第三十二話 第2回、翠屋尋問会
え~、ただ今俺は、翠屋でバインドに縛られて椅子に座らされている。
俺の横には、桜が俺と同じようにバインドに縛られて座らされていた。
普段なら、俺はいくらバインドで縛られようと力尽くで振り解く事が出来るのだが、生憎今は、ブラックウォーグレイモンとの戦闘で、魔力がスッカラカンである。
桜にしても、同レベル以上の魔導師であるクロノとリンディさんにかけられたバインドでは振り解く事は不可能。
そして現在、翠屋の入り口には、『貸切』の看板がかけられており、店内には、高町家の人々は勿論の事、テスタロッサ家、八神家、ハラオウン家、そして何故か月村家+アリサが、全員集合していた。
すると、
「では、これより第2回、翠屋尋問会を始めます」
リンディさんがそう宣言する。
因みに、第1回は俺の真実暴露だそうだ。(第十三話参照)
とりあえず、俺は口を開いた。
「お~い、何で俺達は縛られてるんだ?」
その質問に、
「君達は今回の相手について何か知っているようだったからな。 多分、君のことだから縛っておかないと逃げると思って」
クロノがそう答えた。
まあ、その通りだが。
「翠屋でやる理由は?」
俺が、もう1つ質問すると、
「君達の場合、無理矢理に聞きだすよりも、君達の家族や知り合いから『お願い』された方が効果的だからだ」
こちらの質問も、迷いなく答えてくれました。
「……それで、聞きたいことって?」
桜がそう尋ねると、
「言わなくても分かってると思うが、今回戦ったあの相手についてだ。 管理局のデータベースでも調べたが、あのような生物と遭遇した記録など一度もない。 念の為、この場の全員にも尋ねたが、知っている人は誰もいなかった」
まあ、当然だろう。
「だが、何故か君達2人はあの相手の名前を知っていた。 特にユウは、ブレイズのバリアジャケットと魔法が、相手の姿かたちと使った能力に類似点が多すぎる。 言い逃れは出来ないぞ」
クロノはそう言ってくる。
俺は、桜と顔を見合わせた。
(如何する?)
俺は、念話で桜に呼びかける。
(……まあ、いいんじゃないの。 話しちゃって。 別に絶対に黙ってなきゃいけないって事はないんだし。 信じてくれるかどうかは知らないけど)
桜はそう答えた。
俺はクロノに向き直ると、
「別に話してもいいけどさ、絶対に信じてくれないと思うぞ?」
俺はそう言う。
すると、
「それを判断するのは僕達だ」
クロノはそう言った。
俺はため息を吐き、
「簡単に言えば、ブラックウォーグレイモンは、俺達が前世で見てたアニメに出てきたキャラクターだ」
要点だけを纏めて一言でそう言った。
「「「「「「「「「「…………………」」」」」」」」」」
全員が一旦黙り込み、
「「「「「「「「「「はぁああああああああっ!?」」」」」」」」」」
一斉に叫んだ。
まあ、そうなるのは当然だな。
「ちょっと待て! 言いたい事は沢山あるが、先ず1つ。 前世ってどういう事だ!?」
クロノが叫ぶように問いかけてくる。
「言った通りだ。 高町家の人は知ってるけど、俺と桜は前世の記憶……つまり、この世界に生まれてくる前に、違う人間として生きてきた記憶があるんだ」
俺はそう言う。
「ちょ、ちょっとなのは! 知ってたって本当なの!?」
アリサが叫びながらなのはに詰め寄る。
「う、うん……」
なのはは、なんとか頷く。
「因みに死んだ歳は26歳だ」
俺はそう言い、
「私は25ね」
桜もそう答える。
「「「「「「「「「「…………………」」」」」」」」」」
高町家以外の人達が呆気に取られる。
「2人の言っている事は本当ですよ。 少なくとも、ユウは嘘は言っていません」
リニスがそう補足する。
リニスは俺とリンクが繋がってるから、嘘かどうかぐらいの判断はつく。
まあそれは別にしても、リニスは全部知ってるからな。
アニメ云々も含めて。
「……でも、それが本当なら、ユウ君が昔から大人びていた事にも説明がつくし、初めて桜さんと話したときに、同年代と会話してるような錯覚を感じた事も納得出来るわ」
リンディさんがそう言う。
「……まあいい。 仮にその話が本当だったとして、その次の話は………」
クロノが、そう続ける。
「それも本当よ。 こっちの世界じゃやってないけど、ブラックウォーグレイモンは前世で見てたアニメのキャラクターよ。 何でこの世界に現れたのかは知らないけど。 あ、そういえばブラックウォーグレイモンって、次元の壁を越える能力があったっけ」
桜がそう言った。
「それに、俺のバリアジャケットや魔法がブラックウォーグレイモンとそっくりなのも当然だ。 俺の魔法は、その前世で見てたアニメの同シリーズに出てたブラックウォーグレイモンの同種族のウォーグレイモンをモチーフにしたものだからな」
俺は序にそう言う。
「「「「「「「「「「…………………」」」」」」」」」」
全員言葉が出てこないらしい。
余りにもアホらしいからだろうが。
「とりあえず、俺達がブラックウォーグレイモンを知ってる理由はこれだけだぞ」
俺はそう言っておく。
「いや、しかし、アニメのキャラクターと言われてもだな………そんなことがありえるわけが……」
クロノがそう呟く。
暫く全員が黙っていたが、
「ふむ、ならば、この世界も君達にとってはアニメの世界じゃないのかな?」
クライドさんが呟いた言葉に、俺と桜は思わずクライドさんの方に顔を向けた。
「と、父さん!? 何でそんな事!?」
クロノが思わず呼びかける。
「いや、ユウ君と桜ちゃんは、何かと先読みが出来すぎてる気がしていたんだ。 ジュエルシード事件の事は詳しくは知らないが、この前起こった闇の書事件。 管理局でも知らなかった闇の書の真実を知っており、それでいて、暴走状態に入った闇の書の管制人格の能力も予想が的確すぎていた。 それで、もしかしたらと思ってカマをかけてみたんだけど、その2人の反応を察するに、どうやら図星だったみたいだね」
クライドさんの言葉に、俺と桜は拙ったと思った。
アニメ云々の話は喋るつもりは無かったのだ。
全員の視線が俺と桜に集中する。
「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」
その視線に、俺達が耐え切れるはずも無く、洗いざらい吐かされる事になった。
俺達が話し終えると、
「わ、私が主人公なの~~~!?」
なのはが驚きで声を上げ、
「私がリンディさんの養子に………」
フェイトは、驚きながらそう呟き、
「リインフォースは助からんかったのか……」
はやては落ち込んでいた。
更には、
「わ、私って死んでるんだ………」
自分が死んでいると聞き、落ち込むアリシアと、
「わ、私がフェイトを鞭で叩いて………その上家庭崩壊なんて…………」
それ以上に落ち込んでいるプレシアさんの姿。
見事なorzです。
「クライドさんは落ち込まないんですね」
平気な顔をしてるクライドさんにそう尋ねる。
「ああ。 私自身こうしていられるのは運が良かっただけだし、何より、それは違う世界の出来事なんだろ?」
クライドさんはそう言った。
どうやら割り切っている模様。
「違う世界で思い出したけど、アニメのリリカルなのはには、元になったゲームがあったわね」
桜が突然そう言った。
「ああ、とらハ3か」
俺は頷くように呟く。
「あ、ユウも知ってたの? 私は話に聞いてたぐらいで殆ど知らないんだけど………」
「まあ、中途半端だが、やった事もあるし」
俺がそう言うと、
「ほう……どういうゲームなんだ?」
恭也さんがそう尋ねてくる。
だから俺は、
「恭也さんが主役の、じゅ………アドベンチャーゲームです」
あっぶねー危うく十八禁ゲームと言いそうになった。
「お、俺が主役か?」
恭也さんは若干焦った表情を見せた。
すると、俺の発言に食い付いた人物がいた。
「ねえねえ! その話もっと詳しく聞かせてよ!」
忍さんである。
「アドベンチャーゲームってことは、ヒロインは? 私? それとも他にいるの?」
忍さんは興味津々に問いかけてくる。
「え~っと……とりあえずヒロインは複数いまして、選択肢によってその中の誰か1人を選び、それによってストーリーが変わってくるタイプのゲームです」
俺は、忍さんの雰囲気に押され、そう言ってしまう。
「ほうほう………で、ヒロイン候補は?」
忍さんがそう聞いてくる。
「おい、忍」
恭也さんが忍さんを止めようとするが、
「いいじゃない。 別の世界の恭也に興味あるし。 で、誰?」
忍さんは恭也さんを黙らせ、再び俺に問いかけてくる。
「え~、ヒロインは、忍さんは勿論の事、歌姫のフィアッセ・クリステラ。 ドジでおっちょこちょいな巫女、神咲 那美。 明るく元気な空手娘の城島 晶。 関西弁の日中ハーフのレンこと、鳳 蓮飛。 ノエルさんも一応ヒロイン候補でしたし……あ、あと美由希さんもですね」
「ええっ! わ、私も!?」
美由希さんが顔を真っ赤にして驚く。
その瞬間、冷たい視線が恭也さんに集中した。
その視線に焦る恭也さん。
「ちょ、ちょっと待て! それはゲームの話だろ!? それに美由希は……!」
いい感じに恭也さんが焦っていたので、
「あはは。 まあ、そのゲームの設定では、美由希さんは、恭也さんの本当の妹じゃ無いんです。 その美由希さんは、士郎さんの妹の美沙斗さんっていう人の娘で、恭也さんとは従兄妹同士って設定……です………」
俺が笑って説明しようとした所、士郎さん達が、驚愕の目で俺を見ていたので、思わず語尾が小さくなる。
「ユウ君」
「は、はい」
士郎さんの言葉に、俺は思わず返事をする。
「つかぬ事を聞くが、その美由希の父親の名は分かるかい?」
「え、え~っと………た、たしか静馬……だったと思います」
俺は、誤魔化しは不可能と判断して、正直にそう言った。
すると、
「そうか……」
士郎さんはそう呟くと、若干俯いた。
「あの……もしかしてこの世界でも?」
俺がそう尋ねると、
「君の言った通りだよ」
士郎さんは頷いた。
すると、士郎さんはリンディさん達に向き直り、
「恐らく、今まで桜とユウ君が言ったことは本当でしょう。 先程の美由希の話は、ユウ君自身には勿論の事、桜やなのはにも言ってはいません」
そう言った。
「そうですか………私も嘘とは思っていません。 ユウ君は、こんな突拍子のない嘘はつかないと思いますから」
リンディさんはそう言った。
それから暫くして、
「それにしても、前世とはね~。どうりで桜もユウもまともに授業聞いてないくせに、勉強できると思った」
アリサが呆れ半分でそう言う。
「あはは、隠してたわけじゃないけど、ゴメン」
桜は謝る。
「まあ、いいわよ。 いきなり前世の記憶がある、なんて言われても、馬鹿にされるだけだろうし」
アリサはそう言って許した。
すると、アリサは俺に向き直り、
「そういえばユウ、アンタ26歳まで生きてたって言ったわよね?」
そう聞いてきた。
「ああ。 そうだけど」
俺がそう頷く。
すると、
「アンタさ、前世じゃ一体何人の女を引っ掛けたのよ?」
――ゴンッ!!
俺は思わず頭をテーブルに打ち付けた。
すぐにお俺は頭を上げ、
「ふざけんな! お前は俺を何だと思ってやがる!?」
思わずそう叫んだ。
「鈍感ってわけじゃないけど、無自覚女たらし」
アリサはキッパリと答えた。
思わず俺は項垂れる。
「あはは、実は私も気になってたんだ」
すずかがそう言った。
「すずかもか」
俺は恨めしそうにすずかを見る。
「あ、私もそれ気になる」
「私も」
「あはは、私も」
「実は私もや。 リインフォースやシグナムやシャマルも気になっとるんやないか?」
「私もです」
なのは、フェイト、アリシア、はやて、ファリンさんが次々にそう言う。
「お、お前らなぁ………」
俺はそう呟くと、
「俺の前世は、恋人どころか女の知り合いも一人もおらんかったわぁぁぁぁぁっ!!!」
思わずそう叫んだ。
その言葉にビックリする一同。
「冗談でしょ? 女の知り合いが一人もいなかったなんて」
アリサが恐る恐るといった雰囲気で問いかけてくる。
「本当だ! 俺は半分引きこもりだったから出会いがあるわけ無いだろっ!! 第一、前世の俺は正真正銘のダメ人間だったんだよ!!」
俺は力強く叫ぶ。
「そういえば、アンタそういう性格だったわね。 最近はマシになってきたからすっかり忘れてたわ」
桜がそう呟く。
「で、でも、よく言うやん。 運命の人とか、そういう人が………」
はやてがそう言うので、俺が否定する為に口を開こうとしたが、
「ああ、それは無いわよ」
桜がキッパリと否定してくれました。
何で桜が言えるんだ?
「な、何で桜が否定できるの?」
フェイトがそう問いかけると、
「だって私、前世じゃユウとは会ってないもん」
桜はそう答えた。
いや、だから何で前世の桜と会ってない事が証明になるんだよ?
「それが何の関係があるの?」
アリシアが問いかける。
「だって、前世のユウの運命の人って、私だもん」
は?
「「「「「「「「……………………」」」」」」」」
一瞬の沈黙の後、
「「「「「「「「はぁあああああああああっ!?」」」」」」」」
一斉に驚愕の声を上げた。
「どどど、どういう事だよ!?」
俺は思わず叫んで問いかける。
「私を転生させてくれた神様が言ってたの。 私の運命の人を間違って死なせちゃって違う世界に転生させたから、私が望むなら同じ世界に送ってもいいって」
「………あのじーさんそんな事一言も言わなかったぞ」
「多分、アンタを転生させた後に思いついたんじゃないかしら?」
桜の言葉に、俺はため息を吐く。
「なんか今、聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど………」
アリサがそう呟くと
「間違って死なせたってどーいう事ですかぁ?」
ファリンさんがそう不思議そうに呟く。
「ああ。 俺って前世じゃ、神様の部下がミスして寿命前に死んだらしいんだ。 で、そのお詫びに、記憶を持った転生をさせてくれたって訳」
「「「「「「「「「「ええぇぇぇぇぇぇっ!?」」」」」」」」」」
俺の言葉に、再び驚く一同。
「ア、 アンタはそれで納得したの!?」
アリサが叫んでそう言ってくる。
「いや、ミスなんて誰にでもあるだろ?」
俺はそう答えると、
「いくらミスだからって、そのミスで死んじゃったのよ!」
そう叫ぶアリサ。
「つっても、普段からミスを連発してた俺に、ミスを如何こう言う資格は無いし………」
「そういう問題じゃ………」
「でも、そのお陰で、俺はこうしてここに居られる訳だし」
俺がそう言うと、全員が黙り込む。
「ま、そういうわけだから気にすんな」
「あ、アンタって後ろ向きなのか前向きなのか分からないわね」
アリサが呆れたように呟く。
「無神経なだけじゃねーか?」
俺がそう呟くと、
「言えてるかもね」
桜が笑いを零しながらそう言った。
あとがき
微妙に中途半端な出来ですが、第三十二話の完成です。
とりあえず、色々暴露な回です。
もう少し面白く出来たらよかったなぁと思います。
ブラックウォーグレイモン登場の回からこの回までを一話でやろうとしていた自分はアホ以外の何者でもないです。
さて、次回は特にやる必要はないですが、モブキャラを使ったほのぼの話を書いて、その次からStSキャラを絡ませていこうと思います。
あと、マテリアル三人娘ですが、ちょっと前に出せないだろうと書いたのですが、ふと閃きが走り、マテリアルとしてではありませんが出せそうな感じです。
その場合、ユウのハーレムには入りませんが、出したほうが宜しいでしょうか?
では、次も頑張ります。