「そ、それじゃあ始めましょうか」
「うん。ごめんね、長話しちゃって」
ユーノが話題を変えて、なのはがそれに乗る。
美由希と話していて、そもそもここへ来た理由を忘れかけていたので助かった。
あのままだと、二人して落ち込み続けていただろう。
「私はここで見てるよ」
美由希は道場の壁に背を預けながら言った。
「それじゃあまず、なのはさんが使う魔法を、ちゃんと発動させるところから始めましょうか」
「新しい魔法を教えてくれるんじゃないの?」
なのはが首を傾げると、ユーノが答える。
「それも必要ですけど、まず自分がどこまで出来るか、自分の魔法がどういうものかを自覚するべきです。
無闇に数多く覚えても、咄嗟に使う時に、魔法の取捨選択が難しくなるだけです」
「それは道理だね」
美由希が答える。
身体を鍛えている美由希には、その選択がどれほど大切なことかが分かるのだろう。
「うん、わかった。それじゃあやろうか、レイジングハート」
『All right.Stand by ready.Set up.』
なのはの身体が光に包まれ、翠屋の制服へと切り替わる。
赤いビー玉は、四連装の泡立て器へと変わる。
「まずは、プロテクションを発動させて下さい。少し気になることがあるので」
「気になる事?」
ユーノの言葉になのはは首を傾げるが、使えば分かるかと思い、レイジングハートに頼む。
「レイジングハート」
『Protection』
グリップに付けられた赤い宝玉が煌めき、先端が回転すると、なのはの前に桜色の壁が生まれた。
「やっぱり……」
ユーノはそれを横から見ながら、そう呟く。
「ユーノ君、やっぱりじゃ分からないよ。ちゃんと説明してくれるかな?」
「ああ、すいません。なのはさんの魔法は、少し普通と違っているんです」
「どう違うの?」
なのはは自分以外で使った人を見ていないため、違いが分からない。
これが普通と考えていたのだが、ユーノの言うことには、なのはの魔法は変らしい。
「例えば、空を飛びながら砲撃を撃ったり、プロテクションとバインドを同時に使ったりなど、魔法は同時に発動することが出来ます。
そもそもバリアジャケットも魔法ですからね。
マルチタスクという、練習すれば誰でも使える技術で、魔法は同時使用出来ます。
ですが、同じ魔法を発動することはほとんどありません」
「それはどうして?」
「意味が無いからです。魔法の種類によっては、反発することも有り得ます。
空を飛ぶ魔法を使っている時に、もう一度飛行魔法を使っても、既に飛んでいるので意味がありません。
バインドを同時に使用すれば、拘束する鎖の数を増やせますが、それなら一つの魔法に魔力を多く注いだ方が効率的です。
プロテクションに至っては攻撃を弾くので、同じ魔法を使ったら互いに反発して消えてしまいます」
ユーノはなのはの肩から降りて、両手を上に掲げる。
「プロテクション!」
ユーノが唱えると、フェレットの小さい両手から、翠色の光が漏れる。
その手になのはと同じような壁が出来る。
「今、両手で二つのプロテクションを発動させました。
これを近づけてみると……」
最後まで語らず、両手を合わせる。
すると、そこに展開されていたプロテクションが、バチバチと音を立てて消滅した。
「こんなことになります」
「消えちゃった……」
ユーノの言っていたことが、見ていたなのはには良く分かった。
「なのはさんの魔法が少し変わっていると言ったのは、この反発して消えてしまうはずの魔法が、消えずに残っているからです。
同時に四つものプロテクションが発動していて、それが幾つもの層を形成しているんです」
「あ、本当だ。ユーノ君のに比べると、なのはの魔法は分厚いね」
横から見ていた美由希が感想を言う。
「おまけに何か波打ってるし……」
「ええええっ? 何でそんな事になってるの?」
そんな事が自分の魔法に起きていたなんて、なのはには全然分からなかった。
しかもこんなことになっていると、今まで使っていたのが本当に大丈夫だったのかと不安になってくる。
もしこれに不具合があったのなら、なのはは大怪我していただろう。
「おそらく、デバイスがそんな形状をしているからだと思います。
レイジングハートは祈祷型ですから、なのはさんの頑丈な盾が欲しいと願ったことを叶えるために、同時発動したのではないでしょうか。
魔法の発動には問題は無いようですが、発動部分が四つもあるデバイスなんて見た事無いですから、そのせいもあるかと思います」
「え? 無いの?」
なのは大丈夫だと言われたことに安堵しながらも、湧きあがって来た疑問をユーノにぶつける。
ユーノは首を振って否定する。
「ありません。作ろうと思えば作れるでしょうが、これだと通常より魔力を大量に消費するでしょう。
なのはさんみたいに魔力が多くある人はいいかもしれませんが、普通はそれ以外にリソースを割くと思います。
一つでも大抵のことは大丈夫なのに、四つも使う人なんていませんから」
「そ、そう……」
暗に、なのはは馬鹿なんだとユーノに言われた気がして、なのはは落ち込んだ。
そんななのはの様子に気付かないまま、ユーノは話を続ける。
「それじゃあ次は、なのはさんの言っていた新しい魔法に移りましょうか?」
あとがき
遂に二十話です。夏休みだから出来ることです。
なのはさんにレアスキルを付けるかどうかですが、やっぱり付ける事にしました。
付けるといっても、魔法が原作とちょっと変わるだけです。
これがなのはさんの性格・行動に影響することは一切ありませんので。
あと、今回のプロテクションの複層に関しては、レアスキルで起きているわけではありません。
ただ発動部分が四つあって、なのはさんの馬鹿魔力に任せて発動しているので、偶々上手くいっているだけです。
それと前回の「毎日がエブリディ」に関してですが、修正しておきます。
響きが好きなのでそのまま使ったのですが、配慮が足りませんでした。
すいません。
気になったレス返しです。
ここで取り上げられなくても感想は全て読んでいますので、取り上げられなくてもあしからず。
>某プレシアさんが歳のわりにカナリ際どい格好を(ry
>年下のフェイトで見てて恥ずかしくなるんなら、プレシアを見たら何を思うんだろうかw
子「ママー、あのひとすごいかっこしてるよー」
母「見ちゃいけません!」
>レアスキル候補として、『スパイラル(螺旋)』なんてどうですか?
(; ̄Д ̄)
>そしてなにより10年後のスバルとの特訓姿がなんだかとってもウルトラマンレオなカンジなイメージ(杖でたこ殴り)
スバルと会うんでしょうかね、ここのなのはさんは。
>イメージ的には警備会社が警察官か自衛隊員かフリーの傭兵かと思ったんだけど。
普段から荒事やってるわけではありません。
仕事はまだ設定してませんが。
>なのはさんじゅうにさいだからA'sの「友達だ…!」の所はどうなるんだろう?
A'sが始まらないかもしれません。
>レアスキル:魔力変換資質・甘味料
どうやったら魔力を甘味料に出来るのかww
リンディさんがジュエルシードほったらかしでスカウトに来ますね。
>若さって何だ?
振り向かないことさwww
(「宇宙刑事ギャバン」より)
>な・・・ならば、『酒占い』とか『利き酒』、『黄金率(酒限定)』、『酒造の怒り』とか・・・あれ?酒だらけなのは気のせいだよね?
>いや。なのはさんなら、ウオッカ一杯を一晩の睡眠の代わりにできるにちがいない!
>お酒を飲むと魔力量増大、または自己ブースト(ブラスター?)
一杯飲めばブラスター1
ほろ酔いでブラスター2
ヘベレケでブラスター3
みたいな?
あと、酔うと無意識に酔拳の達人になって近接戦闘能力アップとか?
もう此処のなのはさん(32)だと自分には酒関係しかイメージできないや・・・・・
ちょっとやり過ぎたかな……。
まあいい。
>そうおいえば、はやてが運ちゃんやってるこの世界での闇の書ってどうなったのかな?
まだ鎖でグルグル巻きです。