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No.15556の一覧
[0] 【俺はすずかちゃんが好きだ!】(リリなの×オリ主)【第一部完】[[ysk]a](2012/04/23 07:36)
[1] 風鈴とダンディと流れ星[[ysk]a](2012/04/23 07:36)
[2] 星と金髪と落し物[[ysk]a](2012/04/23 07:36)
[3] 御嬢と病院と非常事態[[ysk]a](2012/04/23 07:36)
[4] 魔法と夜と裏話[[ysk]a](2012/04/23 07:37)
[5] プールとサボりとアクシデント[[ysk]a](2012/04/23 07:37)
[6] プールと意地と人外[[ysk]a](2012/04/23 07:37)
[7] 屋敷とアリサとネタバレ[[ysk]a](2012/04/23 07:37)
[8] 屋敷と魔法少女と後日談[[ysk]a](2012/04/23 07:42)
[9] 怪談と妖怪と二人っきり[[ysk]a](2012/04/23 07:42)
[10] 妖怪と金髪と瓜二つ[[ysk]a](2012/04/23 07:42)
[11] 閑話と休日と少女達[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[12] 金髪二号とハンバーガーと疑惑[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[13] 誤解と欠席と作戦会議[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[14] 月村邸とお見舞いとアクシデント[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[15] 月村邸と封印と現状維持[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[16] 意思と石と意地[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[17] 日常とご褒美と置き土産[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[18] 涙と心配と羞恥[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[19] 休日と女装とケーキ[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[20] 休日と友達と約束[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[21] 愛とフラグと哀[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[22] 日常と不注意と保健室[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[23] 再会とお見舞いと秘密[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[24] 城と訪問と対面 前篇[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[25] 城と訪問と対面 後篇[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[26] 疑念と決意と母心[[ysk]a](2013/10/21 04:07)
[27] 管理局と現状整理と双子姉妹[[ysk]a](2012/04/23 07:39)
[28] 作戦とドジと再会[[ysk]a](2012/04/23 07:39)
[29] 作戦と演技とヒロイン体質[[ysk]a](2012/04/23 07:39)
[30] 任務と先走りと覚悟[[ysk]a](2013/10/21 04:07)
[31] 魔女と僕と質疑応答[[ysk]a](2012/04/23 07:39)
[32] フェイトとシルフィとともだち[[ysk]a](2012/04/23 07:38)
[33] 後悔と終結と光[[ysk]a](2012/04/23 07:38)
[34] 事後と温泉旅行と告白[[ysk]a](2012/04/23 07:38)
[35] 後日談:クロノとエイミィの息抜き模様[[ysk]a](2012/04/23 07:38)
[36] 後日談:ジュエルシードの奇妙な奇跡。そして――――。[[ysk]a](2012/04/23 07:37)
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[15556] 誤解と欠席と作戦会議
Name: [ysk]a◆6b484afb ID:a9a6983b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/04/23 07:41

 神様。すみませんでした。いやもうホントクソとか馬鹿とか独善的とか生言ってほんっとーにすみませんでした。
 今後ともに心を入れ替えて熱心に祈りをささげ土下座でも焼土下座でもお百度参りでもしますからどうか――――どうか昨日の出来事をなかったことにっ!!



「……なのは、あの馬鹿どうしたの? 教室の隅で膝抱えて寝っ転がるとか、不気味すぎてキモイんだけど」
「さぁ……? ほんだくん、今朝からずっとあんなかんじなの」
「昨日までなんともなかったのに? ……まーたぞろ変なことやらかしたわね」
「あ、あはは……」



 シクシクシク……。
 終わった。
 おれの人生オワタ……!
 よりにもよって……よりにもよって高町でもなく、ましてやアリサでもなく! すずかちゃんに泣かれた! 
 ……ボク、もういきていけない。
 


「ていうか、教室の隅だっていうのに、まるで教室全体が重くなった感じがするわ」
「すっごーく暗いよね。なんていうか、こう、どろどろしてる感じ?」
「コールタールに似てるかしら。どろっとしてて、こう触りたくもないくらい気持ち悪い見た目の」
「ひぅっ! あ、アリサちゃんのばかっ! へんなもの想像しちゃったよぅ!」
「……ごめん、今のは私のミスだわ。うん、すごい軽率だったと思う。ちなみになのは、今アンタが想像したのは虫?」
「いわないでっ! 幼稚園の時、いきなり顔に飛びかかられてひどいことになったんだからっ!」
「…………あー、ほんとごめんね? よしよし、大丈夫よ。ここにはゴキさんいないからねー」
「うぅう……アリサちゃんがすごくいぢわるです!」
「って、それよりもあの馬鹿よ。あ、いきなり頭を抱えて悶えだした」
「えとね、だいたい十五分おきくらいであんな風になってるよ?」
「……キモイにもほどがあるわね」
 


 つーかよ! 思うんですよ!
 二度目の人生、なんでこんなに波乱万丈なんでしょうか!?
 一度目はほんとに面白みのおの字しかないくらい普通(俺個人に関して言えば)だったんだぞ!? 養親というちょっと普通とは違う家族構成だったくらいで、他はそこらのいっぱんぴーぽーと変わらない生活だったし、唯一自慢できたのもマイラバーの存在くらいだ。こんな、魔法少女とかとんでも人間カーニバルとか小学生でSYU★RA★BAとかありえないだろ常識的に考えてっ!
 神とやらは俺に対してなんか恨みでもあんのかちくしょーーー!!



「あれ、そういえばすずかは?」



――――――――ぴくっ。



 ふと耳に入った単語に、俺の全思考が停止する。
 他のすべての感覚器を遮断し、ただこの耳に入る音の情報だけを拾うべく、今際の際の如き集中力で全感覚を耳に傾ける。



「アリサちゃんも聞いてないの?」
「ええ。ほら、今日バス乗れなかったじゃない? だ れ か さ ん の せ い で」
「…………ほんとうにごめんなさい」
「まぁ、だから私もすずかが来てるかどうかはわからなかったのよ」
「そうなんだ。わたしもさっきメールしてみたんだけど、まだ返事がこなくて」
「うーん……どうしたのかしらね、すずか?」
「心配だよねぇ……」



 ちなみに、バスが運行不能になったのは言うまでもなく高町のせいである。
 先週の肝試しで離ればなれになった際、恐怖に錯乱した揚句魔法の設定をミスって乱射した一撃が、校庭の車庫を直撃。ちょうどうちらの区画を回るはずだったバスを見事にぶち抜いてくれたのだった。南無。
 ……いやいやそれよりも
 すずかちゃん不登校?
 まさかでもなく俺のせい!? 
 オーマイガッ! ホーリーシッ!
 どうするどうしようどうしたらいい俺!?
 あぁああぁああああああ!! だれかお願い僕を助けてぷりーずっ!



「……で、なんであんたはいきなり私の足にしがみついてんのよ?」
「ぐぎぎ……こうなれば背に腹は代えられない。事情を知っている貴様には協力してもらうぞ暴力女王」
「なんで私が……」
「ならむしろ高町でもいい! お願いだ、俺を助けてくれよ!」
「はわわ、な、なになに、どうしたのほんだくん?」
「ていうか時彦。それよりすずかどうしたのか知らない? アンタなら真っ先に知ってそうなもんだけど」
「オフゥッ!?」
「……あ、死んだ」

 

 ……言葉の暴力。それはまさに文字通りの代物です。
 時にそれは物理的な攻撃となって対象を襲い、冗談でも比喩でもなく本当に対象の心を抉ります。



「…………まさか、時彦?」
「びくっ」
「アンタ、すずかになんかしたわね?」
「びくびくびくぅっ!?」
「やっぱりかーっ!? なにした、アンタこの野郎すずかになにしくさりやがったーーっ!?」



 げしげしげし!
 アリサの豪脚が俺の全身を襲う!
 ほんだはいのちのききにさらされた! ほんだはひっしにからだをまるめてぼうぎょする!



「あ、アリサちゃん落ち着いてー!? ほんだくん死んじゃうよ!」
「これが落ち着いていられるわけないでしょ!?」
「そ、それでもだめだよっ! ちゃんとお話を聞いてから、判断はそれからでも遅くないと思うの!」
「そうだぞバニングス!」
「暴力はやめろよ!」
「まずはひこちんの話を聞くべきだ!」
「た、高町……! おまえら……!」



 いつの間にか周囲に集まっていたクラスのみんなの言葉を受けて、一瞬、アリサの暴力がやむ。
 そんなみんなの言葉に、その友情に心が震えてならない。
 俺は今、モーレツに超感激しているっっっ!!



「だからリンチはそのあとで!」
「……え?」



――――しかし、現実はそんなに甘いものではなかった。
   


「事情聴取は義っ務の下っ♪」
「よぉ~が済んだら襤褸・雑巾♪」
「俺とお前で取り囲み♪」
「みんなでボコろう我らの敵を~♪」
「ついでにとどめはディバイン・バっスター♪」
『みんなでやれば、こーわくないっ!!』
「――――――――この、裏切り者どもがぁあぁぁああああああ!!!!」
「……なのは、ノリノリね」
「ほんだくんに仕返しするいい機会だとはんだんしましたっ」










                           俺はすずかちゃんが好きだ!










 ひどいめにあいました。たぶん俺の人生十年分くらいの濃密度で。



「自業自得でしょ」
「だよねー」
「げぇっ、アリサと高町!?」



 放課後に移り、保健室から生還した俺はほうほうの体で逃亡もとい帰宅しようとしたところを、再びアリサと高町に捕まっていた。
 あ、朝あれだけ俺をボコにしたくせに、まだやりたりないというのかっ!
 ええい、聖祥大の小学生は化け物か!?
 でももう勘弁して! 本田君のライフはもうゼロよ!
 そんな俺の祈りが通じたのか、あるいはそうでなくとも情状酌量をもらえたのか。
 下駄箱でアンブッシュしていた二人が、今朝の如く俺に襲い掛かる様子はなかった。
 俺の姿を認めたアリサが、そんなびくびくした俺を見てフン!と鼻で笑う。



「まったく……あんた、クラスでのすずかの人気知らなかったわけじゃないでしょ?」
「それなのに、すずかちゃんが休んだ原因みたいなこと言っちゃったら、みんなだって怒るよ」



 腰に手を当てこちらを睨みつけるいつもの仁王立ちスタイルのアリサに、ランドセルの肩ひもを両手で持ちながら、にゃははと苦笑する高町。
 これで隣に鞄を両手で前に持ったすずかちゃんが穏やかに微笑んでくれていれば、何も変わらない、いつもの風景だったのに。
 あ、やばい。意識したらなおさら辛くなってきた……。



「わわ、ほんだくん大丈夫!?」
「い、いきなり泣き出さないでよもう! ホント、アンタ今日はおかしいわよ?」
「う、うるせいっ! 泣いていない、本田君泣いてないもんね!」



 ぐしぐしと、慌てて目元を擦る。
 ちょっとじめっとしたけど、そんなの気のせい! 本田君は元気で強気な男の子! 絶対に泣いたりしません! ……しないってば!
 結局、ちょっとだけしょっぱい汗が出てしまったのをアリサにハンカチで拭われて、俺達は一緒に帰路につくことにした。
 高町が爆砕したせいで、行きも帰りもバスはないのでアリサが送ってくれるという事に。持つべきは金持ちの友人だな、と痛感した。
 ちなみに補足しておくと、バスの件は結構学校でも話題になっていた。件の怪談騒ぎと合わせて「妖怪の仕返し」とか「宇宙人の侵略」とか好き勝手な噂が飛び交っています。あぁちくしょう……こんな状況じゃなきゃ、面白おかしく噂を誇張して回ったっていうのに……。
 無理やりテンションのギアを上げようにも、ちょっと針が上に向いた瞬間昨日の出来事が脳裏をかすめ、あっという間に針が地面に向かって叩き落とされるというのを繰り返していて、どうにもいつもの調子が出ない。
 車に乗り込んで走り出してから暫く立つまで、アリサと高町が今日の授業のことやら宿題のことやらで話の花を咲かせていたが、俺は全く持ってその会話に入ろうという気が起きなかった。
 普段なら所々で俺が茶々を入れ、アリサが肉体的突っ込みを以て俺を黙らせる、というのが定番パターンなのだが……生憎、今の俺にそんな元気はない。ないったらない。むきゅー。 



「……とりあえず。この馬鹿をどうにかしないといけないわね」
「そうだねぇ……さすがに、ちょっと可哀そうかも」
「とにかく、なにはともあれ事情聴取しないと。そうね……市街の方に行きましょうか」
「うにゃ? 今日はウチじゃないの?」
「この馬鹿を連れていく気? 間違いなく恭也さんか美由希さんにとっつかまるわよ?」
「……市街地でよろしくおねがいします」



 今あの二人(そのどちらかにでも)に捕まるのはひっでょーにまどぅい。
 特に鬼ー様に捕まろうものならば、間違いなく俺の命が燃え尽きてしまうだろう。例えば「俺の将来の義妹になんてことをっ!」的な感じで――――ガクブルガクブル…………っ!



「あ、返事した。でも、なんだか今度は激しく痙攣してるような……?」
「はぁ……もういいからほっときなさいなのは。鮫島、今日は市街地に向かって頂戴」
「かしこまりました、アリサお嬢様」



 いやだ……・俺は――――「俺はまだ死にたくないぃいいいいいいい!!!」



「やかましいっ!」
「あふっ!?」
「……アリサちゃん、ここ数ヶ月ですごくパンチ上手になったよね」
「ふ……虚しい成長だわ」
「それよりももっと俺を労われよ!?」
「「……なんで?」」


 
 小首をかしげてハモられました。あっちょんぶりけ。
 その後も、金髪幼女と文系駄目幼女の二人にいびられながら、車は無慈悲に無言にただひたすらに目的地へと向かって走り続ける。
 もうこの時点で、俺の精神的ライフはゼロを突き抜けてマイナスを抉りぬいていた。つまりは死亡です。精神的なゲームオーバーです。
 それでもお構いなしとばかりに俺を連れ回そうとするこの二人の幼女は、はたして友達と呼べるのでしょうか?
 なぁ親父――――友達って、なんだろうな?
 










 市街に着いて車から降りた俺達は、何故か昨日フェイトと一緒にハンバーガーを食べた――――もとい、すずかちゃんとのフラグをバッキベキにへし折る羽目になった事件現場へやってきた。
 正直、昨日と同じ店に入るのは、物凄く腰が引けたんだが、そんな俺の弱音を聞いてくれるような優しい友人は、俺の周りにはすずかちゃんしかいない。そして、そのすずかちゃんは今いないのだ。

 ……なに? この店に来たくない理由?

 んなの、下手をすれば――それこそ星が俺の頭上に直撃するような確率だが――フェイトとまた会ってしまうかもしれないという恐怖と、この店から数歩出た先で起きた凄惨な事件(俺視点)を思い出してしまうからに決まっとろーが!
 そのことを懇切丁寧に、身振り手振りさらにはシャウトまで交えて真心込めて説明してやったら、アリサと高町はこういった。



「そんなの知るか」
「あ、私フェイトちゃんに会いたい!」
「……もう好きにしてください」



 そういうわけで、ただいま昨日とまったく同じスペースで俺はバニラシェイクをちびちびとすすっております。あぁ虚しい。
 ついでに、首を絞められつつも事情聴取という名の尋問を受け、昨日起きた事件については洗いざらい白状済み。隠してたってどうせバレることだし、ていうかそれ以前に白状しないと本気で締め落とされる勢いだった。
 


「……なるほど? なのはの邪魔をしているもう一人の魔法使いがそのフェイトって子で、アンタは昨日のまさに今ここで、その子とデートしてた、と」
「ちげぇよ!? お前は一体俺の話の何を聞いていたんでやがりますでしょうか!?」



 したり顔でウンウン頷きながら、まるで見当違いの結論を導き出した、アリサの脳内構造を俺は本気で疑った。
 特に最後。誰がデートだ!
 俺はあくまで、善意でモノの買い方ってやつを親切に教えてやってただけで、それ以上のやましい気持ちなんて電子顕微鏡で測ってやっとくらいしかなかったんだぞ!
 ……いや待てよ。むしろそんな芥子粒にも満たないくらいの下心があったからこそ、すずかちゃんがあんなにも傷ついてしまったのでは――――っ!?
 お、俺はなんてことを……っ! なんて取り返しのつかないことをしてしまったんだっ!!?



「駄目だ、もう………もう俺の人生はダメだ―――――死のう」
「はいはい、馬鹿言ってないでほら、ポテトでも食っときなさい」
「この俺様がそんなポテトに釣られ――――」
「ちなみにコンソメバーベキュー味」
「ちょーうめーっ! やっぱ味付きはコンソメバーベキューだよな!!」
「……で、問題はすずかがアンタ達の逢引を見て逃げ出したことだけど」
「逢引ちがいますからっ! 断じて違いますから! ポテトうめーっ!」
「うーん、でも、すずかちゃんが逃げた理由がよくわからないね」



 最近、この二人のスルースキルのレベルアップぶりが凄まじい気がするんですが気のせいでしょうか。
 もりもりとLLサイズのコンバベ味のポテトをジンジャエールと一緒にむさぼる俺を放置しつつ、お互いに〝何故すずかちゃんが逃げ出したのか?〟ということについて話し合っているアリサと高町。
 アレか。情報を引き出した以上貴様にもう用はないってやつか。
 いいもんいいもん! そしたら本田君、腹が破裂するまでポテト食べ続けてやるもんね!もぐもぐもぐ。うむ、やっぱりコンバベポテトうめぇ。



「単純に考えるなら、そのフェイトって子と時彦が会ってたのがショックだった、ってことなんだろうけれど」
「それって変じゃないかな? 別に本田君とフェイトちゃんが会ってたとしても、悪いことじゃないと思うんだけど?」
「うがった見方をすれば、時彦がこっちの情報をあの子に話してた、って可能性もあるでしょ? まぁ、こいつがそんなスパイみたいな真似をできるような、器用な奴じゃないのはわかってるから、その線はないんだけどね」
「うんうん。それは激しくどーいする」
「〝ど・う・い〟な、高町。漢字の書き方知ってる?」
「し、知ってるよ! 堂々の堂に意見の意だもん!」
「ぶっぶー! 同じ意味の同意でしたー。やーいやーい間違えてやん――――あつっ! うわっちょこのポテトマジ熱いってか無理! んな一杯食えるもがっ!?」



 絶好の突っ込みポイントを見つけたので突っ込んでみたら、仕返しにポテトを口に突っ込まれた。
 真っ赤な頬を膨らませて、眉を逆ハの字して迫りくるその姿はまさにポテト魔人。悪い子の口にポテトを詰め込んでおしおきだ!
 でも美味いから許すっ。
 ……いかん、そろそろ本格的に末期かもしれん。なんかこう、いろいろとテンションがおかしくなってきた。



「なにやってんのよもう。それより、ほら話を戻すわよ」
「だ、だって、ほんだくんがまた馬鹿にしてきたんだもん!」
「つーか食べ物を粗末にするなよ! ポテトの妖精さんに謝れ!」
「ごめんなさい……」
「いーや、駄目だね! 罰として高町、貴様はこれから毎日このコンバベ味のポテトをXLサイズ相当の量を夕飯に食べるんだ!」
「そ、そんなに無理だよ! それに、そんなに食べたらぶたさんになっちゃう!」
「ふははは! それはいいな! これより貴様は高町改めモス・高町と名乗るがいい!」
「い、いやだよそんなの! 私ぶたさんじゃないもん!」
「ん~~? きこえんなぁ~? 高尚な人間様には豚の鳴き声なんぞまるできこぶらげしゃっ!?」


 ノリノリでイイ感じになってきたところへ、問答無用のアリサ鉄槌が降ってまいりました。
 鼻頭をテーブルに直撃させた激痛が脳天を突き抜ける。
 なにしやがるっ、と頭を上げたら――――そこには般若を上回る炎鬼羅刹が光臨召されていた。隣であの高町ががくがくふるえているのを見れば、その恐怖の程がお分かりいただけるだろう。
 そして閻魔もかくやな威圧感を伴ったアリサは、ただ静かに告げた。


 
「――――アンタら少しは黙れ。いいわね?」
「「……はい、申し訳ございません」」



 やはり俺達四人組の中での最高権力者はアリサだった。
 俺と高町はそのアリサの一喝を受けて、その場で背筋を伸ばして両手は膝の上、足を揃えて拝聴の姿勢を取る。さながら就職面接試験のようである。
 そして大人しくなった俺達を見て満足したらしいアリサは、一つ小さく咳払いをすると、腕を組んで背もたれに寄り掛かりながら状況を整理しだした。



「とりあえず話をまとめるわよ?」
「うい、プレッピー」
「はーい」
「まず、昨日アンタはなのはの邪魔をしている魔法使いと偶然ばったり出会って、ここで一緒に御飯を食べた」
「ハンバーガーですけどね。ちなみに俺がテリヤキ、あっちがベーコンレタス」
「私、エビバーガーのほうが好きだなぁ。ベーコンレタスってまだ食べたことないんだけど、美味しいのかな?」
「結構いけるらしいよ? 俺もまだ食ったことないけど」
「はいはい。だったら後で追加すればいいでしょ。……で、時彦とその――――フェイトだっけ?は特に大した話をしたわけでもなく別れたわけね?」
「そうだなー……ほんと、自己紹介したくらいしか覚えてねぇや」
「それで、その現場をすずかちゃんに見られて逃げられちゃったと」
「―――――うぉおおおお! 絶望した! まるで謀ったかのようにあの状況を作りあげた現実に絶望したっ!!」



 現状確認したところで、やっぱり事態は進展しなかった。
 当り前と言えば当たり前だろう。第三者から見た場合、俺になにかしらの非があるとは――まぁ絶対にとは言い切れないが――思えない上に、そのせいで学校を休んでしまうほどショックを受けたとは思い難い――――というのが、アリサと高町の結論だった。
 それに関しては俺も同意で、これまで皆勤賞を貫いてきたすずかちゃんが、当日なんの連絡も無しに学校を休むのは異常事態とも言えるのである。むしろ、すずかちゃんの性格だったら、直接俺に問いただしに来たほうが遥かに自然なのだ。
 だというのに――――普段から真面目で欠点がなく、これ以上の優等生がいるだろうか、いやいない!と断言できるほど品行方正、眉目秀麗で才色兼備なすずかちゃんが無断欠席? なにその世紀末? ってなレベルなのである。異常事態だ。そしてその原因であろう俺は本気で死んだ方がいいかもしれない。



「ほんだくんが白くなっちゃった……っ!」
「駄目ね……こりゃ末期だわ」
「うぅ……どうせ俺なんて……俺なんて人生一度繰り返したところで成長の見られないダメ人間ですよ。好きな女の子を泣かせちまうようなマダオなんですよっ! そんな俺は死ねばいいよね!?」
「はいはい、泣かせたんならまずは謝ることを考えなさい。話はそれからよ」
「そうだよ。まずはちゃんと話し合わなきゃ」
「……高町が言うと説得力が皆無なんだが」
「な、なんでよう! 私、すごくまじめに言ってるのに!」



 ぶーぶー文句を言う高町はともかく。
 アリサの言うことに間違いはない。ていうかその通りだ。
 今俺がしなきゃいけないのは、すずかちゃんを泣かせてしまったことに対して謝ること。何が悪かったのか? そんなのどうでもいい。今最も重要な事は〝好きな子を泣かせてしまった〟という事実だけであって、その過程とか理由はゴミ以下でしかない。
 しかし、ここでただ愚直に謝りに行くのはただのバカであることを俺は知っている。
 何故かって?
 んなの、〝前世〟で嫌というほど思い知ったからに決まってるじゃないかHAHAHA!



「しかし、謝るにしても、自分が何をしてしまったのかを理解してからじゃないと、むしろ逆効果だろ?」
「そうなのよねぇ。事情を知らなかったにしても、すずかがそれくらいでショックを受ける理由がわからないわ」



 ストローを口に咥えて、上下にフラフラさせるという行儀の悪さすらも絵にしてしまう美少女は、まさに世界の秘密兵器だと思う。すずかちゃんがやったらさぞ可愛いだろうなぁ――――ってそれはともかく!
 そう、ネックはまさにそれなのだ。
 すずかちゃんの性格からしたら、(悪い捉え方だとして)俺とフェイトが逢引していたのを見たところで、ショックは受けても泣いて逃げてしまうというのは考えられない。ならば、彼女が思わず踵を返し、涙の尾を引きながらショックを受けてしまうような事とは、一体なんだ――――?
 ようやくというか、やはりというか。
 この場にいる三人は同じ疑問という名の壁にぶち当たり、沈黙してしまう。
 まだ半年ちょいの付き合いの俺よりも、数倍長い時間を過ごしているアリサと高町がわからないのだ。愛だけではどうにもならないことがあると知って、ぼくはまた一つ、おとなのかいだんをのぼったようなきがしました。まる。
 ………そんな馬鹿な思考を展開していたら、ふと思いついたように高町が「あ」と声をあげた。


  
「えと……もしかして、裏切られた気がしたから、なのかな?」
「裏切られた?」
「なんでさ?」
「だって、一応フェイトちゃんて私の邪魔をする相手、ってことになってるよね。それで、ほんだくんがその相手と仲良くしてたら、本当はあっちの味方だったんだ、って勘違いしてショックを受けちゃったのかなぁ……って」
「なるほど……それなら、確かにすずかがショックを受けていた、っていう理由にもつながるわね」
「いや、いやいやいや!? ちょ、ちょちょちょ、ちょーっと待ってくださいよ! てことはなんですか!? まさか月村さん、実は本田君とあの金髪二号との関係を誤解してしまったとかそういうテンプレなオチ!?」



 しかし、ある意味盲点だったとも言えるオチだ。
 聡明かつ温和で物静かという第一印象があるすずかちゃんだからこそ、その可能性に思い至らなかったと言っていい。いや、ていうかすずかちゃんがそこまで俺のことを友人扱いしてくれていたというのが、そもそも意外な事実だった。
 確かにこの二週間の間、すずかちゃんの家に誘われることが多かったが――実際、既に二回も遊びに行っている。しかもお泊りで!お泊りで!おー泊ーまーりーで!――、まさか〝裏切り〟という感情を覚えるまでに友情を感じてくれていたことには、不肖本田時彦、感動を禁じ得ませんっ!
 そしてその事実を確認して、喜びにむせび泣く俺を見ながら、アリサはなんだか物凄く白けたような視線を投げてきた。


 
「まさかもなにも、それそのものでしょうが。ていうかむしろなんでその可能性を思いつかなかったのかしらね……考えてみればそれしかありえないじゃない」
「にゃはは、でも原因がわかったんだし、後は誤解を解けばいいんじゃないかな? 明日はすずかちゃんも来れるかもしれないから、その時にしっかり話せばだいじょーぶだよ!」
「うぅ、よかった――――あぁもうホントよかった! 神が俺を見捨てていても、まだ世界は俺を見捨てちゃいなかった!!」



 今まで灰色だった世界に、色が戻ってきたような気がする。
 ていうか、今なら俺、自転車で時速100キロは出せるかもしれない! 某執事とまではいかないが、そのぐらいの勢いで盗んだチャリで走り出しそうなくらいテンションあがってきたぁああああ!!
 よーし、希望はまだついえていない! パンドラの箱は開けっ放しだが、ちゃんとそこには落し物があったんだ! いやっほい! 
 早速脳内で最も無難な謝罪プランを練り上げるとしよう!
 一方、頭の中で戦時体制下の陸軍司令部のような慌ただしさを見せ始めた俺をよそに、アリサと高町は二人でなにやら話しているようだった。



「大げさねぇ……」
「?? なんでほんだくん喜んでるの?」
「気にしないでいいわよ。バカが掲げた月夜の提灯だから」
「???」
「……すずかはきっと、自分が誤解してることに気づいてるわ。でも、今日欠席した。なんでだと思う?」
「えと……気まずいから、かな」
「半分当たり。半分はずれ」
「ふにゃ? なんで?」
「確かに、時彦が事情を話せば誤解は解けるでしょうけれど―――問題はその後。時彦とすずかの距離が戻るかどうかは、また別の問題なのよ」
「にゃ? うにゃにゃ? ……わかんないよぅ! アリサちゃん、おはなしが難し過ぎてよくわかりませんっ!」
「はぁ、なのはは良いわねぇ……いや、むしろずっとそのままでいなさい。うんうん、私みたいに汚れちゃだめよ?」
「……えと、なんかアリサちゃん変わったよね? ジュエルシードの一件以来」
「そうねぇ……それは否定できないかも」
「うぅ、やっぱりわかんないよぅ……」



 右の手で頬杖をつきながら、アリサが何か悟ったような顔をして苦笑いする。
 それを見た高町が、その頭上にクエスチョン記号でワルツを踊らせていた。
 そして俺はそんな二人のことなんか眼中になく、ただひたすらに明日すずかちゃんに対してどうスマートに事情を説明しようかと、のべ108程の計画を考えだしていたのであった。





――――しかし、現実はそんなに甘いものではなかった。
 



 
「月村さんが――――休み!?」
「ええ、今朝お姉さんから電話があってね? 何でも風邪をこじらせちゃったみたいで、数日休ませたいって」



 月村すずか、二日連続欠席。
 俺は、目の前が真っ白になっていくのを、はっきりと感じた―――――。


























――――――――――――――――――――――――――――――――――
ちょっと今回は長め。
ちなみに現在、なのはサイドとフェイトサイドのジュエルシードは

≪5:2≫

となっております。

以下蛇足の内訳

【なのはサイド】
・ユーノの初期所持で1
・動物病院襲撃の時の発現体退治で1
・神社での犬憑依体退治で1
・アリサの(本田が拾った)で1
・学校の怪談解決で1

【フェイト】
・カリビアンベイでの横取りで1
・すずかの叔父様から奪取で1(実は一戦交えております)


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