第四十九話 起動六課 準備編
【Side なのは】
闇の書事件から9年。
今の私は管理局の本局武装隊の二等空尉の地位にいる。
それで、周りからはかのエースオブエースの副官とそれなりに騒がれてはいるんだけど………
その肝心のエースオブエースは、
「何をしているの高町二等空尉! この私の訓練の最中に考え事をするなど!」
そう言って、複数の魔力弾を容赦なく放ってくる女性。
この人こそ現エースオブエースと騒がれているローザ・レイシス一等空尉。
薄い桃色の髪のショートカットで、見た目は結構美人。
私は、今この人の訓練を受けてるんだけど、はっきり言って得るものは何もなし。
この人は、自分の魔力の多さを使った弾幕的な戦い方しかしないんだもん。
レイシス一尉の魔力ランクはS+。
簡単には魔力切れは起こさないから、魔力弾をばら撒いて敵味方関係なく殲滅する。
現場でそんなことされちゃ適わないから、私が攻撃前に民間人や要救助者の救助をしてたから、特に犠牲は無かったんだけど。
で、私がこの人の下に付かされてからこの人のフォローばっかりしてたせいで、いつの間にかレイシス一尉がエースオブエースとして騒がれるようになった。
しかも、レイシス一尉も、それを全部自分だけの力と思い込んでるから始末が悪い。
プライドも高いし、意見すると煩そうだし、私は別に管理局の地位には興味無いから何も言わないんだけど。
そんな事を考えながら私は雨のように降ってくる魔力弾を避けていく。
はっきり言って退屈。
ユウ君のグレイスクロスフリーザーみたいに誘導弾じゃないし、フェイトちゃんのプラズマシュートみたいに爆発するわけでもないから、普通にシールド張って突っ込んだり、高速移動魔法で後ろに回り込めば、普通に勝てそう。
でも、そうすると後でめんどくさそうだから、いつも通り回避が追いつかなくなった振りをして、負ける事にした。
訓練とは名ばかりの、レイシス一尉の憂さ晴らしを終えると、
「高町二尉! 応接室で八神二佐がお待ちです!」
そう報告が来た。
はやてちゃんが?
じゃあ、いよいよ………
私は期待に胸を膨らませて応接室へ向かう。
私が応接室へ入ると、
「待っとったで、高町 なのは二等空尉」
そう言ってくるはやてちゃん。
「お待たせしました、八神 はやて二等陸佐!」
私は敬礼して応える。
「簡潔に言うで? 高町 なのは二等空尉、貴官を間もなく発足する実験部隊、遺失物管理部機動六課の小隊長に任命したい」
はやてちゃんがそう言ってくる。
でも、当然私の答えは決まっていた。
「高町 なのは二等空尉。 遺失物管理部機動六課、小隊長の任、謹んで拝命いたします」
そう答える私に、
「クスッ!」
はやてちゃんは微笑む。
つられて私も微笑を零した。
「やっぱり私らにこういう事は似合わんなぁ」
はやてちゃんはそう言う。
「仕方ないよ。 一応管理局員なんだし。 それはそうと、遅いよはやてちゃん」
「ごめんなぁ。 意外と準備に手間取ってしまってなぁ」
「あの自己中エースを毎日相手してる私の身にもなってよぉ」
軽口を言いあう私達。
「それで、他のメンバーは決まっているの?」
「うん。 とりあえず、フォワード陣では、身内以外に3人入れる予定や。 で、その内2人は新人やから、教導はなのはちゃんに任せるで?」
「うん! 今から楽しみ!」
はやてちゃんの言葉に、私はそう言って笑った。
【Side Out】
さて、今日も喫茶翠屋を開いているが、入口には重大な張り紙がしてあった。
それは、もうすぐ約半年~1年間翠屋を休業するという張り紙である。
機動六課の隊舎で働く事になっているので、そのための措置だ。
当然ながら子供達もそっちに移るのだが、はやてよ、無茶もほどほどにしとけと言いたくなる。
隊舎は託児所じゃないぞ。
で、そんな休業間近の翠屋に現在来ているのは、
「もうすぐ休業なんですね。 残念だなぁ」
「ここのお菓子は気に入っていたんですけど」
スバルとティアナである。
だが、心配するな。
お前らは多分毎日食べるだろうから。
「そう言えば、お前らってもうすぐ魔導師ランクの昇進試験だったな?」
俺はそう切り出す。
「はい! でも、私とティアなら合格間違い無しです!」
「調子に乗るな!」
ティアナにはたかれるスバル。
俺はそれを見て、
「う~ん。 ティアナの場合、自分が何かミスで怪我した時とかに素直になれなくて強がりでスバルにだけ合格しろとか言いそうで、それが原因で口論になって時間使ったり…………」
ティアナがピクリとなる。
「スバルの場合、時間ギリギリで後先考えずに全力疾走して止まる時の事を考慮しなかったりとかありそうだよなぁ…………」
スバルがギクリと震えた。
「あ、あはは………あり得そうだったかも…………」
スバルが苦笑する。
「まあ、2人はコンビなんだから、お互いを信じて力を合わせれば大丈夫さ」
俺はそう言っておく。
「「はい! ありがとうございます!」」
2人はそろって礼を言った。
【Side アリサ】
先日、はやてから機動六課始動の知らせが来た。
遂にこの時が来たわね。
私とすずかとアリシアの約8年分の血と汗と涙の結晶を世に出す時が!
そう意気込む私の視線の先には、卵のような形をした3つの物体。
これこそ私達が開発した一般人でも使えるデバイス。
その名も『Magilink Elementary』。
略して『ME』。
『マギメンタル』って略すのもありかしら?
魔力を溜めておけるカートリッジシステムや、魔力を掻き集める収束砲のメカニズムを徹底的に解明して組み込んだ。
もちろん失敗の連続だったわ。
集めた魔力を留めておけなかったり、集め過ぎて許容量の限界を超えて爆発したり。
集める事が上手くいったと思ったら、今度は上手く放出出来なかったし。
今思い返しても涙が出るわ。
当然徹夜する事なんて何度もあった。
夜更かしは肌に悪いから気にしてたんだけど…………
でも、その甲斐あって、満足いく物が完成した。
さて、お披露目の時には皆を驚かせてあげるとしますか。
【Side Out】
【Side ティーダ】
私は今、1枚の命令書に目を通していた。
内容は、今度発足する実験部隊の小隊の副隊長に自分を任命したいという内容だった。
私は、それを見た時信じられなかった。
局の上官の誰もが自分を見放し、自分にはもう昇進の機会は無いとまで思っていたのだから。
妹のティアナは、そんな上官を見返すために私が叶えられなかった執務官の夢を代わりに叶えると言って日々努力している。
だが、まだ自分で夢を叶えるチャンスが残っているのなら………
ほんの僅かでも道が残されているのなら…………
私はその道を行きたい。
私はその命令書を見つめながら、拳を握りしめた。
あとがき
第四十九話の完成。
でも短い。
あんまり話を思いつかなかった。
何気にエースオブエースが出てましたが、そう呼ばれてるのはなのはや他の部下が尻拭いしてるお陰です。
一般人が使えるデバイスの名前も出ました。
デジアド02みた人は一発で分かったでしょうが、元ネタはデジメンタルです。
ともかく、次回からアニメの第一話に入っていきます。
では、次も頑張ります。