――――やっと気づいた。 貴方が、私の鞘だったのですね ~小池メンマ著 noodles/stay soup 三十二話「丼の夜、出逢った二人」より抜粋~ 木の葉隠れの外れにある、とある森の中。俺は寝ころび、空を見上げていた。頬をなでる風の音と、運ばれてきた草の臭いに誘われ、おもむろに目を閉じる。何も見えない暗闇の中で、今日一日の出来事と光景を思い、浮かべる。………本当に、色々な事があった。まず最初にカカシと妹が来た。何でも、テウチ師匠が俺の店の事を宣伝してくれていたらしい。ありがとうございます、師匠。二人が注文したのはしょうゆラーメン。というか、今はしょうゆラーメンしか置いていないのだが。本当はもっとバリエーションを増やしたいのだが、色々と足りないので諦めた。スペース確保にその他もろもろ。円滑に運用する技量も無い。なんで、客に出しても恥ずかしくないメニュー一本に絞った。とある店で教えてもらったもので、鶏がらと野菜をベースにしたオーソドックスな味のしょうゆラーメン。それだけではリピーターも見込めないので、チャーシューには気を遣っているが。各地を放浪し見つけてきた豚で、スープによく合う、ほどよいこってりさ加減。旅の途中に見つけた豚で、ここより遠く離れた霧隠れの里付近に生息している。本来ならば運搬に手間が掛かるのだろうが、そこは俺。影分身を利用し、遠く霧の里から運んでいる。修行の一環にもなるし、一石二鳥。マンパワーって凄いよね。二人は美味しそうに食べている。「おいしいですね、カカシ先生」一生懸命食べているキリハの姿に和む………『でも、カカシってばまたキリちゃん連れてきてるね………』そこを怪しむのかよマダオ。まあ、俺の方が結果的にああなったし、仕方ないんじゃ?一人は寂しいでしょ。『いや、でも、あやしい………ていうか娘の横でイチャパラ読むのはヤメロ』最後の方は殺意が籠もっていた。落ち着けって。これがバカ親か。ちっとも分からない感覚だな。娘とか、どんな感じなんだろう。それは置いといて目の前のキリハの事だが、どうしても"妹"とか思えない。それなりの修羅場をくぐってきてこっちの生活には慣れた所もあるが、これはすっぱりと受け入れられない。いきなり妹とか言われても………という奴である。でも、全くの他人とは違う。この血に流れる何かが、目の前の少女のことを感じているのか。どちらかといえば親戚の子に近い感覚なのかな――――と思っていた。しかし、違った。キリハから感想を聞いた時、その考えは一新されたのである。二人とも美味しいと言ってくれたのだが、キリハの方はそれに加え、色々とアドバイスをくれた。「チャーシュー焼きすぎ~」「スープのコクがもうちょっと~」「色にも~」美味しいと言いつつも、改善すべき点を挙げてくれている。なんという娘。いや、ラーメンに対する愛がそれだけ凄いのか。(この娘できる………!)的確な助言に戦慄する。流石、腹は違えども兄妹と言うことか………!(人聞き悪いこと言わないでよ!? ていうか、前に勘違いされた時とかあってさあ……!)腹違いじゃねえと、心の中のマダオが引きつけを起こす。その時の光景を――――惨劇を、思い出しているのだろう。(いやあああああああああアアアアアアアアアアアアアアア………………………イアイア)どんどん声が萎んでいく。てか最後何言った。心の中のマダオが小動物のように震えている。相当に怖かったのだろう。端から見るとうざいだけだが。それにしても、そうか。うずまきクシナは恐妻家だったのか。過去を思い出し悶絶するマダオを取りあえず無視し、帰る二人にありがとうございました。カカシにイチャパラの事をさりげなく言ってみるが、「え、何が?」とのことです。パネエ。そりゃアスマ熊にも負けるわ。もしかして彼女いない歴=年齢なんじゃね?見送りながらそんなことを思う。『そういう君は?』「え、今の状況で誰かと縁持つとかできねえよ?」笑顔で恫喝。下手に縁持つと敵に利用されるわ。バックも無いのに。つーか元妻帯者は黙ってろよ! 恐妻家だけど!『それは言わないでよ。君も、いのちゃんとか、砂の………ほらあの子、名前なんだっけ』「砂ってーと………良き塩を求めて忍び込んだ時の………あ、もしかしてテマリか? ―――無理だろ」容姿性格以前に、彼女風影の娘じゃないっすか。我愛羅との一件でフラグっぽいの立ちましたけど、一般人を自負する俺にとって忍里トップの娘では荷が重すぎる。『一般人は螺旋丸とか使えないと思うけど』「まあ確かに」影分身チートにより、チャクラコントロールの精度がえらいことになってるし。原作ナルトが吸着できずツルリと滑った濡れた岩の上でも、コサックダンスが踊れる程のチャクラコントロールを持ってます。『………踊ってどうする?』「………自由を叫ぶ?」童女狐の質問に首を傾げていると、また客が来た。「いらっしゃい」「………しょうゆラーメン一つ」言葉少なく注文だけ。眼つき悪いし、無愛想少年だねー。でも顔立ちが整ってるな。将来イケメンになりそうな感じ。歩き方も結構、形になっている。そこいらのアカデミー予備生とかとは一線を画しているというか。まあ、この年にしては、と後ろにつくけどね。(って……ああ)ぽんと手を叩く。もしかして、あれか?『ああ、うちは………サスケ君だったっけ。フガクさんとミコトさんとこの、次男の』サスケ少年か。もうあれ起きたんだっけ。一族の虐殺。『………うん』(ん、何か反応が変?)まあそれは置いといて、ということは……もう少しだな、原作開始は。まあ俺は事件の横でラーメン作ってるだけだけど。『ん、それは無理だと思うよ?』『それについては、ワシも全面的に同意しよう』うるさいよ! 少しは現実逃避させてくれよ!介入しなければ木の葉隠れ壊滅しそうとか、気づかなければよかった。それにしてもこのサスケ、イケメンである。さぞ将来はモテモテ(死語)になるのだろう。こっちは基本一人で、しかも正体明かせないから、女性との積極的ふれあいもなく、独り寂しく過ごしているっていうのに………!(いっそもいでやろうか……)『……手をわきわきさせて何考えてるの?』呆れたような声を出すマダオ。くそ、腹が立つ。そうだ。巻き込んでしまえ。ということで一つ策を。(いや、アカデミーでもキリハと一緒になりそうだし、なあ。しかも名家。キリハも結構な血筋だし、もしかしてこいつと付き合う事になるかもよ?)キリハを見るに、忍びとしての才能はありそうだ。と言うことは、サスケとはライバル関係に成るはず。対等であれば、サスケも無視できんだろうし。(ありがちな展開だが、男女の仲になる可能性………ありえないとも言い切れんな!)『さあ、もごうか!』返答は大量の殺気を含んだ声でした。マダオ、自重せい!ちなみにサスケ少年はマダオが声と殺気を発した瞬間、びくっと肩を跳ねさせ、辺りを見回しはじめた。気づいたのか。良いセンスだ。『もごうもげばもぐ時!』割とガチっぽいからやめて。あ、手は出しませんよ。お客さんは神様です。出来ることは祈る事だけです。黙々と食べた後、黙って帰るサスケ少年の背中を見て、どうか大蛇○に掘られますように、と祈った。またびくっとなった。振り返る少年に笑顔で手を振り、見送りながら呟く。(本当に、良いセンスだ)『殺意を持て余す』(だから、自重せい!)次は眉毛が来た。カカシに聞いたのだろうか。マイト・ガイとロック・リー、師弟セットで来た。(しかしこの眉毛、直っつーか、生で見ると結構来るものがあるな………)自己主張の激しいそれに指さし、「その海苔、入れます?」と言いたい衝動に駆られたが、何とか抑える。表蓮華! とか言いながらレンゲを投げられてはたまったものではない。『『………ッ!………ッ!』』二人とも、というか二匹とも大爆笑である。勝った。………いや、何にだ。ちなみに青春師弟二人は、話して見ると割と普通の人だった。というか普通にいい人だった。ただ青春青春、うるさかったけど。どこの机妖怪か。その次は森乃イビキさんがきた。何となくさん付けである。その溢れるダンディーオーラに、ウイスキーをロックで出しそうになった。いや、置いて無いけどね。この人も話してみると普通の人だった。ただ、ため息を頻繁に吐いている。どうしたんですか?と聞くと、何でも無い、と首を振る。(うーん、ダンディー)『○野』(ゲッツ)森乃の人は、結構疲れているみたいだ。口には出さないが特別上忍の直接戦闘を指揮しない部隊だから、暗部関連の事だろうね。ぶっちゃけると俺なんだけど。ため息を一つついた後、静かにご馳走様、というと去っていった。うーん、渋い。次は女性コンビで、紅女史とアンコ女史。ちなみに初対面。でも特徴的すぐて、一目で分かってしまった。特に乳。いや、凄い。網がエロス。ラーメンを出した後、横目でその自己主張の激しい突起物を見ていると、声を掛けられた。「店主さん………なんで腕振ってるの?」はっ!?あまりの見事なブツに、思わず腕が動いてしまったか!慌てて、誤魔化しの言葉を返す。「………いえ、あまりの美しさに感激してしまいまして。それが腕の動きに出てしまったようです、お嬢様方」そういうと、「やだ、もー」、と二人とも頬が少し赤くなっていた。ふう、上手くごまかせたか。『昂ぶる気持ちは分かるけどね。女性の前では止めた方がいいよ』分かってるよ。美味しかった、ご馳走様、と笑顔で去る二人の背を、見届ける。そして遠く去った故郷の山のようなブツを思い、俺は心の中のマダオと一緒に、静かに腕を振った。 _ ∩ ( ゜∀゜)彡⊂彡『何をしているんじゃ?』『ちっぱいには関係ねえですよ!』マダオのマダオ発言。キューちゃんがそれに噛みついた。『………この姿になったのは己のせいだろうが!?』また喧嘩するし。この二人、仲がいいのか悪いのか。結構長く一緒にいるけどわかりまへん。次は病人がきた一目で病人で分かるってどんだけ。すなわち月光ハヤテ特別上忍である。名前も、言い得て妙だな。月のように顔色が白い。できれば仮面を被って欲しいが、無理だろう。一通り食べると、色々と感想をくれた。身体によさそうですね、といわれた。そういえばこの人、薬効関係にも詳しいんだろうか。参考になるかもしれないので色々質問してみたところ、以下のような答が返ってきました「えー、薬草にも色々とありましてねー」「はあ」取りあえず、常備薬として持っている3つを並べて説明してくれた。右から、1:ほとんど気休め2:何かと引き替えに元気になる3:何も分からなくなるの3本らしいです。うん、ごめんなさい。ありがとうございました。迂闊に聞いた俺が馬鹿でした。次は三忍の一人、自来也が来た。ってちょっとまて。なんでこのエロ仙人が此処に来る。「テウチに聞いてのお……良い腕を持っとるそうだな」「恐縮です」いろんな意味で。師匠………有り難いのですが、この人はちょっと勘弁してもらいたい。仮にも、四代目火影の師匠をつとめた英傑。もしかしたら、弟子である四代目が発案したこの変化術が見破られるかもしれない。それは困る。非常に困る。と言うことで、集中力を逸らさせるために色々と話しかけた。イチャパラのネタについてである。ぶっちゃけると現代のギャルゲーの知識を総動員し、アドバイスをしました。まさか、あの知識がこんな所で役に立つとは!という奴である。エロは運命を変える力を持つというが、本当だったのですね。ついでに漫画のネタも話した。随分と参考になった模様で、いそいそとメモを取っている。よし、気が逸れた。そんなこんなで一通り話し終えると、気分良く帰っていった。ただ帰り際に言っていた「また来ようかのお」の言葉は本気だったのかどうか。(うぁれ? もしかしてやっちまった? 逆効果?)『そうかもねえ』そうかもねえって………まあ、いいか。そんなに頻繁に木の葉に戻ってこないと思うし。『先生、落ち込んでたね』「そうなのか?」『………ん』それきり黙るマダオ。俺には分からなかったが、どうやらエロ仙人さんは落ち込んでいるとのこと。マダオにとっては長年接してきた師匠の事だし、何となくだが顔に出ない部分で分かったのだろう。俺にはただのエロ親父が、ネタにはしゃいでいるようにしか見えなかったが。しかし彼の飽くなきエロへの貪欲さ加減には恐れ入った。エロのパイオニアとしては尊敬できそうだ。………そんな一日。俺は目を開けて、立ち上がる。体がだるい。店を一人で切り盛りするのは久しぶりだし、精神的に疲れたのだろう。テウチ師匠の助手だった頃とは違う疲労感だ。一人で背負う重圧というやつだろう。まあ、久しぶりだったしな。「でも、楽しかったな」自分の好きなラーメンを作って、差し出し、美味いと言ってもらう――――これ以上の幸福があるだろうか。さあ、今日も閉店だ。明日からはリピーターも一見さんも――――って、ちょっとまて。「忍者しか来てねえよ!?」『そりゃ、この辺りは、一般人はあまり来ないしね。』「先に言えよ!」どうりで濃い面子しか来ないと思ったよ!というか木の葉隠れの忍び、濃い面子多すぎだよ!