介入結果その三十七 フェイト・T・ハラオウンの観察
「なんて言うかホントもう、そんなん二人とも酷いと思うんよ!」
「え、えっと……」
一仕事を終えてお昼休み。
急に入った任務から戻った所に昼食へと向かうはやてと出くわして、そのまま久しぶりに一緒に食事を摂ろうということになったのだけど。
「誠吾くんも誠吾くんやけど、なのはちゃんもいくら押し切られたかて、私のこと除け者にするなんて寂しいやんかっ!」
「それはそうだけど、昨日は少し事情が特殊だったしね」
「うー……。せやけどー」
何気なく昨夜の出来事を食堂に向かう途中の話題にあげたら、こんな風にはやてをすねさせてしまったのだった。
確かに私も、そんな風に仲間外れにされたりしたら、落ち込んでしまうとは思うのだけど。
けれど、セイゴとはやての関係は、単純な言葉では表しにくい。
愛憎入り乱れているとまでは言わないけれど、枠にはあてはめられない部分が多くあると思うから、そういう意味でセイゴがはやてを苦手としていることも分かってしまって。
だから上手く慰めてあげることが出来なくて、ちょっと眉を下げる。
それでも、はやてのしょげた様子がやるせなくて、どうにか元気付けてあげられないかと考えながら食堂に足を踏み入れると、隣を落ち込んだ様子ながらもしっかり歩いていたはずのはやてが急に立ち止まったので、私は反射的に彼女へと振り返る。
はやては、目を丸くした様子で、小さな驚きを表情に浮かべていた。
「はやて? どうしたの?」
「えっと、あれ……」
はやてがゆっくりとした動作で右手を持ち上げて、食堂の一角を指差したので、それにならってそちらを見て────
「せーごっ、ごはんおいしいねっ!」
「ああ、そうな。それらは全て自然の恵みだ。いきとし生ける全ての生命に感謝しながら貪り食えよ」
「うん、いっぱいたべるー!」
きっとセイゴの言っていることの意味は分かっていないのに、適当に頷いちゃ駄目だよヴィヴィオと思いながら。はやてが驚いている理由が分かった。
正直私も、キョトンとするしかなかった。
はやてが私の制服の腕の袖を掴みながら、困惑した様子で言う。
「ちょ、せ、誠吾くんがお昼休みに自主的に子守りっ!? 嘘やろっ?」
「わ、私もちょっと信じられないけど、でも実際にあそこで……」
私たちからはかろうじて声が聞こえるくらいに離れたその場所で、テーブルを一つ陣取って、向かい合わせに座りながら、セイゴとヴィヴィオが楽しそうに食事を摂っていた。
いや、楽しそうなのはヴィヴィオの方だけで、セイゴはといえばつまらなそうにオムライスをつついているだけなのだけど……。
「おい、ヴィヴィオ。頬にご飯粒ついてんぞ」
「んー? どこー。とってよせーごー」
「メンドイ」
「むぅー」
私たちの小さな混乱もよそに、どこかほんわかした雰囲気で二人は食事を続けていた。
セイゴのにべもない返答に、ヴィヴィオは不満そうにぷっくりと頬を膨らませる。
そんな様子はすごく愛らしくて、思わず頬が緩みそうだ。
だけどそれから、「やっぱりせーごは、じょせーのえすこーともまともにできないんだねー」なんて言い出すから、セイゴと一緒に私の動きも固まった。
どこでそんな言葉を覚えたのっ。と思って、小さな焦りを覚えながら隣のはやてを見て────すごく納得した。
セイゴは、心の底から聞きたくなさそうな表情で、口を開いた。
「……それ、誰から教わったよ」
「はやておねーちゃん!」
そうだよね。だって隣にいるはやてが、とても視線を泳がせながらそわそわしているのだから。
セイゴはヴィヴィオの返答に、瞳に少しの気まずさを宿しながら、目頭を押さえた。
「……ああ、えー……、うん。……あれ? なんだかものすごい悲しい気持ちになって来たよ……?」
「せー、ご……?」
どーしてないてるの? よしよし。って、ヴィヴィオが俯いてしまったセイゴに手を伸ばして頭を撫でてあげている。
「おとこのひとがかんたんになみだをながしちゃだめだって、テレビでカッコいいおじさんがいってたよー?」
「すまない……。あんな、あんな男性にエスコートされたことも無さそう系の女性が、年端もいかない子供相手にお姉さんぶって偉そうにそんな話をしている場面を想像したら、予想以上に涙腺を刺激されて……っ」
「せーご……」
「って、コラァァァァァ!?」
セイゴとヴィヴィオのやり取りに耐えきれなかったみたいで、セイゴの元に走り寄ってその肩を掴んでぐらぐらと揺らし始めるはやて。
ヴィヴィオは「はやておねーちゃんだ!」って嬉しそうに笑っている。
セイゴは半目になってそれを煩わしそうにしてはいたけれど抵抗する気は無いようで、肩を揺らされながら淡白な声音で口を開いた。
「どこから出てきたんですか八神さん。というか揺らさないでください。酔います」
「そんなことどうでもええ! だっ、だだだ誰が男日照りの残念さんやっ!?」
「誰もそこまで言ってませんが」
セイゴが冷静すぎるなぁ……。なんて思いながら、私もはやての後を追うような形でセイゴとヴィヴィオが食事を摂っているテーブルへと近付く。
でも、そうする間にもはやてとセイゴの言い争いはヒートアップしていっていて。
正直、巻き込まれないようにって、その場から少しでも早く離れようと食事の手を速めている周りの子たちも可哀想なので、いろいろやめてあげて欲しいって思うんだけど……。
「と、とにかくっ! 私かて男の人にエスコートしてもろたことくらい……!」
「仕事関係はノーカウントですよ。純粋にプライベート限定で」
「あるもんっ! ロッサとかにしてもろたことあるもんっ!」
はやてが自棄になったみたいに涙声で叫ぶと、セイゴは「ロッサ……?」って不思議そうに表情を曇らせた。
それから少し間を空けてから、なにか考えていたらしいセイゴが私の方を見てからいきなり「ああ」と得心したような顔になって、はやての肩にそっと優しく手をかけた。
なんだろう? その様子を見ていると、こんなことを思うのはすごく失礼な気がするけれど、とっても強烈に違和感がある。
私のそんな気持ちをよそに、セイゴのその行動にはやてが戦々恐々と言った様子で身体を竦ませると、彼はとっても優しげな表情を浮かべて────
「テスタ”ロッサ”さんは女性ですよ。落ち付いてください八神さん」
「ヴェロッサやぁぁぁぁぁぁ!」
「ていうかそこで私を巻き込むのっ!?」
思わず私まで大きな声を出してしまって、慌てて口元を手で覆った。
周囲を見ると、頑張って食事を終えたらしい子たちが愛想笑いを浮かべながら私の方に一礼して、そそくさと逃げるようにその場を去っていく。
なんだか、すごく、猛省だ……。
「キミさっきから失礼すぎるやんっ!」
「それほどでもありません」
「褒めてないしっ!?」
「ふ、二人ともっ。食堂で騒いじゃ駄目だよ……」
どうしてこの二人は昔から、一ヶ所に揃うと子供みたいな喧嘩を始めてしまうんだろうって、ちょっと不思議だ。
普段にお互いがいない時には、相手のことを認めているような言動をいっぱいこぼしているのに。
それはともかく、これ以上騒ぎを大きくすることは良くないと考えた私は、なんとかその場をとりなすことにした。
「ほら、とりあえず食事を取ってこようよはやて。セイゴ、席をご一緒してもいいかな?」
二人に向けてそう聞くと、互いにちらりと視線を交わしてから、不承不承そうにではあるけれど頷いてくれた。
「まあ、席は空いていますからお好きにどうぞ。ただ、ヴィヴィオの隣は空けといてください。予約席です」
「よやくせきだよー、フェイトおねーちゃん」
「予約席……?」
少し考えて「もしかして、なのはの?」って呟くように聞くと、ヴィヴィオが笑顔で頷いた。セイゴは鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
「なんだかねー、メガネのおにーさんによばれてったのー」
「メガネのおにーさん?」
「グリフィスくんですよ。ちょっと用事だって」
「あ、あの件やろか」
「あの件がどの件なのかは知りませんが、まあそんな事情です」
セイゴの説明とはやての相槌に納得しながら、私ははやてと食事を取りに行った。
「それにしても、セイゴがなのはと食事なんて、珍しいね」
席に着いてからそう切り出すと、セイゴはそうですか? ってわざとらしく首を傾げた。
そして、なんだかんだで、それなりの回数誘われたりとかしてますけどね。って、スプーンを口に運びながら言う。
「大体俺が五分メシで終わらせるので、高町さんだけポツンと取り残されるような状況に陥りますけれど」
「……時々なのはが一人で寂しそうに食事をしていたのって、そういう理由だったんだ」
「誠吾くん相変わらずいじめっ子やね」
「そんな馬鹿な」
俺にだってやることたくさんあるんですから、高町さんと雑談してるだけで昼休みを終わらせるわけにはいかないんですよって言うセイゴ。
それならなぜ今日はゆっくりと食事をしながらヴィヴィオの相手をしているのかを聞いてみると、
「今日は別に用事ないですから。たまにはというか。ただのきまぐれですよ」
なんでもないみたいに言うけれど、今までの経験上、こういう時のセイゴは絶対に何か特別な事情を抱えているはずなんだ。
けど、流石にその内容までは分からなくて、ちょっとやきもきしてしまう。
「さて」
話を区切るように口を開いたセイゴが、ヴィヴィオの目の前の食器の端に寄せられた緑色の野菜を左手に改めて取ったフォークで刺して、そのままヴィヴィオの口元に突き出した。
「残さず食え、この偏食児童」
「やー! ピーマンきらいー!」
「だがそれがいいのだろう?」
「やー!?」
子供用椅子を飛び降りて、ヴィヴィオが私の後ろに隠れた。
確かに好き嫌いは良くないと思うけれど、そんな風に無理矢理食べさせるのをただ見ている気にはなれなかったので、それは良くないよって窘める。
そうですか、では趣向を変えましょう。と、そう言ってセイゴは、口元を手で覆い隠して器用に裏声を上げた。
「えー、ヴィヴィオさんってーぇ、ピーマンも食べられないのーぉ?」
突然黒板を爪で引っかいたような裏声を上げたセイゴに驚く私。
隣でヴィヴィオとセイゴのやり取りを微笑ましそうに見ながらランチに付属のスープに口を付けようとしていたはやては、間一髪で噴き出しそうになるのを回避していた。
けれどなにかが変な所に入ったようで、「けほっけほっ」って口を押さえて咳き込んでいる。
だけどセイゴはそんな事を気にもかけない。
「ピーマンを食べられなくても許されるのはーぁ、八神さんまでだよねー?」
「なんでそこで私やねんっ!?」
なんとか立ち直ったはやてが、咳き込んでいたせいか目の端に涙を溜めながら突っ込んだ。
「いえ、なんだか咳き込んでいたのでフューチャリングを」
「せんでええけどね!?」
大体がキミのせいやしっ! って、はやてがうがーってセイゴに突っかかっていく。
「それはともかくヴィヴィオよ」
「そこでまた私を無視っ!?」
それは、横に置いといて。と、セイゴは話をし切り直す。
不満そうなはやてだったけど、無駄だと思ったのか口を尖らせながら目を逸らした。
セイゴはそれを気にもせず続ける。
「こういうものもきちんと食べて栄養バランスを考えて生活していかないと若いうちの食生活の乱れは歳を重ねてからの生活習慣病への影響が大きいし大体今はともかくこれから先も苦いものは食べられませんとか言ってたら味覚の方の成長具合にもよくない影響を及ぼす可能性があるわけでそういう点についてもいろいろ考えつつ高町さんだって心を鬼にしてお前に対するピーマンの摂取を強要しているわけだから少しはあの人の気持ちも汲み取りつつだな────」
「……? ……うー?」
「……要するに、禿げたくなかったらピーマン食え」
「全然違う結論に至ってるよ!?」
「流石誠吾くんや。わけわからんね……」
「いえ、何だかもう途中から面倒くさくて……」
別に俺としては、好き嫌いがあろうがなかろうがどっちでもかまいやしませんから。って、セイゴは視線を背けた。
「高町さんがこういうのやたらとちゃんとさせようとするので、何となく真似してみただけなんですよね、俺」
「でも、好き嫌いはない方がいいんじゃないかな?」
「それは間違いなくそうですけども」
バランスのとれた食事は、健康への第一歩ですから。
そんな風に話をしていると、食堂の入口から誰かが駆けこんできた。
その場で息を切らしながら、少しだけ不安そうな表情できょろきょろと周りを見ていたその誰か────なのはは、わたしたちのことに気付くと、顔をぱあっと輝かせた。
そして、走らないように、けれど急ぎ足でこちらに近付いてきて、胸をほっとなでおろした。
「よかったぁ。せーくん、まだ食事中だったんだね」
それに二人も一緒なんて、今日は運がいいみたい。って、なのはは頬を綻ばせた。
わたしもはやてもそれにクスリと頷くけれど、セイゴだけは硬い無表情でぼそりと言った。
「全力でいくべきだろうか。そうすればあと数十秒ほどで食事を────」
「待っててよっ! わたしもみんなと一緒に食べたいよっ!?」
「えー」
「もーっ!」
せーくんはホントいじわるだよねと、なのははつんと不機嫌な風になる。
けれど、だからと言って本当に怒っているわけではないようで、私の角度からは隠れて口の端を機嫌良さそうに少しだけ吊り上げているのが見えた。
だから、ああ、なのはは今楽しいんだなって、私の方も少しだけふんわりとした気持ちになれて、得した気分だ。
そんな風に思っている間に、なのははさっと食事を取りに行って、ヴィヴィオの隣の席に着いた。
ヴィヴィオが嬉しそうになのはに抱きついて、なのははそれをくすぐったそうに抱きとめる。
そんな様子を横目に、セイゴは相変わらずの様子で言った。
「ていうか、意地の悪くない俺とか背筋が薄ら寒くなりません?」
「それ自分で言うのっ!?」
「誠吾くんやねぇ」
「セイゴ……」
「自覚だけはある故にですねえ」
「自覚があるならなら直してほしいよ……」
「難しいです。いろいろと」
そんな風に締めくくるセイゴ。
なのはが「うー……」と唸り、ヴィヴィオが「ママ……?」と不安そうな表情になった。
不穏な雰囲気に、どうしようかって私はそわりと不安になる。
そんな私たちの雰囲気を感じ取ったのか、はやてがころっと話題を変えた。
「そういえば、なのはちゃん。グリフィスくんの要件、休暇の件やったん?」
「え、あ、うん。五日後に丸一日欲しいなってお願いしたんだけど」
二人の会話に、あ、そんな話があったんだって、少しだけ驚く。
話を聞くと、ちょっといろいろあって、スケジュールの調整に四苦八苦している状況のようだ。
はやてはその途中で、「って、あれ?」って首を傾げてから、その日って確か、誠吾くんもお休みの申請しとったよね。って、思い出し顔で言う。
セイゴはそれに「あー」って微妙な反応をして、スプーンを口に運びながら「まあ、野暮用で少し」って答えて、なのはがそこに「むっ」てまゆをひそめた。
「もーっ、だめだよせーくん」
そんな言い方、ミナトちゃんが可哀想でしょって、私の知らない子の名前を出して駄目出しをするなのは。
ヴィヴィオもなのはに倣ってだめだよーって笑っていて、セイゴはそれに表情を顰めてから、だけど「あー」ってまたそんな反応をする。
「確かに昇進祝いを野暮用ってのは、アレな話ではありますけどねえ」
「昇進祝い……?」
そのミナトって子が、昇進したの? って聞くと、ええ、以前の俺の部下なんですけどね。って、セイゴが珍しく表情を柔らかくして言った。
それから、セイス隊長の所でお世話をしていたその子と、この半年間は通信などで連絡を取りながら、仕事の相談なんかを受けたりしていたことを説明される。
「八神さんと高町さんに呼ばれてからは一回も生身では会っていないんですけどね」
「「うっ」」
はやてとなのはが気まずげに眼を逸らすけれど、セイゴは気にせず言う。
「まあ、そんなこんなで久しぶりに生身で会うわけで、それに高町さんがついてくるってだけのことなんですが」
昇進した部下に、コトのついでにセルフサービスでサプライズな贈りものです。
肩を竦める彼に、なのはが小首を傾げた。
そして、なぜ自分に会うことが贈りものになるのかって、不思議そうに聞いている。
セイゴはそれに、「まあ、あなたはそうでしょうねえ」ってさっきから続けての半目だった。
「あの年代の空士で、高町さんに憧れていない女子は、なかなかいないんですが」
「……へ?」
セイゴの言葉に、なのははきょとんって目を丸くした。
「本人はこの通り、全くの無自覚なのですよね」
「ふ、ふぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「高町さん、ここ食堂です」
お静かにした方がよろしいですよとのセイゴの指摘に「はうっ!?」ってなのはが口ごもる。
そしてそれから、頬を薄い赤に染めながら、セイゴに詰め寄っていく。
「そ、そそそそんなの聞いてないよせーくんっ!?」
「まあ、言ってませんからね」
「誠吾くんやなぁ」
「うん、セイゴだね」
「せーごだよー」
「確かにせーくんらしいけどっ!」
意地悪な所とかっ! と叫ぶなのはに、セイゴは心外そうにため息ひとつ。
でも、言って無くとも察せそうなものですけどねと、セイゴが私やはやての方に視線を送ってくる。
はやてはそれにそうやねーって朗らかに笑い返していて、流石に私もそういう話は知っていたから追いかけるように頷くと、なのはがもともと染めていた頬をもっと赤くして、俯きながらふるふると震え始めて……
「あ、あの、わたしなんだかすっごく恥ずかしいんだけど……っ」
「……はい?」
「だ、だってわたしそういうの得意じゃなくて、い、いつまで経っても慣れなくて……。事前にそんな風に言われちゃったら……っ!」
緊張してしまうんだって、なのはは頭を抱えてしまった。
「いや、あなた六課内でもかなり似たような状況になって祭り上げられてた気がするんですが……」
「ど、動揺してるのを表に出さないように頑張りながら、最近ようやく慣れてきたんだよ……?」
六課内でだけだけど。って、なのはは肩を落とした。
「せ、せめて事前情報なしならなんとかなったのに……っ」
「高町さん、予想外な事態でのアドリブは結構利きますからねー。あとで思い出して自分の行動に悶えるタイプですけど」
「……イジワル」
「そりゃどーも」
興味なさそうに言って、セイゴは目を閉じながら肩をすくめた。
それは、なのはとセイゴのやり取りを多少なりと知っているなら、いつものセイゴの態度そのものに見えたのかもしれない。
でもふと、本当に何気なく、それを見て、え? と思った。
長い間二人のやり取りを見続けてきたから覚えた、ほんの少しの違和感。
セイゴの様子が、どこか演技がかったように見えたのは、気のせいだっただろうか。
もしかしたらこの感触は、今日セイゴがこの場にいる意味そのものへの答えに繋がる何かなのかもしれない。
その答えを得ることは、とても大事なことのように思えたのだけど。
すごく繊細に思えたその感触について考えるよりも先に、なのはとセイゴたちの騒ぎが私の中のそれをかき消してしまって……。
この時の違和感をもっと明確に意識することになるのは、かなり先の話になる。
2012年3月11日投稿
とても間が開いてしまい、すみません。