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No.15556の一覧
[0] 【俺はすずかちゃんが好きだ!】(リリなの×オリ主)【第一部完】[[ysk]a](2012/04/23 07:36)
[1] 風鈴とダンディと流れ星[[ysk]a](2012/04/23 07:36)
[2] 星と金髪と落し物[[ysk]a](2012/04/23 07:36)
[3] 御嬢と病院と非常事態[[ysk]a](2012/04/23 07:36)
[4] 魔法と夜と裏話[[ysk]a](2012/04/23 07:37)
[5] プールとサボりとアクシデント[[ysk]a](2012/04/23 07:37)
[6] プールと意地と人外[[ysk]a](2012/04/23 07:37)
[7] 屋敷とアリサとネタバレ[[ysk]a](2012/04/23 07:37)
[8] 屋敷と魔法少女と後日談[[ysk]a](2012/04/23 07:42)
[9] 怪談と妖怪と二人っきり[[ysk]a](2012/04/23 07:42)
[10] 妖怪と金髪と瓜二つ[[ysk]a](2012/04/23 07:42)
[11] 閑話と休日と少女達[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[12] 金髪二号とハンバーガーと疑惑[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[13] 誤解と欠席と作戦会議[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[14] 月村邸とお見舞いとアクシデント[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[15] 月村邸と封印と現状維持[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[16] 意思と石と意地[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[17] 日常とご褒美と置き土産[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[18] 涙と心配と羞恥[[ysk]a](2012/04/23 07:41)
[19] 休日と女装とケーキ[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[20] 休日と友達と約束[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[21] 愛とフラグと哀[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[22] 日常と不注意と保健室[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[23] 再会とお見舞いと秘密[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[24] 城と訪問と対面 前篇[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[25] 城と訪問と対面 後篇[[ysk]a](2012/04/23 07:40)
[26] 疑念と決意と母心[[ysk]a](2013/10/21 04:07)
[27] 管理局と現状整理と双子姉妹[[ysk]a](2012/04/23 07:39)
[28] 作戦とドジと再会[[ysk]a](2012/04/23 07:39)
[29] 作戦と演技とヒロイン体質[[ysk]a](2012/04/23 07:39)
[30] 任務と先走りと覚悟[[ysk]a](2013/10/21 04:07)
[31] 魔女と僕と質疑応答[[ysk]a](2012/04/23 07:39)
[32] フェイトとシルフィとともだち[[ysk]a](2012/04/23 07:38)
[33] 後悔と終結と光[[ysk]a](2012/04/23 07:38)
[34] 事後と温泉旅行と告白[[ysk]a](2012/04/23 07:38)
[35] 後日談:クロノとエイミィの息抜き模様[[ysk]a](2012/04/23 07:38)
[36] 後日談:ジュエルシードの奇妙な奇跡。そして――――。[[ysk]a](2012/04/23 07:37)
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[15556] 妖怪と金髪と瓜二つ
Name: [ysk]a◆6b484afb ID:a9a6983b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/04/23 07:42

 
 夜の学校。蒼い月光に照らしだされた廊下を、俺とすずかちゃんは歩く。あ、もちろん俺の肩にいるユーノも忘れていないよ?
 アリサと高町の二人とはぐれてしまったものの、俺達はなんとか保健室にたどり着くことができた。まぁ、遠くからなんかすごい爆発音とか聞こえているから、あの二人はきっと無事なんだろう、うん。……ぼくしーらない。
 無論、その道中では様々な出会いと別れがあった。以下にダイジェストでお送りいたします。

 ①ろくろっ首の姐御

「やっぱり夏の風物詩は花火と祭りと肝試しだと思うの。でもね、近ごろの若者って、妖怪なんてこけおどし、正体見たり枯れ尾花なんて言う輩ばっかりで、ちーっとも私達に対して真面目な態度を取ってくれないの! 酷いと思わない!?」
「はぁ……苦労してるんですね?」
「そう、そーなのよっ! 私達は人様に怖がられてなんぼなのっ! でないとこの業界やっていけないってーのに近頃のジャリガキどもは『あはは、お化けだってチョーウケルゥ~♪』よ!? なにこの辱め! アンタら〝お化け怖くないアタシらチョークール〟とか思っちゃってるわけ!?」
「いや、それはちょっと偏見が混じってるような……」
「アンタ達だってそう言う口でしょ!? ていうかそこのジャリガール! アンタは一応私達側じゃないの! なんで逃げる側に回ってきゃっきゃうふふしてるのよ!」
「え、あの、別に私はそういうつもりは……」
「きーっ! 差別ね、これが(色々な意味で)持つモノと持たざるモノの格差ってやつなのね! うぅうううらぁああめぇえええええしぃいいいやぁあああああああ!!!!」
「「ひぃいいいいいい!!?」」


 
 ②テケテケ&トコトココンビ



「よーあんさん。こんな夜中に彼女とデートかい? ひゅーひゅー!」
「今度は上半身と下半身の妖怪か。…………どこから突っ込むべきなのか」
「なに、俺っちの相棒に突っ込みたい!? あんさん、ガキンチョの癖に中々ディープな趣味を……!」
「ちげぇえよ!? 何勘違いしてるんだこの腐れ上半身!?」
「その……痛く、しないでね? と相棒が言っております」
「なにがっ!? ねぇ、なんのこと!? 俺のことなんだって思ってるの!?」
「あれ? いわゆる公園で誘われてトイレで〝ウホッ〟な事が大好きな人種じゃ?」
「するかっ! ていうか小学生を何だと思ってやがるテメェっ!?」
「……あの、本田君? なんのお話なの?」
「月村さんは一生知らなくてもいいことでーすっ!!」



 ③図工室の傍、粘土の手&埴輪コンビ。



「わぁ、かわいい♪」
「……なんで粘土の手と埴輪がダンスしてるかな。アダムスファミリーでもあるまいし」
「でも、悪さとかしなさそうだね?」
「うわべだけで判断すると痛い目を見るのが常。いやしかし、こいつら器用だな。手と埴輪というシュールな光景にもかかわらず、思わず見とれてしまう優美さがある……っ!」
「あ、終わったみたい。拍手してあげようよ」
「いや、構わんけど……」
「ねぇ本田君、あの子たち、私達にもっと近づいて、って言ってるのかな……?」
「つ、月村さん危ないよ! そんな不用意に近づいた――――てめぇええそこの粘土月村さんの手から離れろやゴラァアアア!!?」
「本田君落ち着いて!? 私握手しただけだよっ!」
「お、俺ですらまだの体験を粘土と土くれ如きがぁああ!? ―――――死のう」
「彫刻刀で切腹はダメぇええええ!!」



 ――――とまぁ、色々ありました。
 最初はおっかなびっくりドキがムネムネしながら怖がってたんだけど、ろくろっ首の姐御との会話で、どうにもやつらはそう悪いヤツらでないことが発覚。なんでも、いきなり自我が発生してみんな混乱してるんだとか何とか。なんだその超常現象。楽し過ぎる。
 結局、俺とすずかちゃんは出会う妖怪達と仲良く挨拶して話を聞いてあげ、そして件のジュエルシードをどこかで見なかったか、と尋ね回っていた。
 その甲斐あって、今回の事件の根本的な原因―――――というか、まぁ始まりとなった理由がわかったわけである。
 カギを握っているのは、警備員さんが話していたという〝肝臓を探し回る人体模型〟にあったのだ。
 なんでも、そいつが青く光る石を持っているのを、この学校に存在する妖怪達全員が目撃したらしいのである。となれば、考えるまでもなく、そいつが今回の元凶である。
 探し出す存在も確定し、あとは地道な聞き込みと足を使った探索と相成ったわけなんだが……。



「貴方は……この間の!」
「…………」
「―――――マジかよ」



 月村さんが鋭くねめつける先には、一人の―――――とても見覚えのある少女が、悠然と立っていた。









                           俺はすずかちゃんが好きだ!









 俺は、改めて今この瞬間、神を殺してやりたいほどに憎んでいる。
 あぁくそ、なんの悪戯――――いや、嫌がらせだろうか。
 忘れるなんてできない。いや、確かに記憶から少しずつ薄れ始めてはいたが、それでも〝彼女〟という存在は〝俺〟という魂に未来永劫焼き付いている。
 だからこそ、俺は信じられなかった。
 呼吸が長く止まる。息することすら忘れ、隣で喚くバナナ獣の言葉すら右から左に流し、俺の手をぎゅっと握りしめてくれる天使の存在すらもその時忘れて、俺は彼女に見入った。
 踝あたりまで伸びてそうな髪をツーテールに結わえ、その身を黒いマントに包んでいた。
 背はすずかちゃんと同じくらい。どこか眠たそうで気だるそうな目は、しかしはっきりとした意思と覚悟を伴って、俺達を見据えている。
 どこかの窓が空いていたのだろうか。ふと、俺達の間に一陣の風が吹き抜ける。
 舞い上がる金砂のシルク。さらさらと心地よい音を立てて、目の前の少女を風が撫でていく。
 懐かしさで胸がいっぱいになった。そりゃもちろん、あいつはこんな奇天烈な格好はしていなかったし、ツインテールなんて可愛らしい髪型をしていたわけでもない。



――――その容姿が、〝前世〟のマイラバーと瓜二つということに、神の悪意をまざまざと感じざるを得なかった。



 物事を淡泊に捉えていつも大人ぶっていて、しかし静かで優しい旋律を奏でる―――――のは外面だけ。
 二人っきりの時とか俺の家にいる時とかなんか、あの野郎、まるで鬱憤を晴らすかの如く俺の中の〝女〟をぶち壊してくれやがった事実は、今でも俺の心臓を締め付けてやまない悪夢である。
 ……いやまぁそのせいで〝ぶち壊される以前の理想の女性像〟とも言うべきすずかちゃんにベタボレしてるんだけどさ。一概に害悪とも言い切れないのが質悪い。
 そして、そんな懐かしさ爆発な容姿をしている少女――――恐らく、彼女が先日のブルーデビル事件で高町と相対したという、ライバルの魔法少女なのだろう。



「――――この間の魔導師の友人か。邪魔をしないと言うのなら、すぐに帰って。ここは危険」
「デンジャーな場所はジンジャー」
「………………」
「………………本田君、その……ごめんなさい」
「うん、むしろ何も言わないでくれたほうが心の傷が浅かったです」



 思いっきり滑ってトリプルアクセルをかました俺に、すずかちゃんが慰めの言葉をかけてくれる。しかし今ばかりはその心遣いが悲し過ぎた。



「……とにかく、ここは危険だから」
「それで、貴方はまたなのはちゃんを傷つけるの?」



 ざっ、と俺達を置いて去ろうとした少女を呼びとめながら、すずかちゃんが俺より一歩前へと踏み出す。
 その声には、少女に対する敵意がありありとこもっていた。俺が思わず唾を飲み込んでしまうほど重く、そして強い敵意が。
 しかし、高学年の子供がひるんでも可笑しくないその恫喝を受けても、少女は眉ひとつ動かすことなく踵を返す。
 黒いマントが緩く翻り、風を撫でる音だけが静かに廊下に木霊する。
 俺も、すずかちゃんも追いかけることはしない。いや、容易に近付けないんだ。
 高町のやつが使って見せてくれたことで、魔法使いが使う魔法の威力は良く知っている。ここで迂闊に手を出して反撃をされようものならば、凡人でしかない俺達は容易にコテンパンに伸されてしまうだろう。
 ようは、こっちには一瞥もくれやしない象に対して、蟻んこが一生懸命罵詈雑言吐き散らして威張るようなものだ。無茶無謀もここに極まれり、だ。でもそんな強気なすずかちゃんも可愛くて大好きですっ!
 


「その沈黙が肯定の意味なら―――――私は貴方を許しません」 
「…………」



 少女の足が止まる。
 いつの間にか、すずかちゃんの手は俺から離れ、気がつくと俺をかばうようにして前に立っていた。
 その意図に気付いて、俺は慌てて「月村さん!?」と声をかけるが、すずかちゃんはそれにこたえず、ただ静かに足をとめた少女を睨み据えている。

――――いやいや、何この【すずかちゃんVS謎の魔法少女】のガチバトル一歩手前の雰囲気は!?

 そもそもからして、あの少女が俺のマイラバーと瓜二つなのは一体何なのか? いや、彼女はこの世界でのマイラバーなのか? それとも俺と同じく転生してきたのか? それとも姉妹か何かなのか? 好きなものは何ですか? 俺のこと誰かわかりますか? あとやっぱりプロレスとか得意ですか?
 ……聞きたいこと(聞きたくないことも含め)は、それこそ山のように積み重なっていく。しかし、そんな俺の衝動は、すずかちゃんの静かな言葉に否応なく抑えつけられる。
 抗えない。何故だろう、今この瞬間、すずかちゃんの言葉に割入る勇気が、俺には持てない。
 そうしている間にも、二人の間で話は進んでいく。



「だとしたら……?」
「ここで貴方を止めます。なのはちゃんの邪魔は、させない」
「ちょ、月村さん!? そんな危険な事、おとーさん許しませんよ!?」



 よもや俺の予想を鉛直方向に裏切らない、とんでもないことをおっしゃる月村のお嬢様に、俺は思わずいつもの勢いとパニックから、普段は絶対に言えないようなジョークを交えた台詞を飛ばす。
 「おとーさんって……」と苦笑しながら振り返るすずかちゃん。いやもうごもっともです。
 しかし、そんな俺達を交互に見ながら、ちょこんと小首をかしげるマイラバーと瓜二つの少女。
 


「……親子?」
「「そんなことはありません」」
「……そう」



 ノリがいいのか、それとも素なのか。
 判断に苦しむところだが、ともあれ中々面白い性格をしているのは間違いないようだ。
 いや、それよりも……っ!



「なんだか忘れられてた気がするけど、無茶だよすずかさん! 普通の人が魔導師に挑むのは自殺行為だ!」
「……あぁ、そういやいたっけ、バナナ獣」
「忘れないでよ!? ていうかバナナ獣って呼ぶのやめてよねっ!」
「だって、なんか形がひわ……」
「それ以上言ったら縛るよ!」
「……とても優美で雄々しくあらせられますね、ユーノ様」



 獣如きに平身低頭しなければならない、この弱者の地位が恨めしい。
 昨日、調子に乗ってからかいまくったら、ユーノの魔法である鎖でがんじがらめに縛られて三十分くらい逆さ吊りにされた記憶がよみがえる。うぅ、最初は「わーいミノ虫だー♪」とか喜んでられたけど、次第に頭に血がたまってきてしんどかったんだぜ……。
 


「とにかく、正面衝突は危険だ。ここは大人しく見逃してもらった方がいい」
「でも、ここで足止めしないと、またなのはちゃんに……!」
「わかってる……! だけど、君達をこれ以上危ない目に合わせられないんだ!」
「――――ふむん?」



 ユーノとすずかちゃんの言い合いを聞いていてわかった。
 ようは、高町の奴がジュエルシードを確保するまで、ここでこいつを足止めできれば俺達の勝ちということか。



「じゃぁこうしよう」
「本田君?」
「時彦? どうするつもりなのさ?」
「月村さん、高町達に合流してくれ。そのまま外にいる忍さんと鬼ー様に連絡を取ってもらえると助かる。ここは俺とユーノがなんとかするから」
「「ええっ!?」」



 ……なんでそんなに驚かれてるんでせうか。むしろ俺としては、すずかちゃんが足止めするって言った時の方が驚愕してたんですが。
 


「大丈夫、〝ブツはもう確保した〟んだ。うまく逃げて見せるさ」



 にやり、とわざとらしく大声で言いながら笑ってやる。ついでにちらりと視線を少女の方に投げれば、どうやら〝餌〟に食いついてきたようだった。
 さらに言えば、すずかちゃんは俺の言わんとしていることを理解してくれたらしかった。小さく「でもまだ――――あ!」と気付いてくれた。



「アイツの狙いは、どうやら〝あの石〟みたいだしね。月村さんを危ない目に合わせるわけにはいかないよ」



 少女は微動だにしない。が、その前髪の奥から、俺を見ているのはわかった。
 間違いない。ヤツは、ジュエルシードがどこにあるか知らない。ならば、アドバンテージは俺達にある。



「それに、俺より足が速い月村さんが高町と合流して助けを呼んでくれるなりすれば、俺としても逃げやすくなる。もっとも、女の子にこんな荒事はやらせちゃいけませんからね。紳士的に!」
「――――まったく、危険だって人が言ってるのに」
「お前は獣だろうが。……まぁ、そういうわけだからさ」



 すずかちゃんの手を引っ張り、無理やり俺の後ろへと下がらせて、にかっと笑いながら振り向いた。
 


「任せてもいいよね?」
「本田君――――うん、わかったよ」
「さすが。頼りにしてるぜ?」
「無茶は、しないでね?」
「任せておきなさい。本田さん、無茶することにかけてはプロ級ですから」
「もう、またそう言う事言って」



 やっぱり、俺の惚れた女の子だ。聡明で、何より決断力がある。



「あぁ、あとさ、月村さん」
「え、なぁに?」
「――――高町に聞いてみてくれ。〝人間の肝臓って、どこにあると思う?〟ってさ」
「!――――うん、わかった!」



 「絶対に、無茶しちゃだめなんだから」と俺に念を押したすずかちゃんは、すぐさま踵を返すと、月光に照らされる廊下の中を駆け抜けていった。
 その後姿を最後まで見届けることなく、俺は正面の少女と向き合った。
 闇と前髪に隠れて影に埋まったような顔からは、一体彼女が何を考えているかはわからない。
 だが、俺を〝締め上げよう〟と思っているのは間違いない。なんせ、アイツと瓜二つなんだから。



「さーて、本命の子を袖にしてお前とダンスするんだ。ちったぁ良い思い、させてくれよ?」
「―――――」



 蒼白い闇の中、静かにゴングが鳴り響いた――――ような気がした。










  
 映画で、よく爆発で人が吹っ飛ぶという描写がある。
 実際、爆発が起きるとその時のエネルギーが周囲に拡散することによって衝撃波が発生するため、あれはあながち嘘でもないのだが、場合によっては誇張も交えてやや大げさに吹っ飛ぶこともあるらしい。
 ん? なんで急にそんなことを言ったのかって?
 ………そりゃお前、世の中には誇張抜きでも、あんなに吹っ飛ぶこともあるんだな、って実感したからに決まってるじゃねぇか。



「死ぬっ!! マジで死ぬっ!!!」
「大丈夫。どうやら彼女、非殺傷設定で攻撃してるみたいだ」
「何そのご都合主義!? いやそれでもようは嬲り殺しじゃねぇか! なお悪いわっ!!」
「そうさせてるのは時彦じゃないか。まったく我儘だなぁ」
「〝やれやれだ〟みたいに肩すくめてんじゃねぇよこの役立たず! てめぇも魔法使いなら少しは反撃しろ!」
「あはは、それが僕は攻撃に関しては才能ゼロなんだよねー。いやーもうなのはの魔法を見た時は軽く絶望を味わったよ。世の中、才能が全てなんだ………はは」
「あのーユーノさーん? 今俺達、絶体絶命だってわかってますかー!?」



 ズガガガガ!とまるで映画の一場面のように、俺が走る廊下が削られていく。非殺傷設定とか言ってるが、明らかにこれ物理ダメージあるよね!? あんなん当たったら死ぬだろ間違いなくっ!!
 滑り込むように教室のドアをくぐり、慣れた手つきでドアのロックをかける。
 私立校だけあって、聖祥大付属の校舎の教室扉には全てロックがあり、それは普段の金色夜叉ことアリサから逃げ回るときに非常に重宝していた。
 おかげで〝校内で最速ロックができる男〟という嬉しくもない称号を頂くことになったのだが、まさかこんなところで役に立つとは……人生、何があるかわかったもんではない。



「はぁ! はぁ! ……っくしょ、どうしろってんだばかやろうっ!」
「時彦が〝ブツは確保した〟なんて嘘をつくからだよ。あの子、間違いなく君から奪い取る気満々だね」
「投げやりですね!?」
「だって、僕は逃げろ、って言ったんだよ? それを無視して危険に自ら足を踏み込んだのは時彦じゃないか」
「耳が痛すぎてもげそうです」
「そのままもげるといいと思うんだ」
「酷いよ相棒!」



 期待が大きく外れた。
 てっきり、ユーノの魔法でどうにかできるってタカをくくっていたんだが、野郎、肝心の攻撃魔法がてんでさっぱりときた。なんという役立たずか。まだ栄養源になるバナナの方が有益だろ。つーかそう言う事は昨日の内に教えておけってんだバカヤロウコノヤロウ。
 今この瞬間、俺の頭の中で「バナナ>>>>越えられない壁>>>ユーノ」という公式が完成した。



「何気に失礼なこと考えてるよね!?」
「んなことより、お前が使える魔法にトラップ系はないのかよ! こう、時間差で爆発させるとか、一定範囲内に入った対象を吹っ飛ばすとか!」
「なんでことごとく爆発系なのか疑問だけど、一応あるよ。遺跡の瓦礫を吹きとばしたりするのに必要だったし。でも、発動時間がきっかり決まってたり、対魔導師用の魔法じゃないから、魔導師に対してはあまりダメージを期待できない」
「はぁ? 対魔導師用? なんだよそりゃ、さっき非殺傷設定とか言ってたけど、それ以外にもなにかあるのか?」



 そう言いながら、俺は教室の窓を開けて下を覗き込む。
 でっぱりを伝っていけば、隣の教室まで移動できそうだ。……いや、パイプを伝って下に逃げるべきか?



「簡単に言うと、殺傷設定は、その魔法が対象の生命活動を停止させるか否かに繋がって、ソレとは別に物理透過設定っていうのもある」
「もしかしなくとも、さっきの光の槍みたいなのが体を突き抜けるかそのままブッ刺さるか、ってことか?」
「理解が速くて助かる。まさにそれだよ。透過設定をしていれば、リンカーコアに対するダメージだけ――――まぁ、精神力を奪うっていう感じかな」
「……メタルギアの麻酔銃みたいなもんか」
「なにそれ?」
「きにすんだ。で、さっきの対魔導師用ってのはなんなんだよ」



 駄目だな、いくら運動神経に自信があるって言っても、この高さでそんな冒険するには状況が緊迫しすぎている。もっと余裕があって慎重にできるならやってもいいが――――くさってもここは三階だ。誤って下に落ちようものならば骨折どころの騒ぎじゃない。
 しかたないな……なんとかこの教室に誘いこんで足止めするしかないか。



「対魔導師用っていうのは、文字通り。そもそも、魔導師はバリアジャケットっていう狭範囲型結界を纏っているから、対魔導師用のプログラムを設定していないとダメージのほとんどがその結界に遮断されるんだ」
「……おーおー、それってつまりアレか? 〝バリアジャケットなら物理攻撃も安心♪〟ってか? なんだそれ、アーマードマッスルスーツ涙目じゃねーか。全世界のスプリガン様に謝れ!」
「意味わからないよ! それよりも、これからどうするの? さっきからロッカーあさったりしてるみたいだけど」
「ここで迎え撃つ!」
「……開き直ったね?」
「おうともさっ!」



 教室に隠れて既に二分ちょい。
 だというのに、まだ続きの攻撃がないのは俺達を無視して高町を探しに行ったか――――それとも、月村さんを!?

 

「わわっ!? と、時彦、急にどうしたのさ!」
「今アイツがどこにいるかわかるか? 月村さんを追いかけてたりしたら、意味がない!」
「さすがにわからないけれど……待って、探査魔法をかけてみる」
「頼む!」



 バケツに箒、ついでに乾いた雑巾と適当に漁った道具箱からちょろまかしたタコ糸。ついでに教卓を漁ればもちろん見つかる画鋲。
 やることは簡単。バケツの中にひたすらモノを詰め込み、タコ糸で教室の扉の上に釣り上げる。ドアが開いた瞬間、真下に落下するアレだ。
 さらに、そこから予想できる行動範囲内に足をひっかけるようにタコ糸を張り巡らせる。
 画鋲でとめられなくても、椅子の足に巻きつけたりなんだりすれば問題なかった。
 そこまでするのにさらに三分。
 ちっ……やっぱりすずかちゃんを追いかけたか?



「……時彦、どうやら彼女、まだここの廊下の端にいるみたいだよ」
「なーるほど? 最初のハッタリがここにきて利いてるな」



 すずかちゃんが去った後、いの一番に俺が宣言した「俺はトラップマスター・ひこちん! 俺がリバースした時、貴様は既につかまっている!」とジ○○ョさながらのポーズを決めながら言い放ってやった。もちろん、言い終わる瞬間に、ユーノの鎖の魔法で捕まえようともしたが、いとも簡単に避けられてしまっている。
 恐らくそのことがあって、俺達が罠を仕掛けていないかを警戒しているのだろう。
 ユーノが魔法を使える生物だってのは既にバレテいる上、しかも、どうやらあの子もユーノと同じ系統の魔法を使うらしい。
 となれば、最初に見せた鎖の魔法と、これまで反撃もせずに逃げ回ったことを併せて考えれば、俺達が〝攻撃はできないけれど、拘束魔法は使える〟という情報に行きつくはずだ。そうなれば当然、俺達が隠れているところにのこのことやってくるのは、オツムの足りない馬鹿か、そんなのかんけーねぇ!とばかりに力技でぶちぬいてくるかの2通り。俺としては、仮にもマイラバーと瓜二つのあの子がそんな残念な子でないことを祈るばかりである。



「それにしても時彦。やけにあの子にこだわるね?」
「あん? 男として足止めするって約束したからにゃ当然だろうが」
「いや、それならこんなところで隠れてるよりも、あちこち走りまわってた方がいいじゃないか。なんで無理にあの子を捕まえようとするのさ」
「……ちょっとな。あの子に聞きたいことがあるんだよ。出来れば二人っきりで」



 そう、できれば俺自身が確認しておきたいことがあるんだ。
 ユーノがいるのはちょっとまずいが、まぁこいつにならばれても問題ない。
 そのためにも、すずかちゃんや高町達がここに来る前に、何としてでもあの子を捕獲する必要がある。



「とにかく、詳しいことは後だ。ユーノ、扉が開いてあの子が入ってきたら間髪いれずにクモの巣みたいに鎖を張れ。できるだろ?」
「う、うん? いや、まぁできるけど……強度は保障できないよ?」
「一瞬隙を作ってくれればそれでいいんだよ。そのあと、合図したら一際強力な拘束、よろしく」
「何を考えてるか知らないけれど、わかった。とりあえず、議論してる暇はなさそう―――――だしっ!」



 ユーノがきっ!と扉を睨みつけるのと、扉が爆発すること、そしてその上に釣り上げてあったバケツが落ち、黒い何かが飛び込んでくるのはほとんど同時だった。
 さすがにこの展開に俺は一瞬だけ唖然とする。まさか扉を爆破するなんて誰が思うか。
 遅れて張り巡らされたユーノの魔法の鎖。要望通りクモの巣の如く張り巡らされたソレは、疾風のように突入してきた黒い影の突撃を邪魔する。くそっ、俺御手製のトラップは盛大にシカトかよ!
 心の中で毒づきながら、俺は大慌てで床を蹴る。
 鬼ー様のお墨付き。日ごろ金色夜叉アリサ丸から逃げ惑う事で手に入れた小学生にしては脅威の脚力で、一秒と少しで俺はその黒い影――――マイラバーに瓜二つな少女へと飛びついた。
 そんな俺の行動は予想外だったのだろう。その右手に持った斧のようなものを一振りして魔法の鎖をなぎ払った彼女は、突撃してくる俺を見て目を丸くしていた。
 
――――衝撃。

 ほとんど餌に飛びかかる猫のように飛び込んだ俺と、予想外の行動でさっきの俺のように固まった少女が絡み合って倒れ込む。無論、その際に彼女を思いっきり抱きしめるのは忘れない。あぁくそ、すずかちゃん意外にこんなことするのは、前世以来初めてだぞっ!



「捕まえたっ!!」
「――――っ!?」
「〝チェーン・バインド!〟」


 
 同時に、ユーノの声が朗々と高く響き渡る。
 それとほぼ同じくして抱き合った俺と少女をまとめて緑色の鎖が縛り上げ、まるで簀巻きにされた布団の如く俺達はその辺を仲良くゴロゴロと転がって――――いだっ!? 



「ば、馬鹿かユーノテメェ! 俺まで一緒に縛り付けてどうすんだよ!?」
「そうでもしないと強度が保てないんだ。まだ馴染んでないから、精密な操作が難しくて……」
「ぐぬぬ……あーいてぇ、たんこぶできたぞ間違いなく」
「男の子でしょ。我慢我慢」



 野郎、自分だけ平然としやがって。
 俺が飛び出した瞬間、ユーノは俺の肩から飛び降りながら魔法を詠唱していた。おかげで多少のアクシデントはあったものの、概ね作戦通り――――俺と少女まとめて簀巻き状態になり、被害は俺の頭のたんこぶと爆破された扉程度で収まっているのだから、結果としては上々だろう。



「さーて、大人しくしてもらうぜ謎の魔法少女」
「くっ……離せっ!」



 武器を振り回そうにも、この至近距離じゃ難しい。
 だったら魔法を俺に向かってぶっぱなせばいいんだろうが、残念。そんなことをすれば、逆に意識のなくなった俺のせいで動きにくくなる。
 意識のある人間より、意識の無い人間の方が体感的には重いのだ。こんな密着してる状態で意識の無い俺ごと動こうとするなら、少女の力ではいささか力不足というものだろう。
 まぁついでに俺が背中に手をまわして腕を動かせないようにしているってのもあるんだけどね。セクハラ? ぼくしょうがくせいだからむずかしいことわかんなーい♪
 とにかく、こうしてなんとか足止め作戦は成功した。後は鬼ー様と忍さん達の到着を待つばかり。
 ……と、その前に。



「俺をノックアウトしても、そこのバナナをどうにかしない限り意味がないぜ? だから、その物騒な魔法を止めてもらおうか」
「……っ」



 夜で暗いおかげで、背後に浮かぶ何かの光に気付けたのは僥倖だった。ちょうどバナナ獣の視界からは見えない位置でなにかやらかそうとしているあたり、なかなかに賢しい子と見える。



「おーけ。話が早くて助かる。ついでに、このまま暫く待っててもらうぜ。解放して大人しく武装解除してくれるとは思えないしな」
「……」
「だんまりですか。都合が悪くなるとすぐダンマリするのはアイツとそっくりだな……」
「え……?」



 思い出すのは一人暮らしをしていた時の俺の部屋での出来事。
 大学から帰ってきたら、何故か部屋に飾ってあった俺の宝達が、まるで気化爆弾を落とされた爆心地のような有り様になっていた。むろん、部屋の片隅には狸寝入りをしているマイラバーの姿が。
 一体何があったのか、と聞いたらダンマリを極め込むこと数時間。ようは狸寝入りである。揺らしても振り回しても叩いてもくすぐってもうんともすんともいいやしねぇ。逆にその無反応さに感動したけどな!



「ちょっと質問なんだが、昔一人暮らしの男の家のプラモを爆砕したことは?」
「……は?」
「じゃぁ、料理だと称してガスコンロに油を満載したフライパンをおいて、何を血迷ったのかエビをそのままぶち込んだ覚えは?」
「……ない」
「時彦、割とそれは洒落にならないよね」
「そうか。ごめん。人違いだったや♪」
「しかも結論がそれっ!?」



 ふぅ、なんだ安心した。ただのそっくりさんだったぜ☆
 いやーそうだよねー。いくら俺が転生なんて言うとんちきな目に遭ってるとは言え、そうそうあちこちであんなアグレッシブでエキセントリックな女の子がポンポンいたら怖いよねー♪ あっはっは☆
 ……いやもうアリサと高町だけで十分エキセントリックなんだけどさ。
 


「……」
「まぁアレだ。せっかくなんだし自己紹介でもする? 俺本田時彦9歳。私立聖祥大付属小学校3年生で、一途に恋する純情な少年だよ!」
「うわぁ……なんだか背筋が寒くなるくらい痛々しいんだけどなんでだろう」
「やかましぃっ! で、君の名前は?」
「……」



 見事にだんまりを決め込まれて本田さんちょっぴりショック。いやまぁこんなお互いに不本意な状況で抱き合ってたらそりゃ無言にもなるよな。ていうか俺だったら絶対口もききたくない。
 


「名乗らないなら勝手に名前つけるぞ?」
「………………フェイト」
「フェイトってのか。運命なんてまた洒落た名前だなぁ」
「ねぇ時彦。それはもしかしてギャグで言ってるの?」
「いい加減黙ろうな淫獣バナナ?」



 確かに今のは我ながらこっぱずかしいこと言ったとは思うけどさ。
 とにかく、名前がわかったならば遠慮することはない。



「じゃあフェイト、聞きたいんだけどなんでジュエルシード集めてんの? あれ、すげぇ危ないもんだってしらなかったり?」
「……あなたには関係ない」
「いやいや関係あるっての。一応あれのせいで人様に迷惑かけた覚えあるし、それにその回収を手伝っている身として、下手に他人にわたって大ごとになったら寝覚め悪いって」
「……」
「それで応えてくれたら、僕もなのはも一昨日の時点で分かってるって」



 うーむ……それもそうか。
 まぁそう簡単に応えてくれるとは思ってなかったし、仕方ないやね。



「で……いつまでそうしてるつもりなのさ? ていうか、この後のこと考えてる?」
「…・…あ」
「考えてないんかいっ!」
「いやー、足止めすることしか考えてなかったからさー。ほら、僕小学生だし!」
「一番説得力の無い回答ありがとう。でも、ごめん時彦」
「は?」
「っ――――時間切れだ!」



 それは、なんの前触れもなく起きた。
 ユーノの言葉が終わるか否か、そんなタイミング。
 ガラスの砕けるような音と共に、それまで俺と少女――――フェイトをまとめて締め付けていた魔法の紐が砕け散る。
 驚く暇もない。何が起きたのかが理解できず、ただ俺から離れていくフェイトを見つめることしかできない。
 それはまるで豹のようにしなやかで、無駄のない美しい動きだった。彼女が俺から離れたのにたっぷりと三秒もかかり、気がつけば彼女はその手に持っていた黒い斧を俺へと突きつけていた。



「悪く思わないで。貴方に恨みはないけれど――――私にはどうしても必要なの」
「……わぉ。電光石火」
「感心してる場合じゃないだろっ!」



 ユーノが叫びながら再び魔法を唱えた。
 ……何度見ても不思議なんだが、突如空間にライムグリーンの魔方陣が浮かび上がるってどんな超技術なんだろうな。いやSFだよコレほんと。
 しかし、ユーノの抵抗はまるでゴミでも払うかのように、金髪の少女によって一蹴される。魔方陣が出来上がった瞬間に、少女が先に打ち出した光の鏃のようなものがユーノのいた場所を打ち抜いた。それによって発動しかけていた魔法が霧散し、ユーノは慌ててその場から逃げ出す。
 けど、少女はそんなユーノは捨ておいて、とにかく俺を威圧することに集中していた。うーむ、喉先に突きつけられた黒い斧がとってもデンジャラス。

――――ひょっとしなくとも、僕ちゃんピンチ?



「ジュエルシードを渡して。渡してくれれば、危害は加えない」
「あはー、やっぱりそうだよねぇ……」



 呑気なことを言ってる場合じゃないと言うのはわかってるんだが、日ごろの行いの所為でそんなとぼけたような返事が口を突いて出た。
 ユーノの援護を期待したいが、さっきのアレを見る限りじゃ無理だろうなぁ……。さっき拘束できたのは本当にまぐれのようだ。
 とりあえず両手を挙げて降参のポーズ。


「でもさ」
「……なに?」
「もし――――そのジュエルシードを持ってない、としたら?」
「まさか――――っ!?」
「その子から、離れなさい!!」



 その闖入者は突然にやってきた。
 教室の扉をぶち壊しながら、豪快かつ派手に教室に飛び込んできたその人は、それまで俺に斧を突き付けていた金髪の少女に向かって拳を叩きつけるようにして、俺と彼女の間に割り込んでくる。
 しかし、先程の電光石火の動きのように、金髪の少女は身をひるがえしてその一撃を回避。
 結果、着地と同時に、避けられたことによって目標を失った乱入者の拳が教室の床を砕き、衝撃が教室全体に響き渡る。
 遅れて粉砕された扉の残骸の雨が降り注ぎ、俺はその非現実的すぎる光景に唖然とするしかない。
 なにこれ。え、いやマジでなんぞこれっ!!?



「大丈夫、少年?」
「し、忍さん!?」
「良く頑張ったね。おねーさん感心しちゃったよ」
「いやいや、つか……えぇえ!? 今扉ぶちこわしてっ―――!?」



 その闖入者は誰であろう、月村忍おねーさまだった。
 すずかちゃんと同じ宵闇の長髪を揺らして、こちらを振り返ってにっこりほほ笑む姿は、なんていうかやっぱりすずかちゃんの大人バージョンとしか言いようがなかった。
 しかしですね。わたくし本田時彦の私見としましては、目の前で無残にもとばっちりを受けて砕き割れている床の惨状についてお伺いしたく存じまするおねーさま。アンタ何者だよ!?
 あまりにも現実離れした目の前の光景と超展開に、脳が付いていくことを拒否し始める。そらそうだ。俺だってこんな漫画みたいな展開信じたくありません。ただでさえ友達が魔法少女なんつーけったいなもんやってるってのに、今度は教室の床を破壊するおねーさま? はは、またまた御冗談を。冗談は鬼ー様という存在だけでお腹いっぱいです。つーかここ最近こんなんばっかだなおい。いい加減能天気な小学生の俺でも胃に穴が空くぞ。



「なのはちゃんの方には高町君が向かったよ。〝石〟も確保したって」
「それじゃ!」
「そ。任務完了、後は撤退するだけ」
「でも、あの子を捕まえないと!」
「それは、おねーさんに―――――まかせてっ!!」



 そんな俺の魂の嘆きもどこ吹く風。
 呆然とする俺をほっぽって金髪少女とのガチバトルに移行した忍おねーさま。教室などという狭いフィールドでは満足できなかったのか、もはや本当に鬼ー様と同レベルかそれ以上の人外じみた廃スペックを発揮しながら、金髪少女を追い詰めつつ窓から外へとケリ飛ばした。
 ――――うわーお、本当に同じ人間様かしら。
 散らばるガラス。ぐしゃぐしゃにされた教室。そして――――鳴り響く警報。



「やばっ!? おいユーノ! ユーノ起きろっ! てめぇ、どーりでなんもアクションがねぇと思ったらこんなところで気絶してやがったな!?」
「うきゅ~……」
「ええい、とにかく逃げないと!」



 ぐるぐると目を回して気絶しているバナナ型フェレットをむんずと掴み上げ、俺は全速力でその場を後にした。
 うぅ……週明けの朝礼が物凄く怖いよぅ!
 ジリリリリ!と耳やかましく鳴り響く警報をBGMに、俺は心の中で学校の警備員型に何度も何度も謝罪しながら、高町達と合流するのだった。











 結論から言おう。
 あの金髪少女――――フェイトには逃げられた。
 忍さんが最後まで追いかけてくれたらしいんだけど、空を飛ばれちゃどうしようもなかった、とのこと。まぁ確かに。いくら忍さんが鬼ー様並みに人外的運動能力を持っていても、空を飛ぶ人間は捕まえらんないわなぁ……。
 ただまぁ、無事に学校の七不思議実体化事件の原因となっていたジュエルシードを回収できただけでも御の字である。むしろ、フェイトを相手にジュエルシードを確保できただけでも上等だろう。
 退治してみて分かったが、あの子はマジで強い。高町なんか屁の河童ってくらいに強い。……本気で死ぬかと思ったもん!
 そのことを高町に言ったら、なんだかすごい複雑そうな顔で頬を膨らませていた。なんかおもしろかったのでほっぺたを潰して差し上げた。楽しかった。
 ともかく、学校側の被害は置いておけば、事件は無事に解決。
 ちなみに、人体模型が持っていたというジュエルシードは、高町とアリサが逃げてる途中でどこかしらで拾ったらしい肝臓と交換してもらったとのこと。お化けから逃げるのに夢中で、どうやって肝臓を手に入れたのか覚えてないあたり、やはり高町とアリサである。
 ……さらに付け加えるならば、フェイトと忍さんがブッ壊した被害よりも、高町が乱射して暴れ回ったせいでぶっ壊れた被害の方がはるかに多かった。後日、高町は自主的にその修理に従事することに決まっている。哀れ。
 
 しかしながら、今後ともフェイトとジュエルシードを奪い合うのだと考えると、すごく不安だ。
 ユーノの魔法を解除した手際といい、鬼ー様と引けを取らない(そうだと確信できる)であろう忍さんと互角に渡り合った上、逃げおおせた実力を考えれば、とてもじゃないが高町じゃ逆立ちしても勝てるとは思えん。そう、どこぞの熱血漫画のような特訓をしない限りはっ!
 というわけで、明日から高町は鬼ー様の全面監督の元、毎日修業をすることになったそうな。涙目で勘弁してくださいと泣きつく高町の姿には、他人のことながらも心の底から同情するしかなかった。なーむー。
 
 そんな細々とした事後報告とかが終わったのが深夜過ぎ。
 こんな夜中に帰すのは危険だし、元々友達の家に泊まりに行く、という名目で夜を抜け出してきた俺達は、またしても月村家のご厚意で御泊りをさせていただくことになったのだった。いやっほいっ!
 うん、もうこれだけでも今日死にかけた甲斐があったね! むしろこんなご褒美のために頑張ったと思えば安いものだ。
 


「本田君、すごく機嫌がいいね?」
「え、そ、そうかな? 単に深夜すぎてハイになってるだけだよ」
「すずか、野暮な事聞かなくていいわよ。その馬鹿、アンタん家に泊まれるのが嬉しいだけなんだから」
「ばっ――――アリサさんお願いですからそのクソやかましいお口をチャックして頂けませんでしょうかねコノヤロウ!?」
「えー、なんでー? ほんだくん、すずかちゃんのお家に御泊りしたかったの?」
「お願いですから空気読んでください高町さん!」



 月村家が所有するロールスロイス―――ちなみに、運転手はノエルさんだ―――の最後部で、そんな俺達小学生組のやかましいやり取りが続く。
 深夜を回っても、初めての肝試しで興奮しっぱなしの俺達は、自分達が体験したお化けの話で大いに盛り上がった。
 そして、そんな俺達を鬼ー様と忍さんが苦笑しながら見つめていた。



「やれやれ……あんなに危ない目に遭ったっていうのに、元気だな」
「いいじゃない。子供なら、あのぐらい元気があったほうがいいと思うわ」
「ありすぎだ。もう少し大人しくしてくれないと、俺達の寿命が縮む」
「あはは、それは言えてるかも」
「……でも、よかったのか、月村?」
「うん? 何が?」
「彼の前で本気を出したんだろう? アイツ、きっと何か勘づいてるぞ」
「――――そうだね。そのあたりは、近いうちにきちんと話すつもり」
「…………そうか」



 なにやら意味深な御話をしている様子。
 忍さんの驚異的な身体能力を垣間見た本田君としては、色々と聞きたいことが山ほどあるんですが――――まぁ今はいいや。
 ぶっちゃけ〝そんなこと〟よりも、俺は今この瞬間、そして眠りにつくその時までの一瞬一瞬を堪能したい。
 大好きな女の子が笑って、その友達が馬鹿を言いながらさらに笑って。
 ただそこにいるだけで楽しい、夢のようなこの時間を。
 ……でも。
 


「本田君、やっぱり今日は変だね?」
「……どうしましょう。本田君今日は月村さんにとても注目されてる気がします!」
「気のせいだよ、ほんだくん」
「そーそー。あんまり自意識過剰すぎると嫌われるわよ?」
「なんだとぅ!?」



 脳裏をかすめるのは、あの金髪の少女の顔。
 どこか憂いを含んでいて、でも確かな決意を胸に動く、マイラバーと瓜二つの子。
 あの子がもし、この場にいたら―――――そんなことを考えてしまう今日の俺は、やっぱりおかしいのかもしれない。
 今度会ったら、もっと話を聞いてみたいんだがな。
 ……違うよ!? これは浮気なんかじゃないよ!? 俺様すずかちゃん一筋だかんね!!?



「今度は頭抱えてくねくねと――――きもっ」
「あはは、まるでイソギンチャクみたい」
「イソギンチャクって……なのはちゃん、その例えはちょっと……」
「うぉおおお! 俺は、俺はそんなつもりは―――ぶげらっ!?」
「黙れこの馬鹿猿!」
「……て、てんめぇこの野蛮ニングス! いい加減靴を人に向かって投げつけるのやめろよな!」
「はん。この程度は挨拶にも入らないわ。手加減してもらったことをありがたく思いなさい!」
「そんな手加減ありがた迷惑じゃっ!」
「なんですって? この私の慈悲を受け入れられないっての!?」
「てめーの慈悲より、月村さんの施しの方がウン百万倍も嬉しいね!」
「……あの、本田君?!」
「はっ!? い、いや違うよ月村さん!? あくまで今のはアリサなんかの慈悲という名の皮をかぶせた暴力なんかよりも、月村さんの何気ない優しさのほうが遥かに嬉しいってだけで――――うぁああああ! 俺は一体何を口走ってるかー!?!」
「え、え? えと、それって……?」
「……ばーか、自分で墓穴掘ってどうすんのよ」
「もとはと言えばお前の所為だっ!?」
「むぅうう。ねぇ、私にもわかるように教えてよー! どういうことなのー!?」
「「お子様は黙って寝てろ!」」
「ひどっ!? ひどいよ二人とも!」



 俺達のやりとりを聞いて、車内の前方から忍び笑いが聞こえてくる。
 でも、そんなの関係なかった。ヒートアップした俺達は、さらにくだらないことで口論をし、馬鹿笑いをし、ただその時間を楽しむ。
 車は、すずかちゃんの家を目指して走り続けている。
 


――――俺の胸に、どうにもしがたい物足りなさを残したまま、走り続けていた。


 




















―――――――――――
衝撃の事実と共に、ようやくフェイトそん登場。
でもマンネリしてきた。もっとはっちゃけたいなぁ。
次は髭VS誰かか、それとも本田君がんばる!的な話にするか……。
ちなみに瓜二つ設定は大した意味はありませんよ。よ!
 
  


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