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No.9087の一覧
[0] Fate/Monster Hunter【ネタ・サーヴァント達のモンハンプレイ】 七話分開始[ロボ2号](2010/01/19 18:24)
[1] 序章:サーヴァントだってヒマなときはヒマだ[ロボ2号](2009/05/26 14:29)
[2] 第一話 きっと誰もが一度は思う、仕様です[ロボ2号](2009/05/29 18:25)
[3] 第二話 ドスギアノス急襲。と、将来を憂うランサー[ロボ2号](2009/05/27 20:15)
[4] 第三話 先生! お願いします![ロボ2号](2009/06/12 18:02)
[5] 第四話 黄金の衣を纏い、異臭を放つモノ[ロボ2号](2009/06/20 19:48)
[6] 第五話 新たなる戦い! 激突!雪獅子ドドブランゴ[ロボ2号](2010/01/19 18:24)
[7] 第六話 荒んじまった心の末に。アレ思い浮かべた人、荒んでます[ロボ2号](2009/11/10 21:10)
[8] いんたーるーど 外伝・おまけの詰め合わせ[ロボ2号](2009/11/11 18:42)
[9] 第七話 四つ目の刃、捨て去られた誇りは水竜へ [ロボ2号](2010/03/17 22:31)
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[9087] 序章:サーヴァントだってヒマなときはヒマだ
Name: ロボ2号◆20e538c7 ID:ab7b2f81 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/05/26 14:29
 ――夜半の教会。
 12時を回ったばかりの礼拝堂には、人が殆どいなかった。
 シンと静まり返った神秘的な空間は、針を思わせる程に研ぎ澄まされている。
 ある種の、魔界。本来、神の住まう場所である筈の教会は、そう形容できた。
 それは、今時分の成せる業か、それとも――

「……ち、やりやがる」

 そんな教会の礼拝堂に、一人の男が座っていた。
 ウェイターが着用するような衣服を身に纏い、青い髪を逆立て、銀のピアスを片耳にだけ着けた、美丈夫。
 先に述べた教会の雰囲気の中にいるそれは、またある種の神秘さを纏っていた。
 それは絵画のような、もしくは良く出来た銅像のような、人ならざる神秘。
 それもその筈、彼はかの有名な英雄、光の皇子クー・フーリンその人だからだ。
 神の血を継いだ彼は、人間の姿をとりながらも、人間には出せない美しさを保持している。
 そんな彼がこの美しい魔界に存在しているのだ。絵にならぬ筈が無い。

 ――その手に持っているモノを、視界に納めなければ。

 クー・フーリンの手にはあるモノが握られていた。
 青く輝く、独特の材質で出来た、手の平サイズの物体。
 楕円に近い平面をとり、中央部には絵を写す液晶がはめ込まれている――
 ……所謂、PSPというモノであった。

「……そらぁ!」

 クー・フーリン――今は、ランサーと呼ばれている――が声をあげ、○の描かれたボタンと△の描かれたボタンを押す。
 画面に映った小さき人は、槍を構えて龍へと突進していく。
 愚直なまでに真っ直ぐと向かった槍兵は、あらかじめ定まっていたかのように、赤い龍を突き刺した。
 刹那、龍が断末魔の叫びを上げ、画面に文字が現れる。

 ――目標を達成しました、と。

 そう、クー・フーリンことランサーは――
 モンスターハンターポータブル2ndGと呼ばれるゲームをプレイしていたのだ。
 ぶっちゃけ、こうなると神秘さもクソも無かったりした。

「どうだ、見たかぁ!」

 ランサーは大きく声をあげ、PSPと己が視線を上げる。
 その声は、誰が聞いても喜びを感じ取るに十分なものだった。

 アイルランドの光の皇子が、楽しそうにゲームをプレイする。
 なんだか、幻想をぶっ殺されそうな、みもふたも無い光景であった。

「~♪」

 だが、ランサーはそんな事はお構いなしに、再びPSPと視線を下げた。
 討伐後にする事といったら、コレしかないだろう?
 彼の背中がそう語っていた。
 ランサーは、作業に没頭している。
 故に、後から近づく影に気付かなかったのは、仕方が無いだろう。

「……おい、ランサー。
 何をしているのだ?」

 一人の青年が、ランサーに呼びかける。
 美しい金髪に、黒のライダースーツを着込んだ、美しい青年。
 その美しさはランサーに勝るとも劣らない。
 ランサーがクー・フーリンであるように。この青年の名は、かの有名な英雄王ギルガメッシュといった。

 耐性の無い者が聞けば、卒倒しかねないカリスマに満ちた声。
 1000人がいれば、1000人が振り返るほどの圧倒的な威厳――

 それでもランサーは彼の声に気がつかない。
 英雄なのに、と言うべきか。英雄だからこそ、というべきか。
 ランサーは龍の亡骸の上にキャラクターを移動させ、ひたすらに○ボタンを押していた。
 ギルガメッシュの額に、青筋が浮き上がる。

「――無礼者! 我が呼びかけているのに、無視をするとは何事か!」

 激昂しているのだろう、射殺さんばかりの視線をランサーへと投げかける。
 プライドの高い――いや、プライドの塊であるような彼にとって、無視されると言うのはあってはならないことなのだろう。
 しかし、ランサーも叫ばれた事によってギルガメッシュに気付いたようだ。
 視線をギルガメッシュへと向ける。

「お、いたのか。
 悪い悪い。ちょいとこっちに夢中になっちまってな」

 悪びれる様子も無く笑うランサーに呆れつつ、一応は謝られた事によって機嫌を少し戻したギルガメッシュが、PSPを覗き込む。
 そこには突撃槍を携えた戦士が映っている。
 不機嫌を興味が上回ったのだろう。
 元の不遜な態度を取り戻したギルガメッシュが、ランサーへと言葉を投げる。

「……ふん、わかればいいのだ。
 ところで、ソレは何だ? 見たことも無い機械だが」

 腕を組み、視線でPSPを指す。
 ランサーは一瞬だけ何かを考え、あぁコレか、と呟いた。

「ガキ共と遊んでるワリには、結構疎いのな。
 PSP……あー、ソフトの方が有名か?
 モンスターハンターってんだよ、新作な。まぁ、玩具みたいなモンだ」

 青く輝くPSPをひらひらとさせながら、ランサーは答える。
 興味ありげにソレを覗き込むギルガメッシュだが――
 やがて興味をなくしたのか、礼も言わずに振り返る。

「ふん、くだらん。
 英雄がおもちゃ遊びか」

 若干の嘲笑が含められた言葉。
 英雄が放つとはいえ、英雄に向ける言葉ではないが――
 ランサーは気にした様子も無く笑っている。よほど機嫌が良いのだろう。

「まぁ、お前ならそう言うと思ったけどな。
 ほれ、もう用は済んだろ? 行くならとっとと行きな」

 しっし、と腕をふるうランサー。
 ギルガメッシュの機嫌を損ねるには十分すぎる仕草だが――
 今まさに激昂せんとするギルガメッシュにすら、ランサーが溢れんばかりの機嫌のよさを振りまいていることは理解できる。
 牙を抜かれたような気分になったギルガメッシュは、何も言わずに礼拝堂を後にし、自室へと向かう。

 わずかな明かりが照らす通路を歩きつつ、ギルガメッシュは呟いた。

「……PSP。
 モンスターハンター、か。
 おい、言峰! いるのだろう!」

 英雄が、夢中になる玩具。
 久々に宝物庫に加わるかも知れぬナニカに期待を抱きつつ、ギルガメッシュは通路を歩いていった……








「全く、何を言い出すかと思えば……
 かの英雄王が、ゲームとはな」

 黒衣に身を包んだ大柄な男性が、若干の呆れ顔で呟いた。
 その言葉は隣にいる金髪の青年、ギルガメッシュへと向けられている。

 ――ここは、言峰教会の中に位置する、言峰綺礼の自室。
 狭いとも広いとも言えぬそんな部屋に、二人は集まっていた。
 豪華絢爛な金髪と、ある意味枯れているとも言える黒髪の二人組み。
 見るものが見れば、まず違和感は感じるであろう組み合わせだ。

「何、ただの暇潰しよ。
 ランサーの奴が熱を上げている玩具が、どれほどのモノか気になっただけだ」

 長方形の箱の梱包を解きつつ、ギルガメッシュが言う。
 視線は、長方形の箱に描かれた黒い獣へと注がれている。
 呆れを隠すことなく、言峰はギルガメッシュを見ていた。ギルガメッシュの金髪の様な金色のPSPを、趣味が悪いと思いつつ。

「良し、開いたぞ。
 ……ふむ。コレをこの中に入れるのだな……おぉ!」

 なんだかんだで子供のようにはしゃぐ英雄王を見て、呆れの色を強めつつ言峰は溜息を吐いた。
 ――快・不快のチャンネルがズレた彼にとって、ギルガメッシュの仕草は、見ていて気持ちの良いものではない。
 やれやれ――と、言峰は部屋を後にしようとする。

 そんな時だった。

「おい、言峰。どこへ行く。
 疾く我をサポートせぬか。なにせ、右も左も分からぬでな」

 ギルガメッシュが、視線を動かすことなく言峰を呼びつけた。
 言峰は視線を動かし、モンスターハンターの箱へと移す。

「説明書が入っていただろう。
 新品が良いと言ったのは誰だ」

 もはや呆れを隠すこともせず、言峰は嫌そうに呟いた。
 ギルガメッシュは「何を言っているのだ」と言わんばかりの表情で、言峰を睨み付ける。
 
「ふん、愚問だな。
 我にそんな物が必要あると思うのか?
 貴様はそれほど愚かでもないと思っていたのだがな」

 暴君、健在。
 言峰は「必要あるから私を呼び止めたのだろう……」と呟きつつ、結局は部屋の中へと踵を返していった。
 その背中は、酷く哀愁に溢れたものであったことを記しておこう。

「我は適当に進めて行く。
 言峰、お前は我が進むにつれて生まれた疑問に答えれば良い」
「……私もお前と同じ程度には分からんぞ。
 それこそ右も左も分からん」

 やや不機嫌そうに、言峰は後手に腕を組む。
 言峰の言葉を受け、ギルガメッシュは表情を変える。
 ――それこそ、「きょとん」と言った具合だ。

「貴様は先程から何なのだ。
 あまり我を失望させるな。
 なんの為の説明書だというのだ!」

 理不尽に怒るギルガメッシュ。
 もはや、不条理を感じざるを得ない。
 確かにサーヴァントは人間から見て不条理の塊の様なモノだが……

「了解した。
 地獄へ落ちろ、英雄王」

 結局、これ以上何を言っても無駄だと判断した言峰は、しぶしぶながらギルガメッシュの戯れに付き合うのであった。



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