翌日、なのははファリンに送られて高町家へと帰還した。
そして、居間でクッキーを食べていたユーノを見つける。
「ねえユーノ君」
「あ、なのはさん。おかえりなさい」
「うん、ただいま」
「昨日のジュエルシードはどうでした?」
「それなんだけどね……」
挨拶を返したあと、なのははユーノに昨日あったことを話した。
「なんですって!? ジュエルシードを持って行かれた!?」
「うん……。ごめんね、私が駄目だったばっかりに……」
「……いえ、なのはさんのせいじゃありませんよ。
僕もジュエルシードを狙う人が出てくるなんて、思ってもいませんでした」
ユーノにとっても、これは誤算だった。
ユーノが言った通り、ジュエルシードは魔力は膨大だが、力の発現が不安定だ。
ロストロギアなのだから、現在の技術では理解出来ない上に、安全な使い方などが記されているわけでもない。
そんなものを制御して、思いどおりの願いを叶えることなんて、出来る訳がない。
そのためにわざわざ危険を冒してまで、ジュエルシードを奪いに来るとは思っていなかったのだ。
「そうだよね。あんなものを集めて、いったいどうするつもりなんだろう……」
なのはは考える。
既に酔いは抜けているので、昨晩言っていたようなトチ狂った考えをしている訳ではない。
なんでフェイトが『フェラーリ・テスタロッサになりたいんです』という願いを持っていると考えたのか、自分でも理解に苦しむ。
酔った頭で考えることに碌なことはない。
そんなことを、なのはは久しぶりに思い出したのだった。
レイジングハートの口が堅いのが、なのはにとって救いだったと言えよう。
もしばらされたりしたら、なのはは恥ずかしさで悶絶することになる。
「それで、またあの子と会うことになるだろうから、ちゃんとした魔法を覚えたいんだ」
「わかりました」
ユーノが頷く。
そういうことならば、教えることに否はない。
今までは今持っている魔法だけで十分だったのだが、それでは対抗出来ないなら、それ以外を考えるしかない。
「じゃあ、道場に行こうか」
「はい」
なのははユーノを肩に乗せ、姉がいつも使っている道場へと向かった。
道場の引き戸を開けると、中には木刀を振るっていた美由希がいた。
「あれ? お姉ちゃん?」
「あ、なのは。おかえり」
「あ、うん。ただいま」
横目でチラリとなのはを見ながら、木刀はそれでも振り続ける美由希。
その姿になのはは戸惑う。
「って、そうじゃなくて。お姉ちゃん、仕事は?」
「……何言ってんの? 今日から連休だよ」
呆れた、といった声で美由希が言う。
「なのは、自分が仕事無くなってニートだからって、ゴールデンウィークを忘れるのはどうかと思うよ?
毎日が日曜日だから、日にちの感覚が無くなるのは分かるけどさ」
「ちょ、それ酷くない?」
なのはがニートなのは、店が壊れたからだ。
働きたくないからニートをやっている、というわけでは決してない。
「……何か釈然としないけど、まあいいや。お姉ちゃん、ちょっと道場使わせてもらうよ」
「別にいいよ。もう上がるとこだったし」
そういって美由希は木刀を振るうのを止めて、肩に掛けていたタオルで汗を拭う。
「それで? いったい何やるの?」
「魔法の練習だよ」
「魔法? なんでまた、急にやる気になんかなったの?」
美由希の問いに、なのはは昨日あったことを伝える。
フェイト・テスタロッサという名前の少女と出会ったことを。
彼女がジュエルシードを集めていることを。
なのははコテンパンにされてしまったことを。
ジュエルシードを持って行かれたことを。
美由希は真面目に聞いていたが、なのはがやられたところで噴き出した。
「なに? そんな小さな子にコテンパンにやられたの?」
「そう言わないでよ。凄く強かったんだから」
なのはは顔を赤らめながら、小さく口を尖らせて美由希に反論する。
美由希はゴメン、と謝りながら、なのはに質問する。
「でもそんなに強いなら、一度会ってみたいな。ねえなのは、そのフェイトちゃんって、いったいどんな子?」
「綺麗な金髪を頭の横でツインテールにした、とても可愛い女の子だよ。でもね、とても寂しそうな目をしてる」
まるで昔の私みたいに。
なのはは口に出さずに付け加える。
そして、その空気を吹き飛ばすように明るい声で続ける。
「あ。あとね、すっごい服装してた」
「え? 服?」
「うん。バリアジャケットなんだろうけど、凄い際どい格好してて、見てるこっちが恥ずかしくなったよ」
「そ、そうなんだ」
「新体操のレオタードみたいでね、股のところはハイレグになってて、その周りはヒラヒラした布で覆ってるだけなの」
なのはが手でその鋭角具合を示す。
いわゆる「コマネチ!」というアレである。
それを見ると、うわ……、と美由希は声を上げる。
「勇気あるね、その子」
「うん、私もそう思う」
「私だったら、もうそんな恰好出来ないよ。もしやったら捕まるね」
「私だってそうだよ。もう年だもんね」
「……さっき会いたいって言ったの、取り消そうかな……。何か見比べられそうで怖い。誰にとは言わないけど……」
「……うん。その方がいいかも……」
二人してハァ……、と深いため息を吐く。
会話していて、ドンドンと気分が鬱になっていくのが分かる。
そこに、今まで仲間外れにされていた声が、おずおずと割って入る。
「……あの、そろそろ魔法の練習、始めませんか?」
ユーノの顔は、僅かに赤くなっていた。
どうやら、こういう話題は苦手らしい。
あとがき
次から魔法の練習始めたいと思います。
それで、なのはさんにレアスキル付けてみたいんですけど、どうでしょうかね?
別に無くても原作と同じになるだけですが。
言っときますけど、酒飲んで体力回復とかでは無いですから。
気になったレス返しです。
ここで取り上げられなくても感想は全て読んでいますので、取り上げられなくてもあしからず。
>駄目だ、酔っぱらいなのはさんが親父狩りにあって宝石とられたイメージがわいてくるw
レイジングハートが持ってるんでそんなことは無いと思いますが、私もそのイメージ湧きましたw
>非殺傷設定が使えない攻性魔法しか手元にないから困る。
本当にそうですよね。次で非殺傷の魔法覚える予定です。
>なのはさん(32)とすずかさん(32)の百合を創造してしまいました。
ごめんなさいwwww
書いててそっちの方向に行きそうになったのを慌てて止めたのは秘密。
>…ところで、アリサ(32)は?
……仕事じゃないですか?
>レイハさん公認駄目人間wwww
他の人達からの評価も駄目人間なんでしょうかね?
なのはさんの駄目っぷりはレイハさんも認めてます。
酒飲んでない状態で会ってるはやてさんとかは、まだそんな評価は下してません。
>なのがトチ狂ってるなの。
酒が頭にまで回ったんです。
>言ってしまった・・・作者様がOHANASHIタイムかATAMA★HIYASOUKAタイムに入ってしまう!
言ったのはなのはさんだから、俺は大じょ(ry
>『酒は百薬の長』にも程があるwww
まさか、なのはさんのレアスキルなのか?www
なのはさんがそう感じただけですww
でももしかしたら持ってるかもしれません。
ただ気づかれることは無いでしょう。
>テスタロッサは赤頭って意味だ。
つまり赤毛にならにゃならんだけだ。
そんな意味があったんですね。
乏しい英語力が恨めしい。
>ここのなのはさんがフェイトに勝つには、年の功を見せないとダメそうですね。
アニメみたいに真正面からいったら、なのはさんの腰が……。
>じつはなのはとアリサ、こうして時々すずかに噛まれてるとか?
月村が夜の一族設定を持っているかは決めていません。
ですが、もしそうだとしても、すずかはそれを使って無理に言うことを聞かせることはしません。
それは友達じゃありませんからね。
あくまですずかの話術などが効果を発揮しているだけです。