時は来た。
六年の歳月をただひたすら戦闘訓練とアルトの情操教育と拡大再生産(=株)に費やし、やっと迎えた入学。
とはいっても、なのは達と仲良くなって、三年後の事件に備え続けるだけの日々。
アリサとなのはの喧嘩イベントにも介入して、不思議系属性を手に入れた。流石に怪我は放置したくないので、苦渋の決断で『おまじない』という形で回復魔法を使った。アリサに追及されたが。
アルトもいい感じに育ってきている。なんでも興味を持つ。人見知りしない。明るい。そして頭がいい。人気者になる要素をこれでもかと持っている。力加減も教えた。今まで怖くて友達を作ることを禁じていた、というか外界と隔離していたから仕方は無いとはいえ。やはり人とつき合うのは重要だ。
対する私は、一歩引いてみんなを見ている。たまにすずかと雑談したり、オセロをしたり、将棋をしたり、チェスをしたりしている。つまり、そんなスタンスだ。他人から話し掛けられない限り自分から話はしないし、アルトが何かやらかしたりしない限りアクティブにはならない。この前風に飛ばされたプリントを追って二階の窓を飛び出したりした時とか。五点接地法で普通に着地した時、男子連中が真似をしないように説得するのには骨が折れた。飛び降りたアルトではなくて、私が骨を折るとはこれ如何に。
とまあ、アルトがムチャクチャするのをカバーするのに私がフォローに回るという形を取っている。屋敷にいたころはとっさに行動するなんてことがなかったから仕方がないのだろうが。常に加減して行動するように言ってはいるものの、『とっさ』の行動にそんな理屈は通用しない。普通の人間にもあるだろう、無意識のリミッタが解放された『火事場の馬鹿力』が。そんな訳で、アルトは恐るべきおてんばという称号を密かに手に入れていた。
「どうにかならないかしらねぇ」
「どうしようもない。対策が取れんし、なにより実害がない。不思議なことにな」
私と担任はタメイキをつく。
アルトのおてんばは、物的損害も人的被害も『何故か』ないのだ。一度派手に酷い目に遭えば少しは自重するだろうが、どんな過酷な状況でも『酷い目』には遭わないのだ。これが破壊神の力だというのか。
「みんなエルテさんみたいにいい子ならいいのに」
「私だらけでも疲れると思うが。今度ヴァインでも飲みながら愚痴をでも叩き合おう。シュタインベルガーの1995年物のカビネットが手に入ったから」
「はぁ、あなたと話してると本当に小学生なのか忘れてしまいそうよ……」
判らないでもないが。昼休みに理科準備室で茶をしばきながら愚痴をこぼす教師と生徒。
ちなみに、アルトから眼を離すわけには行かないのでバックアップとして一人を教室に置いていたりする。皆様方の期待を裏切らず、しっかり騒ぎを起こしている。やれやれ。
「ふぅ。私はここらで失礼させてもらおう。時間も無いことだし」
「ええ、ありがとう。でも、お酒はダメよ?」
「後ろ向きに善処する」
いつの間にやら恒例となってしまったお茶会。精神的には、確かに先生よりは年上だが、何故こう毎日愚痴を聞く羽目になったのやら。
交代。担任とお茶会をしていた私はトイレで姿をくらまし、バックアップに回る。といっても、暇なので延々とカートリッジを量産しているのだが。
この躯は便利だ。あらゆることを同時にできる。今だってそう、カートリッジを造りながら全国で働き、ネットで株をいじりながら戦闘訓練、ぞして授業を受けているフリをしてアルトを監視。他にも色々している。暇な私がいないくらいに。
時々、なのは達とつるんで翠屋に行ったりお茶会をしたりすることがある。
アルトも基本的に、私達といることが多い。
高町家では、ハンナがいなくなった理由が私達の存在で理解できたとか。誕生日の矛盾に気づかないまま。
どたばたしていたが。充実していて平和だった。
そして、三年後。
運命は回り始めた。
《あとがき》
短けえ。
つっても、繋ぎだし。
アザリン砲=本体が惑星規模の馬鹿でかい波動砲
アルトの名前の由来は車じゃないんだな。
音楽でもない。
キーボードに……Alt
んで双子だからってんでアルトに似たような読みでいいのないかと思ったら、昔やったゲームでエルテ・ティート(本名:リュクリシア・ニーベル)って子がいたじゃないですか。詳細は分裂ガール参照。
エルテが何で何人もいるのか、その由来が、ってタイトルでネタばれ。
エルテはマルチタスクの思考の一つが躯を持っているような状態です。クライアントサーバ型ではなく、完全な分散型。でも意識は一つで、その一つの意識がマルチタスクで躯を操作しているような形です。正確には違うけど。躯が成長しても、各エルテはイコールで結ぶことができます。エルテの思考リンクはどんなに遠い別次元に行っても切れません。まさに全一『一は私、全は私』という状態。説明が判りにくくてごめんなさい。
ミサカネットワークは一応個があるみたいですから似て非なるものです。他は知りませんのでご容赦を。
《追記(言い訳タイム)》
Altが『オルト』なのは知っていましたが、詳しくない奴に教える時に(°Д°)ハァ? とよく言われるので「『アルト』って書いてるキーだ! それが『オルト』じゃ!」なんて説明するのです。口頭による説明は難しいです。私は英単語とかもある程度ローマ字読みして覚えるタイプなので……。(°Д°)ハァ? な連中はちゃんと正しい知識を以って修正しています。
Wikiでは「アルトと呼ぶものもいる」ってだけなので真似しないように。
まあ、ふと眼に入って何となくつけただけなんですがね。英語のGhoti(フィッシュと読む。私はゴチと読んだ。この単語はジョークで意味は無い)みたいなもんです。
混乱させてすみませんでした。
Oct.16.2009
修正と追記をば。