八神家で、私は『闇の書』こと『夜天の書』の復元方法を模索している。同時に、はやてから闇の書に流れる魔力バスをバイパスして、負担を軽減している。
「エイダ、プログラムに穴は?」
『幾つか存在しますが、恐らくは罠です。ビーコンプログラムを突入させたところ、その全てから応答が途切れました』
『アドミニストレータ権限が無い限り、起動前の侵入及び解析は不可能と思われます』
『八神はやてに協力を求めることを提案』
床に散らばった30mm弾頭、アヴェンジャーから次々に声が発せられる。もし暴走した時のバックアップとして、解析用の並列コンピュータとして、試しに5個持ってきたのだ。
「……『アレ』は通用しそうか?」
『侵入さえできれば可能だと推測されます』
『『例の物』の諸元がありません。概要通りの性能ならば可能です』
『恐らく、キャパシティには問題ありません。人間を数十人エミュレートできる性能があります』
2個はAIを停止して処理専用機となっている。このためだけに、全ての魔法プログラムをデリートして処理に回している。再調整が面倒だが、これからこういう作業に必要だから、専用機として機関に置いておくことも考えている。
「起動すればどうだ? 管理者権限は要るか?」
『侵入にアドミニストレータ権限は不要ですが、管理者の許可があれば安全です』
『八神はやての協力を要請』
『時を止めて消滅させることを提案』
時折物騒なことを提案されるが、条件は概ね『アレの完成』『闇の書の起動』『はやての協力』で固まってきている。失敗した時は、はやてを取り込む前にザ・ワールドで時を止めてジオサイドキャノンで転生プログラムの発動の暇もなく消し飛ばす、という力技プランも存在する。
「よし、ここまでだ」
アヴェンジャーを一つだけ残して転送する。機関に送り、収集したデータを『アレ』に反映させるのだ。
『ジェイルに任せればいいと思うのですが』
「奴は天才だが、生命操作にしか興味がない。やれと言えばやるだろうが、ALにどれだけ興味を示すか」
『人工『生命』なのに、興味がないのですか?』
「あれは人間をいじるのが好きなんだ」
ジェイル・スカリエッティ。StSの悪役。だが、私は奴が嫌いではない。戦争が資源と血を消費して人類を発展させたのと同じ。ジェイルが最高評議会経由で放出している技術が、医療や科学に反映されているのは確かなのだ。
目的のために屍の山を築くのは、よくあること。私の大切な人が幸せであれば、私はその犠牲に眼を瞑る。しかし、その犠牲が『犠牲になる必要がなかったら』?
彼の『失敗作』を回復して、機関で働いてもらっている。何か思うところがあったのか、最近はジェイルも回復に協力してくれることもある。どうも、私とつきあいだして、いや、私をいじってから『実験材料』に対する考えが変わったようだ。『ガルディ』のプランを提案したのもジェイルだ。
そう、私は覚醒して割とすぐに、ジェイルと接触していた。色々な思惑とともに。
『ジェイルが失敗することで人材が増えるのは嬉しいですが』
「自己満足に過ぎないことは判っているというのにな」
最近になって、ジェイルの研究所と機関の付近にできたもの。幾つもの墓標には、真っ白なオオアマナが咲き乱れている。
「えるてー、ごはんやよー」
リビングから、はやての呼び声。念のため、はやての誕生日まで封印に手はつけないが、それまでには対策を完成させる。
「いまいく」
闇の書を元の場所に戻し、溜息を一つ。
「うまいな」
はやての料理はうまい。私が素直に称賛できるほどには。
「えへへ~。えるてにこの味が出せるかな~?」
「晩飯は任せろ。私が全力を以て見返してみせよう。伝説とまで謳われた、我がシチューを」
「楽しみにしとるよ~。で、どうなったん?」
最近は、はやての許可を得てずっと闇の書の解析を行っている。もう、X-dayまで触れる気もないが、一応警戒はするつもりだ。地球もろとも全てを吹き飛ばされてはかなわない。猫姉妹は私をただの一般人と思っているらしく、天空からの監視でも怪しい動きは見えない。
「今のところ問題は無い。起動するまで解析は不可能という点を除けば」
欺瞞工作は万全だ。こんな危険極まりない会話でも、監視者にはたわいもない世間話をしているように聞こえるだろう。
「ちょ、それ、問題やないの?」
「起動してから、はやての管理者権限を借りて中に侵入。管制人格を叩き起こし、協力さえ得られれば、五人のベルカの騎士がはやての家族になる」
それを聞いて、はやてはいつも通りどこかの世界に旅立つ。
「家族か~ええな、ええな、えるても含めて6人や。しかも騎士やて。マジックナイトが6人も! 伝統のベルカ騎士団~……ん? ベルカ騎士団……?」
何か、気になる単語があったのか、はやては現世に戻ってきた。
「なーなー、ベルカの騎士、なんよね?」
「ああ」
「ACZERO……5もやばいような」
『ベルカ地上部隊を叩き潰せ』『ベルカが逃げていくぞ!』『ざまあみろ! ベルカの馬鹿野郎め!』……
TVが一刀の元に両断されかねない。
「……隠すべきだな。特に、ゼロは」
その後、AC6でルーデルプレイや二葬式洗濯機に挑むなどして日は暮れていった。
《あとがき》
ヴォルケンリッターにACZEROとAC5をプレイさせるなんて恐ろしいこと、私にはできない!
短編のつもりなので短いです。でも番外ではなかったり。
夜天の書修復プランが全力実行中。まさかのスカさん登場。JS事件のフラグです。
波紋は実は……おっと、誰か来たようだ。
代わりまして、解説です。人が水の上に立つのは、謎です。(Japanese Tradition風に)
鍋の熱に関しては、謎です。
とらハは持ってるのにやってないんですよぉ~
時間なくて。
ヒントは、『エルテは嘘つき』『描写をよく見てみましょう』。
答えは気が向いた時にでも。
エルンスト・ガーデルマン
通称、シュトゥーカ・ドクトル。
『彼』の最後の相棒。
彼は、終戦時に彼の背中を護っていた。(ACZERO風に)
ガルディちゃんは一番最初に出すことが決まっていたのだよ! あ、ガーデルちゃんだった。
怪話、これほどぴったりな単語があるだろうか!
ゔぃえ様、よろしければ使わせていただきます。
二葬式洗濯機は誤字に非ず。真緋蜂改? 一瞬だけ会うことを許されましたよ。