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No.15302の一覧
[0] 【完結】リリカルなのは ~生きる意味~(現実→リリカル オリ主転生 最強 デジモンネタ)[友](2015/01/12 02:39)
[1] プロローグ[友](2010/01/04 15:51)
[2] 第一話[友](2010/01/04 15:52)
[3] 第二話[友](2010/01/04 15:55)
[4] 第三話[友](2010/01/05 00:19)
[5] 第四話[友](2010/01/17 13:53)
[6] 第五話[友](2010/01/17 14:31)
[7] 第六話[友](2010/01/24 12:46)
[8] 第七話[友](2010/01/31 15:55)
[9] 第八話[友](2010/02/07 10:27)
[10] 第九話[友](2010/02/14 15:40)
[11] 第十話[友](2010/02/21 11:01)
[12] 第十一話[友](2010/04/04 09:45)
[13] 第十二話[友](2010/04/04 09:46)
[14] 第十三話[友](2011/05/03 21:31)
[15] 第十四話[友](2010/03/28 07:45)
[16] 第十五話(前編)[友](2010/04/04 09:48)
[17] 第十五話(後編)[友](2010/04/04 09:49)
[18] 第十六話[友](2010/04/04 09:51)
[19] 第十七話[友](2010/04/18 07:24)
[20] 第十八話[友](2010/04/25 14:47)
[21] 第十九話[友](2010/05/02 21:59)
[22] 第二十話[友](2010/05/09 07:31)
[23] 第二十一話[友](2010/05/16 15:36)
[24] 第二十二話[友](2010/06/06 15:41)
[25] 第二十三話[友](2010/05/30 09:31)
[26] 第二十四話(前編)[友](2010/06/06 15:38)
[27] 第二十四話(後編)[友](2010/06/06 15:39)
[28] 第二十五話[友](2010/06/06 15:36)
[29] 第二十六話 (2013年11月14日 改訂)[友](2013/11/14 22:27)
[30] 第二十七話[友](2010/06/27 17:44)
[31] 第二十八話[友](2010/08/17 21:11)
[32] 第二十九話[友](2010/08/17 21:11)
[33] 第三十話[友](2010/09/19 16:35)
[34] 第三十一話(前編)[友](2010/09/19 16:30)
[35] 第三十一話(後編)[友](2010/09/19 16:34)
[36] 第三十二話[友](2010/11/07 14:58)
[37] 第三十三話[友](2010/12/05 15:37)
[38] 第三十四話[友](2010/12/05 15:36)
[39] 第三十五話[友](2011/01/16 17:21)
[40] 第三十六話[友](2011/02/06 15:02)
[41] 第三十七話[友](2011/02/06 15:00)
[42] 第三十八話[友](2011/03/13 18:58)
[43] 第三十九話[友](2011/03/13 18:56)
[44] 第四十話[友](2011/03/27 15:55)
[45] 第四十一話[友](2011/04/10 20:23)
[46] 第四十二話[友](2011/04/24 16:56)
[47] 第四十三話[友](2011/05/03 21:30)
[48] 第四十四話[友](2011/05/15 14:37)
[49] 第四十五話[友](2011/05/29 20:37)
[50] 第四十六話[友](2011/06/12 22:18)
[51] 第四十七話[友](2011/07/10 23:20)
[52] 第四十八話[友](2011/07/25 01:03)
[53] 第四十九話[友](2011/07/25 21:26)
[54] 第五十話[友](2011/09/03 21:46)
[55] 第五十一話[友](2011/10/01 16:20)
[56] 第五十二話[友](2011/10/01 16:27)
[57] 第五十三話[友](2011/10/01 16:19)
[58] 第五十四話[友](2011/10/30 20:17)
[59] 第五十五話[友](2011/11/27 20:35)
[60] 第五十六話[友](2013/04/21 19:03)
[61] 第五十七話[友](2013/04/21 19:00)
[62] 第五十八話[友](2013/04/21 18:54)
[63] 第五十九話[友](2013/08/22 00:00)
[64] 第六十話[友](2014/03/23 23:15)
[65] 第六十一話[友](2014/03/23 23:13)
[66] 第六十二話[友](2014/05/06 17:27)
[67] 第六十三話[友](2014/08/13 19:34)
[68] 第六十四話[友](2014/11/30 22:33)
[69] 第六十五話[友](2014/12/31 20:29)
[70] 最終話[友](2015/01/12 02:26)
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[15302] 第四十話
Name: 友◆05c99d4d ID:315f8cfe 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/27 15:55

第四十話 Q、俺のトラブル巻き込まれ体質は如何にかならんのか? A、どうにもなりません。




さて、エリオが2人目の子供になってから早一年近く。

エリオもリィンも元気に育っています。

まあ、リィンは外見は変わらないのだが………

エリオだが、俺のオメガフォームに憧れたのか、騎士になると言い出して母親役のシグナムに稽古を頼んでます。

シグナムも乗り気で、エリオに色々な得物を持たせて試した結果、槍が一番筋が良いそうだ。

やはりアニメと一緒なのか……

その内デバイスが欲しいとか言いそうだから、リニスに頼んでストラーダでも作ってもらうか。

それから最近の活動報告だが、俺は翠屋のマスター見習いで、もうすぐコーヒーを淹れる腕が店に出せるレベルまで上がっている。

桜は既に自分の作った菓子が店先に並ぶほど。

既に桜の菓子作りの腕は並のパティシエを凌ぐが、肩書きは未だにパティシエ見習い。

何でも、「母さんに追いつくまでは、見習いの肩書きを取る気はないわよ」だそうだ。

桃子さんに追いつくまで見習いって……他のパティシエが泣くぞ。

なのは達だが、相変わらず学校に通いながら管理局の仕事をしている。

やはり訓練校を即行で卒業してから、前線に出る事などザラで、その事ではやて曰く、

「こんなか弱い少女達を当然のように前線に放り込むなんて、やっぱり管理局の考えとることは理解出来んわ」

だそうだ。

か弱いか?と尋ねたら、魔力弾の嵐を受けました。

因みに管理局に入った魔導師組だが、全員トレーニングバインド装備で魔導師ランクをAAA前後まで落としてます。

これまたはやて曰く、

「敵対しようとしとる組織の中で手の内見せるわけないやん」

とのこと。

まあ、確かに。

それからアリサ、すずか、アリシアの非魔導師組だが。

デバイスの知識の習得は既に完了し、魔法論理について勉強中。

これまた凄まじい勢いで学んでいくので、講師役のリニスとプレシアさんが、教える事が無くなるまでもうすぐかもしれないと言っていた。

スカリエッティは相変わらず最高評議会に従う振りをしながら残りのナンバーズの調整を行なっている。

勿論スパイも忘れてません。

もう、最高評議会の黒いところが出るわ出るわ。

俺の違法研究所潰しの情報も、大半はスカリエッティからの情報だ。

最高評議会が、スカリエッティが自分達の思い通りに動いてくれていると思い込んでいるので、見ていて滑稽だそうだ。



で、今俺が何をしているかと言えば、只今ミッドチルダに来ております。

理由は秘密だが、ちょっとした物件探しだ。

中学を卒業したら、とある理由でこっちに一時的に住もうと思ってる。

その為に今の内に目ぼしい物件に唾つけとこうという訳だ。

とりあえず、ミッドチルダでは就業年齢が低い為に、俺ぐらいの子供が物件探しても別に怪しまれる事は無い。

費用は俺の両親の遺産を使えば十分に事足りる。

それで、ミッドチルダの街をうろついている訳だが、俺はふと思う。

そういえば今の時期って、アニメだとティアナの兄が殉職するのと、ヴァイスの妹誤射事件があるんだったな。

まあ、この世界でその事件が起こると断言は出来ないし、何時起こるか詳しい事は分からないから、俺には如何する事も出来ないな。

目の前でそんな事が起これば別だが、そんなピンポイントで事件に遭遇するわけが………

その瞬間、

――ドンッ

「おわっ!?」

いきなり走ってきた男性にぶつかり、俺は尻餅をついてしまう。

「退けガキ!! 邪魔だ!!」

その男はそう言うと、まるで邪魔な物を蹴ってどかす様に俺に蹴りを放ってきた。

「ぐっ!?」

俺は軽く吹き飛ばされ、地面に転がる。

まあ、蹴られる前に身体強化したから怪我は無いんだけど。

俺を蹴っ飛ばした男は、俺に見向きもせずに走って行ってしまう。

俺は、服に付いた汚れを払いながら立ち上がると、

「君! 大丈夫かい!?」

男が走ってきた方向から、管理局の制服を着たオレンジ色の髪の男性が走ってきて、俺に駆け寄った。

「あ、はい。 俺は大丈夫です」

俺がそう答えると、

「そうか。 良かった……」

その男性は安堵の表情を浮かべる。

すると、その男性は真剣な表情になり、先ほど俺を蹴っ飛ばした男の背中を見つめ、

「こちら首都航空隊 ティーダ・ランスター一等空尉! 指名手配中の違法魔導師を発見! これより追跡する! 市街地での飛行の許可を!」

『了解! 市街地個人飛行、承認します!』

その局員は、管制にそう報告し、飛行許可を貰うと、男が走っていった方に向かって飛び立った。

つーか、今、ティーダ・ランスターって………

マジかい!?

いや、でも今日死ぬって決まったわけじゃないし……

俺はそう思って飛んでいくティーダに背を向けて歩き出す。

「……………………」

が、すぐに立ち止まる。

「………………あーっ! 畜生! ほっとけねえ!」

俺は、如何しようも無い自分の気持ちに叫ぶと、ティーダが飛んで行ったほうに向かって走り出した。





【Side ティーダ】




「待て!」

私は逃走する違法魔導師を追う。

「チッ! 管理局の魔導師か!?」

違法魔導師の男は、制止の声にも耳を傾けず逃走を続ける。

すると、その男は飛行魔法を発動させて逃走を図った。

「止まれ! 警告に従わない場合は、攻撃を許可されている!」

私がそう警告するも、その男はとまる様子が無い。

「仕方ない! こちらティーダ・ランスター一等空尉! 犯人確保のため攻撃を開始する!」

私はそう宣言して、銃型デバイスを取り出し、構えた。

「シュート!」

先ずは犯人の進行方向に向けて威嚇射撃。

犯人の目の前に着弾したため、犯人は動揺を見せる。

「くそっ!」

犯人は、こちらに振り向くと、魔力弾を放ってきた。

私はその魔力弾を障壁で防ぎ、

「投降の意思無しと判断! 無力化させて確保する!」

今度は犯人を直接狙って魔力弾を放つ。

「シュート!」

数発の魔力弾が犯人に向かい、

「ぐあっ!?」

一発が犯人の左肩に当たり、魔力ダメージで動かなくなる。

「このクソ局員がぁぁっ!」

犯人はそう吐き捨てながらも、逃げる事を止めない。

しかも追跡を振り切る為に魔力弾を出鱈目に放ちながら。

このままだと、民間人に被害が出るのも時間の問題だ。

「仕方ない…………一撃で昏倒させる!」

私は再び銃型デバイスを構える。

狙うは逃げる犯人の後頭部。

「スティンガースナイプ………シュート!!」

誘導性能を持った魔力弾を発射する。

犯人は慌てて避けようとするが、無駄だ。

その魔力弾は私の意思で何処までも追跡する。

高速で迫る魔力弾を、犯人は紙一重でかわすが、魔力弾を操作して再び犯人に向かわせる。

すると、犯人は突然行き先を地上方向に変えた。

切羽詰った行動だろうが、油断はしない。

魔力弾を正確に操作し、犯人を追い詰める。

ようやく捉えると思ったその時、

「そこまでだ!」

犯人が叫んでこちらを振り向く。

更には腕に10歳ぐらいの少女を右手で抱えており、デバイスまで突きつけていた。

「くっ!」

私は咄嗟に魔力弾を操作して、犯人を外す。

すると、犯人は歪んだ笑みを浮かべ、

「ひゃっひゃっひゃ! そうだよなぁ! 民間人を傷つけるわけにはいかないもんなぁ! 正義の味方の管理局員さんよぉ!?」

そう言い放ちながら、少女を抱えたまま再び空中へ浮かび上がる。

その近くでは、少女の母親であろう女性が、娘を助けてと叫んでいた。

私は銃型デバイスを犯人に向け、

「その子を開放しろ!」

そう叫ぶ。

すると、

「開放………? ああ、してやるよ。 ほれ」

犯人はそう言うと、あろう事か空中で少女を手放した。

「なっ!?」

現在の場所は、地上から約20m。

そのまま落ちれば唯では済まない。

「くっ! 間に合えっ!」

私は咄嗟に動く。

「これもおまけだ」

更に犯人は少女に向かって魔力弾まで放った。

「くそぉぉぉぉぉぉっ!」

私は、地上から5mほどの所で少女を掴まえる事が出来た。

だが、後ろから迫り来る魔力弾に対処する暇が無い。

せめて、この少女だけでも。

私は咄嗟に少女を抱き締め、自分の背中を魔力弾に向けるようにする。

ほぼ間違いなく、あの魔力弾は殺傷設定。

このような行動をすれば、結果は見えている。

だが、私の夢は執務官となり沢山の人達を守る事。

故にこの目の前の少女を見捨てたら、例え執務官になれたとしても、それは夢を叶えた事にはならないし、何より自分が後悔する。

だからそれは出来なかった。

私は死を覚悟する。

ただ、1つの心残りがある。

それは、唯一の肉親である妹のティアナ。

私が死ぬと、ティアナは天涯孤独となってしまう。

「ゴメンな……ティアナ………」

独りぼっちにしてしまう罪悪感から自然と声が漏れた。

私は、その瞬間が来るであろう時を待つ。

だがその時、私の視界は虹色の光で埋め尽くされた。





【Side Out】





俺は、ティーダの後をこっそりと追っていた。

逃走する違法魔導師とティーダの実力の差は歴然で、犯人はあっという間に追い詰められていく。

どうやら俺の杞憂だったようで、ティーダがピンチになる要素が欠片も無い。

まあ、やっぱりそんなピンポイントで事件に遭遇するわけが………

と思っていたのも束の間、犯人が民間人を人質にとって、あっという間に形勢逆転。

しかも、女の子を囮に殺傷設定の魔法を撃ちやがった。

「チッ!」

俺は思わず動いた。

オメガを起動させ、オメガフォームになる。

勿論認識阻害の結界を張ってからだが。

俺は高速でティーダの前に立ち塞がる。

俺が魔力弾を受けることになるが、この程度の魔力弾は、例え殺傷設定だったとしても、俺には無意味。

後ろを振り返ると、ティーダが呆然と俺を見ていた。

「ち、血塗られた聖王………?」

ティーダが呟く。

まあ、管理局員は知ってて当然だな。

俺は、ふと先ほどの違法魔導師を見ると、既に逃走を図っており、かなりの距離が空いていた。

俺は、何となくこのまま逃げられるのも癪だと思ったので、右手のガルルキャノンを違法魔導師に向ける。

「ガルルキャノン、フリーズショット!」

砲口から冷気弾が放たれる。

その冷気弾は、高速で犯人に向かい、振り切ったと油断していた違法魔導師に直撃した。

途端に氷漬けになる違法魔導師。

そのままビルの壁にぶち当たり、ビルの壁に縫い付けられるように凍った。

「なっ!? まさか!?」

その様子を確認したティーダが最悪の状況を想像したのか声を上げる。

「心配するな。 今のは非殺傷だ。 死んではいない」

俺の言葉で、幾分か安堵の表情をするティーダ。

すると、

「何故、私を助けた?」

そんな質問をしてきた。

まあ、大量殺人犯(濡れ衣だが)として知られてる俺が、自分を助けたのが不思議なのだろう。

「別に……偶々見かけたことと、気まぐれと自己満足。 それだけだ。 感謝しろなんて別に言いはしない」

俺はそう言ってティーダに背を向け、飛び立った。





【Side ティーダ】



私はそのあと、事件のあらましを上官に報告した。

だが、その報告書を見た上官の反応は、

「何たる事だ! 犯人を後一歩まで追い詰めておきながら民間人を人質に取られて取り逃がし、あまつさえあの大犯罪者『血塗られた聖王』に命を救われただと? この役立たずが!! 貴様は首都航空隊の恥だ!!」

私は上官の暴言に耐える。

確かに血塗られた聖王に命を救われた事は事実で、それを恥だというのならば甘んじて受け入れる。

「貴様への処分は追って報告する。 さっさと出て行け! この役立たずが!!」

私は一度敬礼して退室する。

そして、隊舎から外に出ると、自然とため息が漏れる。

「…………夢が遠のいた……か……」

予想だが、処分は降格を言い渡されるだろう。

私は若干沈んだ気持ちのまま家へと足を向ける。

すると、

「お兄ちゃん!」

「え?」

その声に顔を上げると、そこには妹のティアナの姿。

「ティアナ?」

「お帰りお兄ちゃん! 如何したの? 元気ないね?」

ティアナは笑って私にそう聞いてくる。

私はふと思った。

もしあの時、血塗られた聖王が私を救ってくれなかったら、ティアナは独りぼっちになっていたんだと。

この笑顔が、泣き顔になっていたかもしれない事を思うと、胸が痛い。

私はティアナの頭に手を置くと、微笑んで頭を撫でた。

「?………えへへ」

ティアナは一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに笑顔になる。

ティアナを独りぼっちにしなくて済んだと思うと、とてもホッとした。

もし………もし再び彼に会うことがあったら、是非とも礼が言いたいと私は思った。





【Side Out】






ティーダの一件から約一ヶ月が経ち、俺は再びミッドチルダにいた。

理由は一ヶ月前と同じだ。

俺はあの後、ティーダのことが何となく気になり、リニスに頼んで調べてもらった。

すると、ティーダは一等空尉から三等空尉まで降格され、昇進の可能性も、ほぼ絶望的という事が分かった。

何でも、犯罪者(俺)に命を救われた事が局員としてあるまじき事だと判断されて降格になったそうだ。

いや、降格は何となく分かるが、昇進の可能性がほぼ絶望的ってどういう事だよ?

結果的にティーダが自分の夢を叶えられなくなってしまった事に、僅かとはいえ関わった自分に、少しだが罪悪感を覚える。

まあ、今更どうしようもないので、俺は思考を切り替えた。

と、そんな事を考えていると、視線の先に人だかりが出来ている。

何だ?

事件か?

俺が人だかりの隙間から覗くと、ビルのベランダに男が少女を人質に立てこもっていた。

おい、もしかしてこれって………

ふとシグナムの魔力を感じた。

シグナムも、この現場にいるらしい。

俺はシグナムに念話を送る。

(おい、シグナム)

(む? ユウか? 如何した?)

(俺も偶々この現場に居るんだが、この騒ぎは何だ?)

俺はシグナムに尋ねる。

(そうか。 見ての通りだが、男が少女を人質に立てこもっていてな。 男は大分興奮しているようで迂闊に手が出せん状況だ)

(………なる程。 で? 一体どういう作戦で行くんだ?)

俺がそう聞くと、

(私の部下に優秀な狙撃手がいる。 その男に犯人を狙撃してもらうつもりだ)

シグナムの言葉に、俺は益々やな予感を感じる。

(…………おい。 その狙撃手ってもしかしてヴァイス・グランセニックか?)

(良く知っているな。 その通りだ)

(……………もう1つ聞くが、もしかして今人質に取られてる女の子って、そいつの妹だったりしないよな?)

(その通りだが………何故知っている?)

(マジかよ………)

シグナムの肯定する言葉に、俺は頭を抱える。

(如何した?)

シグナムが尋ねてくる。

(………シグナム、言っちゃ悪いが、この狙撃は失敗する可能性が高い)

(何だと!?)

俺の言葉にシグナムが驚愕する。

(ヴァイスの撃った弾が妹の左目に直撃。 妹の左目は失明してヴァイスはそれがトラウマになる)

(待て! 何故そんなに詳しく…………ッ! 前世の記憶か!)

シグナムは一瞬怪訝に思うものの、答えに行き着く。

(その通り。 俺が知るこの事件の結末は以上だ)

(くっ……ユウ! 何とかならんのか!?)

(まあ、ちょっと荒っぽいけど助ける事は出来ると思うが………)

正直、知ってる未来を変えることは、世界を思い通りに動かす傲慢者みたいで気は進まないのだが………

既にティーダを助けてしまっている俺が言えたことじゃないか。

(ならば頼む! グランセニックは好感が持てる人物だ。 みすみす傷つけたくは無い!)

シグナムが俺に頼み込んでくる。

(……分かった。 シグナムにそこまで言われちゃ助けないわけにはいかないだろ)

(すまない)

(それにしても……)

(む?)

(シグナムにそこまで言わせるとは、少し妬けるな)

俺がそう言った瞬間、

(か、勘違いするなよ! グランセニックに向けている感情は、あくまで仲間意識でのものだ! わ、私があ、愛しているのはお前だけだぞ。 ユウ!)

シグナムが慌てたようにそう言った。

(冗談だよ。 それと、オメガフォームで行くから、適当に流れに合わせろよ)

(分かった)

そう言って、念話を切った。

さて、いっちょやりますか。





【Side ヴァイス】



俺はスナイパーライフル型デバイス、『ストームレイダー』のスコープで犯人の様子を窺う。

犯人は未だに興奮しているようで刃物を振り回して何やら叫んでいる。

俺は、捕まっている少女、妹のラグナを見た。

ラグナの表情は恐怖で泣き顔になってしまっている。

待ってろよラグナ。

今お兄ちゃんが助けてやるからな。

俺は引き金に指をかけ、スコープの標準を犯人に合わせる。

そうだ、いつも通りやれば問題ない。

いつも通りやれば………

だが、もし……万が一ラグナに当ててしまったら………

その考えが過ぎった瞬間、標準が突然ブレる。

いや、俺の手が震えていた。

くそっ!

何ビビッてやがる!

こんな状況、今まで何回あったと思ってるんだ!

その度に俺の狙撃で人質を助けてきたじゃねえか!

実の妹が……ラグナが捕まっているんだぞ!

こんな時こそいつも通りの狙撃をしなきゃ行けねえのに、何で俺はビビッてるんだよ!?

俺は震えを押さえつけながら、再び犯人に標準を合わせる。

だが、無理矢理震えを押さえつけている所為か、標準は安定しない。

大丈夫だ。

俺ならやれる。

そう自分に言い聞かせ、引き金を引…………こうとした瞬間、上空から青色の魔力弾が高速で飛来。

犯人とラグナがいるベランダの後方に着弾。

大きな音と衝撃が発生し、ラグナと犯人が外に投げ出された。

「ラグナッ!!」

俺は思わずスコープから目を離し、叫ぶ。

その時、

――バサッ

俺の目の前をマントを翻しながら何者かが通過する。

それは、何度も資料で見た人物。

「血塗られた……聖王……」

俺は思わず呟く。

そいつは、左腕で投げ出されたラグナを空中でキャッチする。

そして、犯人に向かって右腕を振り上げると、犯人の顔面に向かって殴りつけ、そのまま地面に叩きつけた。

余りの手際のよさに、一瞬見とれてしまった。

だが、直ぐに気を取り直し、

「ラグナ!」

妹の名を叫びながら、俺は狙撃場所だったベランダから飛び降りる。

あまり得意ではないフローターフィールドで無事に地面に着地すると、俺は直ぐに走り出す。

「ラグナ!!」

俺はラグナの名を叫ぶ。

すると、血塗られた聖王の腕から降りたラグナが俺に気付き、

「お兄ちゃん!」

ラグナも俺に向かって駆け出そうとした。

だが、血塗られた聖王が左腕でラグナを制止させると、右腕でマントを翻し、ラグナを覆い隠すようにした。

野郎、ラグナを連れ去る気か!

幾らラグナが可愛いからってそれは許さん!!

俺は、相手とのレベルの差も考えず、殴りかかろうとした。

その瞬間、

――ドゴォン!

突然血塗られた聖王が爆発に飲まれた。

ラグナと共に………

何だ……?

一体何が起こった……?

俺が目の前の光景を信じられないでいると、

「は、はは……やったぞ! あの血塗られた聖王を仕留めた!!」

後ろから癪に障る声が聞こえた。

同じ隊の隊員で、出世欲が旺盛な奴だ。

「貴様! 何故撃った!?」

シグナムの姐さんがそいつに詰め寄った。

「な、何を言ってるんですかシグナム分隊長。 極悪の指名手配犯を攻撃して何がいけないんですか?」

そいつはいけしゃあしゃあとそう言った。

「奴を撃った事についてはとやかくは言わん! だが、奴の傍には民間人の少女が居ただろう! それを貴様は殺傷設定で巻き込みおって!」

シグナムの姐さんはその男に怒鳴る。

「仕方ありません。 この先あの犯罪者によって生み出される犠牲者の事を考えれば、必要最小限の犠牲です。 私は自分が間違った事をしたとは思いませんよ」

この男は今なんて言いやがった?

ラグナが必要最小限の犠牲?

ラグナを殺した事が間違って無いだと?

俺がそいつに掴みかかろうとした瞬間、

「フン。 正義の時空管理局が聞いて呆れるな」

そんな声が聞こえ、

「へ?」

その男が声を漏らしたその時、

――ドゴォ!

爆煙を切り裂き青の魔力弾がその男に直撃。

そのまま吹き飛ばし、ビルの壁に叩きつけた。

その一撃で気絶する男。

俺は驚いて爆煙の方を見た。

爆煙の中から、無傷の血塗られた聖王が姿を現す。

すると、シグナムの姐さんの方を向き、

「部下にする人間は、選んだ方がいいな」

そう言った。

「ああ。 全くその通りだな」

シグナムの姐さんは、頷きながらそう答える。

そして、血塗られた聖王が閉じていたマントを開くと、

「ラグナ!!」

そこには、ラグナの無事な姿があった。

「お兄ちゃん!」

ラグナは俺に抱きついてくる。

「良かった……ラグナ……無事で本当に良かった……」

俺もラグナを抱き締めた。

俺は、ふと血塗られた聖王を見る。

そして、

「その……なんていうか……すまねえ! ラグナを……妹を助けてくれて、ありがとう!」

俺は頭を下げた。

こんな事は局員としてあるまじき行為だという事は理解している。

だが、頭を下げないわけにはいかない。

するとラグナも、

「おじさん! 助けてくれてありがとう!」

そう礼を言った。

「お、おじさっ………!?」

そいつは、ラグナの言葉を聞くと、一瞬呆気に取られる。

「ククッ………!」

その後ろでは、シグナムの姐さんが笑いを零していた。

そいつは気を取り直してラグナを見ると、

「なあお嬢ちゃん。 おじさんは止めてくれないか? 俺はまだ十代前半なんだ」

そう言い聞かせるようにそう言った。

俺は改めて血塗られた聖王を見てみる。

今までは威圧感からかでかく見えてたけど、こうやって見ると身長もそいつの言うとおり13~14歳位の背丈しかない。

「はい! ごめんなさい! お兄さん!」

ラグナは謝って言い直す。

すると、

「グランセニック。 妹をつれて下がっていろ」

シグナムの姐さんが、愛剣のレヴァンティンを抜きながらそう言った。

「姐さん!? 一体何を!?」

俺はそう問いかけるが、シグナムの姐さんは、レヴァンティンを血塗られた聖王に突きつけ、

「すまんな。 私個人としてはこのまま逃がしてやる事もやぶさかでは無いのだが…………局員としての立場がある。 悪いがこのままお前を“逃がす”訳にはいかんのだ」

そう言った。

すると、そいつは、

「そうか、難儀な奴だな。 それならば、逃がしてくれなくていい。 俺は自力で“逃げる”だけだ」

そいつがそう言った瞬間、

「レヴァンティン! カートリッジロード!」

姐さんの剣に炎が宿る。

「紫電……一閃!!」

姐さんが、渾身の力を込めて斬りかかった。

けど、そいつは左腕の手甲から大剣を生み出し、

――ガキィ!!

姐さんの必殺剣ともいえる一撃を微動だにせず受け止めた。

「フッ……」

そいつは姐さんを軽く弾き飛ばすと、大剣を真上に突き出す。

その剣に炎が宿った。

「グレイ……ソード!!」

剣を地面に向けて振り下ろす。

――ドゴォォォォォォン!!

凄まじい爆発音と共に、あいつの姿を煙が覆い隠す。

そして、その煙が晴れたときには、あいつの姿は何処にも無かった。



俺はその後、ラグナを連れて家に戻った。

俺はあの血塗られた聖王について考える。

管理局じゃ、既に千人を超える虐殺を行なっているという話だったが、今日、実際に話をしてみて、そんな事をするような人物ではないように思えた。

実際、今日の事件でも、誰一人として殺していない。

あのふざけた局員が生きていると分かった時、内心舌打ちしたのは秘密だ。

本当に噂どおりの人物なら、ラグナを助けたりはしないし、何より非殺傷なんか使う必要は無いだろう。

そして今日、ラグナを犠牲に血塗られた聖王を攻撃しようとした奴の言葉、必要最小限の犠牲、自分が間違った事をしたとは思っていない。

大を救う為に小を犠牲にする。

俺も、それが正しいと今まで思い込んでいた。

だが、犠牲にされた方には何も残らない。

これが、本当に正しいといえるのか?

このとき、俺は初めて時空管理局の在り方に疑問を持った。







あとがき


第四十話の完成。

さて、今回のお話はティーダの死亡フラグ回避とヴァイスのトラウマ回避のお話でした。

片方ずつやると、流石に短すぎたので同じ時期という事で2つ一緒にやりました。

ユウが何を企んでいるかは次をお楽しみに。

さて、思ったより早く出来上がったし、明日はリリフロを頑張ってみますかね。

では、次も頑張ります。




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