本編とは関係ないですよ。
「フェイト! 早く逃げよう!」
アルフがフェイトの隣で叫ぶ。
崩壊は既に止められない程まで来ていた。
逃げなければ、二人は死んでしまう。
だが崩壊は、二人を引き離した。
「フェイトっ!? フェイトぉっ!!」
遠くへと離されたアルフがフェイトを呼ぶ。
だが、フェイトは地震の影響で上手く立つ事も出来ず、ただしがみ付いていた。
「フェイトちゃんっ!!」
そこに、声を掛ける者がいた。
フェイトが顔を上げると、タクシーに乗ったなのはが身を乗り出し、フェイトに向けて手を伸ばしていた。
「乗ってっ! 手を伸ばしてっ!」
フェイトはその手を見る。
次にプレシアの落ちていった地面を見つめ、僅かに逡巡した後、フェイトはなのはに向けて飛んだ。
そして手を伸ばす。
なのはは伸ばされたフェイトの手を、しっかりと握った。
プレシアに弾かれた手は、なのはによって繋がれた。
なのははフェイトを引き寄せ、腕の中にしっかりと抱いた。
「急いで脱出するよ。フェイトちゃん!」
「……はいっ!」
フェイトもなのはの腰に手を回して、しっかりと抱きしめた。
「八神さん! 出して下さい!」
「おおよ! まかせとき!」
なのはの言葉に従い、タクシーの運転手は車を発進させる。
「あのアルフさんも拾って行くで!」
「あ、お願いします」
フェイトは思わずそう頼んだ。
ドリフトをかましてアルフの所まで辿り着いたタクシーは、アルフを中へ引っ張り込む。
「さあ行くで! しっかりつかまっときや!」
タクシーは崩壊を始めている時の庭園の中、揺れる地面をモノともせずに進んで行く。
「あの……どうしてこんなところに車が……?」
フェイトは運転手に疑問を投げ掛ける。
運転手は前を向いたまま、左手の親指をグッと立てて見せる。
「野暮な事は言いっこ無しやで、お嬢ちゃん」
「は、はあ……」
「移動を望む人がいるならば、何処へでも駆けつける。それこそがわたしのポリシー」
「そうなんですか」
フェイトは凄いなぁ、と感心した。
どうやってここに来たのかとか、今まさに地面は滑落して行っているのに、どうやって走っているんだろうとか。
そんな事を思ったりもしたが、何だか凄い事をやってるんだなと納得した。
だがそんな事を思った時、前方で天井が崩落し、道が塞がれた。
「危ないっ!!」
フェイトは叫んだ。
このままではぶつかる。
そう感じた。
だが……、
「跳ぶで。シートベルトはしっかりな」
「え?」
タクシーはウィリーを初め、障害物となった天井の瓦礫を乗り越えていく。
そのまま瓦礫の山をジャンプ台にして、タクシーは空高く舞い上がった。
「ええええっ!?」
フェイトは目を見開く。
自分の知識では、車にこんな事が出来るとは知らない。
だがこれで終わりでは無かったらしい。
僅かにバウンドしただけのタクシーはそのまま走り続ける。
今度は先程タクシーの上に瓦礫が降って来た。
「まだまだぁぁ! わたしのターン!」
タクシーは今度はスピンターンを繰り出し、落ちて来る瓦礫を弾き飛ばす。
それだけではなく、タクシーは今度は壁走りを繰り出した。
「嘘おおっ!?」
フェイトは自分の常識が間違っていたと、根底から覆された気分だった。
おまけにこれだけ動いているのに、シートベルトをしている自分達はほとんど揺れを感じないのだ。
このベルトに衝撃や重力を緩和するような魔法が掛かっているとしか思えない。
いや、そうだとしても、これだけの動きで発生する衝撃をほぼゼロになど出来る筈が無い。
しかもそれを運転手はこともなげにやっているのだ。
「フッ……トロパイオンの塔の頂に立つ、車の王やったわたしに、この程度の悪路なんて目や無いで!!」
ニヒルに笑う運転手に、フェイトは首を傾げる。
「あの、トロパイオンって何ですか?」
「速さを競う若者達の遊びや。ま、わたしからしたら、皆車の良さにも気付かないヒヨッコなんやけどな」
でももうわたしは引退したしなぁ、と運転手は語る。
速さを競うという言葉に、フェイトの魂に火が付く。
「あの、それ私にも出来ますか?」
「勿論や。でも18歳になってからな。
免許取ってから存分に目指せばええよ。
その時はわたしがみっちり教え込んだるわ」
「はいっ!」
フェイトはその顔に喜色を浮かべる。
タクシーはそのまま走り続け、時の庭園を飛び出し、高次空間へとその身を投げた。
勿論、高次空間内もそのまま走り続けたのだが。
こうして、アースラまで到着したなのは達は、なんとか時の庭園を脱出したのだった。
料金に関しては、なのはが運転手に無料券を渡してなんとかなった。
「おおきに。また利用してな」
去り際に運転手はそう言って、タクシーは走り去って行った。
あとがき
もうはやては出てこないと思うから、リクエストにお答えしてみました。
一時間も掛からずにあっさり書けました。
だけど正直良く分からなくなった。
嘘みたいだろ? このはやて、車で学校の外壁登れたりするんだぜ?