おー、驚いてる驚いてる。鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔ってやつだ。
まあ、まさかジュエルシードモンスターが自力で元に戻るなんて、想像もしなかったんだろうな。
とは言えこのままじゃ会話が進まん。
「──で? 君らの名前は何?」
俺は先を促し、会話の口火を切った。
「あ、たっ、高町なのは! 聖祥付属小学校三年生です!」
「ユ、ユーノ・スクライアです…」
慌てて背筋を伸ばして挨拶する二人。まあ現状、正確には一人と一匹なんだが。
「高町さんとスクライア君ね。君らの目的は、やっぱりジュエルシード?」
「!?」
その言葉に、くわっと目を見開き、俺に詰め寄ってくる二人。
「そう! それを返して欲しいの!」
「アレは危険な物なんだ! 君はどういう訳か上手く使っているみたいだけど、都合の良い変身道具やオモチャじゃないんだ!」
「ちょっ!? ストップストップ! 落ち着けって!」
ものすごい剣幕で迫ってきた二人を宥め、再び距離を取る俺。
「いや、返したいのはやまやまなんだが、ちょっとややこしい事になってんだよ…まずは話を聞──って! 今何時!?」
聞いてくれ、と言いかけたその時、俺は自分が急いで帰る途中であったことを思い出し、慌ててなのはに時間を尋ねる。
「えっ? 今……四時三十五分だけど?」
携帯を取り出し時間を告げるなのは。
「やっべえ! 悪い! 俺行かなくちゃいけない所があるんだ! この話しはそれが済んだ後で!」
「あっ! 待って!」
シュタッ! と右手を上げて立ち去ろうとする俺に、なのはがしがみ付き、引き止めてくる。
「ジュエルシードを返してくれないと駄目なの!」
「いや、だからその話しは後でゆっくりと…」
「なのはの言う通り、本当に危ないんだ! すぐに手放して!」
駄目だ! 話にならない! フルムーン状態かよ、こいつらは…
なのはたちの説得も大事だが、俺の用事も大切なのだ。さてどうするかと、思いながら左手で頭を掻いたその時、掌中に違和感を覚える。
(んんっ?)
首を傾げて顔の前に掌を持って来て、ようやくその違和感の正体に気が付き、同時にちょっとした悪知恵が閃いて、一瞬、某新世界の
神ばりの邪悪な笑みを浮かべた。
「ちょおっと待った!」
俺は二人の声を遮り、左手の中のモノを見せつける。
「「レ、レイジングハート!?」」
『I am sorry Master. has been caught.』(すみません、マスター。 捕らえられてしまいました)
目を剥いて声をハモらせる二人に、俺の掌中のレイジングハートは申し訳なさそうに声を漏らした。
「まあ、そんなに気を落とすなよ」
『You must not say.』(あなたが言わないで下さい)
俺の慰めにピシャリと反論するレイジングハート。
「ははは、コイツは手厳しい。で、こいつを返して欲しかったら、俺をこのまま行かせて欲しいんだが…?」
「そ、そんな条件飲める訳ないだろ!」
ふっふっふっと、ノリノリで悪役を演じる俺に、食ってかかるユーノ。
「ほほう、だったら止めてみるかい? この俺を」
「クッ……! 君が本当にレイジングハートを返すっていう保証があるのか!?」
悔しそうに一歩下がりながらもなお、俺に反論してくるユーノ。ふーむ、成る程。
「──つまり、返す保証があれば問題ない、そういうことだな?」
「うっ!? そ、そうだよ! そんな口約束じゃ信用できない!」
俺の問い返しに、一瞬返事に窮したユーノだったが、すぐに大きく頷きながら肯定の意を返してきた。
「よし、それじゃあ二人とも俺の後について来い。ついでに俺の仕事を手伝ってもらおうか」
「えっ!?」
「お、お仕事って何かな…?」
俺の意外な返答に驚きを浮かべるユーノと、不安げな表情で尋ねてくるなのは。
「なーに安心なさい。優しい先輩が丁寧に教えてくれるアットホームな職場! 誰でも出来る簡単な作業です!」
そう言いながら、俺は二人を安心させるように笑顔を作る。
が、どういう訳か、二人はジリジリと後退りをする。…むう、何故だ?
──って、そう言えば悪役モードで喋っていたんだったっけ。
ああ、それじゃドン引きだ。きっと俺、某ざわざわ賭博漫画のパチンコ店長のような、嫌な笑顔だったんだろうなぁ。自重自重っと。
ついでに用事済ませる間に上手い言い訳も考えておくか。おい、仮想人格。お前も手伝えよ。
(承知)
俺は脳内で仮想人格とあれこれ協議をしながら、なのはたちを引き連れ、路地裏を後にした。
第三話 武装TAKAMACHI 魔王再臨。(中編)
「ありがとうございましたー」
ここは市街地から少し離れた商店街の一角にあるスーパー。
店員の姉ちゃんの挨拶を背に、両手にパンパンになったレジ袋を持ち、夕刻の買い物客でごった返す店を出た俺。
とその後に続く、どこかゲンナリとした表情の、なのはとユーノ。
「いやー得した得した! やっぱ買い物は頭数だよ、兄貴!」
「ねえ、…ちょっと!」
「──ん? どうした、スクライア?」
ドズル中将に心中で敬礼していた俺に、ユーノが困惑した表情で話しかけてきた。
「もしかして、君の言っていた仕事って、コレ?」
「もしかしなくても、この夕方のタイムセールの買出しだが?」
俺が「お前は何を言っているんだ?」って感じで首を傾げると、ユーノはこめかみをピクピクとさせ、怒りに耐えるような
表情になり、なのはは「にゃはは…」と、乾いた笑いを浮かべながら、ランドセルを肩からズリ落としかける。
「何と言ってもこの、千円以上お買い上げのお客様限定、L玉卵一パック八〇円!(お一人様一パックまで)高町がいたから二つゲット出来たぜ!」
勝ち誇った笑いを上げる俺。
その後ろで、「そ、そんな下らない理由で脅迫までするなんて…」とぶつぶつ言いながら、頭を抱えるユーノ。
む。そいつは聞き捨てならん!
「くぉらぁイタチ! てめえ卵馬鹿にすんな!
洋の東西を問わず活躍する、栄養豊富な万能食材!
一年を通して安価で、入手容易な価格の優等生!
これ一つで、おかずの一品二品はどうにかなるスグレ物なんだぞ! 謝れ! 卵に謝れ!」
「うわあぁぁぁぁっ!! ごめんなさいごめんなさい!」
俺がなのはの肩からユーノを引ったくり、顔の前でガックンガックン揺らしながら、SEKKYOUをしてやると、目を回して謝りだす。
「わわ! ユーノ君も謝ってるから、もう許してあげてぇ!?」
慌てて割って入ったなのはに抑えられ、俺は渋々その動きを止める。
「チッ! しょうがない、ここは高町の顔に免じて許してやろう。本当ならあと二〇分は、卵のレクチャーがあるんだが…」
「「二〇分もあるの!?」」
「まあ嘘だけど。20分って微妙にリアルな数字だから、本気っぽく聞こえね?」
「「ひどいよ!!」」
上がる抗議の声を背に、はっはっはっと、爽やかに笑いつつユーノを手放し──
「高町、ホレ」
更に俺はなのはに向かって手にしていた物を放り投げた。
「ふえ? ──レイジングハート!?」
自身に向かって投げられた物を、反射的に受け取ったなのはは、己が掌中を確認して、驚きの声を上げた。
「レイジングハート! 大丈夫!? 何ともない!?」
『No problem. Thank you for consideration. Master』(問題ありません。心配り感謝します。マスター)
「おいおいひでえな、俺が何かすると思ったのかよ?」
『Exactly』(その通りです)
冗談めかして言ったのに、ダービー弟みたいなこの返し…泣きたくなってきた。まあ、それはともかく──
「さて、俺の用事も済んだし、河岸を変えて詳しい話をするよ。あー、でも今度は後ろからの不意討ちは勘弁してくれよ?
そっちを信用して、ソイツを返したんだからな?」
移動の前に、大丈夫だとは思うが一応釘を刺しておく。
「う…その、ごめんなさい…」
「なのはは悪くないよ! ……ごめん、アレをやろうって言ったのは僕なんだ。なのははそれに従っただけで…」
うん。二人とも素直な良い子だ。
ひねくれた今時のガキどもに、この子らの爪の垢煎じて飲ませてやりたいよ。
「ま、わかってくれりゃ構わねーよ。じゃ、早速行くとしようか…」
「どこへ行くの?」
ちゃんと約束守った為だろうか、なのはの警戒心は若干薄れているようで、言動に柔らかさが窺えた。
「買った物をしまわなきゃなんねーからな。俺の家だ」
俺はユーノを引ったくった時に、地面に下ろした買い物袋を持ち上げ、なのはに見せながらそう言った。
小さな家屋が詰め込まれたように建ち並ぶ、住宅密集地。
海鳴の中心部──駅前市街地から離れたこの場所は、町工場が点在し多種多様な職人たちが暮らす区画だ。
古い木造住宅や入り組んだ細い路地、日向でくつろぐ野良猫など、まるで東京の下町を思わせるノスタルジックな風景は、
俺のお気に入りだったりする。
夕焼けでオレンジ色に染まる、そんなどこか懐かしい町並みを歩く俺となのは。と、その肩に乗るユーノ。
聖祥の制服自体、この辺りでは珍しい上に、キョロキョロと辺りを見回すなのはは、周囲から浮いてかなり目立っている。
「高町、この辺りはあんまり来ないのか?」
「え…? うん、こっちに来る用も無いし、知ってる人もいないから」
なんか珍しくて、と言って頭を掻き、笑うなのは。
「そんなに面白いものも無いと思うけどな──と、着いたぞ」
俺は顎で前方を指す。そこには、築二〇年は経っていそうな古いアパート。
「このアパートの二階の左端が俺の家だ。ついて来な」
そう言いながら、階段を登る俺の後を、なのはは慌てて追って来る。
鍵を開け家に入ると、窓から差す光で、部屋中が赤く染まっていた。
「冷蔵庫に買ってきた物入れちまうから、ここに座って待っててくれ」
俺はちゃぶ台の前に座布団を二枚敷き、二人を招いた。
「お、お邪魔します…」
遠慮がちにゆっくりと家に上がったなのはは、俺の指定した場所に、ユーノと並んでちょこんと腰を下ろした。
それを確認すると、俺は部屋の隅にある仏壇に手を合わせた後、台所に買い物袋を運ぶ。
「あの…お家の人は?」
「んー? 母さんは仕事。父さんはそこの──窓の所の仏壇だ」
「あ──ご、ごめんなさい!」
食材を冷蔵庫に入れながら、何の気無しに答えると、気まずさと罪悪感を滲ませた謝罪の言葉が飛んで来た。
「あー、気にしなくてもいいぞ、俺が生まれる前の事らしいからな」
そう答え、スーパーで買った特売のオレンジジュースを、コップと小皿に注ぎ、なのはとユーノの前に「どうぞ」と言って置く。
「あ、ありがとう…」
「いただきます…」
二人は小さく謝辞を述べ、舌先を濡らすように少し口をつけた。
俺はちゃぶ台の反対側に「どっこいしょ」と言いながら腰を下ろした。
(…しかし、何なんだろうな、このシチュエーションは)
魔人と化した少年と魔法少女。
立場の異なる二者が、夕暮れで赤く染まるアパートの一室で、ちゃぶ台挟んで座るという、このシュールな構図。
まるでメトロン星人とウルトラセブンのようだ。
(時空管理局? 怖いのは高町なのは、君だけだ! …なんてな)
自分の馬鹿な妄想で笑いそうになるのを堪え、俺は二人を説得するべく口を開いた。
「──さて、と。じゃ落ち着いたところで、俺の事情について説明しよう」
「事情って…ジュエルシードを渡せない理由かい?」
「ああ。ま、『百聞は一見に如かず』だ。まずはコイツを見てもらおう」
尋ねるユーノに頷きを返し、俺はおもむろにその場で上着を脱いで、ランニングシャツのみの姿になる。
なのはが声を上げて顔を赤くしたり、「何をしてるんだぁ!?」と言うユーノの抗議も、とりあえず無視。シャツの間から覗く
胸元にそっと手を当て幻術解除、と小さく呟いた後、「ほれ、これだよ」と、その場に現れた物を二人に見せた。
「「ジュ、ジュエルシード!?」」
途端、二人がちゃぶ台から身を乗り出して上げた大声が、室内にこだました。
「おいおい、ここの壁薄いんだから、デカイ声出さねえでくれよ」
俺が渋面で注意すると、二人とも「ごめんなさい…」と言いつつ、しょんぼりしながら、その場に腰を下ろす。
「──って! それどころじゃないよ! さっきの変身といい、自我をしっかり持っている点といい、一体君は何者なんだ!?」
反論してくるユーノをまあまあと制し、俺はあごに手を当て、言葉を選びながらゆっくりと話し出した。
「順を追って話そう。きっかけは知っての通り、つい先日のあの大木騒ぎの時だ。君らも見ただろ? 血まみれでブッ倒れてた俺を」
「あ──」
あの時の事を思い出したのか、なのはの顔に影が差した。
「あの時、大木の根っこにぶっ飛ばされた俺は、痛みのあまりに這いずり回って、偶然落っこちていたジュエルシードを手にした。
こいつは俺の願いを正確に叶えてくれたよ。『生きたい。俺に力をくれ』っていう願望をね」
そこで一旦言葉を切り、二人に目を向ける。なのはもユーノも、真剣な表情で俺を見ている。
「通常ならば、ジュエルシードを発動した者は核として取り込まれ、暴走体と化す。が、俺は例外中の例外で、自我を保ったまま
ジュエルシードの力を暴走させることなく操ることが可能だった。俺には適性因子があったからな」
「適性、因子?」
聞きなれない言葉に、首を傾げるなのは。
「ジュエルシードを完全に自分の制御下に置き、自在に操る力だ」
俺の言葉に、ユーノは目を剥いて驚きの表情を作る。
「バカな! デバイスも無い、魔導師でもない人間がジュエルシードの制御なんて不可能だ!」
「とは言うがよぉ、魔人の姿のまま自我を維持して会話も可能、元の姿にも自由に戻れる。これでただの暴走体じゃ、説明が
つかないだろ?」
「うっ…」
俺の返しに二の句が出せず、言葉に詰まるユーノ。
「話を続けるぞ? ジュエルシードを手にして、命を繋げたまでは良かったが、苦痛が酷くて俺の精神状態はまともじゃなか
ったらしくてな、イレギュラーが起こった。それがあの姿──魔人マタドールっていう悪魔の姿さ」
「悪魔? アレが?」
呆然としながら、ユーノは信じられないと呟いた。
「そりゃ俺の台詞だって。頭が冷えて我に返った時に、ガラスに映った自分があのガイコツ面だぞ? 何よりもまず、テメエの
正気を疑ったよ、俺は」
「あ。ゴ、ゴメン…」
溜息混じりにぼやく俺を見て、ユーノは気まずそうに頭を下げた。
「で、だ。君の世界じゃどういう存在か知らねえけど、この世界じゃ悪魔ってのは、伝説や伝承神話で語られるのみで確認はされ
ていない、人知を超えた超越種たちでな。俺は趣味でそういう存在を調べているんだが、どうやらジュエルシードは俺の頭の中に
あったこれらの知識を読み取って、俺にその『力強い肉体』──悪魔の力を提供してくれたらしい」
わかったか? と言う意の視線を送ると、先程よりは幾分か落ち着いた様子で、ユーノは口を開いた。
「…確かに、君の話しは矛盾が無いし、説明もつくよ。ただ、気になる点がある」
「ふむ。そりゃなんだ?」
真剣な目で見つめてくるユーノに視線を返しつつ、俺は先を促す。
「君は『ジュエルシード』や『暴走体』って言葉をどこで知ったんだい? 僕が別の世界から来た事も知っているみたいだし、
一体どこでそんなこと調べたの?」
「ああ、それか。その理由は二つある。一つ目は君らが話していたことが、俺の耳に届いていたって事。悪魔の五感は鋭くて
な、多少距離があっても結構聞こえるもんなんだ。
で、もう一つだけど、コイツが教えてくれたんだ。──おい、挨拶しな」
来るだろうと予測はしていた質問だったので、落ち着いて答えることの出来た俺は、そのまま胸元のジュエルシードに、デコピン
しながら語りかける。
『はじめまして。と言うべきかな? ユーノ・スクライア、高町なのは。御剣令示のジュエルシード使用のサポートを行う、仮想人格だ』
「ジュ、ジュエルシードが──」
「しゃべったの!?」
明滅しながら言葉を発する俺の胸元のジュエルシードと、それに目を丸くして驚く二人。
「こいつは俺が力を手に入れたばかりで困惑していた時に、ジュエルシードが俺の願望をくみ取って、生み出されたもんでね。
俺の補佐役ってところだ」
『以後、見知り置き願おう』
「なんだか、レイジングハートみたい…」
ちょっと得意げな感じで語る仮想人格を見ながら、呟くなのは。レイジングハートは「一緒にすんな!」とでも言いたげな、何とも
不満そうな光を発していた。
「──さて、これですべての疑問は解けたかな?」
「ちょっと待って!」
俺が改めて二人の顔を見ながら確認の意を取ると、ユーノが慌てて口を開いた。
「君の知識の出所はわかったよ。でもここまで話した中で、ジュエルシードを返せないっていう理由は無かったよ。いや、むしろ
封印を行って、ジュエルシードを分離した方が、君も悪魔の姿にならずに済むじゃないか」
『残念だが、それは不可能だユーノ・スクライア。ジュエルシードを主より引き剥がす事は、主の生の終焉へと直結する』
ユーノの疑問に、仮想人格は平然と答え──
「なっ!?」
「えっ!?」
それに驚愕するユーノとなのはに構うこともなく、仮想人格はそのまま淡々と言葉を紡ぐ。
『件の大木騒ぎで重傷を負った主の命を、現世に留めているのはジュエルシードの魔力だ。それが無くなれば、当然主の魂魄は
向かうべき場所へと向かうのみ』
「そ、それが嘘じゃないって証拠は…?」
動揺を圧し殺そうとした低い声で、ユーノが疑問を投げかける。
『ふむ。ならばこの場で、ジュエルシードを封印してみるか?』
「それは──」
「お前に責任取れるのか?」という言外の問いに、ユーノは言葉を詰らせた。
「じ、じゃあもしも、さっきの私の魔法が御剣君に当たっていたら…」
『然り。死ぬところであった』
「っ!?」
仮想人格の言葉に、目を見開いて蒼白の表情となるなのは──って、オイ!
「表現ストレート過ぎだバカ! もっとオブラードに包んだ言い方をしろ!」
『言い繕ったところで、伝えるべき内容に変わりはあるまい?』
「だからってだなぁ、お「──んなさい」前は、あ?」
俺と仮想人格の言い争いの中、スカートの端を握り締め、俯いたなのはの漏らした小さな呟きが、部屋に響いた。
よく見れば、膝の上の両手が小刻みに震え、その手の甲には、ポタポタと滴が落ちて──
(って、滴?)
と、疑問に思ったその時──
「ごめんなさい……!」
顔を上げ、謝罪の言葉を口にしたなのはの目からポロポロと涙がこぼれるのを見て、俺は「はえっ!?」と、間抜けな声を
上げてしまった。
第三話 武装TAKAMACHI 魔王再臨。(中編) END
後書き
書いても書いても終わらない…次でオープニング部分は終わる…筈です。フェイト登場まで、他の魔人登場までもう少しだ!
頑張って書け! 俺!
こんな半端なところで引きになってしまって申し訳ないので、以下、脳内妄想のおまけを追加します。
わかってるとは思いますが、ネタなんで深く考えずにお読み下さい。
オマケ リリなのウルトラセブン風妄想劇場「狙われた街なの」
…海鳴市… 最近、この街では不可思議な事件が多発していた。
事件の原因は、次元航行船より墜ちたロストロギア、ジュエルシードによるものだった。
ジュエルシードの回収をするべく市内を調査していたなのはとユーノはその力を手にした謎の怪人を発見した。
その怪人は悪魔、魔人マタドールだったのだ。
「ようこそ、高町なのは。私は君が来るのを待っていたのだ…」
マタドールの潜伏するアパートに侵入したなのはは、それを予期していたマタドールに迎え入れられた。
「えっ!?」
「歓迎するぞ、なんなら、ユーノ君も呼んだらどうだい?」
驚くなのはを尻目にちゃぶ台の前へと腰を下ろし、あぐらをかくマタドール。
なのはもそのまま反対側へ座る。
「あなたの計画は全てわかったの。おとなしく降伏して」
「ハッハッハ…、私の実験は十分成功したのさ」
なのはの厳しい言動にも臆することなく、マタドールは余裕の態度を取る。
「実験…?」
マタドールの言葉の意図するところが理解出来ず、オウム返しに問いかけるなのは。
「そうだ、ジュエルシードで人類が悪魔の力を得るのに、十分力があることが分かった。教えてやろう、私は人類が互いに信頼
しあって生きていることに目をつけたのだ。
地球を壊滅させ、悪魔の世界を築く為に暴力をふるう必要はない。人間の中に悪魔を増やし、人と人との信頼感をなくせばよい。
人間たちは、隣人が悪魔かもしれないという恐怖から疑心暗鬼に陥り、互いに敵視し傷つけあい、やがて自滅していく。どうだ、
いい考えだろう?」
「そうはいかないの!、次元世界には時空管理局がいるんだから!」
なのはの言葉を、鼻で笑うマタドール。
「時空管理局? 恐いのは高町なのは、君だけだ! だから君のデバイスには管理世界へ帰ってもらう、邪魔だからな。
ハッハッハ…!」
交渉は決裂。両者の主張は互いに平行線を辿るばかりであった。
赤く染まるアパートの一室。
戦いの火蓋は静かに、だがはっきりと、切って落とされたのだ。
夕暮れの街に響き渡る剣戟、轟く砲撃。
互いに一進一退を繰り返し、いつ終わるとも知れぬ戦いは、ユーノが取った捨て身の特攻バインド攻撃に捕らわれたマタ
ドールが、ディバインバスターの直撃を喰らい、爆発して果てた事で、終わりを告げた。
ナレーション「こうして、マタドールの企てた、『人類悪魔化計画』は未然に阻止されたのです。
人間同士の信頼感を利用するとは、恐ろしい悪魔です。
でも安心して下さい。このお話は遠い遠い未来の物語なのです。
え、何故かですって? 私たち人類は今、悪魔に狙われる程、お互いを信頼してはいませんから…」
ただの妄想ですww