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No.12606の一覧
[0] 【2章完結】魔法少女リリカルなのは 心の渇いた吸血鬼(型月さっちん×りりなの) [デモア](2021/10/29 12:22)
[1] 第0話_a[デモア](2012/02/26 02:03)
[2] 第0話_b[デモア](2013/06/10 12:31)
[3] 第0話_c[デモア](2013/08/17 03:19)
[4] 割と重要なお知らせ[デモア](2013/03/11 21:50)
[5] 第1話[デモア](2013/05/03 01:21)
[6] 第2話[デモア](2011/07/05 20:29)
[7] 第3話[デモア](2013/02/16 20:33)
[8] 第4話[デモア](2014/10/31 00:02)
[9] 第5話[デモア](2013/05/03 01:22)
[10] 第6話[デモア](2013/02/16 20:43)
[11] 第7話[デモア](2013/05/03 01:22)
[12] 第8話[デモア](2012/02/03 19:23)
[13] 第9話[デモア](2012/02/03 19:23)
[14] 第10話[デモア](2012/08/10 02:35)
[15] 第11話[デモア](2012/08/10 02:38)
[16] 第12話[デモア](2013/05/01 04:48)
[17] 第13話[デモア](2013/10/26 18:49)
[18] 第14話[デモア](2013/07/22 16:51)
[19] 第15話[デモア](2012/08/10 02:41)
[20] 第16話[デモア](2013/05/02 11:24)
[21] 第17話[デモア](2013/05/02 11:09)
[22] 第18話[デモア](2013/05/02 11:02)
[23] 第19話[デモア](2013/05/02 10:58)
[24] 第20話[デモア](2013/03/14 01:03)
[25] 第21話[デモア](2012/02/14 04:31)
[26] 第22話[デモア](2013/01/02 22:45)
[27] 第23話[デモア](2015/05/31 14:00)
[28] 第24話[デモア](2014/04/30 03:14)
[29] 第25話[デモア](2015/04/07 05:15)
[30] 第26話[デモア](2014/05/30 09:29)
[31] 最終話[デモア](2021/10/29 11:51)
[47] Garden 第1話[デモア](2014/05/30 09:31)
[48] Garden 第2話[デモア](2013/02/20 12:58)
[49] Garden 第3話[デモア](2021/09/20 12:07)
[50] Garden 第4話[デモア](2013/10/15 02:22)
[51] Garden 第5話[デモア](2014/07/30 15:23)
[52] Garden 第6話[デモア](2014/06/02 01:07)
[53] Garden 第7話[デモア](2014/10/21 18:36)
[54] Garden 第8話[デモア](2014/10/24 02:26)
[55] Garden 第9話[デモア](2014/06/07 17:56)
[56] Garden 第10話[デモア](2015/04/03 01:46)
[57] Garden 第11話[デモア](2015/06/28 22:41)
[58] Garden 第12話[デモア](2016/03/15 20:10)
[59] Garden 第13話[デモア](2021/09/20 12:11)
[60] Garden 第14話[デモア](2021/09/26 00:06)
[61] Garden 第15話[デモア](2021/09/27 12:06)
[62] Garden 第16話[デモア](2021/10/01 12:14)
[63] Garden 第17話[デモア](2021/10/06 11:20)
[64] Garden 第18話[デモア](2021/10/08 12:06)
[65] Garden 第19話[デモア](2021/10/13 12:14)
[66] Garden 第20話[デモア](2021/10/29 13:09)
[67] Garden 第21話[デモア](2021/10/15 12:04)
[68] Garden 第22話[デモア](2021/10/21 02:35)
[69] Garden 第23話[デモア](2021/10/22 21:49)
[70] Garden 第24話[デモア](2021/10/26 12:37)
[71] Garden 最終話[デモア](2021/11/02 21:52)
[73] あとがき[デモア](2021/10/29 12:50)
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[12606] 第15話
Name: デモア◆45e06a21 ID:2ff3a52c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/08/10 02:41
「取りあえず、納得して貰えたところで君達にはこちらに来て貰いたいんだが」

微妙な空気が漂う中、落ち着いたクロノが佇まいを正して再度要求する。
それにより周りの空気が再度緊迫したものに戻った。
なのは達は別段断る理由も無いので大きな組織と接触するという緊張感からだが、問題はさつきの方。

(時空管理局……警察みたいな公的機関ってことは、当然やることは犯罪の取り締まりとかだろうし……
 えーっと、今の状況纏めると、

 ジュエルシードはユーノの落し物
    ↓
 それを狙うわたし泥棒
    ↓
 持ち主であるユーノが貸すの拒否してる
    ↓
 管理局が使用の許可を出す?
    ↓
 100パーNO

 うん、従う訳には……いかないよね。逃げたらその組織から追われることになるかも知れないけど、
 どうせなのはちゃん達から力ずくでジュエルシード取ろうとした時点でわたし犯罪者だし、このままついてっても捕まるのが関の山だし……)

それに、もし上手く行ったら元の世界に戻っちゃえば良いんだし。と、言うわけでこの瞬間にさつきの方針は決まった。
問題はその方法。さてどうしようかとさつきが意識を周囲に向けたところで、

「言っておくが、逃げるのは諦めた方がいい。
 こっちはこの道のプロだ。さっきは逃がしてしまったが、次は無いと思った方がいい」

さつきのその空気を察したのか、即座にクロノがその杖を突きつけて来た。
その言葉に、さつきは思った。確かに相手は素人からいきなり魔法使いになったであろうなのはと違い公共機関に仕えているプロだ。……あ、結構やばいかも。
追い討ちをかける様にクロノが言葉を続ける。

「君の戦いは先程見させて貰った。管理局を知らなかったことや、見たところから判断するに魔導師では無いみたいだが、それにしては凄まじい運動能力だった。
 しかし、それでも僕が君を逃がすなんてあり得ない。諦めるんだ」

その言葉を聞いた瞬間、さつきの取るべき行動は決まった。
『僕が君を逃がすなんてあり得ない』、それは暗に、目の前のこいつさえ何とかしてしまえばこの場はどうにかなるということである。
ならば、

「……逃げられないなら、やっつけてやる」

言葉と共に、さつきは構えた。
だが、クロノはそれにため息を吐く。

「言っただろう、こっちはプロだって」

「――? なっ!?」

さつきが動き出そうとした瞬間には、もう終わっていた。
距離を詰めようと動こうとした瞬間に、自分の四肢が動かないことに気付くさつき。見てみると、そこには青白い光の輪で拘束された手首と足首。
ご丁寧に一番力の入りにくくなる箇所を固定されていた。

「君が逃げようとしてる空気を見せた瞬間から今まで、僕が何もしてなかったと思ったか」

最後にそう言い、終わったと思ったのか背後を振り返り何かを始めようとするクロノ。
しかし、その時ユーノの叫び声が響いた。

「だめだ! その程度じゃ彼女は……!」

「? ――なっ!?」

クロノがその声に反応して首だけそちらに振り向くが、遅かった。
視界の端で何か青白い光が弾け、少女の腕がその頭上に振り上げられるのを確認したクロノは驚愕も一瞬、再度その動きを拘束しようと急いで振り返る。

しかし、その隙にさつきは力任せにバインドを引き千切った勢いのまま頭上に掲げた腕を振り下ろしていた。
真正面にいたクロノは、その開かれた指の先が何故か尖って見えたと言う。
次の瞬間、さつきの両足を拘束していたバインドは砕かれた。狙いが甘くその爪後は地面にも深々と残されていたが。
体を拘束するものが何もなくなったさつきは急いでその場から飛び退く。間一髪、彼女は収束する光の輪からすり抜けた。

「くっ」

クロノが悔しげに呻く。その頭の中では様々な思考が渦巻いていた。
バインドを力任せに破壊した? そんな馬鹿な。……いや、似たようなことをどこかで聞いたことがある。あれは確か……

「――縛られぬ拳《アンチェインナックル》」





「アンチェインナックル? それ何ですか艦長?」

その様子をモニター越しに見ていた少女はクロノがポツリと呟いた言葉の意味がわからず、その意味を隣に座る上司に訊いた。先程お茶を持って来ていた娘だ。

「アンチェインナックル、縛られぬ拳。
 管理局の陸で活躍しているとあるエースが使用していると言われるものね。
 いくらバインドで縛っても一度放たれればその威力と勢いをもってしてそれを振り解き、確実に相手を粉砕すると聞くわ」

「へぇ……」

関心したように声を上げる少女だが内心かなり驚愕していた。拳の威力でバインドを砕く? なにそのチート。

「……でも、あれは元の肉体のパワーは元より、身体技術の賜物だって聞くけど……。
 あんな力任せなのとは何か違う気がするわね」

「へぇ……」

と、再度関心したように声を上げる少女だったが、次の瞬間にはその言葉の意味を察してこう思った。ちょっと待て、と。





ある程度の距離を離して対峙するクロノとさつきの両名。なのは達は完全に蚊帳の外状態になっている。

(素人の筈のなのはちゃんであれだけの防御力を持っているんだから……、
 今度こそ、手加減なんてしてたらまずいかも……。
 全力で行くよ!)

さつきの方もなのは達のことを気にしている暇なんて無い。全神経を目の前の相手に集中している。

「……成る程、確かに只者じゃないようだ。それにそのスピードにも凄まじいものがある」

クロノが話し始めるが、さつきはそれを黙って聞いているつもりは無かった。また何か仕掛けられてはたまらない。
一気に距離を詰め、その拳を振るう。

「……だが、」

だが、その拳はクロノが即座に横に移動することによって避けられる。

「――っ!?」

「先程の戦闘の様子からして、君は空を飛べないみたいだ」

クロノはそのまま上空へ――安全地帯へと移動する。

「このままこの安全な場所から、一方的に攻撃させてもらうとしよう!」

「あ、そうか」

公園の隅でなのはがそんな事を呟いたとかなんとか。
閑話休題

《Sttinger snipe》

上空を位置取ったクロノが杖を振るうと、その先から先の膨らんだ鞭の様な物が伸び、さつきを襲った。

そこからは一方的な展開になった。
クロノの操る魔力の鞭を避け続けるさつき。だが、クロノが杖を軽く操作するだけで変幻自在に動くそれは、普段なら即仕留めれる筈の相手を仕留めれずにいた。
相手の動きが早すぎるのだ。

(……驚いたな。これじゃあ逃げに回られてたら本当に取り逃がしていたかも知れない。
 彼女が交戦を選んでくれて助かった)

クロノは今現在まだ到着していないアースラに先行してこちらに来ているようなものだ。
アースラが体勢を整えるまで其方からのシステム的サポートは望めない。クロノは内心胸を撫で下ろしていた。

だが、実はさつきは逃げ回りながらも期を窺っていた。それは一発逆転の期。
しかしクロノは自分でも言っていたがプロだ。さつきのその様子には既に気が付いている。それを見てクロノは心の中でニヤリと笑った。

(分かっているさ。先からの身体能力からして、恐らく君が本気で跳躍すれば僕の所まで余裕で届くんだろう?
 安全地帯で油断しているこちらを叩くつもりだろうけど)

しかし、それこそが罠。

(さっき目の前で実戦したのにな。"どこから来るのか分かっていれば"いくらでも対処できるんだ。
 もう既に僕の周りにはバインドを仕込んである。君が突っ込んで来た瞬間、それを受け流して反撃、動きが止まったところを拘束させてもらうよ。
 いくらなんでも空中なら、バインドを壊したところで即座に次の行動には移れない筈だ)

準備は万端。予想される展開をシュミレート。そして、

(――今!)

クロノは期を見て魔力の鞭をワザと大振りに操作する。さつきから見ればそこに出来たのは明らかな猶予期間《隙》。

「――っ!」

それを見たさつきが動きを急変。クロノに向き直りながら砂埃をあげて停止する。
さつきの体が停止した瞬間、クロノはその姿がいきなりサムズアップしたかのような錯覚を覚えた。

(っ!? 予想以上に早い!)

一瞬で縮まるであろう距離。だが当事者達にとってその過程はスローモーションの様になる。跳躍しながらも拳を振り上げるさつき。
次の瞬間には既にクロノの懐の中。

(……だが!)

しかしクロノの方も事前に用意していたシールドを展開。

(いくら早くとも来る場所さえ分かっていれば)

そのシールドとさつきの拳がぶつかり合う。

「対処は容易い――!」

その瞬間にクロノはシールドを引き、衝撃を吸収。その勢いをもって体を回転させ乗せた勢いのままその杖を振るう――!

とは、ならなかった。

(……は?)

クロノが認識できたのは、相手の拳の衝撃を吸収しようとした瞬間にもの凄い衝撃が自分の体を走り、次の瞬間再度衝撃が自分の体を全体的に叩いたことだけ。
クロノの意識は、そこで途切れた。


「……あれ?」

自身の行った事に対して付随した結果に、さつきは思わず疑問の声を上げた。
あっさりと吹き飛びすぎだ。素人の筈のなのはであれなのだからと思い思い切り殴った結果がこれだ。
当のクロノはさつきに殴りつけられた瞬間に防御していながらも物凄い勢いで吹き飛び海面に叩きつけられていた。
とてつもなく油断していたのだろうか? とさつきは愚考する。

「えーっと、大丈夫かな……?」

このまま立ち去るのもどうかと思ったさつきだが、次の瞬間近くに現れた魔法陣に顔色を変えた。
展開からしてクロノという少年のお仲間が来るのだろう。

「まずっ」

そうなるとマズイ。ひじょーにマズイ。そう考えたさつきはそこから一目散に逃げ出した。


ちなみに、なのはとユーノは何をどうすればいいのか分からず空気のままずっと固まっていたという。


数分後、救出されたクロノは意識を失ったままアースラへと運ばれ、なのはとユーノは別の局員に案内されアースラへと赴いた。







「ここまで来れば、もう大丈夫……だよね」

1人の少女が壁にもたれながらため息をついていた。
ここは裏路地の奥の奥、とある吸血鬼の居住空間になっている廃ビル。
あれからさつきは自身の工房へと特に何事も無く逃げ込むことに成功した。
あったとすれば道の途中で電線工事していたところからスパナが頭上へと落ちて来たのでそれを弾き飛ばしたぐらいだろうか。急いでいたのでそのまま通り過ぎてその後はどうなったかは知らないが。
しかしまだ追っ手が来ないとも限らないのでそこでしばらく様子を見ることにしている。

「それにしても、遂に公共機関まで出てきちゃったかぁ……これからどーしよー」

はあー、と一際大きなため息を吐くさつき。でも、とその表情が真剣な、しかし少しだけ優しげなものに変わる。

(でも、なのはちゃんは大きな組織が来てくれて安心してるだろうし、これであの子がこの事に関わることも無くなるだろうし、
 それだけは良かったかな)







「嫌です!」

「はい?」

なのはの叫びに、その対面に座る緑色の髪の女性は思わず疑問の声を上げた。
ここは時空管理局の船、アースラの一室。真面目に謎だが何故かバリバリの和室だ。ししおどしまである。
あの後アースラにまで案内されたなのはとユーノは、先ずこの部屋に通された。
その間、バリアジャケットを着たままでは窮屈だろうから脱いだらどうだと言われてなのはが私服に戻ったり、
その姿のままじゃ窮屈だろうから元の姿に戻ったらどうだと言われてユーノが人間の姿に戻ったり、
その様子を見たなのはが「あ、そっか」と呟いたりその呟きをしっかりと聞き取ったユーノが無言で崩れ落ちたりと色々あったが割合させてもらう。

今、ユーノが船の最高責任者に事情の説明を終え、後のことはこちらがやるからあなた達は元の生活に戻りなさいと言う話が出てきたところなのだが……

「なのはさん、それはこの一件から手を引きたく無いということですか?」

「はい!」

「はぁ……」

元気よく頷き返すなのはに、何と言っていいやら分からず戸惑う女性。

「なのは、大体分かる気がするけど、理由、聞いてもいいかい?」

そんな彼女に代わってユーノがなのはに質問をする。

「私、もっとあの娘達とお話したい! あの娘達の事知りたい! このまま終わるなんて嫌だ!!」

やっぱり、と苦笑するユーノ。

「あの娘達……と言うと、他の2組のジュエルシードの探索者達の事よね?
 あの子達の情報も追々出来る限り提供してもらうけど、そこまで固執するようなことがあったの?」

「いえ、そういう訳では無いのですが、何やらほっとけないみたいで……」

艦長の問いにユーノが苦笑しながらも答えるが、その顔はどこか誇らしげだった。
その顔を見たリンディが「そう……」と少々考える仕草をする。

「……ジュエルシードは、次元干渉型のエネルギー結晶体でした。
 ロストロギアは得てして使用法が不明なものですが、これは純粋に魔力的、物理的刺激を与えて発動させた場合次元震を引き起こすということが判明しました」

いきなり始まったジュエルシードの説明に、なのはは聞きなれない単語を見つけた。

「次元震……?」

「ああ、次元空間に発生する地震のような物よ。貴方達も、先日体験している筈よ」

そこで思い浮かぶのは、天に昇る光の柱と共に起きた爆発と振動。

「あれでも、ジュエルシード1つの何万分の1のエネルギーという推測が出たわ。
 複数集めて発動させてしまえば、最悪次元断層さえも引き起こしてしまう程のものよ」

「次元、断層。……聞いた事があります。旧暦の、462年。次元断層が起こった時のこと」

ユーノが眉を顰めながら言う。それを見ただけで、なのははその次元断層という物がどういうものなのか大体分かった気がした。

「ええ。隣接する次元世界が、いくつも崩壊に巻き込まれ、消滅してしまった……歴史に残る大悲劇。
 一度次元断層が発生してしまえば、あれの繰り返しは避けられない」

そこで彼女は表情を悲しそうなものから真剣なものへと変える。

「あなた達が関わろうとしているのは、それ程までに危険なものなのよ。
 しかるべき処理をして、しかるべき場所に保管しなければ、いくつもの世界を破滅に導きかねない程のもの。
 それを分かった上で言っているの?」

だが、なのははその視線を逸らさない。

「あの、私は、世界の危機とか、そういう大きなことはよく分かりません。実感が沸かないと言いますか……。
 でも、ジュエルシードがとても危険だということは分かります。なら、なおさら放っておけません!」

数刻、両者の視線が交差した。
だがやがて、突然艦長の視線が柔らかいものになる。

「……分かったわ。しかし、この一件に関わるのなら私達に協力という形をとってもらいます。
 それに協力してもらうにしても、保護者の方にも話を通して貰わなければなりませんし、
 取りあえず、今夜一晩じっくりと考えて、明日改めてこの話をしましょう」

「! はい!」

パアッと明るくなるなのはの顔。

と、その時なのは達の目の前の空中に何かのディスプレイが開いた。
そこには先程から幾度か登場している少女が写っている。

「リンディ提督、クロノ君が目を覚ましました。幸い気絶したのは全身を襲った衝撃による脳震盪による物だそうで、
 全身打撲といくらかの骨折以外は命に別状は無いそうです」

リンディ、と呼ばれたのはなのは達が先程から話している女性だ。どうやら提督らしい。

「あらそう。良かった……とはあまり言えないけど、報告ありがとうねエイミィ」

「いえいえ。それで艦長、クロノ君がその子達に確認したい事があるって言うんですけど」

「クロノが? いいわ繋げて」

画面が移動し、映し出されるのはベッドで横になっているクロノの顔。

「艦長、すいません。重要参考人を3人も取り逃がしてしまい、更にはこの体たらく……」

「いいのよクロノ。あなたは精一杯やってくれたわ。今はしっかり休んでちょうだい」

「はい……ありがとうございます。
 それで、取りあえず、大まかな事情と会話の後半部分は聞かせて貰いました。
 何やら彼女達が協力するなどという会話になっていた様な気がしましたが、それはこの際置いておきます。
 少し時間を貰っても?」

「ええ、良いわよ」

上司の許可を取ったクロノが(ウィンドウがだが)なのは達に向き直る。

「今から君達には、この事件に関わってからの様々な情報を提示してもらうことになると思うんだが、その前に一つ答えて貰いたいことがあってね」

その声音はさりげないものだが、その目はとても真剣なものだった。なのは達に思わず緊張が走る。

「何でしょう?」

クロノの言葉に応えたのはユーノ。

「僕が戦ったあの子の事だ」

次いで出てきた言葉になのはとユーノが思わず顔を見合わせた。

「僕がそちらに行く前、なのは、君と彼女は一体何をじゃれ合っていたんだ?」

「……へ?」

が、続く言葉の意味が分からずなのはは疑問の声を上げる。じゃれあっていた? どこをどう見たらそう見えたのか。
だがそれに構わずクロノは続ける。

「僕も最初は君達が戦っているのだと思っていた。ジュエルシードを巡って奪い合いをしているのだと。
 しかしだ」

そこでクロノの顔の横に新たなウィンドウが開かれた。そこに写るのはなのはとさつきが戦闘を行っていた時の映像。
今、なのはがさつきの拳をシールドで防ぎながらも吹き飛ばされた。しかしさつきの拳はなのはに届くスレスレで振り切られてなのはには届かない。

「あの拳を身に受けた僕は分かる。彼女の拳の威力はこんなもんじゃ無い。
 彼女が本気を出せば、シールドを割った勢いをそのままに拳を君に当てて戦闘不能にすることも不可能じゃ無かった筈だ。
 いや、それは無理でも当てることくらいは確実に出来るだろう」

「……え?」

思わず呆けるなのは。体の芯から、言い知れぬ感覚が広がって行く。つまり、それは。

「つまり、君達は手加減をして戦っていたという事だ。さあ、その目的を話してもらおうか。
 事と次第によれば……」

つまりは、全て演技。なのはとさつきが敵対関係にあると思わせるための演技であったのでは無いかとクロノは言っていた。
そのメリットは分からずとも、そのような細工をしているのなら暴かなければならない。
だが、事実はそれとは違う。それをなのはは知っている。では、その意味は。

「やっぱり、そういう事か……」

思わずと言った感じでユーノが呟いた。

「何?」

「ユーノ君、どういう事!?」

それにいかぶしげな声を上げるクロノに、詰め寄るなのは。
だがなのはの様子は誤解を解こうと焦っている類のものでは無い。恐らくは彼女も薄々は気付いているのだろう。

「なのは、よく思い出してみて。あの娘が最初になのはを投げ飛ばした時、なのはは何で"投げ飛ばされただけで"終わったんだい?」

「え? 何でって……」

ユーノの問いになのはは口ごもる。

「あの時、彼女はその場でなのは自身を殴って吹き飛ばすか、投げずに地面に叩きつける事も出来た筈だ。
 彼女が言う様になのはを排除する事が目的だったなら、そっちの方が効率が良い。
 それに、投げ飛ばし方も不自然だった。わざと速度に方向性と緩急を付けて、まるで恐怖心を煽るかの様な。」

そうだ。今思えば不自然な部分が多すぎた。

「戦闘に関してもそうだ。当てられる拳をその威力だけ見せ付けて、スレスレで体には当ててなかった。
 それに、彼が出てきた後、彼女が言った言葉。わざわざあんな相手を怖がらせるだけの事宣言して何になる?
 彼女に相手を脅して優越感に浸る趣味があるなら話は別だけど、彼女はそんな娘だったかい?」

そんなことは無い。まだ出会って日も浅いし会ったことなんて数回だが、それだけは分かる。

「更に言うといざなのはが暴走体に捕まってピンチになったら途端に助けてくれた」

思い上がりかも知れない。勘違いかも知れない。しかし、それでもユーノはさつきのあの素早い行動の半分はなのは達のピンチに焦ったが故のものだと思った。
そして、その言葉の意味も分からない程なのはは馬鹿では無い。寧ろ聡い。
なのはの心の震えは全身に広がり、体中が発熱しているかのような感覚に陥る。

「それって、じゃあ……」

なのはの口から、思わず途切れ途切れの言葉が零れる。

「うん、恐らくなのはの考えている通りだよ。
 あの娘の最初の行動に違和感があったから、もしかしてと思ってずっと様子を見てたけど間違いないと思う。
 あの娘の目的は、なのはを潰すことなんかじゃ無かった。なのはに恐怖心を与えて、ずっとこの一件から手を引く様に仕向けようとしていたんだ」

暫し目を見開いていたなのはだが、次第にその顔に湧き上がってきた喜びが表れ始めた。

「ユーノ君!」

やがて喜びに溢れた表情を真剣なものへと変え、

「私、やっぱりこのことから手を引くのは絶対に嫌だ!」

なのはは再度、はっきりとそう宣言した。

「うん、わかってるよ」

そんななのはに返すユーノも、どこか嬉しげだった。

「あー、お楽しみ中悪いんだが……」

「……嘘は、言ってないみたいね」

「「あ………」」

結論。自分達の世界に入る時は、時と場合を考えよう。まる。



「僕は情報の提供に残るから、なのはは先に帰って士郎さん達に話をしておいてよ」

とのユーノの言葉に従ってなのはが先行して高町邸へと帰って来たのがつい先程のこと。
もうとっくに夕飯の時間を過ぎていたので家族全員に怒られてしまった。
それでも皆してなのはの事を待っていてくれており、そこでは一家揃っての遅い夕食が始まった。
そこでなのははその場で話を切り出すことにした。

「あのですね皆さん……実は、お話したいことがあるのですが……」







「流石にもう大丈夫だよね……」

辺りがすっかり暗くなった頃、さつきは工房から外へ出た。
あれから彼女のまわりでは特に変わった動きも無く、どうやら完全に撒いたようだと一安心するさつき。
だがその間彼女が何もしていなかったのかと言うと、そうでは無い。
さつきは今後の対処法を考えに考えていた。その結果……

(管理局って言うんだから、それなりに大きな……ユーノ君の様子や説明だと、かなり大きな組織だと思うんだよね。
 管理局は元々の持ち主のユーノ君に付くだろうから、そんなのに対抗する為には……)

思い立ち、歩を進める先は一つのマンション。





「駄目だよ、ただでさえヤバイやつがいるってのに、
 それに加えて時空管理局まで出てきたんじゃ、もうどうにもならないよ!
 ……逃げようよ、二人でどっかにさあ」

ソファーの横で膝をついて己が主人に訴えているのは、人間の姿を取っているアルフ。
そしてそのソファーの上には、見るからに消耗しているフェイトの横たわる姿があった。
……明らかに、暴走体との戦闘だけが原因では無い。

「……それは、駄目だよ」

「何言ってるのさ! 相手は管理局だよ!?
 本気で捜査されれば、ここだっていつまでバレずにいられるか……」

「………」

否定出来ないのか、黙り込むフェイト。だが、それが決して諦めた訳では無いことはアルフには分かる。

「フェイトだって、今日だってワタシを引き止める力も残ってなかったのに無茶して飛び出してくし……
 あの鬼婆……あんたの母親だって、訳わかんないことばかり言うし、フェイトに酷いことばっかするし……」

「母さんのこと、悪く言わないで」

「言うよ! だって……」

叫ぼうとしたアルフを、フェイトが身を起こして制止する。

「フェイト、駄目だよ寝てなきゃ!」

フェイトのその行動に慌てるアルフ。だがフェイトはその言葉を聞かず、ポツポツと話し始める。

「私ねアルフ、別に私、母さんの為だけにやってる訳じゃないと思うんだ。
 ううん、私は、母さんが喜んでる姿を見たい。私が母さんに褒めて貰いたい。そんな思いで、自分の為に動いてるの。
 私、悪い子だから……」

「フェイ、ト……」

何と言えばいいのか分からず、絶句してしまうアルフ。

「母さんがあんな風なのも、ジュエルシードさえきちんと集めれば良いだけなんだよ。
 あと少し、あとほんの少しなんだ……」

「フェイト……」

呆然と主の言葉を聞いていたアルフだが、その表情を悲しそうに歪めると、真摯な瞳で主に己の思いを伝える。

「フェイト、約束して。あの人の言うなりじゃなくて、フェイトはフェイトの為に、自分の為だけに頑張るって。
 そしたら、私は必ずフェイトを守るから……」

「――うん」

少しの間、沈黙が訪れた。顔を俯かせて一言も発しないアルフに、ソファーに体を預けて目を閉じるフェイト。


…………だが、それはほんの一時の静寂だった。

「!!!」

次の瞬間、アルフの体がまるで電流を浴びたかの様に跳ね上がった。しかし何かのリアクションを起こすでも無く、そのまま固まる。

(この……匂い……!!)

耳の毛や尻尾は逆立ち、瞳孔は縦に開く。
歯を剥き出しにし、指からは爪が飛び出し、髪の毛さえも逆立っているかの様に見える。

「アルフ、どうしたの?」

なにやら尋常では無いアルフの様子にフェイトが疑問の声を上げるが、今のアルフにはそれに応えるだけの余裕も無かった。

(まさか、フェイトがこんな時に……!)

明らかな警戒態勢を取りながらも、必死になって息を潜めている。

「アルフ……?」

(頼む、頼むから……!)

――カツン、カツン……

アルフの耳は、一つの足音がこの部屋に近づいて来るのを敏感に感じ取っていた。

(このまま、このまま通り過ぎておくれ……!!)

――カツン、カツン……

だが、やがてフェイトにも聞き取れるようになったその音は丁度その部屋の前で止まり、

(頼むからさぁ……!!!)

――――コンコン

「フェイト逃げて!」

「アルフッ!?」

ドアがノックされる音と共にアルフの体が跳ね、両腕を振りかぶってドアへと突撃して行った。




「私、ここまで来て手を引きたくなんて無い。もっとあの娘達のこと知りたい」

そんななのはの言葉に対する高町家の面々の言葉は、以外に淡白なものだった。

「ああ、頑張って来い」

と言う恭也に、

「全く、少しは相談してくれればいいのに」

とボヤきながらも反対はしない美由希。

「後悔しないようにするんだぞ」

とエールを送る士郎に、

「………」

ただただ微笑み、頷く桃子。
確かに魔法の事やユーノの正体は話してないとは言え、話せる限りの全てのことを話したなのはは、
そのあまりにアッサリした反応に面食らってしまった。

「いいの? もしかしたら危険なことかも知れないのに……」

なのはのその言葉に、高町家の面々は顔を見合わせると皆一斉に笑みを浮かべる。
それは微笑みであったり、苦笑であったりと様々だが、誰一人悪意ある笑みを浮かべたりはしていない。

「あのななのは」

一家を代表して、士郎が話し始めた。

「ああ、確かに心配だ。大いに心配だ。もし、今なのはが少しでも迷っているようなら……
 もしなのはが昨日までのなのはだったら、俺達はどうあってもお前を止めただろう」

黙って話を聞こうとしていたなのはだったが、その言葉に思わず声を上げた。

「私が迷ってたの、気付いてたの……?」

だが、その言葉には全員が苦笑を浮かべる。
その意味するところに気付いて、なのはは顔を赤らめて若干俯いた。

「まあ、そういうことだ。
 でもまあ、どういう訳か昨日の夜からお前はいい顔になった。
 そして、ああも堂々と自分の意思を伝えられたんだ。どうせ自分がどうしたいのかも、もう気付いてるんだろう?」

士郎の言葉に、なのはは俯いていた顔を上げて頷いた。
アースラから高町家に戻る途中、家族を説得する必要があると考えた彼女はその事について考えていた。
自分が手を引きたくない理由。自分がどうしてそこまであの娘達に固執するのか。どうして放っておけないのか。
答えは案外すんなりと出てきた。

「うん……私、あの娘達と友達になりたい!」

その言葉に、高町家の一同は一斉に嬉しそうな顔になり、頷く。

「なら、もうお前を引き止める事は俺達には出来ない。
 もう一度言うぞ。頑張って行って来い。後悔の無いようにな」

「―――うん!」

その後各々がなのはに再度励ましの言葉を送り、高町家の夕食は日常に塗り潰されていった。


――――一家団欒を楽しむ高町家のリビングに置かれたテレビから、一つのニュースが流れていた。

「海鳴動物園から、一頭の―――が逃げ出しました。付近の住民の皆様は、もし発見しても決して近づかず、即座に近くの交番へと……」





あとがき

うん、何て言うか……本気で書いたら1話1、2日で書けるもんですねやっぱり。やっぱさっちん出てると作者のテンションが上がるから早いわ。
途中でフリーセルに浮気することも少なかったし(待

しかし前回の暴走体のやらかした事について皆がスルーすぎてワロタ。何かグダグダだった漫才の方が何故か大人気。どうしてこうなった……
そして暴走体の倒し方に対する米が一切無し。よし。お前ら全員にデジモンアドベンチャーを一話から全部見ることを要求する。
そして何よりさっちんの信用の無さに全俺が泣いた。ちゃんと伏線引いといたよね……?

さて、やっと本編入ってまいりました。ふう、長かった。
とか言っておきながら次の話繋げで更に次の話はほぼネタな訳ですが(待
逃げ出した○○○がやらかしてくれます。実は無印で一番書きたかったのこれだったり(ワラ
取りあえず本当の意味で現実逃避をそろそろやめないとマジでやばいので次の更新はいつになるか分かりませんが……多分2週間ぐらい無理だよなぁ……

そして夏になってとりあえず一言。月厨マジで自重してくれ。
別に型月蹂躙されてもいいじゃんそういう作品もあってもいいじゃん出て来た瞬間から粘着してボッコするのホントに止めてくれそういう作品も読みたいんだから。

……とかこんな作品書いてる作者が愚痴ってます。
でもまあ実際この作品も成長してく側の方が下な方が展開的に持って行きやすいからそうなってるだけな訳で。
他の人から御指摘頂いた通りバリアジャケットの強度的な問題と詳しく描写されてないさっちんの戦闘能力でなのは達と互角とかなのは達に手も足も出ないとかも簡単に出来ちゃう訳で。
……うん。何というか。すいませんでした。

何か疲れてるのかな……? ついカッとなったのかついつい長々と愚痴ってしまった。

あとお風呂イベントについてはこれ以上の公開はいたしませんwwwww^^


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