いくらバカな俺でも結論が何であるか、察することはできた。
 ゆっくりと顔を伏せ、暴風雨のように荒れ狂う感情に胸を締め付けられる痛みに、思わず洩れてしまいそうな声を噛み殺す。
 可笑しいとは思っていた。
 フェイトが時折見せる表情、仕草、言動。ふと、何か忘れた事を思い出そうとしながら俺を見つめる困ったような顔。ふと、アイツみたいに俺のシャツの裾を握って来る手。ふと、アイツを思い出させるような言葉を呟き、次の瞬間には顔を真っ赤にする行動。
 どれも見覚えがあり過ぎたのは、至極当然のことだったんだ。
 俺がこの世界に〝二度目〟の人生を受けたように。
 最後の瞬間、間違いなく俺と一緒にいたあいつもまた、この世界に〝二度目〟の人生を受けていても、何も可笑しくはなかった。
 ただ、場所が悪かっただけにすぎないんだ、って。
 このバカみたいにでっかくて広い世界で、二回目でも最初から二人一緒にいられるだなんて、そんな奇跡あるはずもない、って。
 だから、アイツはやっぱり前世でも今世でも運が悪い超ド天然のアホ娘で――――仕方なかったんだ、って。

 自分にひたすら言い聞かせても、頬を伝う涙は途絶えない。

 フェイトは――――シルフィだ。
 何故性格や言動が違うかなんて、細かい事はわからない。恐らく、さっき魔女様が言っていた記憶がどうたらってのが関係してるんだろう。
 だが、ここまで情報がでそろった以上、もはや疑う余地は何処にもなかった。フェイトは、シルフィ〝だった〟んだ。

 はっきり言ってしまえば、心のどこかで期待していた。
 もしまかりまちがって、街かどでドッキリ出会うような事があったら、なんて考えた事がなかったわけじゃない。
 それどころか、いつもは意地悪で性悪極まりない神様が、なにかの気まぐれですずかちゃんと恋人になれたなんて未来をくれたことを想像し、そんな時にアイツと再会したら――――なんて、それこそ数え切れないくらい妄想した。
 もしかしたら人生二度目にして、この俺に両手に花の季節が!? とかバカみたいな想像をして一人浮かれてた自分が恥ずかしい。
 ……残念ながら、その想像は、文字通り幻想となって消えてしまったが。
 
 できれば嘘であってほしかった。誰か他人の空似であればどれだけよかっただろう。
 薄情と思われてもいい。身内贔屓だろうが構うものか。アイツが……シルフィがこの世界で幸せに生きてくれていたら、どれだけよかったことか……ッ!
 俺の言葉を否定しないプレシア。
 〝ボクはアリシアじゃない〟という台詞。
 そして、プレシアの最後の言葉。

 

――――かつてシルフィとしてこの世界に生を受けた少女は、その名を奪われ、フェイトという名前として生きている。
 


 それが、全てだ。

 

「もう質問は無いのかしら? ないのであれば、もう坊やに用は無いわ。今〝出来損ない〟を呼んで――――」
「最後に、一つ」
「……もう一問一答も何もあったものではないけれど、いいわ。サービスで答えて上げましょう」
「アンタの言う〝出来損ない〟って、一体誰の事ですかね?」



 顔は伏せたまま、震える声でそう問いかける俺。
 答えは聞かずともわかりきっている。だが、それでも俺は淡い希望と叶いっこない期待を込めて、最後の質問を投げかける。
 ……どの道、その答えは俺に対して実に見事なトドメとなったのだが。



「誰って――――決まってるでしょう?」



 突然、背後の大広間の扉が開いた。
 大きな音を立てて開くその音に反応して振り返った俺の視界に飛び込んできたのは、あまりにも予想外な人物達で。
 特に、その先頭に立っていた、アイツとそっくりな少女の表情を見て、俺は凍りついた。



「さっきから盗み聞きをしていた、そこの〝出来損ない〟――――フェイト、貴方の事よ」



 カラン、と。
 大広間に、一人の少女が崩れ落ちる音が響き渡った。 


 
































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いぶりすのせーぞんほーこく
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 気がつけばプロットから大幅に脱線した揚句がこの有り様です。
 すずかちゃん成分が足りなさ過ぎて生きるのが辛い。
 とりあえず、魔女との対決が終わったら思う存分書こう。
 
 ちなみに、元のプロットは下記のような感じ。
・時の庭園まで乗り込むのは原作通り、その最中に時彦救助。
・フェイトと全力全開のなのはがガチバトル。その後、プレシアとの連戦に。

 これがどうねじ曲がってこんな事に……。
 キャラが勝手に動き出すのは構わないのですが、こうも引っ掻きまわされると書きだすのが大変ですね。

 そしていつもご覧下さっている皆様に言葉にできないほどの感謝を。
 今後とも生温くお付き合いくだされば幸いでございます。
 では、今回はこれにて。


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