暗くなり、街灯の明かりで街が照らされるころ。
一つのビルの屋上に、フェイトとアルフは降り立った。
「大体この辺りだと思うんだけど、大まかな位置しか分からないんだ」
「はあ……。確かに、これだけゴミゴミしてると、探すのも一苦労だあね」
フェイトの言葉に、アルフがうんざりとした溜息を洩らす。
狼が素体のアルフは、その耳や鼻で、要らないものを捉え過ぎてしまうのだろう。
フェイトは、斧へと変化したバルディッシュを掲げ、魔力を先端に灯す。
「ちょっと乱暴だけど、周辺に魔力流を撃ちこんで、強制発動させるよ」
「あ~待ったっ! それ、あたしがやる」
フェイトが魔法を発動させようとしたとき、横からアルフがそれを制止する。
「大丈夫? 結構、疲れるよ?」
「このあたしをいったい誰の使い魔だと?」
フェイトの心配する声に対し、アルフは挑発的に返す。
その言葉に、フェイトはバルディッシュを下げる。
「じゃあ、お願い」
「任せて。そんじゃあっ!!」
アルフが気合いを入れると、足元に橙色の魔法陣が浮かび上がる。
魔法陣から光が溢れだし、天へと昇る。
すると、月が隠れ、雷雲が辺りに立ち込める。
雷があちらこちらに降り注ぐ。
そしてある一点に雷が落ちると、アルフが発した魔法とは異なる、青い光が天へと昇る。
「見つけた!」
「フェイト! 誰かが近くにいるっ!」
アルフの言葉にフェイトが目を凝らすと、何者かが発動した結界が辺りを包んでいく。
「これは……」
フェイトの脳裏に、一度だけ会ったあの人の顔が浮かぶ。
「アルフ、注意して。多分、以前言ったあの人だ」
「本当だったのかい!? 前の時に現れなかったから、てっきり管理局とかとは関係ないと思ってたんだけどね」
「多分、それはアルフの考えてる通りだと思う。あの人は、管理局だとか、そんなものじゃなかった」
敵を前にして、デバイスを待機状態にする人が、管理局員な訳がない。
いや、魔法を知っているものからすれば、自殺行為でしかないのだ。
それなのに、あの人はそれを行った。
まだ魔法に触れて日が浅いに違いない。
話からして、おそらくは現地協力者。
単独でジュエルシードを集めているはずだ。
「急ごう。向こうも近付いて来てる」
「ああ!」
フェイトはバルディッシュを構え、飛び立った。
なのはは風呂から上がると、一直線にキッチンへと向かった。
冷蔵庫からヱビスを取り出して、立ったまま缶を開け、グイッと一気飲みした。
冷たいビールが喉を流れていき、胃に入るとカッと熱を帯びる。
全身へとその熱エネルギーが循環して行き、身体から力が泉の如く湧き出て来る。
そんな感覚を、なのはは味わっていた。
これがあるからこそ、酒は止められないのだ。
「ああ、美味しい……」
心の底からの言葉である。
三日も飲めなかった。
その上、風呂上がりで身体が水分を欲しているのだ。
もっと飲まなければならない。
なのはは冷蔵庫を開け、次はザ・ブラックを取り出し、プシュッと缶を開ける。
一息に飲み干すと、そこではぁっと酒気の混じった息を吐く。
「これが……有頂天なんだね……」
なのはは悟った。
この喜びは、まるで天にも昇る程の心地と言っていい。
この三日間の苦労を考えると、尚の事酒が美味い。
誰にも邪魔はされない。
美由希はもう連休が終わって仕事に行った。
ユーノは最近は、翠屋の店頭で客引きをやっているのだから。
そんなことを考えていると、なのははある事に気付いた。
「そういえば……レイジングハート」
『何でしょうか?』
「バリアジャケット、変えようと思うの」
『分かりました』
レイジングハートが赤く煌めき、なのはの身体がいつもの翠屋の制服へと変化する。
「もうね、あんな思いはしたくないの。だから、腰の周りにコルセットを付けてくれる?」
『分かりました』
なのはの腰周りに、黒いコルセットが増える。
「ああ、それと、スカートも変えよう。
お父さんみたいにズボンにしようかな。
宙に浮くこともあるし、こんなの誰も見たくないだろうしね」
『わかりました』
なのはが着けている赤色のスカートが、なのはのイメージに合わせて、藍色のジーンズへと変化する。
『これでよろしいでしょうか?』
「ん……」
なのはは部屋の中を歩き回り、軽く体操をする。
動きに支障は無いと分かると、冷蔵庫から琥珀を取り出してから椅子に座る。
「いいね。次からはこれにしよう」
『それでは、次からはこれを、バリアジャケットとして登録します』
「うん」
そしてバリアジャケットを解こうとしたとき、ジュエルシードが発動する感覚をなのはは捉えた。
なのはの周りの物以外が、灰色へと変わる。
そのとき、ユーノから念話が届く。
『なのはさん、ユーノです』
「ああ、ユーノ君か」
なのははそれに応じる。
『分かっているように、ジュエルシードが発動しました。
しかも、魔力を撃ちこんで、強制的に発動させたようです。
これでは例え封印出来ても、周りに出る被害が大きすぎます。
ですから、周辺に被害が出る前に、結界を張りました。
僕は結界の維持をしなければいけないので、ここから動けないんです。
ですから……』
「うん、分かった。私が封印に向かうよ」
『お願いします。
これはおそらく、貴女の言っていた、フェイトという子がやったはずです』
「そう」
なのははユーノとの念話を切る。
「フェイトちゃんが来たんだ……」
なのはは琥珀を気付けに飲み干し、立ち上がった。
「行こうか、レイジングハート。フェイトちゃんに会いに行かなきゃ」
『All right』
そしてなのはは、相棒と共に家を飛び出した。
最近は誰かが結界を張るものだから、移動にタクシーを使えないのが悩みである。
あとがき
フェイトとの戦いはあと三回。
いったい何をなのはさんは言うんだろうか。
書いてて自分でも分からない。
前回、なのはさんはユーノをかなりパシリにしました。
いったいどうやったのか。
それは、なのはさんとユーノだけが知っています。
なのはさんに対する愛があれば、真実に辿り着けるのではないでしょうか?
私はまだ辿り着けません。
気になったレス返しです。
ここで取り上げられなくても感想は全て読んでいますので、取り上げられなくてもあしからず。
>(このコメントは妄想とアルコール150%で出来てます)
妄想1、アルコール149%でよろしいか?
>だが相変わらずこの美女なのはさんはいい。
ありがとうございます。
>やっぱり綺麗な女性は18過ぎてからだよね!32にもなると外連味とかがでてなおよし。可愛い人である。
綺麗、というとやはりそれ位は要りますね。
それ以下だと、可愛いが先に来ますから。
>なのはさん(32)への御見舞品は『養○酒』なのかなぁ?www
森伊蔵辺りが喜ばれると思います。
>なのはさんをデートに誘いたいんだけど、酒代にいくらぐらい予算組めばいいのかな?^^
なのはさんは安酒でも心が籠もっていれば喜んでくれるでしょう。
ですがデートに誘う以上、なのはさんに飲んで貰い、喜んで貰いたいと願うならば、それ相応の酒を用意するべきでしょう。
>もしかして酒とつけばなんでもおいしくいただけるレアスキルでももってたりしてw
あるかもしれません。
>蜜柑ジュースですよ?
そっちだったか。畜生……。
>ヱビス呑み損ねフラグですかw
そこまでSじゃありません。