なのは達はアースラへと帰還した。
アースラも同時期に攻撃を受けていたらしく、あちらこちらで人々が復旧作業のために、忙しく走り回っていた。
色々な事が起きたため、なのは達にも疲労などが溜まっていた。
そのため、再びなのは、ユーノ、クロノ、リンディが集まったのは、復旧作業が終わる三時間後だった。
「それでは改めて、なのはさんとユーノ君にはお礼を言っておきます。
お二人はそんな事はいらないと仰っていましたが、形式的なものですので、どうか受けて頂けるとありがたいです」
「そう言われるなら……」
リンディとしても、民間人に闘わせた上に、礼の一つも無いままでは、艦長としての面子が立たないのだろう。
なのははそれを受ける事にした。
復旧作業で忙しかったリンディの膝に、僅かに埃が付いている事には誰も何も言わない。
「先程の魔力攻撃については、貴女達も気になっている事でしょう。
あれは、別次元からの次元干渉によるものです。
それによって、我が艦のシステムに多少の異常が見られましたが、現在は復旧しています。
人的被害はありません。
これを行った者、事件の大元についてですが、クロノ、何か心当たりは?」
リンディが壁際に立っていたクロノに声を掛ける。
クロノははい、と返事をして、壁から背を離す。
「エイミィ、モニターに情報を映してくれ」
『はいは~い』
通信管越しに、エイミィの軽い声が聞こえる。
それと同時に、なのは、ユーノ、リンディが座っていたデスクの中央に、球体のモニターが現れる。
そこには、一人の女性が映されていた。
「あら?」
リンディが不思議そうな顔を浮かべる。
クロノは言葉を続ける。
「そう。僕達と同じ、ミッドチルダ出身の魔導師『プレシア・テスタロッサ』です。
専門は次元航行エネルギーの開発。
偉大な魔導師でありながら、違法研究と事故によって、放逐された人物です。
管理局のデータバンクにある登録データと、先程の魔力波動も一致しています」
「テスタロッサって、フェイトちゃんと同じ……」
なのはがプレシアの顔を見つめながら呟く。
「あの時、あの攻撃に、母さんって言っていた……」
フェイトのすぐ近くに居たなのはは、確かにその言葉を聞いたのだ。
「親子……かしら?」
リンディが厳しい目付きをしながら、静かに呟いた。
「でも……いえ、ここで考えていても仕方が無いわね。
エイミィ! プレシア女史について、もう少し詳しいデータをお願い。
放逐後の足取り、家族関係、その他何でも構いません。
私の権限で、管理局へのデータバンクへアクセスして下さい」
『分かりました。直ぐに調べますね』
エイミィも気になっていたようだ。
その声には、わくわくとした気持ちが漏れている。
リンディはエイミィに告げる。
「調べたらこちらへお願いね」
『分っかりましたぁ!』
エイミィは元気よく返事をした。
「まずはこれを見て下さい」
エイミィの声でモニターの映像が切り替わる。
球体モニターの中には、宙に浮かぶ星のようなモノが映される。
「プレシア・テスタロッサ。ミッドの歴史で、26年前前は中央技術開発局の第三局長でした。
ですが、当時彼女の開発していた、次元航行エネルギー駆動炉『ヒュードラ』使用の際、
違法な材料をもって実験を行い――」
エイミィの声が段々と沈む。
「――失敗」
モニターの中の、ヒュードラと呼ばれた物の表面に、罅割れが生じる。
その罅割れはあちらこちらへと広がっていき、内側から光が段々と漏れていく。
そして、ヒュードラが音を立てて、自らの重みでガラガラと崩壊していく。
最後には、ヒュードラは内部から爆発して弾け飛び、後には何も無くなった。
「これは……」
なのはがその光景に絶句する。
「サルベージしたヒュードラの最後の映像です」
「そう……」
リンディが顎に手を当てる。
「あの、艦長?」
「……ああ、エイミィ。私の事は気にせず、続けてちょうだい」
「あ、はい。それでは続けます。
結果的に、中規模次元震を起こした事が元で、中央を追われて、地方へと移動になりました。
随分もめたみたいですね。
失敗は結果に過ぎず、実験材料にも違法性は無かった、と。
辺境に異動後も、数年間は技術開発に携わっていました。
ですが、しばらく後に行方不明になって、それっきりです」
「そうか。エイミィ、ありがとう」
クロノがエイミィに礼を言う。
エイミィもクロノに、軽くウィンクをして返す。
リンディは、エイミィが言わなかった事について尋ねる。
「家族と、行方不明になるまでの行動は?」
エイミィが顔を顰める。
「その辺のデータは、きれいさっぱり抹消されちゃってます。
今、本局に問い合わせて、調べてもらってますので……」
「時間はどれくらい掛かるの?」
「一両日中には、と……」
「そう……」
エイミィの言葉に頷き、リンディはブツブツと呟く。
「プレシア女史もフェイトちゃんも、あれだけの魔力を放出した後では、早々動きは取れないでしょう。
その間に、アースラのシールド強化もしないといけないし……」
黙って聞いていたなのは達に、リンディは声を掛ける。
「なのはさん達はどうされますか?
貴女達は民間人だと言いました。
ですから、私達がなのはさん達の行動を制限する事は出来ません。
私としては、ここに留まって頂きたいのですが……」
「そうですね……」
なのはは僅かに思案し、リンディに答える。
「私は帰ろうかと思います」
「……えっ?」
リンディが悲しげな声を出す。
「ケーキの材料が少なくなって来ましたから。それに、家にも一度帰りたいので……」
「あ、そうですね」
リンディがホッと胸を撫で下ろす。
「それに……」
なのはがモニターに目をやる。
「私をこれ以上、この件に関わらせたくないのなら、こんな物は見せないでしょう?」
「……」
リンディは何も言わなかった。
「それでは、私は一度帰りますから」
「え、ええ……」
なのはは立ち上がり、ユーノを連れて会議室を出て行った。
後に残されたリンディは、再び表示されたプレシアの顔を見つめる。
「プレシア女史……。いったい、貴女に何があったというの……?」
リンディの問いに答える事も無く、映像の中のプレシアは静かに佇んでいた。
あとがき
前回の最後は、ほぼ無かったことにされたようです。
誰も見たく無かったみたいですね。
多分、次はフェイト達がメインで、なのはさん達は出てこないと思います。
気になったレス返しです。
ここで取り上げられなくても感想は全て読んでいますので、取り上げられなくてもあしからず。
>沖縄のアメリカ軍の中やケーキを作り上げ売っている店のケーキをリンディが知ったら?
まあ喜ぶでしょうね。
でもなのはさんのケーキの方が甘いと思います。
>前回コメでフェイト=大酒呑みって書いたら、無性にそれを書きたくなった
だめだ、なのはさんのほうを含め受験終了まで我慢だ!
待ってますからね。
>俺もなのはさん(32)に調教されているのか?!
調教ではありません。矯正です。
>ってことはA'sのなのはさんを助けたときのフェイトさんの台詞は決まったようなものですね?
>ここのフェイトさん、原作通りハラオウン家に養子になるのではなくNANOHAさんの養子になりそうな…。
A’sでの介入時には「友達だ!」→「娘だ!」みたいな?w
>「友達だ!」が「娘だ!」になるとか言う以前に、ここのなのはさん(32)がヴィータにボコられるシーンが全く想像できないのですが;
A's編を書き渋られる理由を垣間見た!
今のままでは始まらないんですよね。
続ける気もありませんし。
だからA’sは無いと思って下さい。
>しかし大人なのはと子供フェイト…フェイトにとって人生初の友達はできずか。
そうですね。
でも他の関係が出来るかもしれません。
友達は……ユーノとかがいますから大丈夫でしょう。
>リンディさん、提督辞めれば
人命よりも任務よりも、ケーキが大事なら管理局辞めて一般人になってケーキショップでも通ってろよ。
息抜きを入れようと思っただけのですが、不快にさせてしまったのなら申し訳ありません。
>クロノ介入の辺りから管理局アンチな展開に陥って、ガッカリさせられてしまう作品は多いですね。
うちのなのはさんは、基本的に時空管理局の事なんてどうでもいいので、嫌うなんて疲れるような事しません。
>ここのなのはさん(32)がいくら無茶なことをしても納得できそうなのは何故だ?
最初からNANOHAですから。