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No.15302の一覧
[0] 【完結】リリカルなのは ~生きる意味~(現実→リリカル オリ主転生 最強 デジモンネタ)[友](2015/01/12 02:39)
[1] プロローグ[友](2010/01/04 15:51)
[2] 第一話[友](2010/01/04 15:52)
[3] 第二話[友](2010/01/04 15:55)
[4] 第三話[友](2010/01/05 00:19)
[5] 第四話[友](2010/01/17 13:53)
[6] 第五話[友](2010/01/17 14:31)
[7] 第六話[友](2010/01/24 12:46)
[8] 第七話[友](2010/01/31 15:55)
[9] 第八話[友](2010/02/07 10:27)
[10] 第九話[友](2010/02/14 15:40)
[11] 第十話[友](2010/02/21 11:01)
[12] 第十一話[友](2010/04/04 09:45)
[13] 第十二話[友](2010/04/04 09:46)
[14] 第十三話[友](2011/05/03 21:31)
[15] 第十四話[友](2010/03/28 07:45)
[16] 第十五話(前編)[友](2010/04/04 09:48)
[17] 第十五話(後編)[友](2010/04/04 09:49)
[18] 第十六話[友](2010/04/04 09:51)
[19] 第十七話[友](2010/04/18 07:24)
[20] 第十八話[友](2010/04/25 14:47)
[21] 第十九話[友](2010/05/02 21:59)
[22] 第二十話[友](2010/05/09 07:31)
[23] 第二十一話[友](2010/05/16 15:36)
[24] 第二十二話[友](2010/06/06 15:41)
[25] 第二十三話[友](2010/05/30 09:31)
[26] 第二十四話(前編)[友](2010/06/06 15:38)
[27] 第二十四話(後編)[友](2010/06/06 15:39)
[28] 第二十五話[友](2010/06/06 15:36)
[29] 第二十六話 (2013年11月14日 改訂)[友](2013/11/14 22:27)
[30] 第二十七話[友](2010/06/27 17:44)
[31] 第二十八話[友](2010/08/17 21:11)
[32] 第二十九話[友](2010/08/17 21:11)
[33] 第三十話[友](2010/09/19 16:35)
[34] 第三十一話(前編)[友](2010/09/19 16:30)
[35] 第三十一話(後編)[友](2010/09/19 16:34)
[36] 第三十二話[友](2010/11/07 14:58)
[37] 第三十三話[友](2010/12/05 15:37)
[38] 第三十四話[友](2010/12/05 15:36)
[39] 第三十五話[友](2011/01/16 17:21)
[40] 第三十六話[友](2011/02/06 15:02)
[41] 第三十七話[友](2011/02/06 15:00)
[42] 第三十八話[友](2011/03/13 18:58)
[43] 第三十九話[友](2011/03/13 18:56)
[44] 第四十話[友](2011/03/27 15:55)
[45] 第四十一話[友](2011/04/10 20:23)
[46] 第四十二話[友](2011/04/24 16:56)
[47] 第四十三話[友](2011/05/03 21:30)
[48] 第四十四話[友](2011/05/15 14:37)
[49] 第四十五話[友](2011/05/29 20:37)
[50] 第四十六話[友](2011/06/12 22:18)
[51] 第四十七話[友](2011/07/10 23:20)
[52] 第四十八話[友](2011/07/25 01:03)
[53] 第四十九話[友](2011/07/25 21:26)
[54] 第五十話[友](2011/09/03 21:46)
[55] 第五十一話[友](2011/10/01 16:20)
[56] 第五十二話[友](2011/10/01 16:27)
[57] 第五十三話[友](2011/10/01 16:19)
[58] 第五十四話[友](2011/10/30 20:17)
[59] 第五十五話[友](2011/11/27 20:35)
[60] 第五十六話[友](2013/04/21 19:03)
[61] 第五十七話[友](2013/04/21 19:00)
[62] 第五十八話[友](2013/04/21 18:54)
[63] 第五十九話[友](2013/08/22 00:00)
[64] 第六十話[友](2014/03/23 23:15)
[65] 第六十一話[友](2014/03/23 23:13)
[66] 第六十二話[友](2014/05/06 17:27)
[67] 第六十三話[友](2014/08/13 19:34)
[68] 第六十四話[友](2014/11/30 22:33)
[69] 第六十五話[友](2014/12/31 20:29)
[70] 最終話[友](2015/01/12 02:26)
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[15302] 第五十八話
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/04/21 18:54


第五十八話 親子という事





あのレイシス一尉を返り討ちにした出来事からしばらく。

今日はアニメで言う休日の日らしく、ティアナとスバルが初めての休みに喜んでいた。

そういえば、本当なら今日ヴィヴィオを保護するはずだったんだよな?

それじゃあ今日はない事もないのか?

俺がそう思っていると、食堂の前を子供たちが通りかかる。

「父よ。 予定通り出かけてくるぞ」

夜美が相変わらずの王様口調でそう言ってくる。

今日は子供たちも休日で、街に出かける予定だそうだ。

まあ、女性陣からすれば、エリオとデートのつもりなんだろうが、

「お、お父さん、行ってきます」

エリオが女性陣に囲まれながらそう言ってくる。

その顔は若干焦っているようだ。

「父様、行ってきます」

「おとーさん、行ってくるね!」

「パパ、行ってきまーす!」

「ユウさん、行ってきます」

星、ライ、ヴィヴィオ、キャロの順でそう言いながら食堂の前を通り過ぎる子供達。

「いってらっしゃい。 気をつけて行くんだぞ」

「「「「「は~い!」」」」

俺の言葉に、全員が唱和した。






【Side エリオ】




休日の今日。

僕たちは街に遊びに行くことにしていた。

でも、皆僕にくっつく様に歩くのはなんでだろう?

ともかく、電車で街に着き、事前に決めたルートで街を歩くことにした。

皆で買い物をして、映画館に行ったり、レストランで昼食を食べたり。

とても楽しい時間だった。

だけど、

―ドン

おしゃべりしながら道を歩いていたから、対向の歩行者とぶつかってしまった。

「あっ! すみませ…………ッ!?」

僕は慌てて謝罪をしようとしたけど、相手の顔を見て思わず言葉が止まってしまった。

なぜなら、

「あ…………エリ…………オ……?」

そこにいたのは、

「エリオ………なのか……?」

僕を生んだ、いや、

「………お、お父さん…………お母さん………?」

僕を“捨てた”人達だった。







【Side Out】






【Side 星】




昼食を済ませてからしばらくして、エリオが歩行者とぶつかってしまいました。

「あっ! すみませ…………ッ!?」

エリオは慌てて謝罪の言葉を口にしようとしましたが、相手の顔を見た瞬間、驚愕の表情をして言葉が止まりました。

相手は30~40代と思われる灰色に近い銀髪の男性と、茶髪の女性。

どうやらこの御二方は夫婦のようです。

「あ…………エリ…………オ……?」

「エリオ………なのか……?」

その御二方はエリオの名を呟きました。

そして、

「………お、お父さん…………お母さん………?」

エリオが驚愕の一言を放ちました。

「エリオ…………エリオ!」

女性の方が感極まる表情で涙を浮かべつつエリオに駆け寄ろうとしましたが、

「違う!!!」

エリオが叫んだのは絶対的な拒絶の言葉でした。

その言葉で、駆け寄ろうとした女性の足が思わず止まります。

エリオは御二方を睨みつけ、

「僕のお父さんは利村 ユウ!! お母さんは烈火の将シグナム!! 貴方達なんか、お父さんとお母さんじゃ無い!!!」

エリオは吐き捨てるようにそう叫ぶと、振り向きざまに駆け出し、人ごみの中に消えていきます。

「待って! エリオ!」

「エリオ! 待つんだ!」

御二方はエリオを追おうと駆け出し、

「待つのは貴様らだ!!」

夜美の一括で、その足が止まりました。

夜美が御二方の前に堂々とした態度で歩いていきます。

「先ほどの話から察するに、貴様らがエリオの………いや、エリオの“オリジナル”の両親なのだろう?」

夜美から投げかけられた問いに、驚愕の表情を浮かべる男性と女性。

「何故……その事を………?」

男性が驚愕の表情を浮かべたまま言葉を漏らします。

「この場にいるもので、そこのキャロ以外はエリオと同じ身の上なのでな」

夜美は、暗に自分達もクローンであることを明かしました。

「き、君達も誰かの………」

「そのキャロとて、一族から追放………家族に捨てられた身だ。 そういう意味ではエリオと同じだな」

「違うわ! 私達はエリオを捨てたわけじゃ………」

「同じことだ。 エリオにとってはな」

夜美の言葉に反論しようとした女性でしたが、続けて言われた夜美の言葉に、何も言えなくなってしまいます。

「貴様たちがエリオを捨てていないと言うのなら、何故エリオを助けなかった? エリオが前に言っていたぞ。 貴様たちはエリオが助けを求めたのに抵抗を止めてしまったとな」

「そ、それは………」

「その程度の覚悟しか無いのならば、貴様らは違法行為に手を出すべきでは無かったな」

夜美はそう言うと踵を返し、

「ついて来い。 今のエリオの両親に会わせてやる」

御二方の返事も聞かずに歩き出しました。







【Side Out】





午後2時を回った頃。

俺は、子供たちは夕方まで遊んでいると思ったのだが、突然エリオだけが食堂に駆け込んできた。

そして、

「お父さん!」

そう叫んでエリオは俺に抱きついてきた。

「おいおい、どうしたんだエリオ?」

様子のおかしいエリオにそう問いかける。

「お父さん! 僕のお父さんとお母さんは、何があっても今のお父さんとお母さんだけですから!」

俺はその言葉で、両親に対することで何か不安になることがあったのだと察する。

俺は、エリオが落ち着くまで慰め続けることにした。






それからしばらくして、

「父よ、戻ったぞ!」

「父様、ただいま帰りました」

「おとーさん、ただいま!」

「ただいま、パパ!」

「ユウさん、ただいま」

エリオ以外の子供たちが帰ってくる。

ふと見ると、子供たちの後に続いて夫婦と思われる男性と女性がやって来た。

「この者達を父と烈火の将に会わせてやろうと思い連れてきた。 格の違いを見せつけるためにな。 母には許可を貰っている故、心配せずともよい」

夜美の言葉に、俺はその人たちに視線を向ける。

すると、エリオが俺に抱きつきながらその人たちを睨みつけていることに気がついた。

「…………貴方達は?」

俺が問いかけると、

「突然すみません。 私はソリオ・モンディアル、こちらは妻のヴェローナです」

自己紹介する2人。

「……なるほど、“モンディアル”……ね…………」

エリオと同じファミリーネーム。

そして、エリオの今の態度で、大方の予想はついた。

(リニス。 シグナムを呼んできてくれ)

俺は厨房にいるリニスに念話で呼びかけた。

(わかりました)

リニスも話を聞いて予想はしていたのか、すぐに頷いてくれた。






食堂でモンディアル夫妻と向かい合って席に座る。

尚、エリオは俺の隣に座っている。

しばらくすると、シグナムが食堂にやって来た。

「ユウ、何があった? エリオに関することだと聞いたが………」

シグナムは来てすぐにそう問いかけてくる。

「ああ、シグナム。 こちらはモンディアル夫妻だ」

俺はシグナムにモンディアル夫妻を紹介する。

モンディアル夫妻は、揃って頭を下げた。

「モンディアル………? なるほどな」

シグナムもその名を聞いただけで、ある程度は察したようだ。

シグナムは、エリオの隣の席に座り、モンディアル夫妻と向き合う。

「それで? まずは要件を聞こう」

シグナムはそう問いかける。

モンディアル夫妻は、睨みつけられるような視線に気不味い雰囲気になっていたが、口を開いた。

「……まずは、エリオの面倒を見ていただき、本当にありがとうございます」

ソリオさんが頭を下げる。

「親が子の面倒を見るのは当然のことだ。 貴方達に礼を言われることではない」

シグナムの言葉には、かなりの刺が伺える。

「どうかお願いです。 エリオを私達に返していただけないでしょうか?」

俺はやはり、と思った。

そして、俺が返す言葉は、

「身勝手だな」

「同感だ」

俺とシグナムはそう言い放った。

「そう思われるのは当然かもしれません。 しかし、私達は本当にエリオを愛しているのです」

その言葉に、

「嘘だ!!」

エリオが叫んだ。

モンディアル夫妻は困惑の表情を浮かべる。

「本当に僕を愛してくれていたのなら……………何であの時僕を助けてくれなかったんだ!!」

エリオは胸の内に秘めていた思いをぶちまける。

「僕は何度も、嫌だって………助けてって………何度も叫んだ!! でも、貴方達は助けてくれなかった!!」

その言葉に、モンディアル夫妻は身を竦めるように俯いた。

「研究所に連れて行かれた時も、僕は、お父さんとお母さんがいつか助けに来てくれるかもって思ってた! 苦しい実験にも、いつかは………いつか必ず助けに来てくれるって、信じてた!!!」

エリオは涙を流しながら叫び続ける。

「でも、貴方達は助けに来てくれなかった! 痛かった…………苦しかった…………そして何より寂しかった!! それなのに、今更しゃしゃり出てきて両親面するなぁ!!!」

自分の思いをぶちまけたエリオは、肩で息をする。

「はぁ………はぁ………そんな絶望の淵にいた僕を助けてくれたのは………」

「もういいエリオ」

そんなエリオを、シグナムは優しく抱きしめる。

「あ………お母さん……」

シグナムに抱きしめられて落ち着いたのか、エリオの気は鎮まって行く。

シグナムはモンディアル夫妻を睨みつけると、

「私も聞きたい。 何故貴方々はエリオを助けなかった?」

「そ、それは…………」

シグナムの言葉に、モンディアル夫妻は言葉を詰まらせる。

「エリオの事が知られれば、立場が危うくなることなど分かりきっていたはずだ。 貴方々は、それを承知で違法行為に…………プロジェクトFに手を出したのではなかったのか?」

「「………………」」

「その程度の覚悟で、何故エリオを生み出した?」

シグナムがそう問いかけると、

「…………それなら………どうすれば良かったんですか?」

ヴェローナさんが呟く。

「我が子を亡くし、その悲しみに耐え切れず違法行為にすがるしかなかった私達に…………あのままずっと悲しんでいればよかったんですか!?」

涙を流しながら叫ぶヴェローナさん。

その言葉に、

「勘違いしないで欲しい。 別に違法行為に手を出したことにどうこう言うつもりはない」

俺は口を開いた。

「俺も子供の時に両親を亡くしている。 家族の死の悲しみは、よく分かっているつもりだ。 その悲しみに耐えられなかった貴方達の気持ちもわからないわけじゃない」

俺の言葉に、モンディアル夫妻は驚愕の表情を浮かべる。

「俺達が言いたいのは、何故そこまで生み出したエリオを守り抜かなかったということだ。 そこまでしてエリオを生み出したのに、立場が悪くなるという理由だけで手放した。 俺達は、そこが理解できない。 持論だが、人工的に生命を生み出すというのは、神に喧嘩を売るに等しいと俺は思っている。 そこまでしたのなら、世界を敵に回すぐらい簡単なことだろ?」

俺の言葉に、黙り込む2人。

「ともかく、エリオを返す云々については俺はエリオの意思を尊重します。 今のエリオは興奮しているからまともな答えは出せないでしょう。 1週間時間をください。 その間にエリオによく考えさせ、答えを出させます。 少なくとも、もう一度エリオを貴方達と会わせることを約束します」

そう言う俺の言葉に、

「分かりました。 その間に、私達もどのような答えでも受け入れる覚悟をしておきます」

ソリオさんはそう言うと、ヴェローナさんを連れて機動六課隊舎を後にした。













――一週間後。

今日はモンディアル夫妻との約束の日。

俺は、エリオに問いかける。

「エリオ、答えは出たか?」

「…………はい!」

エリオははっきりと返事をした。

これなら大丈夫そうだな。

俺はそう思い、モンディアル夫妻との約束の場所へ向かうことにした。




約束の場所は、もう使われていないとある港。

ここを指定した理由はあるのだが、杞憂に終わればいいと思っている。

そこには既にモンディアル夫妻がいた。

「お待たせしました」

俺は、モンディアル夫妻から5mほど離れた場所で立ち止まり、そう言った。

「いえ………」

俺は2人を見て、

「では、よろしいですか?」

俺はそう聞く。

「「はい」」

2人同時に頷いた。

俺はエリオをその場に残し、シグナムを連れてモンディアル夫妻の方とは反対方向に歩き出す。

そして、エリオから5m離れた地点で振り返った。

丁度、エリオを中心に俺達とモンディアル夫妻が対照になる位置関係だ。

「エリオ。 お前が決めた答えをこの場で示せ。 モンディアル夫妻を選ぶならモンディアル夫妻の方へ。 俺達を選ぶなら俺達の方へ来てくれ」

「はい!」

俺の言葉に、エリオはしっかりと頷いた。

そして、エリオは一度目をつぶり、

「……………よし!」

そう覚悟を決めると、迷わずに一歩踏み出した。

モンディアル夫妻の方へ。

「あっ………エリオっ!」

ヴェローナさんが嬉しそうな声を漏らす。

対して、俺達は何も言わない。

事前に決めていた。

エリオがどんな選択をしようと、それを受け入れることを。

エリオは一歩一歩踏みしめるようにモンディアル夫妻の方へ歩いていく。

しかし、モンディアル夫妻まで後2mという地点で、エリオは立ち止まった。

「………エリオ?」

怪訝な声を漏らすヴェローナさん。

そこで、エリオは口を開く。

「…………僕を生み出してくれたお父さん、お母さん。 この一週間、僕はずっと考えました。 ずっとずっと考え続けました………………そして答えが出ました。 お父さんとお母さんが僕を助けてくれなかったことは、もう恨んではいません…………ですが、それを抜きにしても、今僕がお父さんとお母さんと慕っているのは、今のお父さんとお母さんなんです。 僕は、今の生活が好きなんです。 お父さんがいて………お母さんがいて………そして皆がいる今の生活が大好きなんです。 だから………だから………僕は、利村 ユウと烈火の将シグナムの子供であり続けます!」

エリオは涙を滲ませる。

「だけど………僕は、これからもエリオ・モンディアルです! 今のお父さんとお母さんの子供でも、僕はモンディアルを名乗り続けます! それが…………それが貴方達との絆の証だから!」

エリオの告白に、モンディアル夫妻は涙を流す。

「エリオ…………」

「だから………これだけは伝えておきたかった……………お父さん………お母さん…………僕を生み出してくれて、ありがとう………」

エリオの言葉に感極まったのか、モンディアル夫妻はエリオの元に歩いていき、エリオを抱きしめる。

「ありがとうエリオ…………不甲斐ない私達を許してくれて、ありがとう………」

涙を流しながらエリオを抱きしめるモンディアル夫妻。

しばらくすると、モンディアル夫妻はゆっくりとエリオから離れる。

「エリオ…………風邪をひかないようにね」

「はい」

「それから、好き嫌いしないように………」

「……はい」

「いつまでも、元気でいてね……………」

「…………はい!」

エリオに語りかけるヴェローナさんとエリオの声が徐々に涙声になっていく。

ヴェローナさんは耐え切れなくなったのか、ソリオさんに縋り付いた。

エリオは、涙を拭って踵を返す。

そして、俺達の方を向くと駆け出した。

俺達は、微笑んでエリオを迎え入れようとした。

その瞬間、

――ドン

エリオの足元に魔力弾が撃ち込まれた。

「ッ!?」

思わず足を止めるエリオ。

そして、

――パチパチパチ

何処からか拍手の音が響く。

すると、

「いやいや、中々見応えのある茶番劇だったよ」

建物の影から、白衣を来てメガネをかけた黒髪の男が出てきた。

「き、貴様は!?」

ソリオさんが声を上げる。

「研究所が血塗られた聖王に壊滅させられ、貴重な実験体も行方知れずとなったが………もしやと思いお前たち夫婦をマークしておいて正解だったようだ」

「な、なんだと!?」

「実験体が生きていれば、お前たちのところに戻るだろうと予想していたのだよ。 まあ結果は少々違ったが、無事実験体を発見できたのだ。 礼を言うよ、モンディアル夫妻」

俺は少々頭にきながらその男の話を聞いていた。

おそらくコイツは、エリオをモンディアル夫妻の元から連れ去った張本人だろう。

エリオを助けた研究所にいるとばかり思ってたが、どうやら違ったようだ。

ソリオさんは、その男とエリオの間に立ちふさがる。

「おや? なんのつもりかね?」

「私はもう間違えん。 エリオは私が守る!」

ソリオさんは、覚悟を決めた目で男を睨みつける。

「やれやれ、そんなことをしても立場が悪くなるのは君の方なんだよ?」

その男が手を上げると、男の後ろから2人の局員らしき人物が現れる。

「あの実験体を確保しろ」

その命令に従い、その2人は駆け出す。

局員らしき2人はソリオさんも邪魔者として排除するつもりのようだ。

「やらせはしない!」

ソリオさんも引くつもりは全くない。

2人がソリオさんに向けて魔力弾を放とうとした瞬間、

「おらっ!」

「はぁっ!」

1人は俺が殴り飛ばし、もう1人はレヴァンティンを起動したシグナムに斬り飛ばされていた。

吹き飛ばされた2人は、揃って海に落ちる。

「おいおいソリオさん。 エリオの親を差し置いてカッコイイこと言わないでくれよ」

「全くだな」

俺とシグナムは軽口を飛ばす。

「エリオを守るのは………」

「私達の役目だ!」

俺とシグナムは揃ってそう言う。

「ふ~む。 ここは穏便に済ませたいんですがねぇ~」

白衣の男はやれやれと言う表情をしながら、何か後ろに合図を送る。

すると、1人の男がアタッシュケースを持って俺たちの前にやってきた。

そして、そのアタッシュケースを俺達に見せるように開く。

その中には、札束の山。

「一億あります。 その実験体の値段にしては、破格だと思うんですがねぇ~」

「………………………」

白衣の男はそう言ってくるが、俺はこの状況に、とある既視感を感じていた。

そして、その理由を思い出す。

この状況は10年前、翠屋で管理局が俺を引き取ろうと士郎さんに大金を見せた状況にそっくりだった。

その時、士郎さんは全く揺らぎもせずに一蹴し、俺は凄いと思いつつ、俺だったら揺らぐだろうなと考えていた。

しかし、いざその状況が目の前に来たとき、俺の心に迷いは無かった。

左手に炎を発生させ、

「……………これが答えだ」

「へっ?」

アタッシュケースを持ってきた男が声を漏らした瞬間、メガフレイムを叩き込んだ。

爆炎で札束は灰となり、男は爆風で吹き飛ばされ海に落ちる。

「家族を金で売ると思うとは………見損なうな!!」

計らずも、あの時の士郎さんと同じ言葉が俺の口から出てきた。

「仕方ありませんねぇ~。 手荒なことはしたくなかったのですが………」

白衣の男がパチンと指を鳴らすと、建物の影から100人に近い人数の局員が現れ、俺達を取り囲む。

「こちらにはこの通り、管理局の許可と武装局員が付いています。 逆らえば逆らうほど立場が悪くなるのは其方ですよ」

白衣の男は、余裕の態度でそう言うが、

「飛龍一閃!!」

炎を纏った蛇腹剣が白衣の男のすぐ横を吹き飛ばした。

それに巻き込まれた数名の局員が吹き飛ばされ海に落ちる。

「ちぃ、外した! 怒りで手元が狂ったか!」

シグナムが悔しそうにそう漏らす。

「あ、貴女は人の話を聞いていたのですか!? 逆らえば立場が悪くなるのはあなたなのですよ!?」

白衣の男は若干焦った表情でそう叫ぶ。

「フン! エリオか自分の立場か………どちらが大切かなど比べるまでもない!」

シグナムはそう言い放つ。

「正義は我々にあるのですよ! 分かっているのですか!?」

白衣の男はそう言うが、

「私達の元からエリオを連れ去ることが正義だというのなら、私達は悪で十分だ!!」

シグナムは叫ぶ。

「リィン! アギト!」

俺がそう叫ぶと、倉庫の影からリィンとアギトが飛び出して来て、俺達の近くに浮遊する。

「アギト、お前はシグナムに力を貸してやってくれ」

俺はアギトにそう言う。

「ま、少々不満だけど、親父の頼みと弟分のエリオのためだ。 力を貸すぜシグナム!」

「ふっ、ゆくぞアギト!」

「とーさま!」

「ああ、リィン!」

俺はリィンと、シグナムはアギトと手を触れる。

「「「「ユニゾン・イン」」」」

光に包まれる俺達。

「アイシクル、セットアップ!」

『Yes, Master. Stand by, Ready. Set up.』

俺はアイシクルを起動させる。

『X-Mode.』

俺は、青い装甲を身に纏う。

シグナムは青紫基調の色合いの服と金色の篭手、薄紫の目で彩度の低いピンク色の髪になり、背中に二対の炎の翼が発生した。

バリアジャケットを纏い、俺達は局員と対峙する。

この姿を見て、驚きに呆けるモンディアル夫妻に、エリオが話しかけた。

「僕を生んでくれたお父さんとお母さん。 これが今の僕のお父さんとお母さんです。 僕のためなら、世界を敵に回すことも厭わない。 僕はそんなお父さんとお母さんが大好きです」

エリオが嬉しいことを言ってくれる。

「シグナム! 俺達の息子がああまで言ってくれたんだ! 気合入れていくぞ!」

「もちろんだ! 私たちの子供に手を出せばどうなるか、その身を持って知らしめてやるぞ!」

俺は全武装を展開。

「覚悟しやがれ!」

マルチロックで局員たちに標準を会わせる。

シグナムは炎を操り、鞭のように振り回す。

「『剣閃烈火!』」

シグナムとアギトの声が重なる。

「『ガルルバースト!!』」

「『火竜一閃!!』」

レーザーの様な魔力砲撃と無数のミサイルが局員達に襲いかかり、炎の鞭が辺り一帯をなぎ払う。

一瞬にして局員は全滅し、全員が海に落ちた。

「あがっ………あががっ…………」

白衣の男は腰を抜かしていた。

俺とシグナムは白衣の男に一歩踏み出す。

その途端、恐怖に駆られたのか、

「ひ、ひぃいいい! しょ、少将!! お願いします!!」

すると、建物の中から、1人の初老の男が姿を表す。

「ふはははは! あの人は管理局の少将です! 言い逃れは出来ませんよ!」

白衣の男はそう言うが、

「いいや、覚悟するのは貴様の方だ」

別の男性の言葉が響いた。

よく見ると、少将と呼ばれた初老の男の腕はバインドで拘束されている。

その初老の男の後ろから出てきたのは、槍のデバイスを持った大柄の男性。

それは、

「ゼスト隊長………」

シグナムが呟く。

そう、初老の男性を拘束していたのはゼストさんだった。

「貴様を誘拐未遂の現行犯と違法医学実行の疑いで逮捕する!」

ゼストさんがそう言い放つと、ゼストさんの後ろからクイントさんとメガーヌさん、数人のゼスト隊の隊員が現れ、白衣の男を拘束する。

「な、なぜです!? 一部隊の隊長如きが、何の権利があって!?」

白衣の男は、懲りもせずに暴れるが、

「時空管理局地上本部、レジアス・ゲイズ中将の命令だ」

命令書を白衣の男に突きつけるように見せるゼストさん。

まあ、もしもの時のために準備しておくようにお願いしたのは俺なんだが………

すると、ゼストさんはモンディアル夫妻の元へ歩いていく。

「失礼。 私は首都防衛隊ゼスト・グランガイツです。 詳しいお話を伺いたいので、同行を願えますか?」

ゼストさんの言葉に、

「はい………全てお話します」

ソリオさんとヴェローナさんは頷く。

「あ、あのっ!」

モンディアル夫妻を連れて行くゼストさんに、エリオが声をかけた。

「あの、その2人は………」

何か言おうとするエリオにゼストは微笑み、

「心配せずとも、そこまで重い罪にはならないはずだ。 私も、出来るだけ罪が軽くなるように力を尽くすことを約束しよう」

そう言った。

「お願いします!」

エリオは勢いよく頭を下げる。

すると、

「エリオ………」

ヴェローナさんがエリオに話しかける。

「お母さん………」

「エリオ、私達が罪を償うことができたら…………もう一度、会いに来ていい?」

その問いかけに、

「……………はい! もちろんです!」

エリオは迷わずに頷いた。

その言葉にモンディアル夫妻は笑みを浮かべ、ゼストの後について行った。

「大丈夫か? エリオ」

シグナムがエリオに呼びかける。

エリオは、滲ませていた涙を袖で拭い、

「大丈夫です。 僕には、お父さんやお母さんたちがいますから!」

エリオは笑顔でそう言った。

「フッ、そうか」

シグナムは笑みを浮かべる。

その時、

「ちょっとシグナム~!」

クイントさんがシグナムに駆け寄ってきた。

「クイント分隊長………」

「シグナム、あなた思った以上にちゃんと母親やってるのね。 驚いたわ」

クイントさんが笑ってシグナムに話しかける。

「そ、そうでしょうか?」

「ええ。 もうビックリしちゃった。 『エリオを守るのは、私達の役目だ!』とか『私達の息子に手を出せばどうなるか、その身を持って知らしめてやる!』とか、よくあんなセリフ恥ずかしげもなく言えたわね」

クイントさんの言葉に、シグナムは顔を真っ赤にする。

「あのっ、それはっ………!」

確かにその場の勢いで言ったが、改めて聞かされると凄まじく恥ずかしいな。

「これはスバルやギンガにいい土産話が出来たわね」

「ああっ! それはやめてくださいクイント分隊長!」

先ほどとは違うシグナムの姿に、エリオも笑いを零す。

俺は、エリオの頭に手を乗せ、

「エリオ、お前は紛れもなく俺達の息子だからな」

俺はエリオの頭を撫でながらそう言った。

「はいっ!」

エリオも笑顔で頷く。

「じゃあ、帰るか!」

「はいっ!」

俺とエリオは帰路につく。

「あっ! ユウ! エリオ! 待て! って、ああっ! クイント分隊長!」

いつもの日常へと………







あとがき


第五十八話の完成。

今回は1週間で更新できた!

はい、今回のお話は、エリオとモンディアル夫妻の絡むお話でした。

モンディアル夫妻の名前は、エリオの名前と同じくスズキの車種から適当に。

ほぼオリジナルのお話です。

自分って、なのは二次小説を読んだ中で、エリオとモンディアル夫妻が絡むお話を読んだことがなかったので書いてみました。

まあ、自分は読む数は少ないので、多分書いてる人もいると思いますが………

で、自分が書いてみた結果、こうなりました。

どうでしょうか?

というか、久々に戦闘(というほどでもない)シーンを書いた気がする。

さて、次回はユウ君がブチギレることが発生する………かも?


あと、二十六話のリインフォースの罪を許すという場面について、書き直したほうがいいと言う意見がありました。

皆さんはどう思います?

書き直したほうがいいと言うのなら書き直すつもりもありますし、ある程度の修正案もたっています。

ご意見お聞かせくだい。


次も頑張ります。






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